ドレンホース完全ガイド:意味・役割・施工のコツとよくある不具合【内装現場の必修用語】
「ドレンホースってよく聞くけど、どこのこと? 交換は必要? 勾配ってどうやって取るの?」――そんな疑問に、現場で実務に携わる目線でやさしくお答えします。この記事は、内装・設備工事で頻出する現場ワード「ドレンホース」を、仕組みから使い方、施工の注意点、トラブル対策までまとめた入門ガイドです。初めての方でもイメージしやすいように、具体例と言い回しも紹介します。
現場ワード(ドレンホース)
| 読み仮名 | どれんほーす |
|---|---|
| 英語表記 | drain hose(condensate drain hose) |
定義
ドレンホースとは、主にエアコン(室内機)で発生する結露水(ドレン水)を屋外や排水系へ安全に流すための柔軟なホースのこと。室内機のドレンパンに溜まった水を、重力で流せるよう勾配をつけて配管します。一般家庭のルームエアコンでは外壁側へ出して自然排水とするケースが多く、店舗・オフィスや天井カセット形では排水系統(排水立て管や床排水)へ接続する場合もあります。
どこで使う設備と素材
主な用途はルームエアコンの排水。素材は軟質塩ビ(PVC)やポリエチレン(PE)が一般的で、柔らかく曲げやすいのが特徴です。屋外露出では紫外線で劣化しやすいため、化粧カバー内に納めたり、耐候タイプを選ぶのが現場の定番です。
形状・サイズの目安
蛇腹(ジャバラ)形状が多く、曲げ半径が小さいため狭所配管に適します。ルームエアコンでは内径約14〜16mmのサイズがよく使われます(機種・メーカーで異なります)。室外ではVP管などの硬質塩ビ管へ接続して保護・集水することもあります。
役割と仕組み
なぜ水が出るのか(結露の仕組み)
冷房運転中、室内機の熱交換器(アルミフィン)が冷えることで、周囲の空気中の水蒸気が露点を下回り水滴になります。これが「ドレン水」。ドレンパンに集めた水をドレンホースで安全に排出することで、室内に漏らさず、カビ臭や建材の腐朽を防ぎます。
ドレン経路の基本
室内機ドレンパン → 室内機ドレン口 → ドレンホース → 屋外(地表・雨樋・排水桝等)または室内排水系へ。重力で流すのが前提のため、勾配(下り傾斜)を確保します。ポンプを設置して強制排水するシステムもありますが、住宅の壁掛け形では自然排水が一般的です。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では「ドレン」「ドレン管」「ドレン配管」「エアコン排水」「ドレンホースライン」などと呼ばれます。硬質の塩ビ配管で延長する場合は「VP(塩ビ管)で拾う」「DVで立ち上げ」などと言うこともあります。
使用例(会話・指示の例)
- 「この室内機、ドレンは右出しで。外に振るまで逆勾配にならないよう注意してね。」
- 「外のドレンホース、紫外線で割れてるから交換しとこう。化粧ダクトに納めて耐候タイプに変更。」
- 「漏れてるって言われた。まずドレンの詰まり確認、ポンプで抜いて、勾配と接続部もチェックして。」
使う場面・工程
内装・設備の工程で、エアコン据付時の配管作業に含まれます。室内機の位置決め→冷媒配管・電源配線→ドレンホース取り回し→屋外側処理(化粧カバー、排水誘導)→通水試験という流れが基本。改修では既存ホースの劣化点検や勾配修正、ドレン詰まりの洗浄も作業対象です。
関連語
- ドレンパン(室内機内の受け皿)
- VP管・DV管(硬質塩ビ配管)
- 継手(ホースニップル、ソケット、エルボ)
- スリムダクト・化粧カバー(配管の保護・意匠)
- ドレンアップポンプ(強制排水用)
- トラップ(排水臭気逆流の防止用。必要な系統のみ)
施工の基本とコツ
勾配の取り方(最重要)
ドレンは「重力で下る」ことが命。一般的には1/100〜1/50程度の勾配を目安に、途中で水が溜まる“腹”や逆勾配を作らないことが大切です。水平器やスケールで目視確認し、長い距離を一気に落とすより、一定の下りを継続させるイメージで施工します。どうしても上げなければならない場合はポンプを検討します。
