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発泡ウレタンとは?建設内装現場での使い方・メリット・注意点を徹底解説

発泡ウレタンを現場で使いこなすための基礎知識と実践ポイント

「発泡ウレタンって、どこにどう使えば正解?」そんな疑問を持つ初心者の方は多いはずです。内装工事の現場では当たり前のように飛び交うワードですが、実は種類や使い方、注意点を理解していないと、膨らみすぎて建具が歪む、仕上げに悪影響が出る、火災対策の観点で不適合になる——といった失敗につながりがち。本記事では、現役施工目線で「現場で本当に役立つ」発泡ウレタンの基礎から応用までを、やさしく丁寧に解説します。読み終える頃には、用途に迷わず、安心して使えるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名はっぽううれたん
英語表記Polyurethane Foam(PU foam), Spray Polyurethane Foam(SPF), One-Component Foam(OCF)

定義

発泡ウレタンとは、ウレタン樹脂が発泡・硬化してできるセル構造のフォーム材の総称です。建設内装では主に二系統が使われます。1つは缶入りの一液型(OCF)で、空気中の湿気と反応して硬化し、隙間充填や断熱・気密補助に使います。もう1つは現場吹付けの二液型(SPF)で、専用機材でA液(イソシアネート)とB液(ポリオール)を混合・発泡させ、広範囲の断熱・気密層を形成します。いずれも軽量で断熱性・充填性に優れる一方、膨張圧や下地適合性、耐火区画への適用可否など、施工上の注意点を正しく理解することが重要です。

発泡ウレタンの特徴と種類

発泡ウレタンは「よく膨らむ・軽い・空隙を埋めやすい」という利点があり、木造・S造・RC造いずれの内装現場でも出番があります。ただし、種類によって性能や用途が異なるため、場面に合った選定が肝心です。

硬化方式の違い(一液=OCFと二液=SPF)

一液型(OCF)は、スプレー缶やガン缶で供給され、施工性が高く、局所的な隙間埋めや補修に最適。硬化は湿気依存のため、低温・低湿では硬化が遅くなります。二液型(SPF)は専用機材が必要ですが、大面積に均一な断熱・気密層を形成でき、住宅から商業施設まで幅広く使われます。品質はオペレーターの管理と設備条件に大きく依存します。

気泡構造の違い(オープンセルとクローズドセル)

オープンセル(開孔)フォームは軽く、吸音性や追従性に優れ、室内側の断熱や充填に向きます。クローズドセル(独立気泡)フォームは水を通しにくく、断熱性能と圧縮強度が高めで、外皮側や半外部、耐水・耐圧を意識する部位に選定されます。製品によりセル率や密度が異なるため、仕様書・データシートを確認して用途に合わせて選びましょう。

缶タイプの違い(ストロータイプとガンタイプ)

ストロータイプは付属ノズルで手軽に使え、単発の小工事に便利。ガンタイプは専用ガンで微量吐出や再利用がしやすく、プロの現場ではこちらが定番です。作業量や精度要求に応じた使い分けがコツです。

現場での使い方

「言い回し・別称」「使用例」「使う場面・工程」「関連語」をまとめて押さえましょう。これがわかると、指示の意図がすぐに理解できます。

言い回し・別称

  • ウレタンフォーム、フォーム、スプレーフォーム
  • (缶の)ガンフォーム/ストローフォーム
  • 発泡打つ/フォーム打つ/ウレタン吹く(口語)
  • OCF(缶入り一液)、SPF(現場吹付二液)

使用例(3つ)

  • サッシまわりの躯体との隙間に発泡ウレタンを軽く充填してから、乾燥後に面を落として気密テープで仕上げる。
  • 配管貫通部の隙間にフォームを入れて仮止めし、仕上げは認定の防火材料で区画処理する。
  • 置床の際や軽量下地のわずかなガタつき補助にフォームを充填し、硬化後に余盛りをカットして仕上げ材を納める。

使う場面・工程

  • 断熱・気密工事の隙間充填(サッシ回り、間柱間の端部、コンセントボックス周辺)
  • 設備・電気の貫通部の仮充填(最終は認定の耐火・防火措置で仕上げ)
  • 遮音・吸音の補助(開口周りの漏れ音対策の下地処理)
  • 下地のガタ取り・固定補助(非構造部に限る)

