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配管支持金物の種類と選び方|現場が失敗しない耐久性・コストのポイント徹底解説

配管支持金物を基礎から解説|現場で迷わない呼び方・選定・施工のコツ

「配管支持金物って具体的に何?ダクターとか吊りボルトとか、似た言葉が多くて混乱する…」そんな不安を解消するために、建設内装の現場で本当に使われる言い回しや手順、選定の考え方をやさしく整理しました。この記事を読めば、呼び方の違いから施工時の注意点まで、必要なポイントを一気に把握できます。初めての方でも、現場で「通じる」会話と判断ができるようになることを目指して解説します。

現場ワード(配管支持金物)

読み仮名はいかんしじかなもの
英語表記Pipe support hardware(Pipe hangers and supports)

定義

配管支持金物とは、給排水・空調・消火などの配管を、天井・壁・床・梁・スラブ・架台などの構造体に固定・支持・吊り下げ・ガイドするための金属部品および関連部材の総称です。具体的には、吊りボルト(全ねじ)、サドルバンド・Uボルト・ハンガー、ダクターチャンネル(ストラット/Cチャン)、インサート金物、あと施工アンカー、防振ハンガー、ガイド・スライド金具、シュー・受け金具などを含みます。目的は「荷重支持」「位置決め」「振れ止め」「熱膨張の追従」「振動・騒音低減」「腐食対策」を実現し、配管の安全・機能・メンテ性を確保することです。

配管支持金物の基本種類

1. 吊りボルト(全ねじ・寸切り)+ハンガー金具

天井スラブや梁から配管を吊る最も一般的な構成。上部をインサートやアンカーで固定し、下部にバンドやハンガーを組み合わせます。共回り防止のためにダブルナットやスプリングワッシャを併用するのが通例です。

2. サドルバンド・パイプバンド・Uボルト

配管外径に応じて選ぶ固定金具。防振ゴム付や樹脂インサート付、開閉式(二分割)などバリエーションがあり、配管の固定・スライド・ガイドの機能を選べます。

3. ダクターチャンネル(ストラット・Cチャン)と各種コネクタ

長尺の穴あき鋼製チャンネルに、ブラケットやスライドナットで金具を自由に組み合わせて支持を作るシステム。配管多条のラックや機器周りのフレームに適します。現場での位置調整が容易で、改修にも強いのが特徴です。

4. インサート金物(コンクリート用)

コンクリート打設時に埋め込み、後で吊りボルト等をねじ込むための受け金具。天井面にクリーンに仕上がり、耐荷重性能が安定します。梁・スラブの配筋計画との干渉確認が必須です。

5. あと施工アンカー

既存コンクリートや鉄骨に後から固定点を設ける金具。機械式(打込み・トルク拡張)や接着系などがあり、母材強度・端部距離・穿孔深さ・清掃など施工管理が重要です。

6. 防振ハンガー・防振金具

空調配管や冷媒配管、機器配管で振動・騒音を低減するための支持。ゴム・ばね・ワイヤーなどの要素を含み、必要に応じ荷重範囲に適合させます。

7. ガイド・スライド・ローラー・シュー

温度変化による熱膨張・収縮を許容するため、配管の移動方向を制御する金具。固定点とスライド点を使い分け、直管・継手・機器継ぎ目に無理がかからないよう設計します。

素材・表面処理の選び方

腐食環境・屋内外・温湿度・薬品雰囲気などで選定が変わります。一般的な考え方は以下のとおりです(設計条件優先)。

  • 屋内一般:電気亜鉛めっき、三価クロメート系
  • 屋外・高湿度:溶融亜鉛めっき(HDZ)、厚膜溶融亜鉛、耐赤錆めっき鋼板
  • 腐食性雰囲気・厨房・塩害:ステンレス(SUS304/316など)
  • 結露・電食懸念:樹脂インサート付バンド、絶縁ブッシュ併用

異種金属接触腐食(例:銅管×亜鉛めっき鋼)には絶縁シート・ブッシュを挟むなど対策を行います。

支持ピッチ(間隔)の考え方

支持ピッチは「管自重+内容物+保温材」の荷重とたわみ許容、振動、施工条件で決まります。現場では配管種別・サイズで目安が語られることがありますが、最終判断は設計図書・メーカー仕様に従ってください。空調衛生分野の一般的な慣行として、塩ビ管はやや短め、鋼管は比較的長め、保温が厚い・振動がある場合は短めに設定するのが通例です。耐火区画近傍や継手が多い部分は間隔を詰め、機器接続部には振れ止めを追加します。

