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発電機とは?現場で役立つ種類・選び方・安全ポイントを徹底解説

建設内装の現場で頼れる「発電機」ガイド:基礎・選定・安全運用まで現場目線で解説

「現場に仮設電源がまだ来ていない」「フロアが停電で作業が止まった」——そんなときに活躍するのが発電機です。ただ、種類や容量の選び方、現場での正しい使い方や安全ポイントがわからず不安に感じている方も多いはず。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる“発電機”について、プロの施工者の視点でやさしく解説します。これを読めば、必要な容量の見極めから設置・配線・安全対策、メーカー選びまで、実務に役立つ判断ができるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名はつでんき
英語表記generator(portable generator)

定義

発電機とは、ガソリンや軽油、ガスなどを燃料としてエンジンを回し、現場で電力(主に100V/200V)を供給する装置のこと。内装現場では電動工具・照明・集じん機・充電器などの電源として使われ、仮設電源が未整備の場所や停電時のバックアップ電源として欠かせない存在です。持ち運び可能な「ポータブル発電機」や、騒音を抑えた「防音型」、精密機器に優しい「インバーター発電機」など、用途に応じたタイプがあります。

発電機の基礎知識

発電の仕組みと周波数の基本

エンジンの回転で交流発電機(オルタネータ)を回し電気を作ります。従来型はエンジン回転数で周波数(50/60Hz)が決まるため、エリアや用途に合わせた選択が必要。一方、インバーター発電機は作った電気をいったん直流にしてからきれいな正弦波交流に変換するため、エンジン回転と周波数が切り離され、精密機器に向いています。

主な種類と現場での使いどころ

発電機は現場の要求に合わせて選びます。内装工なら以下を押さえればOKです。

  • オープン型(非防音):軽量・安価。騒音が大きめ。屋外・離隔を取りやすい現場向け。
  • 防音型(サイレントタイプ):防音ボックスで騒音を低減。内装現場や住宅地で重宝。
  • インバーター発電機:正弦波で電圧が安定。レーザー墨出し器、測量機、充電器、ICT機器に安心。
  • ディーゼル発電機:燃費が良く長時間運転に強い。中〜大容量。重量は大きい。
  • ガス(LPG)発電機:排気が比較的クリーンで保管がしやすい。ボンベ手配が必要。
  • 発電溶接機:発電と溶接を兼用。鉄骨補修や金物工事を併催する現場で便利。

表示スペックの見方(ここを間違えると足りない)

カタログにある「定格出力」と「最大(瞬時)出力」を混同しないのがコツ。実用は定格出力(kVAまたはkW)で見積もります。100V機なら「何アンペアを継続供給できるか(例:15A×2口)」も要チェック。単相100V/200V、三相200Vの出力端子の違い、50/60Hz対応、並列運転可否、漏電保護や過負荷保護の有無なども確認します。

選び方のコツと容量計算

電動工具の消費電力と起動電流

モーターを使う機器は起動時に2〜4倍(場合によりそれ以上)の突入電流が流れます。特にエアコンプレッサー、集じん機、丸のこ、卓上スライドソーは余裕をみて選定を。インバーター搭載の電動工具はソフトスタートで突入が小さめな場合もありますが、現場では余裕を持つのが安全です。

  • ディスクグラインダー:700〜1200W
  • 丸のこ:1000〜1500W
  • ハンマードリル:500〜1000W
  • 集じん機:1000〜1200W
  • 小型コンプレッサー:0.75〜1.5kW(起動時は2〜4倍)
  • レーザー墨出し器・測量機・充電器:数W〜100W程度(要きれいな波形)

容量計算の目安(現場想定)

基本式は「同時に使う機器の合計消費電力 × 安全係数(1.2〜1.5)+突入対策」。迷ったらワンランク上を選ぶと現場で困りにくいです。

  • 内装2人班:丸のこ1200W+集じん機1050W+レーザー10W ≒ 2260W → 2.5〜3.0kVAクラスを推奨(インバーターならなお良し)。
  • コンプレッサー併用:コンプ1.1kW+工具1200W+照明100W ≒ 2400W。起動時を考慮し3.0〜4.0kVA。
  • 卓上スライドソー主体:1500W級+集じん機1000W → 3.0kVA以上、余裕見て3.5〜4.0kVA。
  • 溶接を行う:発電溶接機のカタログ(例:150A級で5〜6kVA以上)を必ず参照。発電専用機では代用不可。

延長距離が長い場合は電圧降下も発生します。コードを太く短く、ドラムは必ず全て引き出して使用してください。

インバーターは必要?

