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不陸調整とは?失敗しない施工手順と現場で役立つポイント5選

  1. 不陸調整の基礎知識と、現場で迷わないための実践ガイド
  2. 現場ワード(キーワード)
    1. 定義
  3. 現場での使い方
    1. 言い回し・別称
    2. 使用例(3つ)
    3. 使う場面・工程
    4. 関連語
  4. 不陸が起きる原因と、放置するリスク
    1. 主な原因
    2. 放置リスク
  5. 部位別:不陸調整の代表的な方法
    1. 床の不陸調整
    2. 壁の不陸調整
    3. 天井の不陸調整
    4. タイル・石・左官の不陸調整
  6. 施工手順:床のセルフレベリング材(SL材)を例に
    1. 1. 調査・計画
    2. 2. 下地処理
    3. 3. 材料の混練
    4. 4. 打設・均し
    5. 5. 養生・再測定
    6. 6. 仕上げへ
  7. 許容不陸の目安と検査方法
    1. 一般的な現場目安
    2. 検査のコツ
  8. 材料・工具と代表的なメーカー
    1. 主な材料
    2. 主な工具
    3. 代表的なメーカー(例)
  9. よくある失敗と回避策
    1. プライマーの希釈・塗りムラ
    2. 水過多の混練
    3. 厚塗りしすぎ
    4. 養生不足・早期通行
    5. 可動クラックの未処理
    6. 含水率・環境条件の未確認
  10. 安全衛生・現場管理のポイント
  11. 費用感と工期の目安
  12. プロが現場で徹底するコツ5選
  13. ケーススタディ:仕上げ別の勘所
    1. 長尺シート・塩ビタイル(LVT)
    2. フローリング
    3. タイル・石材
    4. クロス・塗装
  14. チェックリスト:着工前・中間・完了
    1. 着工前
    2. 中間
    3. 完了
  15. Q&A:よくある疑問
    1. Q. DIYで不陸調整はできますか?
    2. Q. どの仕上げが不陸にシビア?
    3. Q. 設計図に“許容不陸”がない場合は?
    4. Q. 不陸調整とレベリングは同じ?
  16. まとめ:不陸調整は“仕上げの前の仕上げ”
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不陸調整の基礎知識と、現場で迷わないための実践ガイド

「床がなんだか波打って見える」「クロスを張ったら段差が目立つ」——そんなとき現場で飛び交う言葉が「不陸調整」です。初めて聞くと難しそうですが、要は“仕上げ前に平らに整える”というとても大切な下地作りの作業。この記事では、初心者の方にもわかる言葉の意味、現場での使い方、実際の施工手順、よくある失敗と対策までを、内装職人の実務目線でやさしく解説します。読み終えるころには、「どこで何をどう直せばいいか」が具体的にイメージできるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ふりくちょうせい
英語表記Unevenness correction (Leveling) / Substrate leveling

定義

不陸調整とは、床・壁・天井などの下地に生じた高低差(段差・うねり・反り・たわみ等)を、仕上げ前に平滑・水平(または所定の勾配)へ整える作業の総称です。目的は、仕上げ材の性能と美観を引き出し、施工後の不具合(目違い・ひび割れ・剥離・きしみ等)を防ぐこと。具体的には、パテや樹脂モルタル、セルフレベリング材(SL材)、スペーサー・シム、下地合板の増し張り、LGSの通り出しなど、部位や仕上げに応じて最適な手段を選びます。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では「不陸を取る」「レベルを出す」「面(つら)を出す」「下地調整」「レベリング」「面直し」などの言い方をします。床なら「レベル直し」、壁・天井なら「通りを出す」という表現もよく使います。

使用例(3つ)

  • 「長尺シート前に不陸調整やってからプライマーいれてね」
  • 「この壁、通りが暴れてるから、胴縁で不陸調整してからボード張ろう」
  • 「見切り材の際、1ミリ目違いがあるからパテで不陸取っておいて」

使う場面・工程

使うのは主に下地完成〜仕上げ前の工程。床では合板・モルタル・ALCの上にフローリング、長尺シート、タイル、カーペットを張る前。壁・天井ではLGS下地や木下地にボードを張るとき、またはボード下地にクロスや塗装を施す前。タイルや石材では張付け前のモルタルで「敷き均し」として不陸調整を兼ねます。