現場での使い方

現場では正式名称と略称・別称が混在します。通じる言い回しと、使う場面を押さえましょう。

言い回し・別称

  • 配管支持金物=配管サポート/サポート/吊り金具
  • ダクターチャンネル=ダクター/ストラット/Cチャン
  • 全ねじ=寸切り(すんぎり)/吊りボルト
  • サドルバンド=バンド/吊りバンド/二重バンド(形状で言い分け)
  • インサート=天井インサート/スライドインサート
  • あと施工アンカー=オールアンカー(機械式の通称)/接着アンカー

使用例(3つ)

  • 主任:「この区画はダクター走らせて多条でまとめよう。M10の寸切りで落として、25Aは二重バンド、支持ピッチは1.2m目安で。」
  • 職長:「梁下はインサート効いてるから拾って。足りないとこは接着アンカーで補強、避難経路は防振ハンガー入れてね。」
  • 監督:「冷媒は熱伸び見るから固定点は機器寄り、他はスライド支持に。銅管と金具は絶縁ブッシュ忘れずに。」

使う場面・工程

  • 計画:配管ルートと支持方式の検討(固定点・ガイド・スライドの配置)
  • 墨出し:インサート位置・ダクター芯・配管標高の確認
  • 固定点施工:インサート埋設またはあと施工アンカー打設
  • フレーム組立:ダクター敷設・ブラケット・吊りボルト取り付け
  • 配管仮掛け:レベル調整・干渉チェック・振れ止め追加
  • 本締め:トルク管理・ダブルナット・座金確認
  • 仕上げ:防錆処理・保護キャップ・識別表示、清掃

関連語

  • 振れ止め、座金(ワッシャ)、スプリングワッシャ、ダブルナット
  • ブラケット、ハンガークランプ、レールナット、ハンガーチャンネル
  • 熱膨張、固定点、ガイド支持、スライド支持、防振
  • 貫通部、防火措置、ケーブルラック共架、機器架台

選定のステップ(失敗しない考え方)

1. 条件整理

  • 配管の種類・サイズ・内容物・保温有無・温度範囲
  • 設置環境(屋内外・湿気・薬品・塩害)
  • 振動源の有無(ポンプ・ファン・機械室)
  • 施工条件(取付母材の種類・厚み・スペース・共架の有無)

2. 支持方式の決定

  • 吊り(天井スラブ・梁)/受け(床・架台)/壁支持の別
  • 単条か多条か(ラック・ダクター使用の要否)
  • 固定点とスライド点の配置、防振の要否

3. 金具・寸法の選定

  • 吊りボルト径・長さ、バンド種別、レール・ブラケット寸法
  • アンカー種別・埋込み深さ・端部距離(母材の仕様で決定)
  • 表面処理・材質(腐食環境に合わせる)

4. 検討の裏取り

  • メーカーのカタログ許容荷重・適用範囲で照合
  • 設計図書・標準詳細・施工基準への整合
  • 干渉チェック(天井内他設備、開口、点検口、ダンパ、照明)

施工のチェックポイント

  • アンカー:穿孔径・深さ・孔内清掃・拡張/注入・締付トルク管理、引張試験が指定される場合は記録を残す
  • ねじ類:ダブルナットで緩み止め、座金の向き、ねじ山の突出長さ確保
  • 位置精度:勾配配管のレベル・機器接続高さ・支持ピッチ均等
  • 熱膨張:固定点位置の明確化、スライド金具の可動範囲、保温のつぶれ防止
  • 防錆:切断面の補修めっき・タッチアップ、端部キャップ
  • 絶縁:異種金属間の絶縁ブッシュ・テープ、結露対策
  • 安全:落下防止措置、仮固定時の二次災害防止、足場・高所作業の安全管理

