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コーキング処理とは?失敗しない手順と現場が教えるプロのコツ5選

内装現場の「コーキング処理」完全ガイド—意味・使い方・材料・手順・失敗回避まで

「コーキング処理ってなに?」「シーリングと何が違うの?」「DIYでやっても大丈夫?」——内装の現場でよく聞く言葉ですが、はじめてだとイメージしにくいですよね。本記事は、建設内装の現場で実際に使われる“コーキング処理”という現場ワードを、やさしく丁寧に解説します。用途・材料の選び方から、失敗しない手順、プロのコツ、よくある疑問まで、これ一つで不安が解消できる内容にまとめました。

現場ワード(コーキング処理)

読み仮名こうきんぐしょり
英語表記Caulking / Sealing

定義

コーキング処理とは、壁・天井・床・建具・設備機器まわりなど、部材と部材のすき間(目地や取合い)に、弾性のある充填材(コーキング材=シーリング材)を充てんし、見た目を整えながら「水・空気・汚れの侵入を防ぐ」「振動や温度変化による動きを吸収する」ための施工を指します。内装では主に仕上げの納まり調整や防水・防カビ、気密・遮音の補助として用いられます。業界では“シーリング”とも呼ばれ、厳密には外装・高耐候の分野を「シーリング」、内装の細部仕上げや簡易充てんを「コーキング」と呼ぶ傾向がありますが、現場ではほぼ同義語として使われます。

現場での使い方

言い回し・別称

よく使われる言い回しは「コーキング打つ」「コーキング回す」「目地詰め」「シール処理」。別称は「シーリング」「シール」「充てん」。現場間の指示では「この巾木と壁の取り合い、コーキングで納めといて」「水回りは防カビのシリコンで」など、材料指定や用途まで含めて伝えるのが一般的です。

使用例(3つ)

  • 「洗面カウンターと壁の取り合い、白のシリコンでコーキング処理お願いします。テープは細めで。」
  • 「巾木の隙間はコークA系で。あとで上塗り入るから、塗装可の材料使ってね。」
  • 「サッシ周り、下地動くから二面接着で。バックアップ入れてから打って。」

使う場面・工程

内装の仕上げ段階で用いられることが多く、主な場面は以下です。水回り(キッチン、洗面、浴室周辺)の防水・防カビ、建具枠や巾木と壁の取り合いの化粧納め、カウンター・笠木・見切り金物の端部処理、サッシまわりの気密補助、ボード継ぎ目の微細クラック対策、設備器具(便器・洗面台)まわりのスキマ塞ぎ。工程としては、各種仕上げ(クロス・塗装・フロア)と干渉しないタイミングで行い、塗装可否の材料選定と施工順序の調整が肝になります。

関連語

  • シーリング材:コーキング材とほぼ同義。JIS規格で性能区分が定義される。
  • プライマー:接着性を高める下塗り剤。メーカー指定の使用が基本。
  • バックアップ材:目地深さ・形状を調整する発泡材など。二面接着を作るために使用。
  • ボンドブレーカー:三面接着を防ぐための非接着テープ。
  • ヘラ仕上げ(ヘラ押さえ):充てん後、表面を均す作業。
  • 二面接着:目地の左右2面のみに接着させる基本思想。動きに追従しやすい。

材料の種類と選び方(内装でよく使う系統)

コーキング材は用途に応じて選定します。塗装の有無、水回りかどうか、動きの大きさ、汚染の許容度が判断基準です。

  • シリコーン系:耐水性・耐熱性に優れ、防カビタイプも豊富。浴室・洗面・キッチンなど水回りで第一候補。一般に塗装不可(塗料が弾かれる)なので、塗装仕上げ面には不向き。
  • 変成シリコーン(MS)系:幅広い下地に密着しやすく、塗装可のタイプが多い。内装の見切り、サッシまわり、金物取合いなど万能選手。
  • ウレタン系:硬化後の強度が高く塗装可。床まわりや動きの大きい目地に使われるが、湿気条件や下地との相性に注意。水回りの露出には向きにくい場面も。
  • アクリル系(水性コーク):扱いやすく、乾燥後に塗装可。巾木や枠まわりなど室内の化粧用に多用。ただし耐水性は限定的で、水濡れが続く部位には不向き。