支持・固定
たるみは水溜まりの原因。結束バンドや配管サドルで等間隔に支持し、鋭角な折れやS字を避けます。外部では風で揺れて摩耗しないよう、壁面やダクト内でしっかり固定。ホース同士の擦れで穴が開くこともあるため、接触部は保護テープで当てを作るのも有効です。
接続と水密性
室内機のドレン口にしっかり差し込み、抜け止めバンドで締結。継手を使う場合は適合サイズを選び、差し込み深さを確保して漏れを防止します。屋外へ出る開口部は雨水の逆流を避ける納まり(下向きで余長を確保、壁から少し離すなど)を意識します。
紫外線・凍結対策
屋外露出のホースは紫外線で硬化・亀裂が入りやすい部材。化粧カバーに納める、耐候タイプを採用する、テープで被覆するなどの対策を。寒冷地では吐出端部が凍結しないよう、日陰・風下を避け、可能なら排水桝へ導くと安心です。
トラブルと対策
よくある不具合
- 室内機からの水漏れ:ドレン詰まり、逆勾配、接続部の抜けやシール不良が原因になりがち。
- カビ臭・ぬめり:ホコリと水分でバイオフィルムが発生。清掃と乾燥運転で予防。
- 屋外での滴下トラブル:隣家・通行動線・植栽への滴下。延長や受け皿、排水桝への導水で解決。
- ホースの劣化割れ:紫外線・熱・経年で硬化しひび割れ。耐候品+カバーで延命。
詰まりの予防
年1回を目安に通水確認。フィルター清掃と合わせて行うと実用的です。屋外端部にゴミ侵入防止のネットや先端カバーを付ける方法もありますが、目の細かいネットは逆に詰まりを招くことがあるため注意。緩いRで取り回し、最小限の継手で抵抗を減らすことも効果的です。
応急処置と交換タイミング
水漏れ時の応急処置は、屋外側からドレン用の手押しポンプや掃除機(養生必須)で吸引して詰まりを除去し、通水を回復させます。床や壁の濡れは速やかに拭き取り、二次被害を防止。ホースが硬化・ひび割れ・白化している場合、あるいは曲げるとパリっと割れる状態は交換時期です。目安は使用環境にもよりますが、屋外露出で数年〜十数年で劣化が進行します。
交換・メンテナンス手順(簡易)
準備するもの
- 適合サイズのドレンホース(耐候タイプ推奨)
- 抜け止めバンド・結束バンド・必要な継手
- カッター、ドライバー、ペンチ、ビニールテープ
- バケツ・ウエス(通水確認と養生)
交換の流れ
- 既存ルートと勾配を確認し、写真やメモで記録。
- 室内機側のバンドを外し、古いホースを撤去。
- 新しいホースを必要長にカット。バリは除去。
- 室内機ドレン口に奥まで差し込み、バンドで固定。
- 屋外側へ下り勾配で取り回し、等間隔で支持。
- バケツに向けて通水試験。漏れ・滞留がないか確認。
- 問題なければ化粧カバー等を復旧し、最終確認。
注意点として、室内機直下で急なRをつけない、長すぎる余長はたるみの元になるため適切にカットする、屋外端は虫やゴミが入りにくい向き・高さに調整する、などを意識しましょう。
メーカーと選び方
代表的なメーカー(例)
- 因幡電工(Inaba Denko):空調配管副資材の国内大手。ドレン関連部材や化粧ダクトで広く採用。
- カクダイ:水まわり金具・配管部材メーカー。住宅設備向けの排水部材を幅広く展開。
- 未来工業:電設・配管資材の総合メーカー。屋内外の支持・保護部材と合わせて使いやすいラインアップ。
いずれも空調・水まわりの副資材で実績があるメーカーです。地域流通や既存採用との整合で選ばれることが多く、アフターの入手性もポイントになります。
選定ポイント
- サイズ適合:室内機のドレン口に合う内径(例:14〜16mm)。
- 耐候性:屋外露出なら耐候グレードや化粧カバー併用。
- 柔軟性:狭所や曲げが多いルートは柔らかいタイプが施工しやすい。
- 付属品:バンドや継手、端末キャップの互換性・入手性。
用語辞典的な補足
ドレンホースとドレン管の違い
「ドレンホース」は柔軟なホース材、「ドレン管」はVP・DVなど硬質塩ビの配管材を指すことが多いです。屋外で保護や延長が必要な場合、室内機からはホースで出し、途中から塩ビ管で受けて排水桝へ導く、といった組み合わせ施工がよく行われます。
トラップは必要?
