- 生コン(なまコン)って何?現場で迷わない基礎知識から発注・打設・養生のコツまで
- 現場ワード(キーワード)
- 生コンの基礎知識(まずはここから)
- 現場での使い方
- 仕様の決め方(注文のしかた)
- 受け入れ時のチェックポイント
- 打設の段取りとコツ
- 養生(ひび割れと仕上がりを守る)
- よくある不具合と現場対策
- 安全・衛生(絶対に守る)
- 内装職人向け:モルタルとの住み分け
- 規格・品質の目安
- メーカー・供給体制について(参考)
- 数量の拾い方とロスの考え方
- 段取りチェックリスト(内装現場向け)
- Q&A(初心者の疑問に答えます)
- 言い回し集(現場でそのまま使える)
- 品質を左右する“やってはいけない”
- まとめ:生コンを味方にすれば、内装の仕上がりが変わる
生コン(なまコン)って何?現場で迷わない基礎知識から発注・打設・養生のコツまで
「生コンってよく聞くけど、モルタルやセメントと何が違うの?」「どんな風に頼めばいいの?」「内装の現場でも関係あるの?」——はじめて建設内装の現場に入ると、こうした不安がつきものですよね。本記事では、職人が日常的に使う現場ワード「生コン」を、やさしい言葉で丁寧に解説。基本の意味から、現場での言い回し、発注のポイント、打設・仕上げ・養生のコツ、トラブル対策まで、初心者がつまずきやすい所を実践的にまとめました。読み終える頃には、「今日の段取り、もう大丈夫」と自信を持てるはずです。
現場ワード(キーワード)
| 読み仮名 | なまコン |
|---|---|
| 英語表記 | Ready-mixed concrete(RMC) |
定義
生コン(レディーミクストコンクリート)は、工場(生コンプラント)でセメント・水・砂(細骨材)・砂利(粗骨材)・必要に応じて混和剤を規格に沿って計量・練り混ぜたコンクリート。ミキサー車で現場に運ばれ、到着後すぐに打設できる状態の材料を指します。日本では一般にJIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の規格に適合したものを用います。
生コンの基礎知識(まずはここから)
生コンとセメント・モルタルの違い
セメントは「粉体のバインダー(のり)」そのもの。モルタルは「セメント+水+砂」の材料。コンクリート(=生コン)は「セメント+水+砂+砂利(石)」に加え、性能を調整する混和剤を加えたものです。石が入っている分、コンクリートは強度や耐久性に優れ、基礎・柱・床スラブ・土間など構造・下地で広く使われます。
どんな場所で使う?内装との関係
生コンは構造主体の材料ですが、内装の現場でも次のような場面で関係します。
- 改修工事での土間コンクリートの打ち直し(工場・倉庫・店舗の床下地など)
- 床スラブの段差調整やピットの埋め戻し(設備更新時など)
- 軽量間仕切りの下地補強(荷重分散・耐久性確保)
内装での仕上がり品質(平滑・レベル・ひび割れ)に直結するため、仕上げ・養生の配慮が大切です。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では次のように呼ばれます。
- 生コン/レミコン(Ready-mix concrete の略)
- ミキサー車(生コン車)=生コンを運ぶトラック
- 生コン屋/プラント=供給する工場(会社)
- 呼び強度○○、スランプ○○、Gmax(粗骨材最大寸法)○○の「呼び方」=注文条件
使用例(3つ)
- 「明日、呼び強度24のスランプ18で2立米、朝一で取って。Gmaxは20ね。」
- 「今日は土間打ちだから、打込みはチューブでいく?それとも一輪車で小運搬?」
- 「昼イチのミキサー、渋滞で押してるって。先に型枠と配筋の最終チェック済ませよう。」
使う場面・工程
代表的な工程は以下の通りです。
- 事前段取り:型枠・配筋・墨出し・レベル基準の準備、搬入経路・車両スペースの確保
- 受け入れ・検査:スランプ・空気量・温度の確認、納品伝票(ミルシート)のチェック
- 打設:打込み、締固め(バイブレーター)、均し
- 仕上げ:木ゴテ→金ゴテ→機械(パワートロウェル)などの順で必要に応じて
- 養生:保湿・保温・通行制限、初期ひび割れ対策
関連語
- スランプ:やわらかさ(ワーカビリティ)の指標
- 呼び強度:発注時に指定する目標強度(例:24N/mm²)
