建設内装の「作業手袋」丸わかりガイド|種類・選び方・現場での言い回しと安全ポイント
「現場ではどんな手袋を使えばいいの?軍手と何が違う?」「ニトリルって聞くけど、結局どれを選べば正解?」――初めて現場に入ると、作業手袋ひとつでも迷いがちですよね。本記事では、内装工事の現場で当たり前に飛び交う“作業手袋”というワードを、プロの視点でやさしく解説。種類の違いから選び方、実際の使い分け、安全上の注意、メーカー情報まで、初めての方でも今日から使える実践知識を一気にまとめました。読み終わる頃には、自分の作業に合う一本が自信を持って選べるようになります。
現場ワード(キーワード)
読み仮名 | さぎょうてぶくろ |
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英語表記 | Work Gloves / Safety Gloves |
定義
建設内装の現場でいう「作業手袋」とは、作業中の手指を保護し、同時に工具の操作性や材料の保持力を確保するために着用する手袋の総称です。素材や構造は用途により多様で、綿の軍手、すべり止め付き軍手、ニトリル・天然ゴム・ポリウレタン(PU)などの樹脂コーティング手袋、耐切創(カットレベル)手袋、耐薬品・耐熱・静電対策・防寒などの機能特化型まで幅広く存在します。ポイントは「保護」と「作業性」のバランス調整。材料搬入や軽天・ボード施工、電設、床・仕上げ、清掃など工程ごとに、適材適所で使い分けられます。
現場での使い方
現場では“作業手袋”と一口に言っても、用途や素材で呼び分けることが多いです。たとえば「軍手(ぐんて)」「すべり止め(付き軍手)」「コーティング手」「ニト手(ニトリル手袋)」「PU手(ポリウレタン手袋)」「耐切創(たいついそう)手」などの言い回しが一般的です。軽天・ボードでは薄手のPUやニトリルコート、鉄骨や金物のバリ対策にはカットレベルの高い耐切創手袋、塗装や溶剤を扱う場面では耐薬品性のあるニトリル系や専用の使い捨て手袋、といった具合に選びます。
別称・言い回しの例:
- 軍手/スベ手(すべり止め軍手)/コート手(コーティング手袋)
- ニト手(ニトリルコート)/PU手(ポリウレタンコート)
- カット手(耐切創手袋)/ラテ手(ラテックス=天然ゴム系)
使用例(3つ):
- 「今日は軽天の切り回し多いから、指先の効くPU手でいこう」
- 「鉄骨搬入はバリが怖い。カット手と袖口ガード忘れずに」
- 「シーラー使うから、耐薬品のニト手と使い捨ての薄手を重ねてね」
使う場面・工程の例:
- 搬入・荷下ろし:摩耗に強いニトリルコートや耐切創(切断・擦過対策)
- 軽天・ボード:薄手で指先感度の高いPU/ニトリル薄手、すべり止め軍手
- 電設・設備:通線や器具付けは薄手で細作業向き、切削や金物相手は耐切創
- 床・仕上げ:キズや汚れを避けるため、粉や毛羽が出にくい薄手・無塵系
- 塗装・接着剤:耐薬品性ニトリル、必要に応じて使い捨てタイプを重ね履き
- 解体・雑工:厚手ニトリル/耐切創/衝撃吸収付きなど、リスクに応じ選定
関連語:
- PPE(個人用保護具)/EN 388(機械リスクの性能表示)/耐切創レベル
- 袖口(カフ)/インナー手袋/静電対策(ESD)
- 使い捨て手袋(ディスポ)/耐薬品(化学防護)
作業手袋の種類と特徴
綿軍手(すべり止め無し/付き)
最も身近な手袋。通気性がよく汗を吸い、価格が安いのが利点。すべり止め付きは段ボールや軽い資材の保持に有効。一方で、油・溶剤・水濡れには弱く、回転工具の巻き込みリスクにも注意が必要。毛羽が出やすいので、仕上げ工程や清潔さ重視の現場では不向きな場合があります。
ニトリルゴムコーティング手袋
耐摩耗・耐油性に優れ、グリップ力が高いのが特徴。鉄骨・金物の搬入や、油分のある環境での作業に向いています。厚手は保護力が高い反面、指先の繊細さが落ちるため、薄手・発泡ニトリルなど使い分けがカギ。溶剤や一部薬品への耐性は製品ごとに異なるため、用途に合うスペックを確認しましょう。
天然ゴム(ラテックス)コーティング手袋
高いグリップと柔軟性が魅力。濡れた素材の保持にも強い一方、油・一部薬品には弱い傾向があります。ラテックスアレルギーの可能性があるため、敏感な方や不特定多数が使う現場では注意が必要です。
ポリウレタン(PU)コーティング手袋
薄手で指先の感度が高く、細かなビス打ち、電設の配線作業、軽天の切り回しなどに人気。軽量で疲れにくい反面、摩耗にはそれほど強くありません。仕上げ前の微細作業で「汚しにくい」「繊維が付きにくい」点を評価する職人も多いです。
耐切創手袋(HPPE/ガラス繊維/アラミドなど)
金属のエッジやガラス、切断工具周りでの「切り傷対策」に特化。EN 388の耐切創レベル(A~Fなど)で選定します。レベルが高いほど刃物に強い一方で、厚手になりがちで細作業性は低下。必要なレベルを見極めることが重要です。
耐薬品・使い捨てニトリル手袋
