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スタイロフォームとは?特徴・使い方・価格まで徹底解説【建設内装現場の必須資材】

現場でよく聞く「スタイロフォーム」をゼロから理解:意味・用途・選び方・注意点まで

「スタイロって何?」「発泡スチロールとどう違うの?」——初めて現場に入ると、そんな素朴な疑問が次々と湧いてきますよね。本記事では、建設内装現場で日常的に使われる現場ワード「スタイロフォーム」について、プロの目線でやさしく丁寧に解説します。意味や特徴、実際の使い方、選び方のポイント、価格や保管方法まで、この1本で迷いが解消できるようにまとめました。初心者の方でも安心して読み進められる内容にしています。

現場ワード(キーワード)

読み仮名すたいろふぉーむ
英語表記STYROFOAM(Extruded Polystyrene Foam: XPS)

定義

スタイロフォームは、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)と呼ばれる発泡プラスチック系断熱材の代表的な商品名です。軽量で断熱性・耐湿性・加工性に優れ、床や壁、屋根などの断熱材として広く使われます。現場では略して「スタイロ」「スタイロ板」と呼ばれることが多く、一般的な白い「発泡スチロール(EPS)」とは製法・性能が異なる別材料です。

基本の特徴とメリット・デメリット

まずはスタイロフォームの性質を押さえましょう。使いどころがスッと見えてきます。

  • 軽くて強い:同じ厚みで比較した場合、床用にも使えるだけの圧縮強度を持つグレードがあり、踏圧や荷重にも対応しやすい。
  • 断熱性能:気泡を均一に閉じ込めた構造で、熱を伝えにくい。所要の断熱等級に合わせ、厚みやグレードを選択するのが基本。
  • 耐湿性:吸水しにくく、浴室周りや土間・スラブ上など湿気の多い環境でも性能が落ちにくい。
  • 加工が容易:カッターやノコ、熱線カッターでまっすぐ・斜め・Rカットなど自在に加工できる。
  • 表面が平滑:面精度が安定し、下地として扱いやすい。

注意点(デメリット)も覚えておきましょう。

  • 可燃性:プラスチック系のため火に弱い。内装で露出使用は不可の場面が多く、通常は石膏ボード等で被覆して使う。
  • 溶剤に弱い:トルエン・キシレン・アセトンなどの有機溶剤で溶ける。接着剤・塗料の選定に要注意。
  • 高温に弱い:熱変形・収縮の恐れ。高温部位や直射日光下での長期放置は避ける。
  • 遮音性は限定的:断熱材としては優秀だが、単体で大きな遮音性能を期待する材料ではない。

規格・種類の見方

図面や仕様書では「A-XPS 3b」などと表記されるのが一般的です。これはJIS規格に基づく等級表示で、圧縮強度・熱伝導率などの性能ランクを示します。内装の床断熱や土間下など、荷重がかかる部位では強度の高い等級が採用される傾向があります。厚みは用途・地域の省エネ基準により選択し、一般的な板のサイズは910×1820mmが流通しやすい定尺です(メーカーやグレードにより異なる場合あり)。

なお、スタイロフォームは青色系の板で認識されることが多いですが、色はブランド固有の識別であり、規格性能そのものを保証するものではありません。正式な性能確認は必ずメーカーの最新カタログ・技術資料で行ってください。

代表的メーカーとブランド

押出法ポリスチレンフォーム(XPS)は複数メーカーが製造しています。代表例は次のとおりです。

  • スタイロフォーム(デュポン・スタイロ株式会社):国内で「スタイロ」の名称が広く定着。青い断熱ボードの代名詞的存在。
  • カネライトフォーム(株式会社カネカ):バリエーションが豊富で、構造や用途に応じた選択肢が多い。
  • ミラフォーム(旭化成建材株式会社):長年の実績があり、建築分野で幅広く採用。

いずれもXPS(押出法ポリスチレンフォーム)のカテゴリーに属します。ブランド名によって仕様の細部やラインアップ、認定・適合範囲が異なるため、採用時は各社の最新資料で適合確認を行いましょう。

現場での使い方

現場での「言い回し・別称」

  • 「スタイロ」「スタイロ板」:最も一般的な呼び方。
  • 「XPS(エックスピーエス)」:材料区分で呼ぶ場合。
  • 「3種b入れといて」:図面の等級指示に合わせた略称の呼びかけ(例)。

使用例(3つ)

  • 床の断熱下地:フローリングの捨て貼り(合板)下にスタイロフォームを敷き込み、ジョイントをずらしながら隙間を極力なくして納める。周囲は気密テープや発泡ウレタンで処理。
  • 浴室・洗面周りの立ち上がり断熱:コンクリート躯体と内装仕上げの間に挿入して冷えを抑える。水回りでも吸水しにくい特性を活かす。
  • 造作のスペーサー・モックアップ:巾木の段差調整や見切りの仮当て、サイン・ニッチの検討形状を軽く仮作りする時の治具として。切りやすく軽いので現場判断の微調整に便利。