レーザー墨出し器、測量機、充電器、パソコン、監視機器など精密機器を同時に使うならインバーター発電機が安心です。電圧・周波数が安定し誤動作や機器負担を抑えられます。工具の切れ味やモーター保護の観点からもメリットは大きいです。

燃料・運転時間・補給タイミング

燃料はガソリンが一般的。タンク容量と負荷率で連続運転時間が変わります。休憩サイクル(午前・午後)に合わせて、こまめな補給計画を。給油はエンジン停止・冷却後、こぼさず、風通しの良い場所で行いましょう。燃料保管は消防法適合容器に入れ、直射日光・高温を避けます。長時間・大容量ならディーゼルも選択肢です。

騒音・振動・近隣配慮

住宅地やテナント内装では騒音がクレームになりがち。防音型、遮音養生、離隔確保、吸音マット、運転時間の調整(始業・終業時間)で対策を。共用部では排気方向にも配慮し、開口部や吸気口に向けないよう注意します。

接続・設置の実務

設置場所と換気

基本は屋外で水平かつ安定した場所に設置。排気ガス(CO)による中毒防止のため屋内・半屋内・養生内での運転は避け、吸気口・排気口を塞がないようにします。雨天時は防雨養生(上からの吹き込み防止)をしつつ、排気がこもらないよう側面開口を確保します。

接地(アース)と保護機器

漏電・感電・火災防止のため、可能ならアース端子を接地棒で確実に接地。仮設分電盤を介して漏電遮断器(高感度)で保護し、テストボタンで動作確認します。発電機側に過負荷ブレーカーがある場合も、末端側での保護は別途必要です。

配線・延長コードの選び方

電圧降下と発熱を避けるため、必要電流に見合う太さ(例:1.25sq/2.0sq以上)と短めの延長コードを選定。屋外は防雨型、アース付き3Pや2P+アース対応を優先。コードリールは必ず全て引き出して使用し、ドラムの過熱を防ぎます。踏圧や車両通行がある箇所ではケーブルプロテクターで保護しましょう。

安全な始動・停止手順(基本形)

  • 事前点検:燃料・オイル・外観・漏電遮断器・出力切替・周波数を確認。
  • 始動:負荷(工具)はオフ→チョーク→スターター→暖機→電圧安定を確認してから負荷を接続。
  • 運転中:負荷を増やすときは段階的に。異音・過熱・排気方向をチェック。
  • 停止:負荷オフ→無負荷で数分クールダウン→停止→ブレーカーオフ→ケーブルを外す。

安全ポイントとトラブル対処

必ず守りたい安全

  • 屋内運転は原則禁止。換気確保・排気方向の管理を徹底。
  • 給油は停止・冷却後。静電気・着火源に注意。こぼしたら完全拭き取り。
  • 可燃物から離隔を確保。消火器を近くに配置。
  • 濡れた手での操作禁止。雨天時は防雨養生と感電対策。
  • 定格超過の同時使用禁止。ブレーカー増設や無理な分岐はしない。

よくあるトラブルQ&A

  • エンジンがかからない:燃料・チョーク・スイッチ・オイルセンサーを確認。プラグかぶり時は乾燥、長期保管後は古いガソリンを抜いて新燃料に。
  • すぐ止まる/出力が弱い:エアフィルター詰まり、燃料詰まり、過負荷の可能性。負荷を外して回転安定を確認。
  • ブレーカーが落ちる:同時使用の見直し、突入の大きい機器の起動順序を調整。容量不足なら上位機へ。
  • 感電が怖い:漏電遮断器の定期テスト、アース接地、損傷コードの交換。濡れた環境は防雨仕様に限定。
  • 機器の誤作動:インバーターでない電源の波形が影響。精密機器はインバーター機に切替。
  • コードリールが熱い:巻いたまま使用が原因。必ず全引き出し、太いケーブルに変更。

