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建設現場で使う「ちりとり」とは?種類・使い方・選び方を徹底解説

内装職人がよく言う「ちりとり」って何?意味・使い方・選び方をやさしく解説

「現場で『ちりとり持ってきて!』って言われたけど、ただの掃除道具?それとも何か専門的なもの?」――初めて内装現場に入ると、身近な言葉なのに用途や選び方がわかりにくい用語に戸惑うことがあります。この記事では、建設内装現場で頻出する現場ワード「ちりとり」を、プロ職人の目線で丁寧に解説。基本の意味から、現場での言い回し、具体的な使用例、材質や形状の選び方、メンテナンスや安全のコツまで、初心者の方にもわかりやすくまとめました。読んだ直後から現場で役立つ実践的な知識が身につきます。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ちりとり(塵取り)
英語表記dustpan

定義

「ちりとり」は、掃き集めた粉じん・切りくず・砂や土などのごみを受け止め、回収・搬出するための手道具です。内装現場では、床仕上げ材のカットくず、石膏ボードやパテの粉、クロス糊の乾きカス、巾木のケレンかすなど、微細なごみを素早く集める用途で日常的に使用されます。素材はプラスチック製や金属製が多く、形状は手持ちタイプとロングハンドル(立ち作業)タイプに大別されます。英語では「ダストパン」と呼びます。

「ちりとり」の種類と特徴

材質別の特徴

内装現場では、取り扱いやすさ、耐久性、粉じん対策が重要です。材質ごとの主な特徴は次の通りです。

  • プラスチック製:軽量で扱いやすく、床材を傷つけにくい。価格も手頃。静電気で粉が付着しやすいのがデメリット。帯電防止加工品があると扱いが楽。
  • 金属製(スチール・アルミ):ヘリがシャープで床面へ密着しやすく、微細粉じんも取りこぼしにくい。耐久性が高い反面、重量があり、床面を傷つけるリスクがあるため養生面や仕上げ材上では注意が必要。
  • ゴム縁付きタイプ:受け口にゴムリップがあり、床との段差を小さくして微粉を取りやすい。ゴムの劣化には定期的な点検・交換が必要。

形状別の種類

  • 手持ち(ハンド)タイプ:最も一般的。狭所やコーナー、巾木際の清掃に強い。片手にほうき、片手にちりとりで使う基本スタイル。
  • ロングハンドル(立ち作業)タイプ:長い柄が付いており、腰を曲げずに回収できる。広い面積を繰り返し清掃する場面や高齢の職人、腰に不安のある方に有効。
  • 自立式・折りたたみ式:自立して置けるためごみの仮置きに便利。折りたたみ式は移動・保管時にかさばりにくい。
  • 大容量バケットタイプ:デモリション後や下地工事の粗清掃で便利。重量が増すため長距離の搬送には不向き。

サイズ・口の形状

口幅は200~300mm程度が標準。幅広タイプは一度に集められる量が増える反面、狭所では取り回しにくくなります。口先の角度が浅いと床への密着性が高く、粉じんの取りこぼしが減ります。段差や目地の多い床(既存タイル、OAフロア等)では、口先が柔らかいゴム付きや若干ラウンドした形状が有利です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のような言い回し・呼び方が使われます。

  • 「ちりとり」「塵取り」:最も一般的。
  • 「ダストパン」:メーカー表記や在庫名で使用されることがある。
  • 「ロングちりとり」:柄付きタイプを指す現場表現。
  • 「ゴムちり」:ゴムリップ付きのちりとりを指すことがある(地域・会社により差)。

使用例(3つ)

  • 「パテ研ぎ終わったら、粉はちりとりで集めて袋に入れといて。集塵機も一回回してね。」
  • 「巾木のケレンかすが出てるから、ほうきとちりとり持ってきて。養生の上は傷つけないように。」
  • 「クロスの糊カスが乾いてる。刃で軽く取って、ちりとりで回収してから拭き上げしよう。」

使う場面・工程

  • 解体後の粗清掃:大きめのちりとりや金属製で素早く回収。
  • ボード工事・パテ研磨:石膏粉が大量に出るため、ゴム縁付きや帯電防止タイプが有効。可能なら集じん機と併用。
  • 床仕上げ(タイル・シート・フローリング):切りくずや粉を確実に除去し、接着不良や傷を防止。
  • 巾木・見切り・器具付け後:ケレンかすの回収に手持ちタイプが便利。
  • 引渡し前の最終清掃:ロングハンドルで腰負担を抑えながら広面積を効率化。

