職人が口にする「ランナー」って何?軽天・Tバー天井での意味と使い方をやさしく詳解
内装の現場で「そこ、ランナー流しといて」「メインランナーから拾っていこう」など、聞き慣れない言葉に戸惑ったことはありませんか?この記事では、内装工事で頻出する現場ワード「ランナー」の意味を、初心者の方にも分かりやすく整理。どの場面で何を指すのか、会話の文脈、選び方、施工のコツまで実務目線でまとめました。読み終える頃には、図をイメージしながら「なるほど、そういうことか!」と自信を持って現場で使えるはずです。
現場ワード「ランナー」
読み仮名 | らんなー |
---|---|
英語表記 | Runner / Track(用途により Main Runner, Cross Runner, U-Track など) |
定義
内装工事における「ランナー」は、主に次の2つの意味で使われます。1つ目は軽量鉄骨下地(LGS・軽天)の間仕切り壁で、床・天井に取り付けるU字形の鋼製部材(Uランナー/トラック)のこと。縦に立てるスタッド(C形鋼)を受けるガイドとなり、壁の位置と直線性を決めます。2つ目はシステム天井(Tバー天井)で使う格子状の骨組みの部材で、主に「メインランナー(主部材)」と、そこに直交してはめ込む「クロスランナー(クロスティー)」を指します。
現場での使い方
言い回し・別称
ランナーは用途や工程によって呼び方が変わります。代表的な言い回しや別称は次の通りです。
- Uランナー/トラック(LGS間仕切り壁の床・天井に取り付けるU形材)
- 床ランナー・天(上)ランナー(床側/天井側どちらかを特定する言い方)
- メインランナー(Tバー天井の主部材)
- クロスランナー(Tバー天井でメインに直交させる部材、クロスティー)
- ランナーを流す(ランナーを所定ラインに沿って取り付けること)
使用例(会話例・3つ)
- 「このラインにU-75の床ランナー流しといて。天は梁逃げあるから現場合わせね。」
- 「Tバーはまずメインランナー吊ってレベル出そう。クロスは303ピッチでいくよ。」
- 「遮音壁だからランナーの下にパッキン忘れないで。スタッドは@450で建て込む。」
使う場面・工程
ランナーは、壁下地・天井下地の“基準線”や“受け材”として最初期の工程で登場します。
- 間仕切り壁(LGS):墨出し → 床・天井にUランナー取付 → スタッド建込み → 開口補強 → 断熱材・設備配管 → ボード張り → 仕上げ
- Tバー天井:墨出し(レベル・割付) → 吊りボルト施工 → メインランナー架設・レベル調整 → クロスランナー組込み → 天井板(吸音板・岩綿板など)施工
関連語
- スタッド(C形鋼の縦材。Uランナーに差し込んで建てる)
- LGS/軽天(軽量鉄骨下地の総称)
- Tバー(T字断面の天井グリッド。メインランナー・クロスランナーで構成)
- 遮音パッキン(床・天井ランナー下に挟む弾性材。遮音・気密・微振動緩衝)
- アンカー/ピン打ち(ランナーを躯体に固定するための留め付け手段)
図でつかむ「ランナー」の位置関係
[間仕切り(LGS)]
床(コンクリート等) ———— [床ランナー:U字材] ————
│ │ │(スタッドが上から差さり壁になる)
天井(スラブ・梁等) ——— [天ランナー:U字材] ———
→ Uランナーは“上下のレール”。スタッドは“縦の柱”。
[Tバー天井]
吊りボルト ↓ ↓ ↓
メインランナー(長手方向に通る基準材)
┏━━━━━━┳━━━━━━┓
┃ クロスランナー(直交材)┃
┗━━━━━━┻━━━━━━┛
→ メインとクロスで格子をつくり、天井板をはめ込む。
ランナーの種類と用途
LGS間仕切り用のUランナー
材質は亜鉛めっき鋼板が一般的で、形状はU字。幅は使うスタッド幅に合わせます(例:U-65/U-75/U-100などの呼称が現場で使われます)。床と天井のランナーを先に固定し、C形のスタッドを差し込んで縦に建て込み、壁の骨組みを作るのが基本です。遮音や耐火の仕様によっては、ランナー下にパッキンを挟んだり、ボード枚数・不燃材の充填が指示されます。