関連語

  • レベル出し/通り・面出し/下地調整/パテ処理/スクリード
  • 目違い/段差/うねり/反り/収縮クラック/伸縮目地
  • 墨出し/基準線/アルミ定規/レーザーレベル/セルフレベリング材(SL材)

不陸が起きる原因と、放置するリスク

主な原因

  • 構造・下地の施工誤差(基準墨からのズレ、LGSの通り不足、下地合板の不陸)
  • 材料の性質(木材の反り・含水率変化、モルタルの収縮、ALCの目地段差)
  • 経年劣化(沈下・たわみ、既存仕上げの剥がれ後の凹凸)
  • 納まりの複雑さ(見切り、框、巾木、開口部周りの収まり)

放置リスク

  • 美観低下(光が流れる空間でのうねり・目違いの強調)
  • 機能障害(床仕上げの剥離、タイルの割れ、建具の開閉不良、家具のガタつき)
  • メンテナンス・クレーム増(補修コスト、手戻り、工期遅延)

不陸調整は、見た目のためだけでなく仕上げ材の性能と耐久性を守る“必要経費”です。後で直すほどコストは増えるため、計画段階から許容値を決め、早めに対処するのが鉄則です。

部位別:不陸調整の代表的な方法

床の不陸調整

  • 局部の高低差:樹脂モルタルやセメント系パテで充填・研磨
  • 全面を均す:セルフレベリング材(SL材)でレベル出し
  • 合板下地:増し張り(捨て張り)やベニヤ差し替え、パッキンで敷き込み高さ調整
  • 既存仕上げ撤去後:接着剤の残りやレベラー欠損をサンダーで除去、プライマーの再塗布

壁の不陸調整

  • LGS・木下地:胴縁・スペーサーで通りを修正、縦胴縁のラインをレーザーで確認
  • PB(ボード)面:段差・ビスパテ、継ぎ目のテーピング+パテで面出し
  • 下地不良が大きい場合:下地やり替えを含めて再設計、あるいは胴縁で新たに面を構成

天井の不陸調整

  • 吊りボルト・野縁のレベル調整、振れ止めを入れてたわみを抑制
  • 照明・ダクト周りは納まり優先で面を決め、意匠と干渉を調整

タイル・石・左官の不陸調整

  • 敷きモルタルの厚みで不陸を吸収、通り糸で基準を確保
  • 広面積はスクリード(モルタル均し)で一次調整、硬化後に仕上げ施工

施工手順:床のセルフレベリング材(SL材)を例に

1. 調査・計画

  • 基準点の設定:レーザーレベルで基準高さ(±0)を決め、壁にレベルラインを墨出し
  • 不陸の把握:2mアルミ定規で隙間(低い)と当たり(高い)を確認。必要厚と範囲を見積もる
  • 仕様確認:仕上げ材メーカーの許容不陸・下地条件(含水率、圧縮強度、平滑度)を確認

2. 下地処理

  • 汚れ・脆弱部除去:スクレーパー、サンダーでレイタンス・接着剤残渣を除去
  • ひび割れ補修:クラックにエポキシやセメント系樹脂モルタルを充填。可動クラックは処理方法を変更(スリットや目地で逃がす)
  • 吸い込み調整・接着確保:専用プライマーを均一に塗布し、既定時間乾燥

3. 材料の混練

  • 水量厳守:指定水量・攪拌時間を守る。水過多は分離・強度低下・ひびの原因
  • 撹拌機使用:攪拌羽根付きの電動ミキサーでダマをなくし、適正粘度に

4. 打設・均し

  • 打設:奥から手前へ、逃げ道を確保して流し込む
  • 均し:ピンレベラーやスクリードバーで基準厚に調整。気泡はスパイクローラーで抜く
  • 段取り:区画割りや打ち継ぎラインを計画、継ぎ目が残らない順序で進める