- AE(減水)剤:空気微細泡を含ませ耐凍害性・作業性を高める混和剤
- Gmax:粗骨材最大寸法(一般に20mmなど)
- 打設・締固め・養生:施工の三本柱
仕様の決め方(注文のしかた)
発注時に伝える基本項目
初めてでも、次のセットを押さえればスムーズです。
- 呼び強度(例:24N/mm²)
- スランプ(例:12cm、18cm、21cm など、現場の施工性と仕様書に合わせる)
- 粗骨材最大寸法(例:20mm)
- セメントの種類(普通、早強など。仕様書指示がなければ一般に普通)
- 空気量(例:4.5±1.5%など。規格・仕様に準拠)
- 数量(m³=立方メートル。拾い出しは余裕を見て5%程度上乗せが現場慣行)
- 納入日時・台数・打設順序(車両間隔)・現場条件(ポンプ有無、手押し等)
不明点があれば、施工計画書や設計図書(仕様書)を確認し、プラントの技術担当に相談しましょう。「土間で鏝押さえ仕上げ」「ポンプを使わず一輪車で運搬」「搬入動線が狭い」などの条件を伝えると、適したスランプや配合の提案が得られます。
時間管理が命
生コンは時間とともに固まります。一般的な現場の運用目安として、練り混ぜから荷卸し・打込み完了までの時間をタイトに管理します(仕様書・JIS・現場規定に従う)。渋滞や遠距離搬入が予想される場合は、車両間隔や台数を調整し、待ち時間を最小化しましょう。
受け入れ時のチェックポイント
ミキサー車が到着したら、次を確認します。
- 納品伝票:配合・呼び強度・スランプ・Gmax・空気量の指示が合っているか
- スランプ試験・空気量・温度:必要に応じて現場試験を実施(試験体採取も)
- 見た目・分離:過度に水っぽい、骨材が偏る、など異常がないか
矛盾があれば、安易な加水は厳禁。まずはプラント・監督員に連絡し、指示を仰ぎます。
打設の段取りとコツ
搬入・打込み
ポンプ圧送が難しい小規模内装現場では、ミキサー車のシュート→一輪車→バケツ→所定箇所へ小運搬、という段取りが一般的です。通路の養生板やスロープ、養生シートで汚損・傷防止を徹底します。
締固め(バイブレーター)
過不足のない締固めが品質を左右します。差し込みは短時間・重ねながら・型枠や配筋に当てすぎないこと。過振動は分離(ジャンカ)やひび割れの原因になります。
均し・レベル出し
トンボやスクリーードで粗均し→木ゴテで目をつぶす→金ゴテで締める、の順が基本。床精度や仕上げ方法に応じて、「金ゴテ1回仕上げ」「2回押さえ」「パワートロウェル(通称ヘリ)」などを選びます。内装で床仕上げ材を貼る場合、レベル(高さ)・平滑性を厳密に管理すると後工程が格段に楽になります。
養生(ひび割れと仕上がりを守る)
打設後の初期養生は、強度発現とひび割れ抑制に直結します。
- 保湿:散水、シート養生、キュアリング剤などで急乾燥を防止
- 温度管理:寒中・暑中は保温・遮熱・打設時間帯の工夫
- 通行制限:所定の強度が出るまで重量物の載荷を避ける
特に内装では気流(空調・送風)で急乾燥しやすいので、換気計画と養生を一体で考えます。仕上げ材を貼る時期は、設計・メーカー基準に従って含水率や平滑性を確認しましょう。
よくある不具合と現場対策
表面ひび割れ(プラスティッククラック)
原因:急乾燥・高温・風。対策:散水・シート養生・打設時間の配慮・過度なこて押さえを避ける。
ジャンカ(粗骨材の露出)
原因:型枠のすき間・締固め不足・分離。対策:型枠漏れ止め・適切なバイブレーション・落下高さを抑える。
レイタンス(表面の白い脆弱層)
原因:分離水・施工時の過度な加水。対策:余分なブリーディング水を除去、適切な仕上げタイミング。
レベル不良・波打ち
原因:基準が不明確、工程を急ぎすぎ。対策:レベル基準の明確化、人数・道具の適正配置、エリア分割。
安全・衛生(絶対に守る)
生コンは強アルカリ性で、皮膚に触れると炎症の恐れがあります。防水手袋・長袖・長ズボン・ゴーグルを着用し、付着したらすぐに水で洗い流してください。打設時の足場・通路の滑り対策、重量物の運搬時の腰・手指の保護も徹底しましょう。
内装職人向け:モルタルとの住み分け
薄塗りや細かい勾配調整にはモルタル、厚みがあり構造的に剛性が必要な下地や土間は生コン、という選択が実務上の目安です。たとえば、5〜20mm程度のレベリングは樹脂系の床下地材やセルフレベリング材、30mmを超える厚みや荷重がかかる床は生コン+メッシュ筋という組み合わせが定番です(最終判断は設計・メーカー仕様に従う)。