ルームエアコンの自然排水で、屋外へそのまま出す場合は通常トラップ不要です。臭気が上がる排水系統へ接続する場合は、仕様や現場規定に応じてトラップを設けて臭気逆流を防ぎます。維持管理しやすい位置の選定が重要です。
化粧カバーの役割
配管類(冷媒管・ドレン・電源)を一体で保護し、外観を整える部材です。紫外線・雨風からドレンホースを守る効果があり、劣化を抑えてメンテ性も向上します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ドレンホースの勾配はどのくらい必要?
A. 一般的な目安は1/100〜1/50程度。長い距離や配管抵抗が大きい場合は余裕を見て勾配を確保します。途中で水平・上りにならないことが最重要です。
Q2. 水漏れしたらまず何を確認する?
A. 屋外端からの水の出が悪いかを確認→詰まりなら吸引・通水で改善→改善しない場合は室内機ドレン口の接続、ルートの逆勾配や折れ、接続部の緩みをチェックします。必要に応じ専門業者へ相談を。
Q3. 先端から虫が入るのを防ぎたい
A. メッシュキャップや先端カバーを使用します。目が細かすぎるネットは目詰まりを招くため注意し、定期点検と清掃をセットで行いましょう。
Q4. 臭いが上がってくる
A. 屋外自然排水ならホース内の汚れ・滞留が原因のことが多く、清掃と十分な勾配確保で改善します。排水系統に接続している場合はトラップや封水の状態も点検します。
Q5. 交換のおすすめ時期は?
A. 紫外線で硬化・ひび割れが見える、手で触ると粉っぽく白化している、先端が割れて滴下が散る、といった症状は交換のサイン。冷房シーズン前の点検で状態を確認しましょう。
現場のチェックリスト(簡易)
- 室内機ドレン口の差し込みとバンド固定は良好か
- ルートは常に下り勾配になっているか(腹・逆勾配なし)
- 曲げは緩やかか(鋭角・S字・折れがない)
- 支持間隔は適切でたるみがないか
- 屋外端の位置・向きは適切か(滴下トラブルなし、ゴミ侵入防止)
- 紫外線対策(カバー・耐候材)は取られているか
- 通水試験で漏れ・滞留がないか
まとめ
ドレンホースは、エアコンの快適性と建物を守る「小さな要」。「常に下り」「たるませない」「屋外で守る」の3点を押さえれば、多くのトラブルは未然に防げます。水漏れや臭いが気になったら、詰まりと勾配、劣化状態をチェック。交換は難しい作業ではありませんが、見えない部分での逆勾配や接続不良は不具合の元になるため、不安があれば専門業者に相談するのが安心です。この記事が、現場ワード「ドレンホース」を正しく理解し、気持ちよく冷房シーズンを迎える手助けになれば幸いです。