5. 養生・再測定

  • 養生:歩行可能時間・全面硬化時間を守る(温湿度で変動)。直射日光・強風を避ける
  • 再測定:硬化後にレベル再確認。局部の不足はパテ補修、過剰部は研磨で調整

6. 仕上げへ

  • 含水率管理:仕上げ材の許容含水率に達しているか確認(湿度計・シート法など)
  • プライマー:仕上げ材指定のプライマーを再度塗布して接着を確保

注意点:温度・湿度によって可使時間と硬化が大きく変わります。適切な換気と粉じん対策、硬化中の立ち入り管理が重要です。

許容不陸の目安と検査方法

一般的な現場目安

  • 床の平滑度:2m直定規で3〜5mm以内の凹凸に収まるよう管理(仕上げや仕様により厳しさは変わる)
  • 壁・天井の面:光の当たり方を考慮し、目線高さでうねりが読めないレベルまでパテ調整

実際の許容値は仕上げ材メーカーや設計仕様に従ってください。長尺シートや塗床は特に平滑度の要求が高く、フローリングやカーペットは若干寛容な場合があります。

検査のコツ

  • 2mアルミ定規+すきまゲージで最大隙間を測る
  • レーザーレベルで基準線からの高低差をチェック
  • 光の演出に注意:斜光・グレージング光で粗が出やすい箇所は厳しめに見る

材料・工具と代表的なメーカー

主な材料

  • セルフレベリング材(SL材):広面積のレベル出しに用いるセメント系材料
  • セメント系パテ/樹脂モルタル:局部の凹凸や段差の補修
  • プライマー:下地の吸い込み調整・付着力向上
  • 胴縁・スペーサー・シム:壁・天井の通り調整
  • 下地合板(ベニヤ):床の増し張り・捨て張りに使用

主な工具

  • レーザーレベル、2mアルミ定規、すきまゲージ、下げ振り
  • 電動撹拌機、スクリードバー、ピンレベラー、スパイクローラー、コテ
  • サンダー、スクレーパー、集じん機、掃除機

代表的なメーカー(例)

  • コニシ株式会社:接着剤や床施工関連材を幅広く展開
  • タイルメント株式会社:床・タイル関連の接着剤や下地調整材を供給
  • デンカ株式会社:セメント系補修材・無収縮材などを展開
  • 太平洋マテリアル株式会社:各種セメント系材料・下地調整材を扱う
  • 株式会社エービーシー商会:床材・塗床分野の総合メーカー
  • マキタ/HiKOKI:電動工具(撹拌機、サンダー等)
  • シンワ測定株式会社:水平器、レーザー、定規など測定工具

採用材料は仕上げ材との適合性が最優先です。必ず各メーカーの仕様書・施工要領を参照し、組み合わせの可否を確認してください。

よくある失敗と回避策

プライマーの希釈・塗りムラ

原因:勝手な希釈、塗布量不足。対策:指定希釈率・塗布量を守り、ムラは二度塗りで補正。吸い込みの強い下地は追いプライマー。

水過多の混練

原因:作業性重視で加水しすぎ。対策:指定水量厳守。可使時間内に使い切る段取りと人員計画を見直す。

厚塗りしすぎ

原因:一度で大不陸を解消しようとする。対策:メーカーの最大施工厚を守り、複層での施工や別工法(合板増し張り等)を検討。

養生不足・早期通行

原因:工期圧縮による歩行・荷重の早乗せ。対策:硬化時間を確保し、立ち入り管理・区画養生を徹底。

可動クラックの未処理

原因:動くひびを通常補修で塞いだ。対策:動きを見極め、スリット・伸縮目地等で逃がすか、構造側の原因を先に是正。

含水率・環境条件の未確認

原因:湿った下地に仕上げを施工。対策:含水率・室温・湿度を事前確認。除湿・換気・加温で条件を整える。

安全衛生・現場管理のポイント

  • 粉じん対策:集じん機併用、保護マスク・ゴーグル着用、こまめな清掃
  • 皮膚保護:セメント系はアルカリ性が強い。手袋・長袖着用、洗眼設備の確認
  • 重量物対策:材料搬入・攪拌水を含む重量管理、台車・リフトの活用
  • 換気:溶剤系プライマーや粉じん作業では常時換気
  • 区画管理:打設後の立ち入り制限表示、第三者災害の防止

