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防音シートとは?現場で選ばれる理由と効果的な使い方・施工ポイント完全解説

建設内装現場の「防音シート」基礎知識と選び方・現場活用術

「防音シートって、どれを選べばいいの?」「養生シートと何が違う?」――初めて現場用語に触れると、似た言葉が多くて迷いますよね。この記事では、内装・改修・解体など建設内装の現場で頻出する「防音シート」を、プロの目線でわかりやすく解説します。外部足場で使うタイプから室内の遮音対策に使うタイプまで、種類の違い、効果、選び方、実際の張り方のコツ、よくある失敗例までまとめて確認できます。読後には、カタログのスペックを読み解き、現場で「この条件ならこのシートだ」と判断できるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ぼうおんシート
英語表記Soundproof sheet(Acoustic barrier sheet)

定義

防音シートとは、工事で発生する音の漏れを抑える目的で用いるシート状の資材の総称です。現場では大きく二つの使われ方があります。ひとつは外部足場や仮囲いに張って騒音や粉じん拡散を抑える「仮設外装用」。もうひとつは室内で壁・天井・床の下地に組み合わせて音の伝わりを減らす「内装用(遮音・吸音目的)」です。名称は広く「防音」と呼びますが、実務では音を遮る(遮音)タイプ、音を吸って反射を減らす(吸音)タイプ、両者を複合したタイプがあり、目的に応じた選定が必要です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のように呼ばれることがあります。状況により指している製品が異なるため、確認が大切です。

  • 防音シート(広義の総称)
  • 防炎防音シート(外部足場向けの防炎認定品)
  • 遮音シート(室内で音の遮断を主目的に使う高比重シート)
  • 吸音シート(グラスウール等の吸音層をもつ養生・仮設材)
  • 防音マット(床用のゴム系・アスファルト系マット)
  • 仮囲いシート・足場シート(防音機能をもつタイプを指すことあり)

使用例(3つ)

  • 外部足場に「防炎防音シート」を二重張りして、躯体はつりやコア抜き時の騒音・粉じん拡散を低減する。
  • 軽量鉄骨下地(LGS)の片面に「遮音シート」を面で連続張りし、ボード二重張りと気密テープでコンセント開口も処理して隣室への音漏れを抑える。
  • 集合住宅の床リフォームで、下地合板の上に「防音マット(遮音等級L-45目標の床システム用)」を敷き込み、仕上げ材を施工する。

使う場面・工程

  • 解体・はつり・コア抜き工程:外部足場や屋内の仮間仕切りで騒音・粉じん拡散対策。
  • 軽天・PB(プラスターボード)工程:界壁・天井の遮音性能向上(隙間シールと併用)。
  • 床下地・仕上げ工程:軽量床衝撃音対策・空気伝播音対策(床システム指定品使用)。
  • 機械室・設備配管周り:振動・騒音源に対する局所的な遮音・吸音処置。

関連語

  • 防炎シート(火源に対して燃え広がりにくい性能を有するシート)
  • 養生シート(傷・汚れ防止が主目的。防音性能は通常限定的)
  • 遮音ボード(高比重の石膏ボードなど)
  • 吸音材(グラスウール・ロックウール・吸音ウレタン等)
  • 気密テープ・目地シール(遮音施工の要。隙間を塞ぐ)
  • 二重壁・浮き床(構造的に音を伝えにくくする工法)

防音シートの種類と特徴

1. 外部仮設用(足場・仮囲い)

厚手のPVC(塩ビ)やコーティング生地に、吸音層を一体化したタイプが代表的です。ハトメと周辺補強があり、結束で足場に固定します。目的は「外部への音の直射を抑える」「反射音を和らげる」「粉じんの飛散を抑える」こと。音は空気だけでなく躯体・足場を伝っても漏れるため、単体で“完全防音”にはなりませんが、特定方向の音圧低減や心理的な不快感の軽減、粉じん対策として効果的です。仕様書には透過損失(TL)や吸音率などのデータが示されることがあり、周波数帯によって効果は変化します。

2. 内装用(遮音重ね張りシート)

高比重のゴムアスファルト系、塩ビ系、鉛フリー配合樹脂など、薄くても面密度の高いシートを下地に連続張りすることで、壁・天井の遮音性能を底上げします。基本原理は「質量則(重いほど低音まで遮りやすい)」で、石膏ボードの二重張りと組み合わせるのが定石です。継ぎ目・周囲の目地・開口部を気密テープやシーリングで処理し、穴・隙間を極力ゼロに近づけることが肝心です。

3. 内装用(吸音・制振マット)

室内側で反射を抑えたり、パネルの鳴きを抑える目的で、柔らかい吸音層や制振層をもつマットを併用するケースもあります。単独では遮音効果は限定的ですが、反射音の減少やパネルの共振抑制といった補助効果が期待できます。

4. 床用(防音マット・遮音下地)