使う場面・工程

  • スラブ上の床断熱(置き床・乾式二重床の下)
  • 外壁内側・界壁側の断熱(室内側被覆が条件)
  • 浴室・玄関土間周辺の断熱補強
  • 設備配管周りの埋め戻し時のスペーサーや段差調整
  • 養生補助材や当て木代用(最終仕上げへの転用は避け、あくまで仮用途で)

関連語

  • EPS(発泡スチロール):ビーズ法ポリスチレンフォーム。見た目は似るが製法・密度・吸水性が異なる。
  • フェノールフォーム(例:ネオマフォーム):高い断熱性能と耐火性寄与を持つ樹脂系断熱材。
  • グラスウール/ロックウール:繊維系断熱材。耐火性に優れ、充填に適するが、湿気管理・施工性のポイントが異なる。
  • ポリイソシアヌレート(PIR)フォーム:高断熱だが用途や仕様確認が重要。

施工手順とコツ(基本)

1. 現場確認:図面の等級(例:A-XPS ○種×)と厚み、被覆条件(石膏ボード等)を確認。露出不可の制限を把握。

2. 下地準備:敷設面を清掃・平滑化。突起・砂塵はたわみや隙間の原因になる。

3. 割付:ジョイントは通し目地を避け、レンガ積み状にずらす。壁際は1〜3mm程度の伸縮クリアランスを見て、後で気密処理。

4. 加工・切断:長尺定規とカッターで数回に分けて切り、最後に折る。厚物はノコや熱線カッターも有効。粉の飛散は最小限に管理。

5. 固定方法:機械固定(ビス+座金、床下地での押さえ)または溶剤不使用の接着(発泡プラスチック対応の水系・反応系)を選ぶ。両面テープ併用で仮止めも可。

6. 継ぎ目処理:気流止め・断熱欠損を避けるため、目地は気密テープや発泡ウレタンでシール。上からの捨て貼り・ボードで確実に押さえる。

7. 被覆:室内側で露出させない。所定の厚みの石膏ボードなど、不燃内装材で被覆するのが原則。

接着剤・テープ・工具の選び方

接着剤

  • 使用可の目安:水系(アクリル系など)や無溶剤タイプ、発泡プラスチック適合を明記したウレタン系・変成シリコーン系。
  • 避けるべきもの:トルエン・キシレン・酢酸エチル・アセトン等の溶剤を含む接着剤、ラッカー系スプレー。材料を溶かします。
  • 必ず小面積で事前試験:メーカーの適合表とカタログを確認し、現物で試すのが確実。

テープ

  • 気密・防湿用:ポリエチレン基材やアルミクラフト系の気密テープ。
  • 仮固定用:アクリル系の両面テープ(溶剤に注意)。

工具

  • 切断:大刃カッター、替刃、ノコギリ、熱線カッター。
  • 墨出し:スケール、曲尺、油性マーカー(溶剤が染みないもの)。
  • 養生・安全:保護メガネ、手袋、マスク、集じん機(粉掃除)。

価格と見積りの考え方

スタイロフォームの価格は、厚み・等級・数量・仕入れルートで大きく変動します。一般的な定尺(910×1820mm)の薄〜中厚みであれば、1枚あたり数百円〜数千円程度で流通するケースが多く、現場取引やまとめ購入で単価が下がることもあります。見積りでは以下をセットで考えると漏れが減ります。

  • 本体材料費(等級・厚み別)
  • 副資材費(接着剤・テープ・ビス座金・捨て貼り合板等)
  • 施工手間(切断・敷設・気密処理・被覆)
  • 端材・廃材処理費(産業廃棄物・プラスチック類)
  • 搬入・保管の養生費(直射日光/雨避けの対策)

正確な単価は地域や時期で変わるため、最新の仕入れ見積とカタログで確認してください。

保管・養生・安全管理

  • 直射日光を避ける:長時間の紫外線で劣化・反りの原因。ブルーシート等で覆い、通気は確保。
  • 火気厳禁:可燃物です。溶断・溶接・喫煙など火気作業と近接させない。
  • 溶剤から遠ざける:塗料・シンナー・接着剤などの可塑剤・溶剤に注意。接触・蒸気でもダメージが出る場合あり。
  • 積み重ねは平置きで:平滑な下地にして反りを避け、過積載を防ぐ。
  • 粉じん対策:切削粉は静電気でまとわり付きやすい。掃除は掃き取り+集じん機の併用が有効。