ポイント:水回りはシリコーン、防水不要で塗装する箇所はアクリル系や変成シリコーン、動きが大きい・強度が欲しい箇所はウレタンまたは変成シリコーンが目安です。最終仕上げ(塗装・クロス)との順番と材料適合を必ず確認します。

代表的メーカーと特徴

以下は内装現場でよく見かける国内メーカーの一例です。具体的な製品採用は必ず最新のカタログやSDS(安全データシート)を確認してください。

  • コニシ株式会社:接着剤大手。建築・内装向けのシーリング材や多用途ボンドを幅広く展開。入手性が高く、現場常備品として普及。
  • セメダイン株式会社:家庭用からプロ用までシーリング材・接着剤を幅広く提供。水回り用や塗装可タイプなど用途別ラインアップが豊富。
  • オート化学工業株式会社:シーリング材の専業メーカー。長期耐久系や変成シリコーンの評価が高く、外装・内装の双方で採用される。
  • サンスター技研株式会社(ペンギンシール):建築用シーリング材の老舗ブランドを展開。目地用途ごとの選定がしやすい。
  • 横浜ゴム株式会社(ハマタイト):自動車・建築分野のシーリングで実績。高機能・高耐候グレードも多い。
  • 信越化学工業株式会社(信越シリコーン):シリコーン分野の世界的メーカー。耐熱・耐候性に優れたシリコーン系製品を供給。

工具メーカーの例:タジマ(ハンドツール・コーキングガン)、マキタ(充電式コーキングガン)。現場のサイズや作業量に応じて、手動/電動の使い分けを行います。

必要な道具と消耗品

  • コーキングガン(手動または充電式)
  • マスキングテープ(巾を使い分ける)
  • プライマー(下地・材質に適合した純正品)
  • バックアップ材(発泡ポリエチレン丸棒など)/ボンドブレーカー
  • ヘラ(仕上げ用、形状違いを揃える)/ヘラ用離型剤(専用品)
  • ウエス、掃除用アルコールまたはメーカー推奨クリーナー
  • 手袋、養生材、廃材用ポリ袋

基本手順(内装コーキングの流れ)

  • 1) 事前確認:部位の用途(水濡れの有無、塗装の有無、動きの大きさ)を確認し、材料を選定。施工図や仕上げ順序をチェック。
  • 2) 下地清掃:ほこり・油分・水分を除去。既存コーキングを打ち替える場合は、切り出し・撤去・目地清掃を丁寧に行う。
  • 3) 養生:マスキングテープで仕上がりラインを決める。直線・角の処理は仕上がりに直結するため丁寧に。
  • 4) 目地調整:必要に応じてバックアップ材やボンドブレーカーを入れて二面接着の状態を作る。目地深さと幅を適正化。
  • 5) プライマー塗布:指定のプライマーを薄く均一に塗布。所定のオープンタイムを守る。
  • 6) 充てん(ガン打ち):気泡を巻き込まないよう一定速度で打ち込む。目地底までしっかり入れる。
  • 7) ヘラ押さえ:適切な圧で表面を均す。離型剤は使いすぎず、はみ出しはウエスで素早く拭き取る。
  • 8) テープ剥がし:皮張り前(表面が固まる前)に角度をつけてゆっくり剥がす。
  • 9) 養生・乾燥:所定の硬化時間まで触れない・濡らさない。後工程(塗装や設備取付)と干渉させない。

プロのコツ(失敗しないための要点)