集合住宅の床改修では、ゴム系・アスファルト系・発泡系のマットや、指定の床システムを用いて軽量床衝撃音(L値対策)を行います。床は構造伝搬の影響が大きいため、製品単体での数値ではなく、メーカー指定の「床構成(下地厚・仕上げ材・下貼り材)」で性能が評価されます。管理規約や設計条件に応じて、体系化されたシステムを選ぶのが鉄則です。

効果を正しく理解する:遮音と吸音の違い

混同しがちなポイントです。「遮音」は音の通り道を重さと密閉でふさぐ発想。「吸音」は音を熱に変えて反射を減らす発想。防音シートと一口にいっても、遮音寄り・吸音寄り・複合と性格が異なります。外部足場のシートは、正面への指向性を弱めたり、反射を抑える効果が主で、建物全体の騒音を“無音”にするものではありません。室内の遮音シートは、周波数が低いほど(ドスン、ゴーという低音)効きにくく、厚み(質量)と二重構造、隙間のない施工が鍵です。メーカーのカタログでは、周波数帯ごとのデータで比較すると選定の目安になります。

選び方のポイント(外部・内装共通)

  • 目的を明確にする:近隣対策の仮設用か、室内の恒久的な遮音か。粉じん抑制・視線遮蔽も必要か。
  • 性能表記を確認:透過損失(TL)、吸音率、面密度(kg/m²)、厚み(mm)、防炎性能の有無。
  • 外部使用の耐候性:防炎ラベル、耐候コーティング、ハトメ補強、推奨風速や設置条件。
  • 内装の施工性:曲げやすさ、タッカーや両面テープの適合、継ぎ目処理のしやすさ、臭気。
  • 周辺部材との組み合わせ:ボード二重張り、弾性下地、気密テープ、遮音ドア・ふかし壁の有無。
  • 重量と可搬性:高比重は効くが重い。脚立・高所作業の安全や、1人作業か複数人かを考慮。
  • 再利用・メンテ性:外部用は洗浄・補修が容易か。内装用は残臭や可塑剤移行の少ないものを選ぶ。

施工の基本手順とコツ

外部足場・仮囲いに張る場合

  • 上から下へ、風をはらみにくい重ね方向に張る(上側が外側に重なるように)。
  • ハトメは全点結束し、コーナー部や端部は結束本数を増やす。躯体や足場に当てて隙間を極力減らす。
  • 出入口は二重カーテン状にして重ね幅を確保。開放時の戻りを考えマグネットやウェイトを併用。
  • 強風時の安全管理を優先。メーカーの推奨風速を超える予報時は巻上げ・撤去を検討する。
  • はつり・コア抜きはシート内に向けて養生し、粉じんは別途集じん機で吸う。騒音・粉じんは併用対策が基本。

内装(壁・天井)の遮音シート張り

  • 下地清掃→割付→仮置き確認。シートは面で連続させ、ジョイントは10cm以上重ねるかテープでシール。
  • 周辺部(床・天井・柱)との取り合いは、先張りで立ち上げて気密テープで止水状に連続化。
  • コンセントボックス・配管貫通部は、切り欠き最小+ブチル系テープやグロメットで気密処理。
  • 石膏ボードは二重張りで目地を千鳥に。ビス穴からの漏れは表面のボードでカバーされるが、周囲はシール。
  • 共振対策に弾性下地(防振クリップ等)を組み合わせると低音域の効きが安定しやすい。

床の防音マット施工

  • 管理規約・設計指定の床システムに従う(遮音等級の根拠は“構成”で決まる)。
  • 下地合板を平滑・堅固に。マットのジョイントは突き付け厳守、目地ずらし、周囲に立ち上げをとる。
  • マット上の仕上げ材は適合確認。釘・ビスの貫通は性能低下につながるため、工法指定に従う。

よくある失敗と原因・対策

  • 隙間・重ね不足:遮音は「重い・連続・密閉」が命。ジョイントシールと周囲の連続化を徹底。
  • 開口まわりが甘い:コンセントやダクト周りは音の漏れ道。専用ボックスカバーやブチルテープで処理。
  • 片面の向き間違い:片面アルミや不織布付きは表裏がある。印刷指示を確認。
  • 期待値の誤解:シート単体で劇的な静音は難しい。構造・下地・仕上げとの「システム」で考える。
  • 外部の風荷重を過小評価:固定不足ははためき音や飛散の原因。結束の本数追加・補強材で対策。

安全・法規・近隣配慮のポイント

外部で用いるシートは、多くの現場ルールや自治体の指導で「防炎性能を有する製品」の使用が一般的です。防炎ラベルの有無、メーカー表示、使用上の注意を必ず確認してください。強風時の巻き上げ・撤去、夜間工事の騒音管理、粉じん飛散の併用対策(集じん機・ミスト)など、安全と近隣配慮を優先しましょう。室内ではVOCや臭気に配慮し、換気や保護具(手袋・防じんマスク)を着用。廃材は産業廃棄物として分別・適正処理を行います。

