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出隅とは?意味・使い方・納まりを図解で徹底解説【建設現場の基礎知識】

出隅(でずみ)を完全ガイド:意味・現場での使い方・納まりのポイント【内装職人の基礎知識】

「出隅って何のこと?」「入隅との違いは?」「どの工程で注意すればいいの?」——建設内装の会話でよく出てくるのに、はじめは少しわかりにくい言葉ですよね。この記事では、現場で当たり前のように使われる現場ワード「出隅」を、初心者の方にもわかる言葉で丁寧に解説します。意味だけでなく、実際の使い方、仕上げ別の納まり、よくある不具合の防ぎ方まで、実務目線でまとめました。読み終わる頃には、図面打合せや現場確認で「出隅」に関する会話がすっと理解できるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名でずみ
英語表記outside corner / external corner

定義

出隅(でずみ)とは、壁や部材の角が室内側や通路側へ「外向き」に突き出しているコーナーのことです。平面で見たときに凸(とつ)になる角で、反対は入隅(いりずみ=凹の角)。内装では石膏ボード壁、タイル、化粧板、巾木、カウンターの角など、さまざまな仕上げで発生します。出隅は人や荷物が接触しやすく、傷や割れが起きやすい部位のため、納まり(部材の取り合い・仕上げ方法)や保護方法がとても重要です。

出隅の基本と入隅との違い

出隅は「外コーナー」とも呼ばれ、二つの壁や面が外側に折れ曲がってできる角です。例えば、廊下の角や柱型の角、袖壁の先端などが代表的。入隅は逆に「内コーナー」で、部屋の四隅のように内側に入り込む角を指します。

施工の観点では、入隅はクラック(ひび)制御やコーキングの選定がポイントになるのに対し、出隅は衝撃や擦れ、見た目のシャープさ、直角精度(通り)をいかに保つかが要点です。クロス・塗装・タイル・化粧板など、仕上げが変わると必要な部材や手順も変わりますが、共通して「角を真っ直ぐ、欠けなく、きれいに見せる」ことが求められます。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のような言い方がよく使われます。

  • 外角(がいかく)、外コーナー、外コ
  • R出隅(角のアール仕上げ)
  • ビード出隅(石膏ボードにコーナービードを当てる納まり)
  • 留め出隅(木口を45度留めで合わせる納まり)

使用例(3つ)

  • 「この袖壁の出隅、Rで仕上げね。キッズスペースだからコーナーガードも入れておいて。」
  • 「クロスの出隅はビード立ててからパテ三回で通り出して。角欠けしないように養生も忘れずに。」
  • 「タイルの出隅は45°留めかコーナー見切りか、設計と確認して。割付で最終決めよう。」

使う場面・工程

出隅は次のような工程で頻出します。

  • 墨出し・下地組(LGS/木下地の通り出し、角の直角・通り確認)
  • 下地板張り(石膏ボードなどの小口処理と出隅の合わせ)
  • コーナー材の取付(コーナービード、ジョイナー、見切り、コーナーガード)
  • 下地調整(パテ、サンダー掛け)
  • 仕上げ(クロス貼り、塗装、タイル張り、化粧板貼り、巾木取付)
  • 仕上げ後の養生・保護(コーナー保護材の仮設、引渡前の保護撤去)

関連語

  • 入隅、R出隅、コーナービード、コーナーガード、見切り材、ジョイナー、45°留め、通り、面(チリ)、役物(やくもの)

出隅の納まり・仕上げ別のポイント

1)クロス・塗装(石膏ボード)の出隅

もっとも一般的。石膏ボードの小口同士が当たる角は欠けやすいため、コーナービード(メタル・樹脂・紙貼り一体など)で角を保護し、パテで面を整えます。

  • 下地:LGSや木下地の通りと直角を先に出す。出隅は少しの狂いが仕上がりに大きく響く。
  • ビード:専用のタッカー・ビス・接着剤・紙テープ一体型など方法は仕上げに合わせて選定。ビス・タッカーピッチは製品要領に合わせ、一般に均等で密に。
  • パテ:少なくとも2~3回で目地・ビス頭・ビード段差を消し、面を出す。最終はサンダーで整える。
  • 仕上げ:クロスは角で突きつけ、または片側回し込み。塗装は角を立てすぎると欠けやすいので、わずかに面(0.5~1.0mm程度の面取り)を取るのが無難な場合も。
  • R出隅:R用ビードを使うとクロスの剥がれや欠けに強く、保育・医療・共用部などで有効。

2)タイルの出隅

タイルは角でぶつけると欠けやすく、見た目もシビア。方法は主に3つです。

  • 45°留め(トメ):両側の小口を45°にカットし、外角で合わせる。シャープだが高度な加工が必要。現場か工場での小口処理(面取り・磨き)を伴う。
  • 役物タイル:外角用の専用タイル(外コーナー)を使う。きれいで安全だが、型・品番の有無を事前に確認。
  • 見切り材:アルミ・ステンレス・樹脂の外角用プロファイルを当てる。直線性と保護性に優れる。水回りや商業施設で多用。

