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ダクトとは?意味・種類・施工ポイントをプロが徹底解説【現場で役立つ知識まとめ】

建設内装の現場ワード「ダクト」をやさしく解説|意味・種類・施工ポイント・会話例まで

「ダクトってよく聞くけど、結局なに?」「空調の管と何が違うの?」——そんな疑問を持って検索してくださった方へ。この記事では、内装や設備の現場で毎日のように飛び交うワード「ダクト」を、初心者にもわかりやすく、プロの視点で丁寧に解説します。意味・種類・部材の名前から、現場での言い回し、施工の勘どころ、よくある不具合と対策まで、現場で本当に役立つ知識を一つにまとめました。読み終える頃には、図面や職人同士の会話がグッと理解しやすくなるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名だくと
英語表記duct

定義

ダクトとは、空気を所定の場所へ運ぶための「空気の通り道(風の配管)」のこと。建物の中で、外気の取り入れ、室内の換気、空調された空気の供給、不要な空気の排出、煙や油煙の排気などを行う際に使われる設備部材です。見た目は四角い箱状や丸い管状で、天井裏やシャフト内に張り巡らされています。水や電気の配管と同様に、空気を設計通りに届けるのが役割です。

何のための設備?ダクトの基本機能

空調(冷暖房)の供給・還気

空調機で処理(冷やす・温める・湿度調整)した空気を各室へ送り、使い終わった空気を還すためにダクトを使います。吹出口・吸込口とセットで成立し、快適性や省エネ、気流バランスに直結します。

換気(給気・排気)

外の新鮮な空気を室内へ入れ(給気)、室内の汚れた空気を屋外へ出します(排気)。トイレや喫煙室、倉庫や事務所など、用途に応じてダクト径や風量が設計されます。

排煙(火災時の煙を排出)

火災時に煙を効率よく排出し、避難経路の安全を確保する仕組みです。通常の換気・空調用と異なり、防火・耐熱の考え方やダンパーの取り扱いが重要になります。

厨房排気(油煙の排出)

飲食店・厨房では油煙・熱・においを排出します。汚れやすく火災リスクも上がるため、不燃材の選定や清掃性、勾配・ドレン処理などがポイントになります。

ダクトの種類と材料

形状による分類

角ダクト(矩形ダクト):四角い断面のダクト。天井裏の限られたスペースに納めやすく、断面を調整しやすいのが特徴です。角部品(エルボ、チーズ等)の種類が豊富で、建物の形状に合わせやすいです。

スパイラルダクト(丸ダクト):薄板を螺旋状に加工した円形ダクト。空気抵抗が小さく、漏気が少ないのが利点。軽量で施工が速く、美観が求められる露出配管でも採用されます。

フレキシブルダクト(フレキ):蛇腹状の柔らかいダクト。短距離の取り合い調整や吹出口の位置合わせに使います。曲げやすい反面、潰れると圧力損失が増えるため、必要最小限の長さが基本です。

