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ファイヤーストップ材とは?効果・必要性・選び方を徹底解説!現場で失敗しないポイントも紹介

現場で迷わない!ファイヤーストップ材の基礎と実務—用途・選び方・施工のコツまで完全ガイド

「ファイヤーストップ材って、結局なにを指すの?」「どの製品を選べば検査で指摘されないの?」——はじめて内装現場に入ると、こんな疑問が必ず出てきます。言い方も多くて混乱しやすいですよね。本記事では、内装施工の現場で実際に使われる視点から、ファイヤーストップ材の意味、必要性、種類、選び方、施工のポイント、さらに検査で困らないコツまでまとめてやさしく解説します。初学者の方でも、この記事を読み終える頃には「どこに、何を、どう使うか」が具体的にイメージできるはずです。

現場ワード(ファイヤーストップ材)

読み仮名ふぁいやーすとっぷざい(火止め材:ひどめざい/気流止め材:きりゅうどめざい)
英語表記firestop material / firestopping

定義

ファイヤーストップ材とは、火災時に壁や床・天井内の隙間、配管・ケーブルなどの貫通部から火や煙、熱が広がるのを抑えるために用いる材料・システムの総称です。現場では大きく二つの場面で使われます。1つ目は、配管・電線・ダクトなどが防火区画を貫通する部位に施す「貫通部防火措置」のための材料。2つ目は、壁・床・小屋裏などの空洞や躯体と下地の取り合いに設ける「火止め/気流止め」としての充填材です。いずれも建築基準法・消防関連基準や大臣認定等に適合した材料・工法で施工し、所定の耐火・遮煙性能を確保することが求められます。

ファイヤーストップ材の役割と仕組み

なぜ必要か(基本の役割)

火災時、最も怖いのは炎そのものよりも、天井裏・床下・壁内の空間や貫通部を通じて煙と熱が短時間で広がることです。ファイヤーストップ材は以下の役割を担います。

  • 炎・高温ガスの拡散を遅らせる(延焼遅延)
  • 煙の移動を食い止める(遮煙)
  • 防火区画・耐火区画の性能を維持する(区画の連続性確保)

これにより、避難時間の確保、被害拡大の抑制、そして法令適合を実現します。

どこに使うか(設置箇所の具体例)

内装・設備・電気の現場でよく出る箇所は次の通りです。

  • 電線・ケーブルラック・トレイの貫通部(壁・床)
  • 配管(樹脂管・鋼管・銅管)やダクトの貫通部
  • 軽量間仕切り上部の天井懐、躯体スラブ周りの隙間
  • 木造の間仕切り内、床と壁の取り合い、天井裏の空洞(火止め・気流止め)

どう効くか(材料の働き)

  • 膨張(インテュメセント)系:熱で大きく膨張して隙間を塞ぐ。樹脂管など溶融する貫通物に有効。
  • 不燃充填系:ロックウールや耐火モルタルなど不燃材で隙間を物理的に閉塞。
  • 柔軟シーリング系:耐火シーラントで微細な隙間や可動目地を密実にシール。

種類と特徴(代表的な材料と用途)

現場で見る主なファイヤーストップ材のタイプと特徴は以下の通りです。

  • 耐火シーラント(アクリル/シリコン/変成シリコーンの耐火仕様):小〜中隙間の周囲シール。ケーブル束やスリーブ周囲に多用。
  • 耐火モルタル・充填材:大開口や高耐火等級が必要な部位に。ロックウールと併用することも多い。
  • ロックウール(不燃繊維)+被覆:大きめの開口の芯材に詰め、表層を耐火シーラントやモルタルで被覆。
  • 膨張カラー/ラップ(インテュメセント部材):樹脂管まわりに巻いたり嵌めたりして、火災時に膨張封止。
  • 耐火パテ・パッド:コンセントボックスや小孔の簡易閉塞、改修時の再入線が想定される箇所に。
  • 発泡タイプ(耐火認定フォーム):天井懐・壁内の気流止めや小隙間に。ただし一般の発泡ウレタンは代用不可。
  • 板状材・ブロック材:ケーブル貫通部の再入線性を確保しながら区画性能を維持できるシステム材。

代表的なメーカー例(五十音順):

  • 3Mジャパン:各種ファイアストップシーラント・ラップ・カラーなどのシステム製品を展開。
  • ヒルティ(Hilti):貫通部防火措置の総合ソリューション(シーラント、ブロック、カラー等)。
  • ニチアス:ロックウールや耐火関連資材、貫通部用部材を供給。
  • 旭ファイバーグラス:グラスウール断熱材。気流止め用途に用いられる不燃繊維材を提供。
  • 吉野石膏:せっこうボード・耐火間仕切りシステム。区画壁の納まりと併せて用いるケースが多い。