関連語

  • 気密処理、断熱性能、熱橋、露点、オープンセル/クローズドセル
  • イソシアネート、ノンフロン、発泡倍率、硬化時間、後膨れ
  • ガン洗浄液、プライマー、TDS(技術資料)、SDS(安全データシート)

施工手順の基本(缶入り一液フォーム)

以下は一般的な手順です。実際は各製品の取扱説明・TDSに従ってください。

  • 1. 下地確認:粉・油分・水滴・霜を除去。PE・PP・シリコーン面などは密着しにくいので要注意。
  • 2. 養生:周辺の仕上げ材に付着すると除去が困難。マスカーやテープで十分に保護。
  • 3. 缶の準備:使用温度域を確認。寒い時期は缶をぬるま湯程度で温めて吐出安定化(直火は厳禁)。
  • 4. 事前散水(必要な場合):低湿環境では下地に軽く霧吹きして硬化を助ける(やり過ぎは気泡粗大化)。
  • 5. 施工:一度に詰めすぎず、容積の30〜50%程度を目安に複数回に分けて充填。奥→手前の順で。
  • 6. 硬化養生:表面硬化後も内部は硬化途中。切削・加重は完全硬化を待ってから。
  • 7. 余盛りカット:カッターやノコで面を落とし、必要に応じて気密テープ・パテ・モルタル等で仕上げ。
  • 8. 表面保護:紫外線で劣化・粉化しやすいので、露出使用は避け、塗装・ボード・モルタル等で被覆。

よくある失敗と対策

  • 膨らみ過ぎて建具や枠が歪む:一度に入れず、層状に薄く充填。広い隙間はバックアップ材や下地片+薄充填で管理。
  • 硬化不良(ベタつき・中ヌキ):低温・低湿や過充填が原因。環境条件を整え、複数回に分けて打つ。
  • 付着不良:粉・油・水分、材質不適合が原因。清掃・乾燥・プライマー活用。PE/PP/フッ素樹脂は密着しにくい。
  • 防火区画に流用:原則不可。防火区画貫通は、認定を受けたシステム(モルタル、ロックウール+耐火パテ等)を使用。
  • 露出放置でボロボロ:UV劣化。必ず被覆または塗装で保護。
  • 冬場に缶詰まり:缶温度・湿度不足。事前に缶温調、使用後はガン洗浄液で速やかに清掃。

安全・法規の注意ポイント

未硬化時はイソシアネート等を含む製品が多く、吸入・皮膚接触に注意が必要です。必ず換気を確保し、保護具(手袋・保護メガネ・必要に応じて呼吸用保護具)を着用してください。可燃性ガスを使用する缶もあるため、火気厳禁・静電気対策が基本。加えて、建築基準法や内装制限、各種認定の適合範囲を逸脱しないよう、仕様書・設計者指示・メーカーTDS/SDSの確認を徹底しましょう。

仕上げと後処理のコツ

発泡ウレタンは絶対に「余盛り」を作り、完全硬化後にカットして面を合わせるのが基本。切削面は荒れやすいので、気密テープ・不織布パテ・薄塗りモルタルなど、仕上げに合わせた被覆で納めます。塗装する場合は、メーカーが推奨する下塗りの有無を確認。シリコーンシーラントは上塗りが乗りにくいため、仕上げ設計に合わせた材料選定が必要です。

保管・運搬・廃棄

  • 保管:直射日光・高温を避け、規定温度で立てて保管。期限切れは発泡不良の原因。
  • 運搬:缶は横倒し・衝撃に注意。高温になる車内放置はNG。
  • 廃棄:未硬化は危険物扱いのことがあるため、地域ルールとSDSに従う。硬化させてから一般廃棄物として扱える場合もあるが、自治体指示に従うこと。

他材料との違い・使い分け

コーキング(シーリング材)との違い

シーリング材は目地の防水・可動追従が主目的。発泡ウレタンは隙間の充填・断熱・気密補助が主用途で、可動目地には不向きです。動く目地はシーリング、止めて埋める・断熱したい部分はフォーム、と役割分担します。