Tバー天井のメインランナー/クロスランナー
システム天井では、吊りボルトにハンガーを介して「メインランナー」を水平に通し、決められたモジュール(例:303mmや600mm)で「クロスランナー」をはめ込みます。最終的には格子状のグリッドができ、そこに天井材(岩綿吸音板など)をのせたりはめ込んだりします。
現場での「幅(呼び寸)」と板厚の考え方
Uランナーはスタッドの呼び寸(幅)に合わせて選定します。板厚は、壁高さ・耐力・仕様(耐火・遮音)などに応じて決まります。一般には薄板(軽量)で、住宅・店舗・オフィスなど幅広く使われます。Tバーのランナーはメーカーのシステムに合わせて部材形状・長さ・表面仕上げが規格化されています。
選び方(失敗しない実務目線)
間仕切り用Uランナーの選定ポイント
- 幅(呼び寸):使用するスタッドと同じ呼び寸に合わせる(例:スタッドが75ならU-75)。
- 板厚:壁高さが高い、開口が多い、耐火・遮音の要求が高いほど厚めを選定するのが一般的。設計・仕様書に従う。
- 遮音・気密:床・天井との取り合いに遮音パッキンを入れる指示があるか確認。隙間は後のシールで確実に処理。
- 固定方法:コンクリートならアンカー、鋼製下地やデッキプレートにはドリルねじやピン打ちなど、躯体に適した留め付けを選ぶ。
- 曲線壁への対応:必要に応じてランナーにスリット(切り込み)を入れて曲げ加工を行う。最小曲率は事前に確認。
- 納まり:梁型や設備配管との干渉、見切り材・見付け寸法、下地合板の有無を考慮して呼び寸・位置を決める。
Tバー天井のランナー選定ポイント
- モジュール:天井板のサイズ(303角、600角、600×1200など)に合わせたグリッドピッチを選ぶ。
- 耐荷重:照明・点検口・設備機器の吊り込み荷重を考慮。必要があれば補強材や追加吊りを計画。
- 表面色・見付け:仕上げとの相性(白、ブラック、狭見付けなど)を確認。
- 吊りピッチ・レベル:メーカー基準値・現場基準に従い、通り・水平精度を最優先で確保。
施工の流れとコツ
間仕切り(Uランナー)基本手順
1)墨出し:通り芯・壁芯・開口位置を正確に墨出し。曲がりやすい区画はスパンごとに検尺。
2)床ランナー取り付け:墨に合わせて仮固定→通り確認→本固定。アンカーやピン打ちはピッチを均等に。
3)天ランナー取り付け:レーザーでレベル・通りを合わせ、躯体の不陸を拾いながら固定。梁型は現場納まりに合わせる。
4)スタッド建込み:端部・開口部から先行し、通り・鉛直を見ながらピッチで建て込む。
5)開口補強:建具枠や点検口まわりは補強リブ・下地合板で剛性アップ。
6)断熱材・設備:遮音・断熱・配線配管を仕様に従い充填・固定。
7)面材張り:ボードの張り方向・目地通り・目違いを揃え、ビスピッチを守る。
コツ:
・ランナーは“真っすぐ・水平・所定ライン”に尽きます。ここが狂うと後行程すべてに影響。
・遮音や耐火仕様では、ランナー下のパッキンや目地シールのやり忘れが致命傷。先に材料と手順を段取り。
・曲線部は切り込みピッチを細かくして美しいRを出す。切粉で床を傷めないよう養生。
天井(Tバー)基本手順
1)基準墨・レベル出し:レーザーで周囲のまわり縁高さを決定。割付を先に固めて、半端寸法を壁側に逃がす。
2)吊りボルト:メーカー指定ピッチで施工。下地の強度・あと施工アンカーの打設品質を確認。
3)メインランナー架設:吊り金具に通し、レベルを揃えながら通りを出す。
4)クロスランナー挿入:定尺でテンポよく組み、四角の歪みを随時チェック。
5)天井板施工:埃や指紋に注意してはめ込む。重量物は別吊りや補強を併用。
コツ:
・メインランナーの水平・直線が天井の見栄えを左右。最初の1本を丁寧に。
・照明・点検口位置は先にランナー割付へ反映。後付けでの切断・補強は手間増。
よくある疑問と勘違い
Q1. ランナーとスタッドの違いは?