実際に使う際は、メーカーの「認定・仕様書(試験成績・適合範囲)」を必ず確認し、貫通物の径や材質、壁・床の仕様、要求耐火時間と一致するかを照合してください。

選び方(認定・条件・将来変更まで見据える)

ファイヤーストップ材は「何でもいい」わけではありません。次の観点で選定します。

  • 要求性能:建築基準法や設計図書で求められる耐火・遮炎・遮煙時間(例:1時間、2時間など)。
  • 区画の構成:壁か床か、コンクリートか石膏ボードか、厚みや下地構成。
  • 貫通物の種類:電線・ケーブル、金属管、可とう管、樹脂管、ダクト等。それぞれ適合製品が異なる。
  • 開口寸法:スリーブ径、隙間幅、貫通本数。認定の範囲内であること。
  • 可動・再入線性:今後ケーブル増設が見込まれるなら、ブロック・パテ系など再施工性の高いシステムを選ぶ。
  • 環境条件:湿気、振動、温度、屋外/屋内など。施工可能温度や硬化条件も要確認。
  • 認定・証拠性:国土交通大臣認定、各種試験成績、メーカー仕様書の有無。検査・竣工引き渡しで重要。

施工の基本手順(失敗しないための標準フロー)

製品ごとに施工要領書があり最優先ですが、共通の流れは以下です。

  • 事前確認:図面・仕様書・認定範囲の照合。区画種別、要求時間、貫通物・スリーブ径を確認。
  • 前処理:開口部を清掃・脱脂し、粉じん・水分・油分を除去。必要に応じてプライマー塗布。
  • バックアップ:ロックウールやバックアップ材で所定深さ・密度を確保し、表層充填の下地をつくる。
  • 充填・納め:シーラントやモルタルを規定の厚み・幅で充填。カラーやラップは指定位置・向きで施工。
  • 仕上げ・表示:表面仕上げを整え、必要な箇所に識別ラベルや認定番号シールを貼付。
  • 記録:施工前・中・後の写真、使用製品、ロット番号、認定番号、位置情報を記録・整理。

注意点:隙間の深さ不足、充填不足、異種材の混在、未清掃のまま施工、乾燥・硬化時間無視などは典型的な不具合につながります。

現場での使い方

ここでは、日々の会話や段取りで実際にどう言うか、どう使うかを具体的に示します。

言い回し・別称

  • ファイヤーストップ材=火止め材、気流止め、貫通部防火措置、区画処理、耐火シール、FS(略称)
  • スモークストップ(煙止め):煙の遮断を主眼にした呼び方。仕上げは似ても性能要件が異なる場合あり。

使用例(会話・指示の具体例)

  • 「このケーブルトレイの壁貫通、1時間区画だから認定のシーラントでファイヤーストップやっといて。」
  • 「軽間のてっぺん、天井スラブとの取り合いはロックウール詰めて耐火シール仕上げね。写真必ず撮影。」
  • 「給水の樹脂管はカラー入れて。仕様書の向き間違えないように。ラベルも忘れず。」

使う場面・工程

  • 躯体開口・スリーブ設置後、設備・電気の配線配管が通ったタイミングで実施。
  • 軽量間仕切り造作時、上部や開口周りの火止め・気流止めを内装工程の中で対応。
  • 最終クリーニング前に検査写真をまとめ、是正の有無を確認。

関連語

  • 防火区画/耐火区画、貫通部防火措置、スリーブ、ロックウール、インテュメセント、遮煙、認定番号、施工要領書、是正

よくある不具合と現場対策チェックリスト

  • 認定外の組み合わせで施工してしまう
    • 対策:貫通物の材質・径・区画厚みを認定表で事前照合。迷ったらメーカー技術に問い合わせ。
  • 充填厚さ・幅不足、密度不足
    • 対策:深さゲージやスケールで確認。ロックウールの密度・充填方向も写真で残す。
  • 一般の発泡ウレタンで代用
    • 対策:必ず耐火認定フォームを使用。一般品は不可。
  • 後施工のケーブル増設で穴あき放置
    • 対策:改修時は必ず再封止。再入線性のあるシステムを初期選定に組み込む。
  • 表示ラベル・認定番号の未掲示
    • 対策:施工直後に貼付。写真にも写す。台帳に転記。
  • 下地が粉じん・油分で汚れている
    • 対策:ワイヤーブラシ・清掃・脱脂を徹底。プライマー指示があれば遵守。

