内装現場でよく使う「両面テープ」完全ガイド|種類・用途・はがし方までプロが解説
「養生材をきれいに留めたい」「巾木がずれて困る」「サインやモールをビスなしで付けたい」——内装の現場でそんな悩みが出てきたとき、真っ先に頼りになるのが両面テープです。とはいえ、種類が多く、どれを選べばよいか、どう貼れば長持ちするのか、はがすときのコツは何か…初心者にはわかりづらいですよね。本記事では、現場で実際に使われる言い回しや注意点、選び方のポイント、貼り方・はがし方まで、プロの視点でやさしく丁寧に解説します。読み終えるころには、用途に最適な両面テープを自信を持って選べるようになります。
現場ワード(両面テープ)
| 読み仮名 | りょうめんてーぷ |
|---|---|
| 英語表記 | double-sided tape |
定義
両面テープとは、基材(不織布・フィルム・発泡体など)の両面に粘着剤を塗布し、はくり紙で保護した貼付け材の総称です。対象物同士を接着剤のように貼り合わせられるのが特徴で、内装現場では「仮固定」「養生」「仕上げ材の固定」「金物・サインの取り付け」など幅広い工程で用いられます。粘着剤の種類(アクリル・ゴム・シリコーン等)や基材の厚み・柔軟性により、初期タック(つき始め)、最終接着力、耐候性、再剥離性などの性能が大きく変わります。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では「両面」「両面貼っといて」「養生の両面」「アクリル両面」「フォーム(発泡)両面」「再剥離(さいはくり)の両面」などと言われます。はくり紙は「剥離紙(はくりし)」「台紙」と呼ぶこともあります。
使用例(3つ)
- 養生・仮設固定:床の養生ボードや通路マット、階段養生の固定に再剥離タイプを使用。糊残り・下地破損を防ぎ、撤去がスムーズ。
- 見切り材・モール・巾木の仮止め:金属見切りや配線モール、巾木の位置決めに薄手の強粘着タイプを使用。最終的にはビスや接着剤で本固定する前提の「仮止め」に最適。
- サイン・プレート・ミラー・化粧パネルの取り付け:アクリルフォーム系などの高強度両面を使用。重量物は接着剤や機械的固定(アンカー・ビス)を必ず併用し、安全性を確保。
使う場面・工程
使うのは主に「下地処理→仮固定→本固定→仕上げ確認」という流れのうち、仮固定と仕上げの段階です。養生では工程の最初と最後(撤去時)に関わります。屋外や高温多湿、粉じんが多い環境では粘着が著しく落ちるため、作業前の清掃・脱脂・乾燥が重要です。寒冷時は粘着剤が硬くなり密着不良が起きやすいので、室温に戻してから使用すると成功率が上がります。
関連語
- はくり紙(剥離紙)/プライマー(下地改質剤)/初期タック/最終接着力/せん断強度・引張強度
- アクリル系/ゴム系/シリコーン系/アクリルフォーム(VHB等)/不織布基材/フィルム基材/発泡体基材
- 再剥離(リムーバブル)/耐候性/耐熱/防水・防湿/糊残り
種類と選び方
基材で選ぶ
不織布基材:薄くて手切れがよく、段差が出にくいのが利点。仮固定や一般内装材の貼付けに幅広く使用。
フィルム基材(PET等):寸法安定性が高く、薄手でも強度が出る。透明タイプはガラスやアクリル板の固定にも。
発泡体基材(アクリルフォーム・ポリエチレンフォーム等):厚みと追従性があり、凹凸面や異素材間のショック吸収・隙間埋めに有利。重量物や屋外看板に多用。
粘着剤で選ぶ
アクリル系:耐候性・耐熱性・耐久性に優れ、屋外や長期用途に向く。金属・ガラス・塗装面など幅広い素材に安定。
ゴム系:初期タックが高く、すぐに強く付くが、耐熱・耐候はやや弱い。屋内の短〜中期用途や仮固定に好適。
シリコーン系:低表面エネルギー材(シリコーン・フッ素樹脂等)にも付きやすい特殊用途向け。価格は高め。
用途別の目安
- 養生・撤去前提:再剥離タイプ(ゴム系・アクリル系のリムーバブル)。糊残りしにくい製品を選ぶ。
- 屋内の仕上げ部材:不織布基材×アクリル系または強粘着ゴム系。薄手で段差を抑える。