ランナーは床・天井に固定する“受け・ガイド”。スタッドは縦に建てる“柱”。U(ランナー)×C(スタッド)で壁の骨組みが成立します。
Q2. ランナー=Tバーですか?
文脈次第です。間仕切りの話で「ランナー」はU字のトラック材を指し、天井の話で「メインランナー」「クロスランナー」と言えばTバーの部材を指します。会話の対象が壁か天井かを必ず確認しましょう。
Q3. 幅はどれを選べばいい?
基本はスタッドの呼び寸に合わせます(例:スタッド75ならU-75)。ボードの仕様や下地合板の有無で壁厚が変わる点にも注意。
Q4. 遮音に効くのは?
ランナー下の遮音パッキン、ボード二重張り、グラスウールの充填、目地シールの確実な施工など、複合的な対策が有効です。仕様書・納まり図に従いましょう。
安全・品質のチェックポイント
- 固定の確実性:アンカー種別・下地強度・ピッチが適正か。
- 通り・レベル:レーザー・スケールで随時確認。初期のズレは早めに修正。
- 防火・遮音仕様:パッキン・シール・ボード枚数・目地ずらしなど、要求性能に関わる条件を取り違えない。
- 開口部補強:建具や点検口周りはたわみ・ビビりが出ないよう補強を徹底。
- 干渉リスク:設備配管・電気配線・スプリンクラーとの取り合いを事前に関係職と調整。
- 養生・清掃:切粉・バリ・ピン打ち痕はその場で処理し、仕上げ面を守る。
主なメーカーと入手の目安
Uランナー(LGS下地材)やTバー天井のランナーは、内装建材・鋼製下地を扱う建材商社やプロショップで入手できます。代表的な国内メーカー例を挙げます。
- JFE建材:軽量形鋼(LGS)分野で広く採用。各種スタッド・ランナーを全国供給。施工資料や納まり図も整備されています。
- 日鉄建材:鋼製建材の大手。間仕切り・天井向けの軽量形鋼をラインアップし、性能・規格情報が明確です。
上記はあくまで一例です。実際の選定は設計仕様・現場の調達ルート・規格適合(遮音・耐火など)を総合的に確認してください。Tバー天井はメーカーごとにシステムが異なるため、同一システム内で部材を統一するのが基本です。
現場で役立つちょいテク
- ランナー“仮止め”で通り確定:最初から本締めせず、通りを見ながら微調整してからピッチを均等に本固定。
- ドア枠の先行確認:開口部のクリアランス・見付けが仕様通りか、ランナー位置で早期に決着させる。
- パッキンの切り欠き:アンカー位置でパッキンを部分的に抜くのではなく、密着性を損なわない切り欠き形状に。
- Tバーの“逃げ寸”管理:壁際の半端寸は最低寸法を確保。割付図をつくって全体の見え方を先回りで調整。
チェックシート(持ち歩き用の要点)
- 壁?天井? → どの「ランナー」の話かまず確認。
- 呼び寸・板厚 → スタッドや天井システムに適合しているか。
- 墨・レベル → レーザーで基準を明確に。通りの直線性を確保。
- 固定 → 躯体とアンカー種別の相性、ピッチ、引き抜き強度。
- 性能 → 遮音パッキン、シール、耐火仕様の遵守。
- 干渉 → 設備・建具と納まりの事前整合。
まとめ:ランナーを制す者は“通り”を制す
「ランナー」は、LGSの間仕切りではU字の受け材、Tバー天井ではメイン/クロスの骨材を指す現場ワードです。いずれも“基準”をつくる部材で、ここで通り・レベル・性能条件が決まります。呼び寸・板厚・固定方法・パッキンの有無など、仕様書と現場条件をすり合わせ、最初の一本を丁寧に据えることが仕上がりの近道。会話の文脈(壁か天井か)を捉え、ここで紹介した使い方・選び方・コツを押さえれば、現場での段取りもグッとスムーズになるはずです。困ったときは、設計図書・メーカー納まり図・先輩の実務知見を突き合わせて、安全第一で進めましょう。