どの方法でも、割付(タイルの寸法割り)と最終見えが決定ポイント。設計・監督と早めに合意を取ると手戻りを防げます。

3)化粧板・造作(メラミン、木口)の出隅

家具・造作や窓枠・腰壁などは、45°留めや面材の小口見せ、専用のコーナージョイナーなどを使います。

  • 45°留め:見た目はシャープだが、接着とクランプ養生、反り対策が重要。
  • 小口見せ:エッジテープやソリッド材で保護し、耐久性を確保。
  • ジョイナー:メラミン対応のコーナー材は角の保護と意匠の両立が可能。

4)巾木・床見切りの出隅

ソフト巾木には出隅用コーナー部材(既製キャップ)が用意される場合が多く、コーナーの開き・詰まりを抑えて美しく納まります。木巾木は留め、金属巾木は専用の出隅パーツを使用。床材の見切りも外角でぶつかるため、段差や蹴上げを意識しながら出隅部の連続性を確保します。

施工の流れと実務のコツ

基本の流れ(石膏ボード壁の例)

  • 墨出し:壁芯・仕上げ面を意識して、出隅位置の通りを墨で確認。
  • 下地:スタッド・ランナーの通り調整。出隅となる縦通りは特にヒネリと倒れをゼロに。
  • ボード張り:出隅側は小口処理(面取り)を揃え、はね出し・欠けに注意。
  • コーナービード:製品の要領に従い、均一な固定ピッチで取り付け。角の直線性を見ながら微調整。
  • パテ:段階的に薄く広く。硬化・乾燥を待って研磨。角は詰めすぎず、面を立てすぎない。
  • 仕上げ:クロス・塗装を清潔な環境で施工。角のタッチアップは最後に。
  • 養生・保護:搬入や他 trades の作業で当たるため、引渡し直前までコーナー保護を継続。

通り・直角を出すコツ

  • 細長い定規(2mスチール定規)で縦・横の反りをチェック。
  • レーザーで出隅の通りを見て、押し引きで微調整。
  • ビード取付時に「角が立ちすぎない」よう、仕上げ厚みを見越して面(チリ)をコントロール。

よくある不具合と対策

  • 角欠け・剥がれ:人や台車が当たって欠ける。対策はコーナービードの採用、R出隅化、引渡しまでの保護材設置。
  • 通りの蛇行:下地のヒネリやビードの歪みが原因。取付前の通り確認、固定ピッチの均一化、サンディングで補正。
  • クラック(塗装):角を立てすぎると割れやすい。微小な面取り、材料の収縮を考慮した塗り厚管理。
  • タイル角のチッピング:留め精度不足や小口仕上げ不良。機械加工での面取り、見切り材の活用、作業後の保護。
  • 色ムラ・艶ムラ(塗装):角に塗料が溜まる。吹付・刷毛の角度を調整し、薄く均一に重ね塗り。

図面・見積・発注での注意点

  • 仕様の明記:出隅を「ビード有無」「Rの有無・半径」「見切り材の種類」「タイルの留め/役物/見切り」まで具体的に。
  • 数量拾い:出隅の延長(m)や箇所数を拾い、コーナー部材の必要数量を確保。
  • サンプル承認:見切り材の色・艶・断面形状は実物サンプルで確認し、意匠との齟齬を防ぐ。
  • 納期:役物や専用プロファイルは納期がかかることがあるため、早めの手配が吉。

安全・養生・保護のポイント

  • 仮設コーナーガード:養生ボードや樹脂製ガードで角を保護。特に搬入経路の出隅は最優先で保護。
  • 養生の更新:長期現場はテープ糊の劣化で剥がれやすくなるため、定期的に張替え。
  • 清掃:粉塵が多いと養生テープが効かない。取り付け前に拭き取りを。

代表的な工具・部材とメーカー例

実務でよく使う関連部材・工具と、国内で広く知られるメーカー例を挙げます(具体的な品番・性能は各社最新カタログでご確認ください)。

  • コーナービード(メタル・樹脂・紙貼り一体):石膏ボード角の保護・成形に使用。ボードとの相性や仕上げに応じて選定。
    • メーカー例:吉野石膏(石膏ボードの国内大手。ボードと組み合わせる資材が広く流通)、大建工業(内装建材の大手)
  • 見切り・ジョイナー(アルミ・ステン・樹脂):タイルや化粧板の外角保護と意匠ラインを形成。
    • メーカー例:アイカ工業(メラミン化粧板の大手で関連ジョイナーも展開)、タジマ(床材・見切り金物を幅広く展開)
  • 役物タイル(外角用):タイル外角をきれいに納める専用形状。
    • メーカー例:LIXIL(INAX)(タイル・建材の総合メーカー)
  • コーナーガード(常設・仮設):施設や共用部で角の保護に使用。
    • メーカー例:タキロンシーアイ(樹脂建材の大手)
  • ソフト巾木・出隅キャップ:巾木の出隅納まりを簡潔に美しく。
    • メーカー例:サンゲツ、東リ(内装材の大手)
  • LGS(軽量鉄骨)下地材:出隅の通りを決める骨組み。直角と通りが命。
    • メーカー例:JFE建材、日鉄建材(軽量鉄骨を供給)
  • 手工具・仕上げ道具:2m定規、レーザー、パテベラ、サンダー、コーナーローラー、タッカー、石膏ボード用カッターなど。