グラスウール・ロックウールとの違い

繊維系断熱材は面で納める断熱が得意。発泡ウレタンは複雑な空間の充填や気密補助が得意です。広面積は繊維系、端部や貫通まわりの漏れ対策はフォームで組み合わせるのが現実的です。

発泡ポリエチレン(PEフォーム)との違い

PEフォームはシート・ボードやバックアップ材として用いられ、化学的にウレタンと相性が悪いケースもあります。接着・相溶性は事前テストを。

数量の目安とコスト感

発泡量は製品により差がありますが、一般的な750mlクラスの一液フォームで、自由発泡体積の目安はおおむね20〜35L程度。実充填では空間形状・温湿度・施工方法により大きく変動します。コストは小口なら1缶数千円程度から、ガン・洗浄液込みで初期費用がかかる場合も。二液の現場吹付は専門業者の施工で、面積・厚み・現場条件に応じて見積もりベースです。

代表的なメーカー・ブランド例

缶入り一液フォーム(OCF)では、国内外で流通するブランドとしてコニシ(ボンド ブランド)、Soudal(Soudafoam シリーズ)、Sika(Sika Boom など)が知られています。二液の現場吹付(SPF)では、日本アクア(アクアフォーム)などの断熱システムが住宅を中心に普及しています。いずれも製品仕様や適用範囲、認定の有無は各社の公表資料で必ず確認してください。

トラブル未然防止のチェックリスト

  • 使う場所は可燃・不燃・防火区画の要件を満たしているか(認定要否)
  • 躯体・下地の材質と表面状態は適合しているか(清掃・乾燥・プライマー)
  • 温湿度は仕様範囲内か(低温・低湿時の対策)
  • 一度に詰めすぎない運用になっているか(複数回・薄充填)
  • 露出で放置しない段取りになっているか(被覆計画)
  • SDSの安全対策・廃棄方法を周知しているか

よくある質問(FAQ)

Q. サッシ周りに充填すると枠が曲がると聞きます。どう防げますか?

A. 過充填が主因です。隙間の1/3〜1/2程度に薄く入れ、硬化後に追加する方法がおすすめ。スペーサーを入れて変形を抑える、低膨張タイプを選ぶのも有効です。

Q. 防火区画の貫通部に使っても良いですか?

A. 一般の発泡ウレタンは不可です。必ず認定を受けた防火・耐火システムで処理してください。フォームはあくまで仮充填や断熱補助として位置づけます。

Q. 硬化後は防水になりますか?

A. クローズドセルの一部は水を通しにくい傾向ですが、防水層としての使用は想定外です。屋外・半外部は別途の防水・防湿設計が必要です。

Q. 塗装はできますか?

A. 可能な製品が多いですが、下塗りや乾燥条件はTDSを確認。露出は紫外線で劣化しやすいので、塗装または被覆で必ず保護してください。

現場で「迷わない」ための見極めポイント

  • 隙間のサイズが大きい→複数回充填+バックアップ材併用で膨張圧を管理
  • 音漏れ対策→オープンセル寄りを選び、仕上げで気密・遮音層を連続させる
  • 水回り近接→クローズドセル寄り+別途の防湿・防水設計
  • 作業頻度が高い→ガンタイプ+洗浄液常備で歩留まりと仕上がりを両立
  • 法的要求(防火・内装制限)→認定のある材料・工法を選ぶか、用途自体を見直す

まとめ

発泡ウレタンは、内装現場での「隙間を埋める・断熱と気密を補う」をスピーディに実現する強力な味方です。ただし、種類(OCF/SPF、オープンセル/クローズドセル)によって適材適所があり、過充填や不適合な用途(防火区画への流用など)はトラブルの元。基本は薄く・分けて・被覆して・仕様を守る、の4点です。この記事のポイントを現場で一つずつ実践すれば、仕上がりの安定と手戻り削減に直結します。迷ったら必ずメーカーのTDS/SDSと設計指示を確認し、安全第一で使いこなしましょう。