  • 二面接着の徹底:三面接着は動きに追従できず破断の原因。バックアップ材やボンドブレーカーで形状を作る。
  • プライマーは“適材適所・規定量”:相性の悪い下地や水回りは特に重要。塗りすぎ・乾きすぎに注意。
  • テープ剥がしのタイミング:ヘラ押さえ直後にためらわず剥がす。遅れると糸引きやエッジ乱れが発生。
  • 色・ツヤを合わせる:白でもメーカーにより微妙に色味が違う。既設との見比べを行い、見切りで切り替える。
  • 温湿度管理:低温・高湿は硬化遅延や白化の原因。可能なら室温・換気を整え、結露する時間帯を避ける。
  • 離型剤は専用品を少量:食器用洗剤などの流用は汚染・密着不良のリスク。専用品を薄く使う。
  • 仕上がりラインの設計:テープ巾・角のR・段差吸収の有無を事前に決めると美観が安定。

よくある失敗と対処

  • 剥離(くっつかない):清掃不足、プライマー不適合、三面接着が原因。下地処理からやり直し、二面接着を徹底。
  • 肉やせ(へこみ):目地が深すぎる、充てん不足。バックアップ材で形状を整え、必要量をしっかり打つ。
  • 気泡・穴:ガンの速度むら、下地水分。一定速度で打ち、事前に乾燥させる。
  • 汚染・にじみ:シリコーンオイルの移行や離型剤の残り。材料選択と拭き取り管理を徹底。
  • 色ムラ・艶ムラ:異メーカー混用、硬化環境の差。同一ロット・同一メーカーで統一し、環境を整える。
  • カビ発生:防カビ非対応材の使用、常時湿潤。防カビタイプを選び、換気と乾燥を確保。

コーキングとシーリングの違い(現場感覚と正式用語)

現場では混同されがちですが、一般に「シーリング」はJISなどの規格に基づく性能を求める外装・耐候用途での呼称が中心、「コーキング」は内装の仕上げ調整・簡易充てんを含む広い意味で使われます。ただし商材としては同じ“シーリング材(コーキング材)”であり、最重要なのは「部位・目的に対して適切な材料と施工を選ぶ」ことです。

部位別の材料選定例(内装)

  • 浴室・洗面・キッチン:シリコーン系(防カビタイプ)。塗装しないのが基本。
  • 巾木・枠・見切り、塗装と取り合う部位:アクリル系または変成シリコーン(塗装可)。
  • サッシまわり・金物取合い:変成シリコーン。動きが読めない場合は二面接着を確保。
  • 床見切り・振動が大きい箇所:ウレタン系または高弾性の変成シリコーン。

注意:同じ「白」でも材質により色味が異なります。既存部位との色合わせは試し打ちで確認しましょう。

乾燥(硬化)時間と養生

表面が触ってもつかなくなるまでの時間(皮張り・指触乾燥)と、内部まで固まる時間(完全硬化)は別物です。一般的に数十分〜数時間で表面が落ち着き、完全硬化には24〜48時間以上かかることが多く、温度・湿度・目地サイズで大きく変動します。施工可否や次工程のタイミングは、必ず採用製品の技術資料に従ってください。

安全衛生・取り扱いの注意

  • 換気:溶剤臭や放散成分に配慮し、閉めきった室内では換気を確保。
  • 保護具:耐薬品手袋・保護メガネを着用。皮膚に付着した場合は速やかに拭き取り、指でのならしは避ける。
  • 火気厳禁:溶剤を含む製品・クリーナーは火気から離して使用・保管。
  • 混用禁止:メーカーの異なる材料や異種材料を重ねると密着不良や軟化の恐れ。原則として同一系統・同一メーカーで統一。
  • SDSの確認:採用前に最新のSDS(安全データシート)で危険有害性・保管・廃棄を確認。