検査で困らない記録の残し方(提出書類のツボ)

  • 位置情報:平面図に貫通部番号をふる。写真は番号札と一緒に撮影。
  • 施工写真:施工前(開口・貫通物の状態)、施工中(充填状況・厚さ・材料)、施工後(仕上がり・ラベル)。
  • 材料証跡:製品名、メーカー、認定番号、ロット、MSDSやカタログ抜粋。
  • 照合表:要求性能と採用仕様が一致していることを一覧化。

コスト・段取り(見積りの考え方)

  • 数量根拠:開口ごとの口数、径、貫通物の種類で拾い出し。大開口は別途単価。
  • 材工区分:内装、電気、設備のどの工種が施工するかは現場ルールで変動。取り決めを早めに。
  • 手戻り回避:貫通後にまとめて施工する段取りを組む。各業種と工程表を共有。

木造・軽量間仕切りの「火止め/気流止め」について

木造や軽量間仕切りでは、上下階や壁内の空洞が煙や炎の通り道になりやすく、間柱間や上部・下部の隙間を繊維系不燃材(ロックウール・グラスウール等)で区切り、必要に応じて耐火シーラントで仕上げます。これを「火止め」あるいは「気流止め」と呼び、ファイヤーストップ材の一種として現場で扱われます。材料の密度・厚み・連続性が重要で、天井懐や梁周りの取り合いも見落とさないようにしましょう。

メーカーの活用術(技術資料とサポート)

ファイヤーストップは製品ごとに適用範囲が細かく決まっています。メーカーの技術資料・認定一覧・納まり図を必ず参照し、適用外が疑われる場合は写真と条件を添えて技術窓口に相談するのが最短です。3Mジャパン、ヒルティ、ニチアスなどは技術サポートが充実しており、代替案の提示や試験データの提供を受けられるケースもあります。

安全と法令適合のポイント

  • 建築基準法および関連告示・指針に適合すること(大臣認定等)。
  • 設計図書・仕様書の要求時間と一致すること。
  • 消防・監理者・検査機関の指示に従い、是正指摘には記録をもって迅速対応。

FAQ(よくある質問)

Q. 一般の発泡ウレタンで代用できますか?

A. できません。耐火認定を受けたフォームのみ使用可能です。一般品は火災時に燃えたり形状保持できず、区画性能を損ないます。

Q. 誰の工事範囲ですか?

A. 現場ルールや契約によります。原則、貫通した業種(設備・電気)が責任を負うか、内装で一括管理するかを事前取り決めします。引き渡し書類の責任区分も明確にしておきましょう。

Q. 耐用年数やメンテナンスは?

A. 室内用途では長期にわたり機能しますが、増設・改修時に再封止が必要です。定期点検で欠損・剥離・未封止箇所を確認してください。

Q. 湿気や高温環境でも使えますか?

A. 製品によります。高湿・高温・屋外などは適合製品を選定し、施工可能温度・硬化条件を守ってください。

現場で覚えておきたい実践テクニック

  • 開口まわりのケレンと清掃が仕上がりを決める。埃があると剥離しやすい。
  • 「厚さ」「幅」「密度」は数値で管理。目視だけに頼らない。
  • 樹脂管は膨張カラー・ラップの向きと位置が命。指定通りに。
  • ケーブル増設が多い現場は、最初からブロック・パテ系で計画すると手戻りが減る。
  • ラベルと写真はすぐ貼る・撮る。後回しにすると位置特定が困難。

用語ミニ辞典

  • 防火区画/耐火区画:火災の広がりを遅らせるために建物を区切る“見えない壁”。
  • 貫通部防火措置:区画を貫く配管・ケーブルの周囲を認定材料で封止すること。
  • インテュメセント:加熱で膨張し、隙間を塞ぐ機能のこと。
  • 気流止め:壁・床・天井内の空洞で空気の流れ(煙の通り道)を止める施工。
  • 認定番号:特定条件で性能が確認された証拠。検査・台帳で必須。

まとめ(これだけ押さえればOK)

ファイヤーストップ材は、火や煙の拡大を抑えて人命と建物を守る“最後の砦”です。要点は3つ。1つ、設計・法令が求める性能に合った認定製品を選ぶこと。2つ、開口条件(区画・貫通物・寸法)に合致した仕様で正しく施工すること。3つ、証跡(写真・ラベル・認定番号)を残すこと。ここを外さなければ、検査でも現場でも自信を持って説明できます。もし迷ったら、メーカーの技術資料と現場監督・設計者に即確認。確実な一手で、安心・安全な現場づくりに役立ててください。