関連語

  • ほうき(掃き出し用ブラシ):ちりとりとセットで使用。
  • 集じん機(粉じん用掃除機):粉体の再飛散防止や健康対策に必須。
  • ケレン:付着物やバリを削り落とす作業。発生くずはちりとりで回収。
  • 養生:仕上げ材や床面の保護。養生の継ぎ目に粉が溜まりやすいため丁寧な回収が必要。
  • 雑工・清掃:工程の合間に行う現場の整備作業の総称。

失敗しない「ちりとり」の選び方

ポイント1:床面に合わせる

仕上げ済みの床(フローリング、フロアタイル、長尺シート等)では、床を傷めないプラスチック製やゴム縁付きが安心。コンクリート素地や外部、解体絡みでは耐久性の高い金属製が頼りになります。

ポイント2:粉じんの量で選ぶ

パテ研磨やボードカットが多い現場は、口先が薄く、床への当たりが良いタイプを。帯電防止材質や、静電気が起きにくいゴム縁付きがあると微粉の吸着を抑えられます。

ポイント3:作業姿勢で選ぶ

長時間の清掃や広い現場ではロングハンドルが腰の負担減に有効。小規模やピンポイント回収では手持ちタイプが小回り良し。両方を常備し、工程に応じて使い分ける現場が多いです。

ポイント4:容量と保管性

大容量タイプは回収回数を減らせますが重くなります。折りたたみや自立式は搬入・保管に便利。現場のエレベーター・通路幅、工具箱のサイズも考慮しましょう。

正しい使い方・コツ

床への当て方

口先を床に対して浅い角度で密着させ、ほうきは口先に向かって一定の力で掃き込むのが基本。段差がある場合は、段差側にちりとりを置き、段差から平場へ向けて掃き出すと取りこぼしが減ります。

コーナー・際の清掃

巾木際はほうきを立て気味にし、毛先で押し出すイメージ。ちりとりは壁面と平行に当て、口先が浮かないよう手で軽く押さえると微粉も集まりやすくなります。

粉じん対策

  • 乾いた粉は舞いやすいので、掃く前に軽く霧吹きで湿らせると再飛散を抑えられます(仕上げ材を濡らせない場面では不可)。
  • 微粉が多いときは、掃く→ちりとりで仮回収→集じん機で仕上げ吸引、の二段構えが効果的。
  • 帯電防止スプレーをちりとりやほうきに軽く噴霧すると、粉のまとわりつきを減らせます(素材適合を確認)。

ごみの処理

回収したごみは、指定の廃棄ルールに従い分別。石膏粉・木屑・糊カス・金属片などを混在させると後工程の清掃効率が低下するため、可能な範囲で分けて捨てるのが現場マナーです。袋は破れにくいポリ袋や紙袋を使い、口を固く縛って粉の漏れを防ぎます。

メンテナンスと安全

日常の手入れ

  • 使用後は粉やくずを落とし、乾拭きまたは水拭き。ゴム縁はひび割れがないか確認。
  • 静電気対策として、定期的に帯電防止剤を薄く塗布(材質適合を確認)。
  • 金属製はサビを防ぐため乾燥保管。曲がりや歪みが出たら口先の密着性が落ちるため交換検討。

安全・品質面の注意

  • 仕上げ床上では金属製のエッジで傷を入れないよう、養生上で作業するかプラスチック製に切り替える。
  • 釘・ビス・ガラス片など鋭利物を回収するときは、手袋着用し、厚手のちりとりやスコップに切り替える。
  • 足元に放置するとつまずきの原因。自立させるか壁際に立てかけ、動線をふさがない置き方を徹底。

代表的なメーカー・ブランド

以下は、建設・業務用清掃用品で広く流通している代表的なメーカーです。型番は現場や販売店で変わるため、用途に合う仕様(材質・口幅・ゴム縁の有無・柄付きなど)で選定してください。

  • 山崎産業(CONDOR):業務用清掃用品の定番ブランド。耐久性・ラインナップが豊富で、現場用途のロングちりとりやゴム縁付きも多数。
  • テラモト(TERAMOTO):業務清掃・施設用品の大手。自立式や折りたたみ式など使い勝手に配慮した製品が多い。
  • トラスコ中山(TRUSCO):プロツールの総合ブランド。現場向けにシンプルで堅実な仕様のちりとりを幅広く展開。
  • リス(RISU/リス株式会社):プラスチック成形に強み。軽量で扱いやすいプラ製ちりとりが充実。
  • アイリスオーヤマ(IRIS OHYAMA):コストパフォーマンスに優れた清掃用品を多数展開。現場の「予備」や大量導入にも向く。

上記以外にも多くのメーカーがあり、各社から帯電防止・ゴム縁・自立式・大容量などのバリエーションが出ています。実際の使用感は床材や粉の性状で変わるため、可能なら一度試用品を使い分け、チーム内で最適解を共有するのがおすすめです。

