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捨て貼りとは?現場で失敗しない基本と施工ポイントを5分で解説

「捨て貼り」って何?現場で通じる意味と失敗しない使い方をプロがやさしく解説

図面や現場で「ここは捨て貼りね」と言われて、正直ピンと来なかった…そんな経験はありませんか?捨て貼りは、内装や木造住宅の床づくりでとてもよく登場する現場ワード。けれど「どこまでが捨て貼り?」「直貼りと何が違う?」など、初めての方には分かりづらいのも事実です。この記事では、建設内装の現場で実際に使われる意味・使い方・材料・施工のコツまで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。読後には、打合せや現場で自信を持って会話できる基礎が身につきます。

現場ワード(キーワード)

読み仮名すてばり
英語表記underlayment / subfloor sheathing

定義

捨て貼りとは、仕上げ材の下に施工する下地用の板材や合板を指し、最終的には見えなくなる「下張り」のことです。床では構造体(大引・根太・梁・床合板など)の上にさらに合板等を一層貼って平滑性や剛性を高め、仕上げ材(フローリング、長尺シート、タイルなど)を安定して施工するための層を作ります。壁や天井でも、仕上げ前に石膏ボードや合板を一層追加する場合に「捨て貼り」と呼ぶことがあります。名前は「捨て」でも、性能や仕上がりを左右する重要な下地工程です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように言い換えられることがあります。

  • 下張り/二重貼り(床で一層追加する意味合い)
  • フロア捨て貼り(床に限定して)
  • 合板増し貼り(既存下地の上に重ねる場面で)
  • 直貼りの反対語的に使う(「今回は直貼りじゃなくて捨て貼り」)

使用例(3つ)

  • 「このLDKは12ミリ合板で捨て貼り入れてからフローリング本貼りね。」
  • 「廊下は不陸が出てるから、捨て貼り前にパテで調整しよう。」
  • 「壁は下地が弱いから、一面だけ合板捨て貼りしてからボードいこう。」

使う場面・工程

もっとも一般的なのは床下地の安定化です。既存の床や根太の上に捨て貼りを入れ、たわみや床鳴りを抑え、仕上げ材の精度を高めます。リフォームでは既存床の上に増し貼りして段差調整や強度確保に使われます。壁・天井では、ビスの利きや下地の剛性、遮音・耐力の補助を目的に追加されることがあります(設計指示がある場合)。

関連語

  • 直貼り:下地に直接仕上げ材を貼る工法。捨て貼りはその中間層を設ける工法。
  • 増し貼り:既存面の上に追加で貼ること。用途は近いが既存改修文脈で用いられやすい。
  • 下地合板:捨て貼りに用いる合板の呼び名。JAS認定品が一般的。
  • 耐力面材:壁で構造耐力を担う面材。捨て貼りと同じ材料でも、設計上の役割が異なる場合がある。

捨て貼りの役割とメリット

捨て貼りは「見えなくなる層」ですが、完成度や使い心地を大きく左右します。主な役割は以下です。

  • 平滑性の確保:下地の不陸を吸収し、仕上げ材の見映えと施工性を高める。
  • 剛性・たわみの抑制:歩行時の沈み込みを軽減し、家具荷重にも安定。
  • 床鳴り対策:面材の連続性と接着・固定で摩擦音を抑える。
  • 遮音・断熱の下地:遮音マットや断熱材と組み合わせるベースになる。
  • 下地の調整余地:段差調整、配線の逃げ、開口部見切りの調整がしやすい。

一方、厚みが増す分だけ建具クリアランスや段差、荷重増に注意が必要です。計画段階で仕上げ厚を合算し、見切り・巾木・建具下端のクリアランスを確認しましょう。

代表的な材料と規格の目安

床の捨て貼りでは、JAS認定の構造用合板や下地用合板の使用が一般的です。厚みは用途や下地条件により変わりますが、住宅床では9〜12mmがよく使われます。改修で既存床に重ねる場合は9mm、根太の上に貼る場合は12mmが目安として選ばれることが多いです(最終的には設計仕様・メーカーの指示に従ってください)。

  • 木質系面材:構造用合板(ラワン・針葉樹系)、下地用合板、OSB等
  • 石膏ボード:壁・天井の捨て貼りで用いられる(12.5mmなど)。
  • 遮音下地材:集合住宅で仕上げシートやフローリングの下に組み合わせることがある。