用途による分類

空調用:空気調和設備の供給・還気に用いられます。気密性・断熱性・静音性がポイントです。

換気用:トイレ・倉庫・居室などの給排気に。比較的低圧で、メンテナンス性やコストバランスを重視します。

排煙用:火災時に機能することが前提。耐熱性と防火区画の処理、ダンパーの確実な作動が求められます。

厨房排気用:油煙対策が必須。清掃性、勾配・ドレン、耐食・不燃材選定、火災対策が重要です。

特殊ダクト:クリーンルーム・薬品工場など。耐食(樹脂ライニング等)・高い気密・清浄度が必要になります。

主な材料

亜鉛めっき鋼板(鋼板に亜鉛コーティング):一般的なダクト材料。コストと耐食性のバランスが良好で多用途に使われます。

ステンレス鋼板:厨房排気や腐食環境で使用。油汚れや湿気に強く、清掃性にも優れます。

アルミニウム:軽量で加工性が良い。限定用途や露出で用いるケースがあります。

樹脂系(塩ビライニングやFRPなど):薬品雰囲気や湿気が強い場所で使われることがあります。用途は設計仕様に従います。

ダクトの構成部材・付属品

よく出る形状部材

エルボ(曲がり)、チーズ(分岐)、レジューサ(異径変換)、サドル(側面分岐)、エンドキャップ(端部ふさぎ)など。図面では記号や略称で記載されることが多いです。

接続方式

フランジ接続:角ダクトでは共板フランジやアングルフランジなどを使用。ガスケットやシーラントで気密を確保します。

カップリング・ソケット:スパイラルダクト同士を継ぐ部材。外側からバンドで締め込む方式も一般的です。

フレキ接続:専用のジョイントやバンドで固定。必要以上に長く取らないのがコツです。

防振・伸縮

キャンバスジョイント(フレキシブルコネクタ):ファン直近などに入れる柔軟継手。振動や音の伝播を抑えます。

吊り・支持金物

全ネジボルト(吊りボルト)、振れ止め、チャンネル、ハンガー金具、インサート・アンカーなど。荷重やスパンに見合う金物選定とピッチ設定が重要です。

保温・防露・遮音

保温材(グラスウール、ロックウール等)や外装(アルミクラフト・ガラスクロス・カラー鋼板カバー)。冷たい空気を運ぶダクトは結露防止のための防露が必要です。騒音対策として内張りの吸音処理や消音器を入れる場合もあります。

施工手順と現場の勘どころ

基本的な流れ

1. 図面確認・打合せ:設備図・建築図・電気図で干渉チェック。シャフト・天井ふところ高さ、ダンパー位置、点検口位置を確認します。

2. 墨出し・インサート計画:ダクト中心線、吊り位置、貫通部のスリーブ位置を明確にします。

3. 支持金物の施工:インサート・アンカー打設、チャンネル・吊りボルトの組立。レベル調整可能にしておくと後工程が楽です。

4. ダクト搬入・仮置き:傷防止の養生。順番を考えて死角にしない配置がコツです。

5. 吊り込み・接続:フランジ・カップリング・バンドで接続。シール材で気密を確保し、ボルト・ビスの本締めを行います。

6. 勾配・レベル調整:厨房排気や結露対策が必要な系統は適切な勾配・ドレン処理を設けます。

7. 機器取り合い:ファン・空調機・グリル・ダンパー・消音器との接続。キャンバスジョイントを忘れずに。

8. 保温・防露・仕上げ:図面指定の厚み・仕様で保温。外装の仕上がり・端末の処理・ラベル表示などを整えます。

9. 検査・試運転:漏気・騒音・振動・風量バランスを確認。ダンパー作動と点検口アクセスを必ずチェックします。

品質・安全のポイント

  • 干渉防止:梁下、スプリンクラー、電気ラック、天井下地とクリアランスを確保。曲り数や曲り角度も圧力損失に配慮。
  • 気密・シール:フランジ、角部、カップリング端部のシールの連続性。ピンホールや未塗布に注意。
  • 防火区画処理:貫通部の防火措置、ダンパーの向きと作動スペース、ケーブル配線の取り合い。
  • 防振・騒音:キャンバスの設置位置、吊りの振れ止め、機器直後の直管長の確保(設計意図に従う)。
  • 清掃・点検:厨房は清掃口、点検口位置の確保。天井点検口から手が届くかを実機で確認。
  • 表示・識別:系統シール、流れ方向、用途(給気・還気・排気・排煙)表示。引き渡し後の保守がスムーズになります。

現場での使い方

言い回し・別称

「ダクト」「風管」「角ダクト」「丸ダクト(スパイラル)」「フレキ」「キャンバス(防振継手)」などが日常的に使われる言い方です。設計者・施工者間では「給気ダクト」「還気ダクト」「排気ダクト」「排煙ダクト」「厨房ダクト」と用途で言い分けるのが一般的です。