- 重量物・屋外:アクリルフォーム系(高強度)の厚手タイプ。必要に応じて接着剤・機械的固定併用。
- 透明材やガラス:クリアタイプのフィルム基材×アクリル系。黄変しにくいものを選ぶ。
幅・厚み・色の選び方
幅は「被着体の幅の7〜8割以上」を目安にして、十分な接着面積を確保。厚みは段差や凹凸の程度で選び、凹凸が大きいほど厚手に。目立たせたくない場合は透明やグレー、黒など周囲に馴染む色が有効です。
失敗しない貼り付けのコツ5選
- 下地を整える:ほこり・油分・水分は大敵。ウエスで清掃→アルコール(IPA等)で脱脂→完全乾燥。ザラつきや弱い塗膜は軽く研磨後にプライマー併用も検討。
- 温度管理:低温では粘着が乗りにくい。テープと被着体を常温に戻し、冷えた金属は温めてから作業。直射日光で熱くなりすぎても粘着剤が軟化してズレやすい。
- 圧着が命:貼ったらローラーや当て木でしっかり圧をかけ、密着面を増やす。角・端部は特に念入りに圧着。
- すぐに荷重をかけない:多くの両面テープは時間経過で最終強度へ。貼付け直後は仮押さえや養生でズレ防止。可能なら数時間〜1日程度は荷重・せん断力を避ける。
- 安全余裕をみる:重量物や高所は両面テープ単独にしない。接着剤やビス・アンカーを併用し、落下・剥離リスクをゼロに近づける。
はがし方と糊残り対策
はがし方の基本:端からはくり紙の要領でゆっくり引き剥がす。引張方向は面に沿って「低角度でゆっくり」。上方向へ一気に剥がすと下地を傷めやすい。
温める:ヒートガンやドライヤーで軽く温めると粘着が軟らかくなり剥がれやすい。加熱しすぎは変形・変色の原因になるため注意。
工具のコツ:スクレーパーや樹脂ヘラを使用。金属ヘラは塗装や化粧板を傷つけやすいので保護テープを当てるなど配慮する。
糊残りの除去:柑橘系のシールリムーバー→アルコール→中性洗剤の順でテスト。化粧板・塗装面は目立たない場所で試験してから本番。溶剤に弱い素材(アクリル、ポリカ等)は専用品を使用。
下地を守るコツ:クロス・紙・木口など弱い面には再剥離タイプを使う。貼る前に下地強度をチェックし、無理にはがさない。
安全・法規・注意点
重量物・鏡・手すり等の構造的安全が必要な取り付けは、両面テープ単独で行わない。メーカーの施工要領に従い、接着剤や機械的固定を併用し、必要に応じてアンカーや金具を使用します。
防火・内装制限のある部位(不燃・準不燃が求められる面)に化粧パネル等を貼る場合、システムとしての適合性を確認。粘着剤の可塑剤移行や化学的相性にも注意します。
換気:溶剤やプライマーを併用する場合は十分な換気を確保。火気厳禁の環境ではヒートガンの使用に注意します。
荷重方向:せん断荷重(面に沿って滑ろうとする力)は剥がれの主因。垂直面での重量物は特に安全率を見込み、面積計算・固定方法の検討を行います。
代表的なメーカーと特徴
3M(スリーエム ジャパン):産業用粘着製品のグローバルメーカー。アクリルフォーム系「VHB」テープに代表される高強度・高耐候の製品群があり、金属・ガラス・樹脂パネルの固定で実績豊富。
Nitto(日東電工):日本発のテープ総合メーカー。内装〜産業用途まで幅広いラインナップを持ち、薄手の不織布基材から高強度フォーム系まで選択肢が豊か。現場での使い勝手のよさに定評。
寺岡製作所(TERAOKA):工業用テープの老舗メーカー。内装・建築分野でも実用的な製品を多数展開し、コスパと安定品質で支持されています。
ニチバン(NICHIBAN):文具のイメージが強いですが、内装・工業向けの両面テープも展開。養生や仮固定に適した再剥離タイプも入手しやすい。
積水化学工業(SEKISUI):高機能粘着材を展開。耐候性・耐熱性に配慮した製品や、特殊用途向けの両面テープを取り扱っています。
メーカーや品番により性能は大きく異なるため、用途(屋内外、期間、被着体、必要強度)に合わせて仕様書や技術データシートを確認するのが安全です。
素材別・相性の目安
金属(アルミ・ステンレス):アクリル系が安定。油分をしっかり脱脂し、酸化膜の粉じんを除去。
ガラス・陶磁器:アクリル系の透明タイプやフォーム系。湿気がこもる場所は結露対策を。