こんな時はどれを選ぶ?簡易チャート

  • 屋外の解体・はつり音を和らげたい → 防炎防音シート(外部仮設用)+作業時間の調整+集じん機併用。
  • 隣室への会話音・テレビ音の漏れを抑えたい → 遮音シート+ボード二重+目地・開口の気密処理。
  • 床の軽量衝撃音(コツコツ)を抑えたい → 指定の床防音マットを含む床システムに準拠。
  • 反射が響いてうるさい → 吸音シートや吸音材で反射低減(録音室・カーテン裏等)。

メーカーと代表的なカテゴリ(例)

製品仕様は各社で異なります。最新カタログで性能・施工条件を必ず確認してください。

  • 萩原工業株式会社(外部用シートの大手。防炎・防音機能付きの足場シートや仮囲い用シートを展開)
  • ユタカメイク株式会社(建築・産業用シート全般を幅広く扱い、防炎・防音タイプも流通)
  • DAIKEN(大建工業株式会社/内装用の遮音・吸音建材を展開。遮音シートや高密度ボード等の関連製品をラインアップ)
  • フクビ化学工業株式会社(床用の遮音マットや下地材など、住宅リフォーム向けの防音関連資材を展開)

上記はカテゴリ例であり、同種の製品は他社からも提供されています。現場条件、在庫性、保証条件で選定しましょう。

スペックの読み方の基本

  • 面密度(kg/m²):遮音性の目安。数値が大きいほど低音域まで効きやすい。
  • 厚み(mm):施工性と合わせて評価。薄くて重いほど扱いに注意。
  • 透過損失(TL, dB):通り抜ける音の減衰量。周波数ごとの値で比較する。
  • 吸音率(NRCなど):反射をどれだけ減らすかの指標。外部仮設や室内の残響対策に関係。
  • 防炎性能:屋外・可燃物近傍での必須要件になりやすい。表示の有無を確認。

目安として、製品カタログでは500~1000Hz帯(人の声の中心付近)でのデータが比較に使いやすいですが、騒音源(はつり、コア、設備機器)によって卓越周波数は変わります。目的の音種に近いデータで選ぶのがコツです。

ケーススタディ:内装間仕切りの会話音対策

軽量鉄骨(LGS)60mm、片面PB12.5mm×2の既存間仕切りで、会話音が漏れるという相談。解決の基本手順は以下の通りです。

  • 既存ボードを片面のみ撤去→スタッド間に吸音材(密度16~24k程度のグラスウール等)を充填。
  • スタッド面に遮音シートを連続張り→ジョイントと周囲をブチル系テープでシール。
  • PB12.5mmを二重張り(千鳥目地)。周囲クリアランスはシーリングで気密。
  • コンセントボックスは遮音ボックス化または背面ふかし+気密処理。

ポイントは「遮る(遮音)+詰める(吸音)+塞ぐ(気密)」の三点セット。これで会話帯域の透過は大幅に抑えられます。

Q&A:よくある疑問

Q1. 防音シートだけで“静か”になりますか?

A. 単体での効果は限定的です。壁・床・天井・開口を含む“系”として対策するのが前提です。外部仮設では併用して作業時間帯の配慮や機械の静音化を行い、内装ではボード二重や気密処理と組み合わせましょう。

Q2. 養生シートと何が違いますか?

A. 養生シートは傷や汚れ防止が主目的。防音シートは音の遮断・吸収を狙った高比重・多層構造などの仕様になっています。名前が似ていても目的が異なるため、代用は基本的に不可です。

Q3. 数値(dB)だけを見れば選べますか?

A. dBは周波数依存で、測定条件も重要です。カタログの測定条件と、現場の音源・取り付け方法・面積・隙間条件を合わせて考える必要があります。迷ったら現場に近いモックアップで確認すると確実です。

Q4. 防炎と不燃は違いますか?

A. 違います。防炎は「着火しても燃え広がりにくい」性能。不燃は「燃えない(一定条件下で燃焼拡大しない)」性能で、基準と用途が異なります。外部仮設は多くの現場で防炎指定が一般的です。

まとめ:現場で失敗しない防音シートの考え方

防音シートは「どこで」「どの音を」「どれくらい」抑えたいかで選び方が変わります。外部仮設なら防炎・耐候・固定方法、室内の遮音なら面密度・気密処理・ボードとの組み合わせが成否を分けます。期待値は現実的に、施工は丁寧に、そして安全最優先で。今日からは、カタログの数値を鵜呑みにせず、現場の音種・取り合い・近隣条件まで含めて「最適な1枚」を選んでいきましょう。プロもやっている基本をきちんと踏めば、防音シートは確かな味方になってくれます。