規格・品質の目安
多くの現場で、JIS A 5308に適合した生コンを使用します。仕様書に「呼び強度」「スランプ」「空気量」「粗骨材最大寸法」「セメント種別」「混和剤の種類」などの指定がある場合は、それを満たすことが前提。迷ったら設計・監督・プラントの技術者に必ず確認しましょう。
メーカー・供給体制について(参考)
生コン自体は各地域の生コンプラントが製造・供給し、セメントは以下のような国内大手メーカーが代表的です。
- 太平洋セメント株式会社:国内最大級のセメントメーカー。各地のプラントに原材料を安定供給。
- 住友大阪セメント株式会社:各種セメント・特殊セメントを展開。
- UBE三菱セメント株式会社:セメント・コンクリート関連材料の大手。
実際の生コン納入は、地域の生コン協同組合や各社プラントが担うため、現場近傍の供給網・交通事情・工事規模を踏まえて手配します。
数量の拾い方とロスの考え方
必要数量(m³)は「長さ×幅×厚さ」で算出します。鉄筋や設備ピットなどの欠き込みを差し引きつつ、施工ロス・残コンリスクを考えて5%前後の余裕を見るのが現場の一般的な考え方です。現場搬入経路が長い、小運搬が多い、気温が高い(打設効率低下)などの場合は、さらに余裕を検討します。
段取りチェックリスト(内装現場向け)
- 搬入計画:ミキサー車の待機スペース、通行許可、時間帯規制の確認
- 養生:共用部・エレベーター・通路の汚損防止、床養生板の準備
- 型枠・レベル:基準墨、天端レベル(レーザー)、伸縮目地の計画
- 配筋・補強:ワイヤーメッシュやピンの浮き防止、かぶり厚さの確保
- 工具:バイブレーター、トンボ、スクリーード、鏝、パワートロウェル(必要に応じて)
- 人員配置:打込み班・締固め班・均し班・仕上げ班の役割分担
- 養生計画:散水・シート・キュアリング剤、立ち入り禁止の表示
Q&A(初心者の疑問に答えます)
Q1. スランプって何cmにすればいい?
A. 仕上げ方法・配筋の密度・運搬方法で最適値が変わります。土間で手運搬が多いなら18〜21cm程度を選ぶことが多いですが、仕様書や監督の指示が最優先。やわらかくしたいからといって現場加水は厳禁です。必要なら混和剤や配合で調整を依頼します。
Q2. 呼び強度24と27、どっちを選ぶ?
A. 設計・仕様書に従います。内装の土間下地では24N/mm²が一つの目安として使われる例もありますが、用途・荷重・環境で変わります。不要に強度を上げると収縮ひび割れやコスト増の要因にも。設計者と協議しましょう。
Q3. 仕上げ時に白い粉が出た(レイタンス)。どうする?
A. 乾燥後にサンディングや軽研磨で脆弱層を除去し、下地処理材を適用のうえ仕上げ材を施工するのが基本です。原因(分離水・加水・タイミング)を次回に活かしてください。
Q4. 途中で雨が降ったら?
A. 打設直後はブルーシート等で雨養生。仕上げ後の降雨は表面を荒らすので、可能なら打設前に天候リスクを避ける計画へ。雨打たれ後は状態を見極め、表面補修や再仕上げを検討します。
言い回し集(現場でそのまま使える)
- 「呼び24のスラ21、Gmax20で、AE入りね。」=注文仕様の指示
- 「今日は2回押さえでフラットに仕上げたい。」=仕上げ工程の方針
- 「初期は風強いから、打ったらすぐシート養生いこう。」=ひび割れ防止の段取り
品質を左右する“やってはいけない”
- 現場での安易な加水:強度低下・分離・表面不良の原因
- 過度なバイブレーター:分離・ジャンカ・かぶり不足の誘発
- 急激な乾燥:プラスティッククラックの増加(送風・直射日光・高温に注意)
- 早すぎる載荷:タイヤ跡・沈み込み・破損につながる
まとめ:生コンを味方にすれば、内装の仕上がりが変わる
生コンは「頼み方(呼び方)」「時間管理」「打設・締固め」「仕上げ・養生」の4点を押さえるだけで、初めてでも失敗を大きく減らせます。内装の下地づくりは後工程の命。スランプや呼び強度の選定、搬入・人員の段取り、天候への配慮、初期養生の徹底を「前日までに決める」ことが、当日の慌てない現場づくりにつながります。迷ったら、仕様書とプラント技術者、そして現場の先輩に早めに相談。小さな準備の積み重ねが、大きな品質差となって返ってきます。