塗装、接着剤、溶剤取り扱い時に用いられる薄手のディスポタイプ。薬品適合は製品ごとに大きく異なるため、作業で使用する化学物質のSDS(安全データシート)とメーカーの適合表を必ず確認してください。単体では破れやすい場面もあるため、上から別の手袋を重ねるケースもあります。
静電気対策(ESD)手袋
導電繊維を混ぜ、静電気を逃がすことで電子機器や仕上げ材への悪影響を低減。内装でも照明器具や電子機器、静電気でホコリが付きやすい仕上げで使われます。基本的には薄手で、清潔さ(ローミント)が求められます。
耐熱・溶接用・防寒手袋
溶接・切断火花対策や、冬季の屋外作業などで使用。耐熱は革や特殊繊維を採用、防寒は断熱材や裏起毛で保温。ただし、防寒はどうしても操作性が落ちやすいので、サイズと厚みのバランスを慎重に選びます。
規格・性能表示の読み方
日本国内で流通する多くの作業手袋は、欧州規格EN 388(機械的リスクに対する保護手袋)の性能表示を採用しています。パッケージや手の甲の印字に「4桁+英字(例:4X43D)」のように記載され、左から順に「摩耗」「切創(回転刃方式)」「引裂き」「突刺し」、最後の英字が「ISO方式(TDM試験)の耐切創レベル」を示すのが一般的です。数値やレベルが高いほど性能が高いことを意味します。
注意点:
- 同じ「耐切創」でも、薄手・厚手で作業性が大きく変わるため、単純に数字だけで選ばない。
- 耐薬品は別規格(化学防護)で評価されることが多く、EN 388は対象外。化学物質相手の作業は、メーカー適合表とSDSの両方を確認。
- 静電対策や耐熱など、用途特化型は別の基準やメーカー内評価が併記されることがあります。
サイズ・フィット感の選び方
手袋は「安全性=フィット感」と言って良いほどサイズが重要。大きすぎるとつまみ損ねや引っ掛かりの原因に、小さすぎると血行不良で疲れやすく、破れやすくなります。一般的にはS/M/L/LL(2L)/3Lといった表記で、メーカーごとに微差があります。
選び方の目安:
- 中指の先から手首の屈曲線までの長さ、手のひら回りを測り、メーカーのサイズ表に合わせる。
- 指先に余りが少なく、握ったときに突っ張らないものを選ぶ。
- 薄手はぴったり目、厚手はやや余裕を持たせると指先の可動が安定。
- 夏は通気性、冬は保温と併せて「汗冷え」対策にインナー手袋も有効。
現場での安全・マナー
作業手袋は万能ではありません。安全のための基本ルールを押さえましょう。
- 回転体の近くでは「巻き込み」注意。布地の軍手やルーズな手袋は厳禁な場面があります(ボール盤、回転ブラシ、ドリル類等)。
- 薬品・溶剤は必ず適合確認。ニトリルでも対応外の溶剤があります。
- 仕上げ材に触れる前は、粉や毛羽の少ない手袋に替える。白やグレーで汚れ確認がしやすいものが無難。
- 高所や狭所では、手袋落下・引っ掛かりによる転落・破損に配慮。必要に応じて手首の面ファスナーでフィットを高める。
- 共同現場では「他職への配慮」。汚れた手袋のまま他の作業エリアや仕上げ面に触れない。
メンテナンスと交換タイミング
手袋の状態管理はパフォーマンスと安全に直結します。
- 洗濯:多くの編手袋は手洗い・陰干しでOK(コーティングは高温乾燥NGのことが多い)。油・溶剤での洗浄は素材を劣化させるため避ける。
- 乾燥:直射日光・高温はひび割れや硬化の原因。陰干しが基本。
- 交換目安:穴あき、コーティングの剥離、すべり止めの摩耗、繊維の毛羽立ちが目立つ、グリップ低下を感じたとき。
- 衛生:使い捨てタイプは再使用しない。共用する場合は個人名を記入し、混用防止。
- 保管:直射日光と高温多湿を避け、溶剤・オイル缶の近くに置かない。
代表的なメーカーと特徴
作業手袋は多くの信頼ブランドがあり、得意分野が少しずつ異なります。以下は日本の現場でよく見かける代表例です(順不同)。
- ショーワグローブ(SHOWA):ニトリルや発泡コーティングなど、高いグリップと耐久性で定評。
- ミドリ安全:安全靴・保護具の総合メーカー。耐切創や静電、耐薬品など産業向けラインナップが広い。
- 東和コーポレーション(TOWA):ゴム・ニトリルコートに強み。フィットとグリップのバランスが良い。
- アトム(ATOM):コーティング手袋や耐油・耐寒タイプなど、現場実用に根ざした製品が豊富。
- おたふく手袋:軍手から防寒、インナーまで幅広い。コスパが高い日常使いの定番。
- 川西工業:使い捨てニトリルから作業用までラインが広く、サイズ展開が豊富。
- TRUSCO(トラスコ中山):プロツールの供給元。各種OEM・プライベートブランドで選択肢が多い。
- Ansell(アンセル):グローバルな保護具メーカー。耐切創・耐薬品など高機能品で知られる。
- 3M:グリップ・快適性を重視した作業手袋や関連安全用品を展開。
どのメーカーにも薄手~厚手、用途別が揃っているため、最終的には実際の作業内容とサイズ感で選ぶのがおすすめです。
よくある疑問Q&A
Q1. 「軍手だけ」で大丈夫?