品質確認チェックリスト(現場でそのまま使える)

  • 下地の通り:出隅の縦・横とも2m定規で蛇行がないか。
  • 直角精度:スコヤやレーザーで直角を確認。意匠上の指示(鈍角・鋭角)ならその角度で整合。
  • ビードの固定:浮き・歪みがないか。ピッチは製品要領どおりか。
  • パテ:段差が残っていないか。角が脆くなるほど尖っていないか。
  • 仕上げ:クロスの継ぎ目の浮き・割れなし。塗装の艶ムラ・溜まりなし。タイルの小口欠け・目地通り良好。
  • 保護:搬入経路の出隅はガード済みか。最終清掃後に粘着跡が残らないか確認。

現場で役立つ判断基準(どう選ぶ?)

  • 傷に強くしたい→R出隅やコーナーガード、樹脂ビードの検討。
  • 意匠をシャープに→45°留めやメタルビード+丁寧なパテ・塗装。ただし欠けリスクに注意。
  • コスト・工期重視→見切り材や既製コーナーパーツで施工性を高める。
  • 清掃性重視→角をRにする、見切り材の段差・角の溜まりを減らす断面形状を選ぶ。

図面表記・コミュニケーションのコツ

図面や指示書では、次の点を明文化すると誤解が減ります。

  • 「出隅:R=10」などR寸法の明記(R出隅の場合)
  • 「外角:コーナービード+クロス」「外角:45°留め」「外角:アルミ見切り」など納まり手法の指定
  • 色・艶・材質(アルマイト、ヘアライン、マットなど)の指定
  • タイル割付図で外角基準の通り線を表示

よくある質問(Q&A)

Q1. 出隅は必ずビードを入れるべき?

A. クロス・塗装仕上げの石膏ボード出隅では、角の保護と直線性確保のためビード採用が一般的です。意匠上ビードを使わずに角を立てる場合もありますが、欠けやすくなるため、運用・利用シーン(人の動線、台車通行など)を考慮して選びましょう。

Q2. R出隅の半径はどのくらいが標準?

A. 標準という決まりはなく、意匠・機能要求に応じて決めます。子ども・介護施設ではR=5~20mm程度が採用されることが多く、清掃性・安全性・見た目のバランスで決めるのが実務的です。使用するビードや見切り材に適合するRを選定してください。

Q3. タイルの45°留めと見切り材、どちらが良い?

A. シャープさ重視なら45°留め、施工性・耐久性・安定した見え方を重視するなら見切り材が有利です。水がかり・清掃道具の当たり、想定荷重、コスト、職人の得意不得意を加味して決めると失敗しにくくなります。

現場で飛び交う略語・関連語ミニ辞典

  • 入隅(いりずみ):内側に入り込む角。防水・シーリング管理が要点。
  • R出隅:角を丸める出隅。安全・清掃・欠け防止に効果。
  • コーナービード:出隅用の保護・成形材。メタル・樹脂・紙一体型など。
  • コーナーガード:完成後の保護・意匠保護材。仮設・常設がある。
  • 見切り材(ジョイナー):異素材の取り合いを納め、端部・角を美しく見せる部材。
  • 45°留め(とめ):木口やタイル小口を45°で突き合わせる納まり。
  • 通り:直線性のこと。角の通りが悪いと全体が歪んで見える。
  • 面(チリ):角をわずかに落とすこと。割れや欠け防止に有効。
  • 役物:コーナー用など専用形状のタイル部材。

トラブルを未然に防ぐ実務ポイント

  • 早期サンプル確認:ビードや見切りの断面が想像と違うことがある。実物で確認。
  • 他工種との取り合い:電気配管・サッシ枠・手すり受けなどの金物が出隅近傍に来ると、仕上げが傷みやすい。位置調整の交渉は早めに。
  • 清掃動線の想定:ワックス掛けや床洗浄機が当たる角は、R出隅やガードを検討。
  • 引渡し前の再養生:仕上げ完了後に別工種が入る場合、角保護をやり直す。

まとめ:出隅を制する者は仕上げを制す

出隅は「ただの角」ではなく、仕上げの質と耐久性、現場全体の印象を左右する重要ポイントです。意味を理解し、工程ごとに最適な部材・納まり・保護を選べば、欠けや蛇行などのトラブルを大幅に減らせます。まずは下地の通りを正しく出すこと。次に、仕上げに合ったコーナー材や納まりを選定し、養生まで含めて最後まで面倒を見ること。この記事が、あなたの「出隅」へのモヤモヤを解消し、現場で自信を持って会話・判断できる助けになれば幸いです。