ご依頼・ご相談はこちら
ご依頼・ご相談はこちら

ノンスリップシートとは?滑り止め効果・選び方・施工ポイントを徹底解説

現場でよく聞く「ノンスリップシート」—意味・用途・選び方・施工のコツまで一気に理解

「ノンスリップシートって、長尺シートと何が違うの?」「厨房やトイレで滑りにくい床にしたいけど、どれを選べばいい?」——そんな疑問に、内装の現場で日常的にこの材料を扱う立場から、やさしく丁寧にお答えします。この記事では、ノンスリップシートの基本から現場での言い回し、選定ポイント、施工の流れ、失敗防止のコツまでを、初心者の方にもわかりやすく整理しました。読み終える頃には、「自分の現場に必要な仕様」と「発注・施工で外さないポイント」がしっかり見えてくるはずです。

現場ワード(ノンスリップシート)

読み仮名のんすりっぷしーと
英語表記non-slip sheet

定義

ノンスリップシートとは、主にビニル系(塩ビ)の長尺床材の一種で、表面に凹凸(エンボス)や骨材を組み込むことで「滑りにくさ(防滑性)」を高めた床シートの総称です。水や油で濡れやすい場所、土砂が持ち込まれる通路、勾配のあるスロープなど、人が滑って転倒しやすい場面で使用されます。一般的な長尺シートと比べて防滑性能に特化しており、耐水性・耐久性・清掃性も考慮された、商業・医療・福祉・教育・工場・集合住宅の共用部などで広く使われる実用材です。

特徴とメリット

ノンスリップシートの特長を、現場目線で要点整理します。

  • 滑りにくい表面:エンボスや骨材で足裏のグリップを確保。濡れた環境でも歩行安全に寄与。
  • 耐水・耐油・耐摩耗:用途に応じて耐性を高めたタイプが選べ、厨房やバックヤードにも対応可能。
  • 施工性:長尺シートのため、広い面積も継ぎ目を抑えやすい。熱風溶接で目地を密閉でき衛生的。
  • 衛生性・清掃性:表面が緻密で、汚れが落としやすい設計が多い。排水勾配と相性が良い。
  • 意匠の幅:石目・無地・チップ柄など、施設のデザインに合わせやすい。
  • コストバランス:タイルや天然石に比べ初期コストを抑えつつ、安全性を確保しやすい。

素材・構造の基礎知識

多くは塩化ビニル系の長尺床材で、表層(透明層)+化粧層+基材層の積層構造。防滑を高めるために、以下の工夫が使われます。

  • 表面エンボス:細かな凹凸で水膜を切り、接地面を確保。
  • 骨材入り:微細な骨材を表層に配し、グリップ力を底上げ。
  • クッション性調整:裏面に発泡層を採用するタイプもあり、足あたりと防音を両立(用途により非発泡タイプも)。
  • 抗菌・防カビ機能:水まわり用途では衛生面の付加機能を持つ製品が多い。

滑り抵抗は、各メーカーが試験(例:ペンデュラム式など)で評価しカタログに掲載します。場所の条件(乾燥・湿潤・油分)に合わせ、試験条件・数値の「前提」を必ず確認しましょう。

種類と選び方

用途別の大まかな分類

  • 屋内乾式エリア:エントランスホール脇や通路など、人通りが多く砂塵の持ち込みがある場所向け。
  • 屋内湿式エリア:トイレ、洗面、シャワー室、浴室前室など、常時濡れる可能性がある場所。
  • 厨房・バックヤード:水・油・洗剤・熱に触れるため、耐油性・耐薬品性・耐熱水性に留意。
  • スロープ・屋外通路(半外部含む):耐候性や温度変化、凍結への配慮。屋外可否は製品仕様で必ず確認。
  • 階段踏面:踏み面にノンスリップシートを採用する場合と、別途「階段用ノンスリップ金物(滑り止め見切り)」を組み合わせる場合がある。

性能で選ぶチェックポイント

  • 滑り抵抗(乾燥・湿潤・油膜下など条件別):メーカー試験値と適用シーンの整合。
  • 耐油・耐薬品:厨房や整備場等は必須。清掃剤との相性も確認。
  • 耐摩耗:台車・車輪通行の頻度が高い場合は厚みや耐久層に注目。
  • 耐候・耐熱:半外部や直射がある場合は温度・紫外線の配慮。
  • 厚み・クッション性:安全性と歩行感のバランス。車椅子・台車走行も考慮。
  • 防火・内装制限への適合:使う場所に応じ、各製品の認定・仕様書を確認。
  • 衛生・防カビ:湿式エリアでは有効。