固定はビスまたは釘、さらに床用接着剤を併用するのが一般的です。釘・ビスの種類やピッチ、接着剤の種類は下地・仕上げ材・メーカー仕様に従うのが鉄則です。合板の含水率は適正範囲に管理し、現場に馴染ませてから施工するとトラブルを減らせます。

床の捨て貼り 施工手順(基本)

以下は一般的な流れの一例です。現場条件や仕様書が優先です。

  • 事前確認:床構造(根太ピッチ、剛床か根太床か)、仕上げ材の種類、段差条件、建具クリアランスを確認。
  • 不陸調整:既存床や下地のガタつき、たわみ、浮き釘を是正。必要に応じてパテや薄ベニヤで段差調整。
  • 割付計画:通り芯・部屋形状・開口を考慮して千鳥張り(目地ずらし)計画。継ぎ目が一直線に並ばないようにします。
  • 仮置き:材料を部屋内に馴染ませつつ、実際に並べて干渉や目地位置を再確認。
  • 接着・固定:床用接着剤を仕様どおり塗布し、面材を敷き込みます。端部から内側へ空気を逃がしながら圧着し、ビスまたは釘で固定。端部・中間のピッチは仕様に従うこと。
  • クリアランス:周囲の壁際には膨張逃げのクリアランス(数ミリ程度)を確保。見切りや巾木で隠れる範囲で計画。
  • 継ぎ目処理:段差や反りがないかをチェック。必要なら軽くサンディングし、粉塵は清掃。
  • 養生:接着剤の硬化を待ち、上を歩く場合は面養生。仕上げ材を施工するまで汚れ・水濡れを防止。

ポイントは「面で支える」こと。端部が宙に浮いたり、狭い幅の小片ができたりすると床鳴りや割れの原因になります。梁・根太位置にかかるよう割付を工夫しましょう。

壁・天井の捨て貼りの考え方

壁・天井での捨て貼りは、石膏ボードの増し貼りや合板下地の追加を指す場合があります。ビスの利きや平滑性の確保、手摺・棚の取付下地、遮音や剛性の補助などが目的です。注意点は以下です。

  • 耐力面材との違い:意匠目的の捨て貼りと、耐震要件を満たす耐力面材は設計意図が異なります。釘種・ピッチ・合板種別が厳密に指定される場合は「捨て貼り」でなく「耐力壁」として扱い、指示に厳守で対応します。
  • 厚み管理:ボードの増し貼りは建具・枠・見切りの段差に影響。周囲納まりを事前に確認。
  • 重量・支持:天井での増し貼りは重量増。下地強度やビス効きを再確認の上、二人作業・落下防止で行います。

仕上げ別の注意点

  • フローリング:捨て貼りの平滑性が仕上がりの直線性に直結。ボンドのムラを避け、目地の山・谷を作らない。
  • 長尺シート・塩ビタイル:表面に微細な凹凸が出やすい。目地の段差やビス頭の出を厳禁。必要に応じて全面パテで肌調整。
  • タイル:局所荷重が大きい。剛性の高い下地と適切なモルタル・接着材仕様が必要。合板の上に適合したバックアップ材を要求する仕様もあります。
  • カーペット:歩行感を左右。下地のたわみ・床鳴り対策を優先。

よくある失敗と対策

  • 床鳴りが出る:固定ピッチ不足、接着不良、端部支持不足が原因。設計ピッチ順守、接着剤の塗布量・オープンタイムを守り、端部の支持を確保。
  • 仕上げに段差が透ける:目地段差、ビス頭の不陸、合板の反り。固定後の点検・サンディングと、仕上げ前の清掃・パテ調整を徹底。
  • 建具が擦る・段差が合わない:厚みの合算漏れ。計画段階で厚さと見切り位置を確定し、必要なら敷居・框のかさ上げも検討。
  • 湿気で膨れ・反り:含水率が高い材料、雨水・結露の影響。材料は屋内保管で養生し、濡れた場合は十分に乾燥させてから施工。
  • ビス・釘の浮き:下地の効き不足や打ち込み過ぎ。支持体に確実に効かせ、過度な食い込みを避ける。

施工チェックリスト(現場メモ)