DIYでできる範囲とプロに任せる判断

  • DIY向き:洗面台・キッチンまわりの打ち替え、小規模な巾木や見切りのすき間埋め。直線部が中心で、動きが小さい箇所。
  • プロ推奨:浴室の本格防水ライン、サッシや躯体の可動目地、広範囲の打ち替え、素材が複合する取り合い。二面接着やプライマー選定が難しく、失敗の影響が大きい部分。

費用感と見積もりの見方(考え方の指針)

コーキングの費用は「目地の総延長」「目地幅・深さ(使用量)」「材料グレード(防カビ・高耐久・塗装可)」「養生手間(マスキング量・下地処理)」で決まります。1mあたりで算定されることが多いものの、同じ長さでも部位や仕様で単価は大きく変わります。見積りでは「材料名(系統)」「打ち替えか増し打ちか」「プライマー有無」「色・本数」「養生範囲」を確認しましょう。

仕上がり品質チェックリスト

  • ラインが直線で端部がシャープ。
  • はみ出し・指紋・テープ糊残りがない。
  • 肉厚が均一で凹み・気泡が見えない。
  • 色が既存仕上げと馴染んでいる。
  • 水回りは隙間ゼロ、エッジの途切れなし。
  • 必要な箇所で二面接着が守られている(バックアップ材・ボンドブレーカーの適用)。

ミニ用語辞典(内装の現場で一緒に出る言葉)

  • 目地(めじ):部材間のすき間。コーキングで埋める対象。
  • 取合い(とりあい):異なる部材が接する部分。納まりの難所。
  • 打ち替え:既存コーキングを撤去し、新しく施工すること。
  • 増し打ち:既存の上から追加充てんすること(原則として推奨されない場面が多い)。
  • ノンブリード:可塑剤のにじみ出しが少なく、汚染しにくい性質。
  • 低モジュラス/高モジュラス:柔らかさ・弾性の指標。動きの大きい目地には低モジュラスが適する。

トラブルを未然に防ぐ段取り術

  • 仕上げ順序の合意:塗装・クロス・設備との前後関係を着工前に決める。
  • サンプル確認:色と艶の試し打ちで合意形成。意匠重視の案件ほど有効。
  • 温湿度の記録:冬季・梅雨時は硬化遅延リスクを説明し、工程に余裕を持たせる。
  • 清掃計画:粉塵作業(ボード研磨など)の後にコーキングを組む。逆順にしない。

Q&A:初心者の疑問に答えます

Q. お風呂のカビはコーキングを変えると止まりますか?

A. 防カビタイプに打ち替えると抑制効果はありますが、換気・湿気管理が同じでないと再発の可能性は残ります。換気扇の運転時間や結露対策も併せて行いましょう。

Q. シリコーンの上に塗装できますか?

A. 一般的なシリコーンは塗装不可です。塗装が前提ならアクリル系や塗装可の変成シリコーンを選びます。

Q. 既存の上に重ねて打ってもいいですか?

A. 原則は打ち替え(撤去のうえ新設)です。重ね打ちは密着不良や早期劣化の原因になりやすく、やむを得ない場合のみメーカー推奨手順に従います。

Q. どのくらいで使えるようになりますか?

A. 触れても跡がつかないまで数十分〜数時間、完全硬化には1〜2日以上が目安ですが、環境と製品で大きく変わります。製品の技術資料を確認してください。

まとめ:コーキング処理を味方に、見た目も性能も底上げ

コーキング処理は、すき間を埋めるだけの作業ではありません。水や汚れの侵入を防ぎ、温度や振動の動きに追従し、仕上げの美観を整える「最後のひと手間」です。部位に合った材料選定(シリコーン/変成シリコーン/ウレタン/アクリル)、二面接着・プライマー・養生といった基本をおさえれば、仕上がりは確実に向上します。迷ったら「何のために打つのか(水か、塗装か、動きか)」に立ち返り、仕様書とメーカー資料を確認する。これが現場の確実な進め方です。本記事が、あなたの不安解消と納得の仕上がりに役立てば幸いです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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