意匠で選ぶ

無地・石目・モルタル調・チップ柄などが一般的。段差や曲面、立上げの有無に合わせ、シーム(継ぎ目)の目立ちにくさも合わせて検討します。

現場での使い方

言い回し・別称

  • ノンスリップ(略称)/防滑シート/防滑長尺シート
  • 湿式用シート/厨房用シート/浴室用床シート(用途を強調した呼び方)
  • 階段ノンスリップ(階段用金物や階段用シートを指す場合も。文脈で区別)

使用例(3つ)

  • 「バックヤード側はノンスリップで、フロントは一般長尺に切り替えましょう。」
  • 「トイレ内は湿式想定なので、防滑シートで立上げ150ミリまで回して。」
  • 「このスロープ、雨の持ち込みがあるからノンスリップ指定に変更でお願いします。」

使う場面・工程

  • 設計・仕様決め:用途と安全性、清掃メンテの要求を踏まえ選定。
  • 下地調整:モルタルや合板下地の平滑化。勾配・水勾配の確認。
  • 材料取り(割付):継ぎ目位置、排水方向、立上げ有無、端部見切りを確定。
  • 施工:接着剤塗布→貼り込み→転圧→目地熱溶接→端部シール・見切り納め。
  • 引渡し:滑り・段差・端部の安全確認、清掃方法の説明。

関連語

  • 長尺シート(一般)/クッションフロア(住宅向けの別カテゴリ)
  • 熱溶接棒/見切り材/巾木・立上げ
  • 階段ノンスリップ(金物)/ノンスリップテープ(簡易的な滑り止め)
  • ペンデュラム試験(滑り抵抗評価の一例)

施工の基本手順とコツ

ノンスリップシートの仕上がりは、下地と納まりで決まります。実務で外さない流れとコツを押さえましょう。

  • 下地確認と環境管理
    • 平滑性:突起・ピンホールは転写しやすい。パテでしっかり面を出す。
    • 含水率・乾燥:湿式エリアでも、接着時の下地は乾燥が基本。結露にも注意。
    • 室温・材料温度:極端な低温・高温は接着・溶接品質を落とす。メーカー推奨範囲内で。
  • 割付・見切り計画
    • 継ぎ目位置:水の流れに逆らわない。排水方向に沿って配置し、目地は最小限。
    • 端部:見切り金物の段差ゼロ化、立上げ高さの統一、入隅・出隅の処理形状。
  • 接着剤選定・塗布
    • 乾式エリア:アクリル樹脂系エマルジョン等が一般的。
    • 湿式・立上げ・高負荷:メーカー指定の耐水形・反応硬化型などを選定。
    • 塗布量・オープンタイム:カタログ指示に厳密に従う。塗り過ぎ・不足は後の浮き・はがれの原因。
  • 貼り込み・転圧
    • 仮敷きで伸び・癖を確認。センターから外へ空気を逃がす。
    • 転圧は適正ローラーで均一に。エンボスを潰さない力加減が肝心。
  • 目地処理(熱風溶接)
    • V字開先→熱風溶接棒挿入→一次削り→冷却→二次仕上げ。温度と速度のバランスを一定に。
    • 水がかり部はシーム密閉の品質が命。溶接不良は最優先で手直し。
  • 端部・立上げ
    • シール材で止水ラインを確実に。入隅の連続性を切らない。
    • 立上げは見切りや巾木で美しく納める。カウンター下や器具脚元の隙間にも配慮。
  • 養生・初期清掃
    • 所定時間は水・油・強清掃を避ける。初期汚れは中性洗剤で軽く。

よくある失敗と対策

  • 目地開き・段差
    • 原因:温湿度変化、オープンタイム逸脱、転圧不足。
    • 対策:施工環境管理の徹底、ロール端の癖取り、溶接前の密着確認。
  • 端部のめくれ
    • 原因:接着剤不足、見切り不良、台車衝撃。
    • 対策:端部増し塗り、金物で確実固定、R取りで角欠け防止。
  • 浮き・ブリスター
    • 原因:下地含水、塗布過多、 trapped air。
    • 対策:含水管理、適正塗布、転圧と排気の徹底。
  • 汚れの取りにくさ(エンボス奥に蓄積)
    • 対策:デッキブラシやパッドで定期洗浄。汚れに合わせ洗剤を選ぶ。
  • 滑り性能の低下
    • 原因:油膜・洗剤残り・ワックスの不適合。
    • 対策:リンス(水拭き)を丁寧に、ワックスはメーカー推奨以外は避ける。

メンテナンスと清掃の基本

  • 日常清掃:ほこり・砂はドライ清掃で除去。濡れた場合はすぐ拭き上げ。
  • 定期清掃:中性洗剤で洗浄→水拭きで洗剤分除去。油汚れはアルカリ系洗剤を薄めて、最後に十分リンス。
  • 器具・道具:デッキブラシやパッドでエンボス奥の汚れをかき出す。高圧洗浄は圧力・距離に注意し、目地・端部に向けて噴射しない。
  • ワックス:基本は不要か、適合品のみ。滑りやすくなる恐れがあるため、仕様書を必ず確認。
  • 定期点検:端部の浮き、シームの切れ、滑り抵抗の体感低下がないかを巡回チェック。