  • 材料:JAS認定の面材か/反り・欠け・汚れはないか
  • 割付:梁・根太位置を把握/目地は千鳥/幅の狭い小片を避けたか
  • 固定:釘・ビス種とピッチは仕様通り/接着剤は適量・適タイミング
  • クリアランス:周囲に膨張逃げ/建具クリアランスを確認
  • 平滑:目地段差なし/ビス頭の出・食い込み過ぎなし/全面清掃済み
  • 養生:硬化時間確保/水濡れ・重量物集中荷重を避ける

似た言葉との違い(混同注意)

  • 捨て打ち(コンクリート):基礎工事での「捨てコンクリート」。増し打ちの精度・墨出しのため。内装の捨て貼りとは分野が異なる。
  • 上貼り:既存仕上げの上に新しい仕上げを直に重ねること。下地層を挟む捨て貼りとは手順が違う。
  • 二重床:支持脚で床を浮かせる乾式二重床システム。捨て貼りは面材を一層追加する工法で、構成が異なる。

よくある質問(Q&A)

Q. いつも捨て貼りは必要?直貼りではダメ?

A. 下地が十分に平滑・剛性が高い場合は直貼り仕様もあります。ただし、フローリングやシートの美観・歩行感、遮音・段差調整の観点で捨て貼りが推奨される場面は多いです。最終判断は設計・メーカー仕様に従ってください。

Q. 厚みは何ミリが正解?

A. 用途と下地によります。住宅の床では9〜12mmが一つの目安ですが、集合住宅や重量物が載る部屋では別仕様になることも。厚みを足すと建具や段差に影響するため、全体納まりで決めるのが基本です。

Q. ネジと釘、どちらが良い?

A. 下地条件と仕様によります。ビスは保持力と引抜きに強く、釘は作業性に優れます。いずれもピッチ・径・長さの指定がある場合は厳守し、床用接着剤を併用して面で固めると床鳴りリスクを下げられます。

Q. 壁の捨て貼りと耐力壁は同じ?

A. 同じ面材を使っても、意図と留め付け仕様が異なります。耐力壁は構造計算に関わるため、釘種・ピッチ・面材種別など厳密な指定が付きます。捨て貼り感覚で施工せず、設計図書の指示に厳守で対応してください。

関連メーカー・工具の例

捨て貼り自体は工法・工程の呼称ですが、使用する面材や周辺資材には以下のような代表的なメーカーがあります(順不同)。具体的な品番・仕様は各社のカタログと設計意図を参照してください。

  • 木質系下地材・フローリング関連:大建工業、NODA(ノダ)、永大産業 など
  • 石膏ボード:吉野石膏、チヨダウーテ など
  • 接着剤:内装用・床用接着剤を扱う建材メーカー各社(仕上げ材適合を必ず確認)
  • 工具:インパクトドライバー、フロアタッカー(釘打ち機)、丸ノコ/スライド丸鋸、サンダー、レーザー墨出し器 など

面材はJAS認定品を選ぶのが基本です。性能・安全性・寸法精度の観点で信頼性が高く、仕様書でも求められることが多いです。

現場で使える小ワザと安全配慮

  • 端部逃げ:壁際は後の巾木や見切りで隠れる範囲で2〜3mm程度の逃げを確保し、湿度変化による突き上げを防止。
  • 千鳥割り:長手方向だけでなく短手方向も目地が揃わないよう割付し、たわみと鳴きを減らす。
  • 材料なじませ:現場環境になじませてから施工すると反りや目違いを抑えられる。
  • 粉塵対策:切断・サンディング時は集塵・マスク・保護具を着用し、周辺を養生。

まとめ:捨て貼りは「見えないけれど効く」重要工程

捨て貼りは「仕上げの一歩手前に設ける下地層」。平滑性と剛性を確保し、仕上げ材の性能を引き出すための要です。言葉としてはシンプルですが、厚み選定、割付、固定ピッチ、接着、クリアランス、養生…どれか一つでも疎かにすると床鳴りや段差などの不具合につながります。設計仕様とメーカー指示に沿いながら、現場では「面で支える」「目地をずらす」「適切に固定する」を徹底しましょう。今日から「捨て貼り」の意味と狙いがスッと頭に入っていれば、打合せも施工もぐっとスムーズになります。まずは次の現場で、割付計画と固定ピッチの確認から始めてみてください。