A. 軽作業なら役立ちますが、油・溶剤・金物の鋭利エッジ・濡れ環境には不向きです。搬入や金物が多い日はニトリルコート、切創リスクがある日は耐切創など、最低限の使い分けをおすすめします。
Q2. ニトリルとラテックス、どっちが良い?
A. 油に強いのはニトリル、濡れ面のグリップや柔らかさはラテックスが得意です。ただしラテックス(天然ゴム)はアレルギーに注意。現場で不特定多数が使うなら、まずはニトリルを基準に選ぶのが無難です。
Q3. 冬は厚手にすると作業性が落ちる…対策は?
A. インナー手袋+薄手コーティングという「重ね着」がおすすめ。保温はインナー、グリップと操作性は薄手で確保します。サイズを0.5段階上げると重ねても窮屈になりにくいです。
Q4. 耐切創レベルは高いほど良い?
A. 高いほど刃物に強い反面、厚みや硬さで細作業性は落ちます。工程に必要な最低レベルを見極めることが重要。例えばボードの軽微な切り口対策なら中程度、金属鋭縁の連続作業なら高レベル、といった具合です。
Q5. 使い捨てニトリルの上に布手袋を重ねても良い?
A. 作業上の意図(薬品汚染の防止、滑り止め強化)があるなら有効なケースもありますが、巻き込みや蒸れ、破れやすさが増すことも。化学物質の暴露対策としては、メーカー適合表に沿った単体運用か、適合するオーバーグローブとの組み合わせを推奨します。
失敗しない購入チェックリスト
- 工程のリスク(切創/摩耗/油/薬品/濡れ/温度)を紙に書き出す。
- 必要性能(EN 388や耐薬品適合)を確認し、過不足のないレベルを選ぶ。
- 薄手・厚手を2種類用意して、作業内容で切り替える前提にする。
- サイズを左右それぞれ試し、握る・つまむ・ビスを拾う動作で確認。
- 仕上げ工程に入る前の“クリーン用”を別途用意する(毛羽・粉対策)。
- 替えの予備を常備。濡れ・破れ時にすぐ交換できる体制を整える。
- チームで種類を統一しすぎない。工程や体格に合わせ個別最適を許容。
ケース別おすすめの考え方
具体的な製品名は現場条件で変わりますが、考え方の例を示します。
- 鉄骨・金物の荷扱い:ニトリルコートの中厚~厚手+必要に応じて耐切創レベルを追加。
- 軽天・ボード:PUまたは薄手ニトリルで指先重視。刃物使用が多い日は耐切創の薄手へ。
- 電設(通線・器具付け):薄手PU/ニトリル。摩耗が多い日は掌コートの中薄手。
- 塗装・接着:使い捨てニトリル(厚め)+適合確認。汚染拡大防止に小まめに交換。
- 解体・雑工:厚手ニトリルや耐切創高レベル。釘・ガラス片・鋭縁に配慮。
- 冬場屋外:防寒手袋(すべり止め付き)+必要に応じてインナー重ね。
コストとランニングの考え方
「安い軍手を大量に消費」よりも、「用途に合う手袋で破損・事故を減らす」方が総合コストは下がることが多いです。特に、切創・薬品・仕上げ汚染のトラブルは手直し費用が大きく、適切な手袋の選定が結果的に一番の節約になります。チームで定番を1~2種類決めつつ、個人のサイズと工程で微調整するのが現実的です。
まとめ
作業手袋は「保護」と「作業性」を両立させる、現場の必需品。軍手・ニトリル・PU・耐切創・耐薬品・静電・防寒など、種類ごとに得意分野があります。工程のリスクを見極め、性能表示(EN 388など)とサイズ感を基準に選べば、ケガの予防だけでなく作業スピードや仕上がりも向上します。まずは手持ちに「薄手の操作系」「中厚~厚手の保護系」を1種類ずつ。そこから現場の特性に合わせて、耐切創や耐薬品などを追加していくと無理がありません。あなたの現場に最適な一本を見つけて、今日から安心・快適に手を守っていきましょう。