よくある勘違い・NG例

  • 粉が取り切れないのは「ほうき側」だけの問題と思いがち:実はちりとりの口先形状や材質も大きく影響。ゴム縁や口先が薄いモデルに替えると改善することが多い。
  • 仕上げ床でも金属製をそのまま使用:傷や黒筋の原因に。養生を敷くか、プラ製・ゴム縁付きに交換。
  • 粉を山にしてから拾う:山の根元に粉が残りやすい。薄く帯状にかき集め、ちりとり位置を小刻みに変えて回収すると残りにくい。
  • 帯電対策をしない:乾燥期は静電気で粉がまとわり、二次汚れに。帯電防止剤や加湿、集じん併用で対策する。

現場で役立つ小ワザ

  • マスカーや養生テープでちりとりの縁に一時的に柔らかいリップを作ると、仕上げ床でも傷を防ぎつつ密着性を上げられる(糊残りに注意)。
  • ちりとりの柄元に小さな磁石を貼っておくと、回収中に出てきたビス類を一時吸着でき、分別しやすい。
  • ロングちりとりは、柄の角度を微調整して自重で床に密着させると、腰負担が軽減し作業も安定。

Q&A(初心者のよくある疑問)

Q1. ちりとりは現場に1つあれば足りますか?

作業範囲が広い現場や多職種が同時に入る現場では不足しがちです。手持ち×2~3、ロング×1など、エリアごとに配置すると清掃待ちが減り効率が上がります。

Q2. 帯電防止タイプは必須?

必須ではありませんが、石膏粉やパテ粉が多い現場では効果を実感できます。静電気で粉が縁に張り付き、移動中に落ちる問題が軽減します。

Q3. 金属製とプラ製、どちらを先に買うべき?

内装仕上げ中心ならプラ製(ゴム縁付き推奨)を基本に。解体・下地中心なら金属製も早めに揃えると安心。最終的には両方を使い分けるのがベストです。

Q4. 清掃は清掃業者がやるのでは?職人もやるの?

引渡し前の本清掃は専門業者が入ることも多いですが、工程間の清掃(雑工)は各職種が随時行うのが一般的です。粉やくずを放置すると品質不良や事故の原因になるため、職人にとって「ちりとり」は必携道具です。

関連ツールの選び方(簡単ガイド)

ほうきとの組み合わせ

ちりとりの性能は、ほうきとの相性で体感が変わります。微粉は毛先が細いソフトほうき、粗ごみはややコシの強いミディアムを。毛足が広いほうきは一度に集めやすい反面、狭所では不向き。現場ではソフト+ミディアムの2本持ちが効率的です。

集じん機の併用

粉じんが多い内装現場では、ちりとり単独では限界があります。HEPAフィルタ対応の集じん機を併用すると、空中浮遊粉じんの低減、健康リスクの軽減、仕上がり品質の向上に有効です。

チェックリスト:購入前・現場投入前の確認ポイント

  • 床材との相性(傷のリスク、口先の密着性)
  • 粉の種類と量(微粉中心か、粗ごみ中心か)
  • 保管・搬送性(自立・折りたたみの要否、サイズ)
  • 帯電対策(材質・スプレー・加湿の組み合わせ)
  • 人数・工程数(数量と配置計画)

ミニ用語メモ:「ちり」と「ちりとり」の違い

内装・建築の文脈では「ちり(チリ)」が「額縁や建具回りで見切りに出す段差・出幅」を指すことがありますが、この記事の「ちりとり」は清掃道具の塵取りの意味です。会話の流れで紛らわしいときは「ダストパンのほう?」などと確認すると行き違いを防げます。

現場で信頼されるための一手間

清掃の質は仕上がりに直結します。刃物の切りくずや粉じんを確実に回収するだけで、接着不良や微細な傷を大幅に減らせます。朝イチと昼、作業区切りの3回、5分だけでもこまめに「ほうき+ちりとり」を回す習慣を。職長・監督からの評価が目に見えて上がります。

まとめ:ちりとりは“ただの掃除道具”以上の品質管理ツール

ちりとりは、内装現場の安全・品質・段取りを支える基本ツールです。材質(プラ/金属/ゴム縁)、形状(手持ち/ロング)、用途(粉じん/粗ごみ)に合わせて最適な一本を選び、ほうきや集じん機と組み合わせて使えば、作業効率も仕上がりも確実に向上します。今日からは「ちりとり」をただ持つだけでなく、選び方・当て方・片付け方まで意識して使ってみてください。小さな道具の差が、現場の差につながります。