使用例(会話の実例)

  • 「この梁、低いから角ダクトに切り替えて高さ落として。」
  • 「天カセ(天井カセット)までフレキは短めで。潰れないよう半径大きめで回してね。」
  • 「この区画、排煙ダンパーの点検口が足りない。天井伏図と取り合い再確認しよう。」

使う場面・工程

墨出し・開口確認、吊り金物のセット、ダクト吊り込み・接続、シール・保温、機器取り合い、検査・試運転など、内装工事・設備工事の中核工程で登場します。軽鉄天井や電気設備、スプリンクラーと取り合いが多いので、調整・段取りが品質を左右します。

関連語

吹出口(ディフューザー、レジスター、グリル)、ダンパー(防火・排煙・調整・逆止)、キャンバスジョイント、消音器、プランナム(チャンバー)、エルボ/チーズ/レジューサ、スパイラル、フレキ、点検口、ガラリ、スリーブ、ハンガー金物 など。

よくある不具合と対策

  • 漏気(空気漏れ):フランジのボルト不足、ガスケット切れ、シーラント未施工が原因。接続部全周の連続性と増し締め確認で防止。
  • 結露(水滴・水漏れ):冷風系の防露不足や断熱欠損、外装の切れ目が原因。保温厚みと端末処理、ドレン経路の確保が有効。
  • 騒音・共鳴:曲り直後の吹出口、フレキの潰れ、ファン直結による振動伝播などが原因。直管長の確保、キャンバスの適所配置、吸音材・消音器の採用で低減。
  • 油漏れ・におい逆流(厨房):勾配・ドレン不足、ダンパー不良、ファン停止時の逆流が原因。勾配付け、逆止ダンパー、定期清掃・保守を徹底。
  • 干渉・寸法違い:梁、天井下地、電気ラックとの取り合い不足。事前の干渉チェック、モックアップやBIM活用、系統ごとの優先順位の合意形成が有効。
  • 点検不可:ダンパー上に点検口がない、天井から手が入らない。施工前の点検口計画と実寸確認が肝心。
  • 腐食・汚れ:材質選定ミス、屋外端末の雨仕舞い不良。用途に合った材質、端部キャップ・シール、フード形状の見直しで対策。

品質確認チェックリスト(監督・職人向け)

  • 図面通りの系統・サイズ・ルートになっているか
  • 吊り金物のピッチ・強度・水平が適正か(振れ止め含む)
  • フランジ・カップリングの締結とシールの連続性に欠損がないか
  • ダンパーの向き・作動・点検口アクセスが確保されているか
  • 防火区画貫通部の処理が仕様通りか
  • 保温・防露の厚み・仕上げが指定通りか(端末・継ぎ目の処理)
  • 吹出口の位置・高さ・水平と天井仕上げの取り合いが合っているか
  • 系統表示、流れ方向、ラベル・マーキングが貼付されているか
  • 試運転で風量・騒音・振動に異常がないか

図面でよく見る記号・略語の豆知識

  • SA(Supply Air):給気、RA(Return Air):還気、EA(Exhaust Air):排気、OA(Outdoor Air):外気
  • FD(Fire Damper):防火ダンパー、SD(Smoke Damper):排煙・遮煙ダンパー
  • VAV:可変風量方式、DF:ディフューザー(吹出口)、GR:グリル
  • Plenum(プランナム):箱状のチャンバー空間。風を均一化します。
  • Flexible connector(キャンバスジョイント):防振用の柔軟継手

安全・法規で押さえるポイント

ダクトは防火・避難・衛生に関わる設備です。設計図書の仕様、関係法令や基準(建築基準法・消防法、各種指針、メーカーの施工要領)に従い、貫通部の防火措置やダンパーの設置・作動確認、材質の不燃性・耐熱性の要件などを守ることが重要です。数値条件や試験区分は案件ごとに指定があるため、必ず設計者・監理者と擦り合わせてください。