よくある失敗と対策

  • 接着で溶けた:溶剤型のボンドを使用。対策=適合ボンドに切替、必ず小面積で事前確認。
  • 目地スカスカで冷える:割付とカット精度不足。対策=ジョイントのずらし、ピッタリ寸法、隙間はウレタンフォームや気密テープで補修。
  • 露出で使ってしまった:内装制限違反の恐れ。対策=石膏ボード等で被覆し、仕様書に従う。
  • 屋外で劣化:直射・風雨で反りや粉化。対策=仮置きでも養生徹底、屋外使用の可否は必ず確認。
  • 床がフカフカ:支持間隔・押さえ不足。対策=捨て貼りや下地の固定を見直し、必要なら強度等級を上げる。

EPSとの違い・他素材との比較

「発泡スチロール」と混同されがちですが、以下の点が違います。

  • EPS(発泡スチロール):ビーズを膨張させて成形。吸水しやすいグレードもあり、XPSに比べると水回りでは注意が必要。価格は抑えやすい傾向。
  • XPS(スタイロフォームなど):押出発泡で気泡が均一・連続し、耐湿性に優れる。床など圧縮に強いグレードが選べる。

他の断熱材と比べると、XPSは「軽い・切りやすい・耐湿性が高い」のが強み。一方で「可燃性・溶剤に弱い」部分は注意。防火や音の観点がより重要な現場では、石膏ボードによる被覆や繊維系断熱材とのハイブリッドなど、設計意図に合わせた使い分けが肝心です。

法規・内装制限の考え方(要点)

スタイロフォームは不燃材料ではありません。建築基準法上、内装制限のかかる部分では、規定の不燃・準不燃・難燃材料で被覆する必要があります。特に共用部や防火区画に関わる部位は、メーカーの不燃認定・準不燃認定の有無、または石膏ボード等による被覆厚の条件を図書で確認してください。防露設計・省エネ基準(断熱等級)との整合も必須です。

現場で役立つ小ネタ・テクニック

  • 「少しキツめ」で切る:押し込みでピタッと収めると隙間が減る。
  • 長手は工場切断面を活かす:面精度を確保でき、仕上がりが綺麗。
  • 角を面取り:床下地の場合、合板押さえ時の引っかかりを減らせる。
  • シリアルや印字は表側管理:等級・ロットが見えると品質管理が楽。
  • 端材の再利用:スペーサーや小面積の断熱補助に活用(ただし規格を満たす必要がある部位では新品・指定厚を優先)。

よくある質問(FAQ)

Q1. スタイロフォームと発泡スチロールは同じですか?

A1. いいえ。一般に「発泡スチロール」と呼ばれるのはEPS(ビーズ法)で、スタイロフォームはXPS(押出法)です。見た目は似ていますが、製法・吸水性・強度などの特性が異なります。

Q2. 屋外で使えますか?

A2. 直射日光・風雨に長期間さらす用途は基本的に不向きです。外部で使う場合は適切な防水・被覆・紫外線対策が必須で、メーカー推奨に従ってください。

Q3. 火に強いですか?

A3. 可燃性材料です。内装では原則、石膏ボード等で被覆して使用します。火気作業との同時施工や近接保管は避けましょう。

Q4. 床暖房の下に使えますか?

A4. 製品と納まりにより可否が異なります。高温や熱源の近接は変形・劣化の恐れがあるため、床暖房メーカーの指定納まり・断熱材仕様に従ってください。

Q5. 切断粉の掃除はどうする?

A5. 静電気でまとわり付くため、掃き掃除に加えて集じん機や帯電防止スプレーの併用が有効です。仕上げ材施工前に徹底除去を。

初心者が最初に押さえるチェックリスト

  • 図面の等級表記(例:A-XPS ○種×)と厚みを確認した?
  • 露出せずに被覆する納まりになっている?
  • 接着剤やテープは「溶剤不使用・適合確認済み」?
  • ジョイントはずらして、隙間は気密処理できる?
  • 保管は直射日光・火気・溶剤から遠ざけられる?

まとめ

スタイロフォームは、内装・躯体まわりの断熱で頼れる定番資材です。ポイントは「等級と厚みの選定」「隙間なく納める施工」「露出禁止の原則」「溶剤に弱いこと」の4つ。ここを外さなければ、性能を安定して引き出せます。メーカー各社の製品ラインアップや最新の法規・認定は随時更新されるため、採用時は必ず最新カタログで確認し、図面と突き合わせて現場での判断を固めましょう。現場で「スタイロ持ってきて」と声がかかったら、材料の意味だけでなく、適切な等級・厚み・固定方法までセットでイメージできるようになります。これさえ押さえれば、もう「スタイロって何?」で戸惑うことはありません。