安全・法規上の注意点(概要)

施設用途や場所によって、内装制限や安全性に関する基準・ガイドラインが存在します。防火性能の認定や滑り抵抗試験値は、各メーカーの製品資料で必ず確認してください。特に、高齢者・子ども・医療施設などは安全係数を高めに設定し、勾配、排水、段差、手すり、視認性(色コントラスト)も合わせて検討します。引渡し前は、濡れた状態での滑り・排水・端部段差の最終確認を行い、清掃方法・洗剤の指示も現場で共有しましょう。

代表的メーカーと概要

  • 東リ(TOLI):床材の大手。商業・医療・福祉向けの長尺シートや防滑シートを幅広く展開。色柄や機能が充実。
  • 田島ルーフィング(TAJIMA):床材総合メーカー。防滑・耐油・耐久性に配慮した各種ビニル床シートをラインアップ。
  • サンゲツ(Sangetsu):総合内装材メーカー。施設用途に適した防滑機能付きビニル床シートを展開。
  • シンコール(SINCOL):内装材の総合ブランド。コストと意匠のバランスがとれた床材が揃う。
  • リリカラ(Lilycolor):内装仕上材メーカー。長尺シートの一部に防滑仕様があり、用途に応じて選定可能。

各社とも「防滑」「ノンスリップ」「湿式対応」などの名称でカテゴリ化しているため、用途・試験条件・接着剤指定・屋外可否をカタログで個別確認するのが基本です。

見積り・発注のチェックリスト

  • 使用場所と条件:乾式/湿式/油分の有無/屋内外/台車走行の頻度。
  • 意匠と厚み:色柄、厚み(歩行感・耐久性)、クッション性の要否。
  • 幅・長さ・数量:ロール幅、継ぎ目位置、予備材料の手当て。
  • 立上げ・見切り:巾木の有無、立上げ高さ、排水金物との取り合い、見切り材の種類。
  • 接着剤・副資材:指定接着剤、熱溶接棒の色番、シーリング材の種類。
  • 下地:種類(コンクリ・モルタル・合板)、平滑度、含水、勾配。
  • 階段・スロープ:階段ノンスリップ金物の有無、段鼻納まり、勾配・滑り対策。
  • 工程:施工可能温度、養生期間、搬入経路、他工種との取り合い。
  • メンテ要件:清掃方法、ワックスの可否、洗剤の指定。

よくある質問(FAQ)

Q. 長尺シートとノンスリップシートは何が違いますか?

A. ノンスリップシートは長尺シートの中でも「防滑性能に特化したタイプ」です。見た目が似ていても、濡れた環境や油分のある場所に強い設計になっています。

Q. 住宅の玄関や洗面所にも使えますか?

A. 使えますが、製品ごとに推奨用途が異なります。防滑や防水を重視するなら有効ですが、意匠や歩行感の好みも含めて比較検討しましょう。

Q. 屋外(完全外部)で使えますか?

A. 屋外可否は製品により異なります。直射日光・雨・凍結への耐性が必要なため、屋外対応の明記がある製品を選定してください。

Q. 滑り止め効果はどれくらい持続しますか?

A. 使用環境と清掃次第です。油膜・汚れが残ると滑りやすくなるため、適切な清掃とリンスが重要です。摩耗が進めば性能は徐々に低下します。

Q. ワックスは必要ですか?

A. 多くの防滑シートはワックス不要か、適合品のみ推奨です。不適合ワックスは滑りの原因になるため、メーカー指示を厳守してください。

Q. 階段の「ノンスリップ」とは同じですか?

A. 階段の「ノンスリップ」は段鼻に取り付ける滑り止め金物や専用部材を指すことが多く、床のノンスリップシートとは別物です。併用する場合もあります。

初心者が押さえるべき要点(まとめ)

ノンスリップシートは「滑りにくさ」を最優先に設計された長尺床材です。選定では、使用環境(乾・湿・油・屋内外)と必要性能(滑り抵抗、耐油・耐摩耗)を最初に絞り込み、次に意匠・厚み・メンテ条件を確認しましょう。施工は下地と納まりが命。排水・勾配・目地・端部の品質が、仕上がりと安全性を左右します。清掃は中性洗剤と十分なリンスが基本。不適合ワックスや油膜放置は滑りの元です。これらを押さえれば、現場でも「安全・清潔・長持ち」の床を実現できます。迷ったら、用途と条件を整理してメーカーの仕様書に当てはめる。この順番で考えると、失敗しません。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
  • 情報の扱い:記事は現場経験・法令・公的資料を根拠に作成。広告掲載時は本文中に明示します。
  • Web:
  • 電話:03-6823-3631
  • お問い合わせ:お問い合わせフォーム