現場で役立つ小ワザ・勘どころ

  • 曲がりはできるだけ少なく、必要な曲がりは大きく緩やかに。圧力損失と騒音を抑えます。
  • フレキは「短く・潰さず・無理に曲げない」。見た目も性能も向上します。
  • 吹出口付近は直管を確保すると、風が安定しドラフト感が減ります(設計意図に従う)。
  • 厨房は清掃前提で考える。点検口、勾配、取り外しやすい継手にしておくと維持管理が楽です。
  • 共用部や居室上は養生を丁寧に。鋼板の擦り傷・凹みは後で目立ちやすいです。

初心者がつまずきやすいポイントQ&A

Q1:配管とダクトの違いは?
A:配管は水やガスなどの「液体・気体」を通す管全般ですが、現場では水系を配管、空気系をダクトと呼び分けるのが一般的です。

Q2:角と丸、どちらが良い?
A:性能面では丸(スパイラル)は漏れにくく空気抵抗が小さい傾向。スペース調整や納まりでは角が有利な場面も多いです。現場条件・コストで使い分けます。

Q3:ダンパーって何をする部材?
A:風量の調整、防火・排煙時の遮断、逆流防止など、空気の通り道を「開く・閉じる・絞る」ための装置です。

Q4:保温はいつ・どこに必要?
A:冷気を運ぶ系統や露点温度を下回るおそれのある部分は防露を目的とした保温が必要。騒音低減を兼ねる場合もあります。指定は図面・仕様書に従います。

Q5:どこまでがダクト屋さんの仕事?
A:一般に、ダクト製作・搬入・吊り込み・接続・シール・保温(場合によって別工種)・機器取り合い・試運転立会いなど。吹出口・ダンパーなどの付属機器も取り付けますが、工程区分は現場の取り決め次第です。

図面が読みやすくなるポイント

  • 太い線=メインダクト、細い線=枝ダクトになっていることが多い
  • 矢印で風の流れ方向、四角や丸で断面形状が示される
  • 数値は「幅×高さ(角)」「径(丸)」で表記されることが多い
  • 機器記号(AHU=空調機、FAN=送排風機)と接続関係をセットで追うと理解が早い

トラブル防止のための打合せ項目

  • 天井高さとダクト高さ、梁下・設備ラックとのクリアランス
  • 防火区画の貫通部処理とダンパー位置、点検口の配置
  • 吹出口の位置・サイズ・形状と内装仕上げの取り合い
  • 厨房の勾配・清掃口・ドレン、屋外フードの形状と雨仕舞い
  • 試運転・風量測定の段取りと必要機器(測定口の位置など)

英語・用語の理解が仕事を楽にする

海外資料や機器カタログでは英語表記が登場します。基本の単語を押さえておくと、図面や仕様書の理解がスムーズです。

  • Duct(ダクト)/Elbow(エルボ)/Tee(チーズ)/Reducer(レジューサ)
  • Damper(ダンパー)/Backdraft damper(逆止)/Fire damper(防火)
  • Grille・Register・Diffuser(各種吹出口)
  • Plenum(プランナム・チャンバー)/Silencer(消音器)
  • Sealant(シーラント)/Insulation(断熱・保温)

まとめ:ダクトがわかると、現場の全体像が見えてくる

ダクトは「空気を運ぶための道」であり、快適性・安全性・衛生・省エネに直結する重要な設備です。角・丸・フレキといった形状、用途と材質、接続方法や防振、保温、そして防火や点検性まで、ひとつひとつの理由が現場品質に影響します。この記事のポイントを押さえておけば、図面の読み取りや他工種との調整、検査・引き渡しまで自信を持って進められるはず。もし実際の現場で迷ったら、「気密・防火・点検」の三本柱に立ち返り、設計図書と関係者とで早めに確認しましょう。