塗装板・化粧板:塗膜の強度を事前に確認。弱い塗膜はプライマー併用や別固定を検討。
木材:素地は吸い込みがあり密着しにくいことがある。目止め・プライマーで表面を整えると安定。
樹脂(PVC、アクリル、ポリカ等):可塑剤移行や応力割れに注意。相性の良いアクリル系、必要に応じて専用・低汚染タイプを選定。
コンクリート・モルタル:粉じんで付きにくい代表格。しっかり清掃・プライマー併用、またはフォーム系で追従性を確保。強度が必要なら他の固定方法を併用。
内装プロが教える実践フロー
1. 現場確認:温度・湿度・粉じん・下地強度・荷重方向をチェック。
2. テープ選定:期間(短期/長期)、屋内外、被着体、必要強度、再剥離の要否で絞り込み。
3. 施工前試験:小片で仮貼りし、初期タック・翌日の剥離性・糊残りを確認。
4. 下地処理:清掃→脱脂→乾燥→(必要なら)プライマー。
5. 貼り付け:はくり紙を少しずつ剥がしながら位置合わせ。圧着ローラーで丹念に押さえる。
6. 養生:必要に応じてクランプ・養生テープで仮押さえ。荷重は時間を置いてから。
7. 検査:端部の浮き、ズレ、白化(ストレスマーキング)をチェック。必要なら補強。
よくある失敗と対処
端から浮く:原因は油分・粉じん・圧着不足。端部だけでも2度押さえし、角は面取り気味に貼ると改善。
冬場に全然つかない:テープと被着体が冷えている可能性。温めて再試行。必要なら低温対応品を検討。
糊が残った:素材との相性か、長期使用・高温曝露が原因。リムーバーで優しく除去し、次回は低汚染タイプや再剥離タイプを選ぶ。
重さに負けてズレる:せん断荷重が大きい状態。面積不足・選定ミス。フォーム系の高強度へ切替、面積を増やし、接着剤・ビスを併用。
Q&A
Q. 壁紙(クロス)に直接貼っても大丈夫?
A. 再剥離タイプ以外は剥がす際にクロスを破る可能性があります。可能なら下地側(ボード・ベース材)にテープを使う、または専用フック・ピクチャーレールを検討。
Q. コンクリート面に貼りたい。
A. 清掃・脱脂・乾燥が必須。粉じんが多い場合はプライマー併用。長期固定や荷重が大きい場合はアンカー・ビス併用を基本に。
Q. 屋外でも使える?
A. アクリル系、特にアクリルフォーム系は耐候性に優れますが、紫外線・温度変化・水濡れへの配慮は必要。メーカーの屋外適合表示を確認し、施工要領に従ってください。
Q. どれくらいの重さまで耐えられる?
A. 製品・面積・被着体・荷重方向で大きく変動します。カタログのせん断/引張データは目安に過ぎず、実際は試験・安全率・併用固定で設計するのが原則です。
小ワザ・豆知識
位置決めが難しい時:はくり紙を全部剥がさず、端だけ折り返して仮留め→位置が決まってから残りを引き抜くとズレにくい。
段差を出したくない時:薄手の不織布基材を選ぶ。透けが気になる白材にはグレーや黒のテープがラインの影を抑えることも。
可塑剤移行対策:PVC系への長期貼付けは粘着劣化や汚染の恐れ。低汚染タイプやバリアフィルムを挟む方法を検討。
用語辞典(簡易)
初期タック:貼り付け直後の「つき始め」の強さ。作業性に直結。
最終接着力:時間経過後に到達する最大の接着力。多くは24〜72時間で安定。
せん断強度:面に沿って滑らせる方向の強さ。垂直面の保持で重要。
再剥離:剥がしたときに糊残りや下地破壊が少ない設計。養生や仮固定向け。
プライマー:下地の表面エネルギーを高め、密着を良くする下塗り剤。
まとめ
両面テープは「仮固定から仕上げまで」内装現場を支える万能選手です。ただし、万能に見えても選定と下地処理を誤ると、浮き・剥がれ・糊残りといったトラブルに直結します。基材・粘着剤の種類、被着体との相性、環境条件(温度・湿度・屋内外)を見極め、適切な圧着と養生、そして必要に応じた接着剤・機械的固定の併用が成功の鍵です。本記事のポイントを押さえておけば、「どの両面を使えばいい?」「どう貼れば長持ちする?」という疑問はもう怖くありません。現場での一手間が仕上がりを確実に変えます。安全第一で、気持ちのよい施工を実現していきましょう。