費用感と工期の目安

不陸調整は範囲・厚み・工法で大きく変わります。小規模(数平米)の局部パテなら半日〜1日で完了。SL材での全面調整は打設1日+養生1〜2日が一般的。費用は材料・厚み・養生・搬入条件で差が出るため、現地調査のうえ見積もりを取りましょう。仕上げ材の張り替えを伴う場合は、既存撤去・処分費も計上が必要です。

プロが現場で徹底するコツ5選

  • 最初に“基準”を決める:レベルライン・通り糸・基準面を全員で共有
  • 大きな不陸は“下地側”で直す:パテで無理にリカバリしない
  • 材料と工程の相性を意識:仕上げ材の要求レベルに合わせた工法を選ぶ
  • 段取り七分:区画割り・人員・可使時間の逆算で打継ぎ痕を出さない
  • 検査は“光”で見る:実測+斜光チェックで仕上げ後の見え方を先取り

ケーススタディ:仕上げ別の勘所

長尺シート・塩ビタイル(LVT)

表面が平滑で光を拾いやすいため、下地の凹凸が出やすい仕上げ。SL材やパテで平滑度を高め、接着前に含水率・プライマーを再確認。目地ラインの直線性にも注意。

フローリング

下地合板の不陸や根太のたわみが音鳴り・目違いの原因に。増し張りや根太間の補強で下地剛性を先に確保。敷き込み時は基準から張り進め、差し込みで無理な力をかけない。

タイル・石材

面の通りが命。敷きモルタルで不陸を吸収するが、厚みの許容範囲を超える場合は下地から再整備。開口部やコーナーは通り糸を張って基準を維持。

クロス・塗装

ボード継ぎ目・ビス頭の処理に加え、面のうねりが出やすい。光の当たり方を想定し、広面での薄塗り多回数のパテで“面を作る”。

チェックリスト:着工前・中間・完了

着工前

  • 仕上げ仕様・許容不陸の確認
  • 基準線・通りの共有、範囲と厚みの見積もり
  • 材料・工具・人員の段取り(可使時間に合わせた人繰り)

中間

  • 下地清掃・プライマー塗布の記録(ロット・希釈率・塗布量)
  • 施工厚・環境条件(温度・湿度)の管理
  • レベル再測定と不足部の追い補修

完了

  • 2m定規での隙間測定結果
  • 含水率・硬化時間の確認
  • 仕上げ前の最終清掃・プライマー再塗布

Q&A:よくある疑問

Q. DIYで不陸調整はできますか?

A. 小面積のパテ補修なら可能ですが、広面積のSL材や構造的な不陸は技術と計画が必要。失敗すると仕上げごとやり直しになるため、迷ったらプロに相談を。

Q. どの仕上げが不陸にシビア?

A. 長尺シート、塗床、鏡面の石材など光を拾う仕上げは特にシビア。フローリングやカーペットは多少許容範囲が広いですが、目地や踏み心地に影響します。

Q. 設計図に“許容不陸”がない場合は?

A. 仕上げ材メーカーの推奨値と、現場の要求性能(耐久・美観)をもとに、監理者と合意形成を。後々のトラブル回避につながります。

Q. 不陸調整とレベリングは同じ?

A. 現場ではほぼ同義で使うことが多いです。厳密には、不陸調整は“凹凸の是正”全般、レベリングは“水平・平滑化”に寄った表現です。

まとめ:不陸調整は“仕上げの前の仕上げ”

不陸調整は、完成後の品質を大きく左右する“目に見えない品質管理”。原因を見極め、適切な材料・手順で、測って・整えて・確かめる。この基本を守れば、仕上げ材の性能も美しさも長持ちします。現場で迷ったら、まず基準をつくること。次に、無理をせず最適な工法を選ぶこと。そして最後に、数値と目視で必ず確認すること。この3ステップが、失敗しない不陸調整の近道です。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
  • 情報の扱い:記事は現場経験・法令・公的資料を根拠に作成。広告掲載時は本文中に明示します。
  • Web:
  • 電話:03-6823-3631
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