よくある失敗と回避策

  • 配管と天井下地の干渉:早期にダクター位置と天井下地の取り合いを共有。墨出し段階で調整。
  • アンカーの端部距離不足:梁際・開口際は事前採寸。代替位置やブラケット延長で解決。
  • 熱膨張の拘束:固定点が多すぎる。固定点は最小限にし、中継部にガイド・スライドを採用。
  • 防錆不十分:切断・穴あけ後の補修忘れ。作業リストに「補修塗布」を組み込む。
  • 緩み:ナット一本締め。ダブルナット+スプリングワッシャ、必要に応じてねじロック剤。
  • 保温つぶれ:バンド面圧過大。保温座金や広幅バンドへ変更、締めすぎ注意。

配管種別ごとのポイント

鋼管(配管用炭素鋼鋼管など)

自重が大きく、振動の影響を受けやすい箇所では振れ止めを追加。溶融亜鉛めっきやステンレス金具で腐食対策。

塩ビ管(VP/HTVP等)

たわみやすいため支持ピッチは短め。日射や高温で柔らかくなる点に注意し、屋外は遮光・保護を検討。

銅管(冷媒・給湯)

電食対策として金具との絶縁が重要。熱膨張が大きいのでスライド支持と防振を組み合わせるのが有効です。

関連作業との取り合い

天井・軽量下地、ダクト、電路(ラック・レースウェイ)、スプリンクラー、照明、点検口と常に干渉リスクがあります。仮吊り時にすべての職種で現地会合し、支持レベル(高さ)とルートを確定してから本締めに入ると手戻りが減ります。防火区画や防煙区画の貫通部付近では支持位置・間隔が指定される場合があり、貫通措置(モルタル、耐火パテ等)の施工性も考慮します。

代表的なメーカーと特徴

具体名の把握は、現場での調達・仕様確認に役立ちます(各社カタログ・最新仕様に従って選定)。

  • ネグロス電工:ダクターチャンネル(ストラット)や各種支持金具、電設・設備支持材の総合メーカー。現場での使いやすい汎用部材が充実。
  • 未来工業:樹脂製サドル・支持金具、電設資材に強み。施工性の高いアイデア商品が多い。
  • 因幡電工:空調配管周辺部材(配管化粧カバー、サドル、消音・防振関連)でおなじみ。空調設備の支持まわりにも対応。
  • サンコーテクノ:あと施工アンカーや穿孔・固定システムの国内メーカー。母材条件に合わせたアンカー選定が可能。
  • ヒルティ(HILTI):あと施工アンカー、チャンネルシステム、計測機器などの総合工具・固定システムメーカー。技術資料・試験データが充実。

発注・積算のコツ

  • 拾い出しは「系統×サイズ×ピッチ×支持方式」で整理。多条ラックは段数とスパンを明確に。
  • 現場予備を少量確保(ナット・座金・スライドナット・キャップなど消耗品)。
  • 表面処理・材質は図面注記に合わせる。混在すると色味・耐久性が不揃いに。

ミニ用語辞典(周辺ワード)

  • 寸切り(すんぎり):全ねじ棒のこと。長さを切って使う。
  • ダクター:穴あきチャンネル鋼の俗称。ストラットとも。
  • スライドナット:ダクターに差し込んで金具を固定する専用ナット。
  • オールアンカー:機械式あと施工アンカーの通称の一つ。
  • 防振ハンガー:ゴムやばねを内蔵し振動を減らす吊り金具。
  • 固定点/ガイド/スライド:熱膨張を前提に配管の動きを制御する支持の役割。

初心者がまず押さえるべき3ポイント

  • 何を支えるか(荷重と環境)を決めると、金具の種類が絞れる
  • 固定点とスライド点を分けると、熱膨張トラブルが減る
  • アンカーとねじの施工管理(トルク・清掃・二重ナット)が安全性を左右する

まとめ

配管支持金物は「吊る・受ける・ガイドする」という役割を、環境や荷重に応じて最適に組み合わせる道具です。言い回しは現場によって多少違っても、基本となる考え方は共通。配管の種類・環境・熱膨張・振動・取り合いを丁寧に整理し、メーカーの許容荷重や施工基準で裏付ける──これだけで多くの失敗は防げます。迷ったら、固定点の位置と支持ピッチ、防錆・絶縁・緩み止めの3点をチェック。この記事を現場メモとして活用し、安心・安全・きれいな納まりを実現してください。