メンテナンス・保管の基本

日常点検と消耗品

  • オイル:初回早め交換、その後は使用時間に応じて定期交換。
  • プラグ:焼け具合を点検し、劣化したら交換。
  • エアフィルター:粉じん現場では清掃頻度を上げる。
  • 燃料系:長期保管前にドレン抜き。キャブ車は特に注意。

長期保管と始動復帰

1カ月以上使わない場合は燃料劣化対策(抜き取りや安定剤)。保管は直射日光・高温多湿を避け水平に。再使用時は新燃料、オイル量、バッテリー(セル付きの場合)をチェックします。

代表的なメーカーと特徴

  • ホンダ(Honda):インバーター発電機の定番。始動性と静粛性、電源品質に定評。
  • ヤマハ(Yamaha):静音性と安定出力に強み。現場からレジャーまで幅広く対応。
  • デンヨー(Denyo):業務用の大型・中型を得意とする老舗。耐久性と保守性に優れる。
  • 新ダイワ(Shindaiwa/やまびこ):発電溶接機や防音型に強い。建設現場での実績多数。
  • エアマン(AIRMAN/北越工業):ディーゼル系や中大容量で信頼性が高い。

上記は建設業界で広く使われ、修理・部品供給も安定。レンタルでも入手しやすいブランドです。

レンタル活用のコツ

短期やスポットならレンタルが経済的。現場の同時負荷、屋内外、騒音条件、搬入経路(階段・エレベーター)を事前に共有しましょう。燃料は別精算が一般的で、返却時は満タン返しが必要な場合も。盗難・倒壊・破損のリスクに備え、管理場所・ワイヤーロック・保険の確認も忘れずに。

現場での使い方

発電機という現場ワードは、設備の呼び方や指示・確認で頻出します。言い回し、別称、使用場面、関連語を把握しておくとコミュニケーションがスムーズです。

言い回し・別称

  • 発電機/ジェネレーター/ポータブル発電機
  • インバーター機/防音型/静音タイプ
  • 発電溶接機(溶接兼用)

使用例(3つ)

  • 「午前は仮設電源が入らないから、発電機で丸のこ回せるようにしておいて。」
  • 「レーザー使うから、インバーターの静音タイプを屋外に設置して延長で取って。」
  • 「集じん機と同時運転でブレーカー落ちるね。3kVAじゃ足りない、4kVAに上げよう。」

使う場面・工程

  • 新築・改修の初期段階で仮設電源が未整備なとき
  • 停電・系統切替中のバックアップ
  • 屋外作業や敷地奥で分電盤から遠い箇所の作業
  • 夜間工事で既設系統を止める必要がある場面

関連語

  • 仮設電源/仮設分電盤/漏電遮断器(ブレーカー)
  • 接地(アース)/アース棒/等電位
  • 延長コード/ケーブルドラム/防雨コンセント
  • インバーター/防音型/定格出力/突入電流

用語辞典的に押さえておきたいポイント

周波数(Hz)とエリア

日本は東日本50Hz・西日本60Hz。インバーター機なら切替・自動対応が多いですが、従来型はモデル固定の場合があります。レンタル時は周波数を必ず確認。

kVAとkWの違い

交流では力率の影響があるため、カタログではkVA表記が一般的。現場の工具はおおむね力率0.8前後と考え、余裕を持って選定します。

並列運転

一部インバーター機は専用ケーブルで同型機を並列接続し出力を増やせます。対応機種同士でのみ使用し、異機種混在は不可。並列でも保護・アースは各々適切に。

最後に:迷ったときの現場チェックリスト

  • 同時に使う機器(W)を洗い出し、起動電流を考慮して1.2〜1.5倍で余裕取り
  • 精密機器があるならインバーター、防音が必要なら防音型
  • 延長距離・ケーブル太さ・ドラム全引き出し・防雨対策を確認
  • 設置は屋外・換気確保・排気方向配慮・消火器配置
  • アース接地・漏電遮断器のテスト・始業前点検を徹底
  • 給油は停止・冷却後、消防法適合容器で安全に
  • 困ったら容量アップか負荷分散、必要ならレンタルで即日対応

発電機は「とりあえず回ればいい」道具ではありません。正しい選定と設置・配線・安全運用を押さえれば、現場の生産性と安全性はぐっと上がります。この記事を現場の標準手順のたたき台として活用し、安心・快適な施工環境を整えていきましょう。