分電ユニットをやさしく解説:内装工事で電源を安心・効率よく配るための基本知識
「現場で“分電ユニット持ってきて”って言われたけど、分電盤とは何が違うの?」そんな戸惑い、はじめての内装現場ではよくあります。分電ユニットは、さまざまな職種が同時に電動工具や照明を使う内装工事で、電源を安全に“分けて配る”ための要のアイテム。本記事では、分電ユニットの意味から、現場での使い方、選び方、設置の注意点まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。読み終わるころには、「これさえ押さえれば安心」という実務の勘所がつかめます。
現場ワード(分電ユニット)
| 読み仮名 | ぶんでんユニット |
|---|---|
| 英語表記 | Temporary power distribution unit |
定義
分電ユニットとは、仮設電源や幹線から受けた電力を、複数の回路に安全に分けて各職種・各機器へ供給するための小型の分電装置です。持ち運びできる箱型・据え置き型が一般的で、漏電遮断器(ELB/RCD)や配線用遮断器(ブレーカ)、100V/200Vのコンセント、接地端子などを備え、現場内の「電源の中継基地」として機能します。仮設分電盤が“親”だとすれば、分電ユニットは作業エリアごとに置く“子分電”のイメージです。
なぜ必要か
内装現場では、同時に多くの電動工具・照明・集じん機が動き、延長コードの“タコ足”で無理につなぐと、発熱・漏電・ブレーカ遮断といった事故につながります。分電ユニットは、負荷を回路ごとに分散し、過負荷や漏電を個別に検出して遮断できるため、安全性と作業効率を両立できます。また、電源の集約・表示ができるので、誰がどこから電気を使っているかが一目でわかり、管理がラクになります。
仕組みと構成
分電ユニットの基本構成
一般的な分電ユニットは、次のような部品で構成されています。
- 主幹漏電遮断器(ELB):受電側の異常電流(漏電)や過電流を検出し、ユニット全体を遮断。感度電流や動作時間は機種により選定。
- 分岐ブレーカ:回路ごとに設けられ、過負荷・短絡時に該当回路だけを遮断。15A/20Aなど。
- コンセント:100V(2極接地付)、200V(接地極付)の差込口。屋内用/防雨型など仕様がある。
- 接地(アース)端子:機器の金属外装を大地とつなぎ、漏電時の感電を防止。
- 入出力端子・電源コード:幹線や仮設盤から受電し、ユニット内部へ供給。
- 筐体(ボックス):堅牢なケース。持ち手や吊り金具、床上設置用の脚などを備えることもある。
- 表示・付属:電源表示灯、回路ラベル、過熱警告ラベル、非常停止(機種による)。
ポイントは「主幹で大きな異常を止め、分岐で回路ごとのトラブルを限定する」二段構えの安全設計です。これにより、例えば一つの工具で漏電が起きても、現場全体を止めずに該当回路だけを落とすことができます。
種類と選び方
容量・回路数の考え方
選定は「同時に使う負荷の合計」と「使い方のクセ(同時使用率)」で決めます。迷ったら次の手順が実務的です。
- 1)使う機器を洗い出す(例:グラインダ600W×2台、丸ノコ1,000W×1台、集じん機1,200W×1台、照明200W)。
- 2)同時使用を想定して合算する(例:600×2+1000+1200+200=3,600W)。
- 3)突入電流や余裕をみて20~30%上乗せ(3,600×1.3≒4,700W)。
- 4)電圧で割って必要電流を確認(100V系なら約47A)。主幹容量と分岐数を選ぶ。
200V機器(大型集じん機、コンプレッサ等)が混在する場合は、100V系と200V系の回路を分けられるユニットを選び、誤接続防止のラベルや色分けがあるものが扱いやすく安全です。
現場環境での仕様を選ぶ
- 屋内・屋外/防水防塵:内装でも粉じん・湿気はつきもの。防雨型や保護等級の表示(例:IP44相当)を確認。屋外アプローチや給排水工事が近い場合は防雨型が安心。
- 可搬性:持ち手付き、小型軽量、スタッキング可能など。フロア移動が多い内装では取り回しの良さが効率に直結。
- コンセント形状と数:2P/3P、接地付、20A専用など。変換アダプタの多用はトラブルの元なので、最初から合う仕様を用意。
- 表示・管理性:回路ラベル欄、名札差し、電源ランプ。誰がどの回路を使っているか明確にできると、停電時の切り分けが早い。
安全装置・規格まわり
現場の感電・火災防止には、漏電遮断器の有無と感度設定が重要です。一般的な内装現場向けの可搬型では、30mAクラスの漏電遮断器が広く使われます(現場の規程や機器特性により異なるため、仕様書・指示に従って選定)。ブレーカは定格電流・遮断容量・動作特性(突入電流に対する余裕)を確認。接地は確実に取り、絶縁抵抗計(メガー)で絶縁状態を点検してから使用します(適用規格に適合する数値であること。一般的には0.1MΩ以上が目安とされます)。
設置手順と注意点
設置前のチェック
- 外観確認:割れ、変形、端子の緩み、コンセントのガタつき、焦げ跡がないか。
- 電源側の容量確認:仮設盤の契約電力・主幹サイズ、既設負荷の状況。ユニットを追加しても容量に余裕があるか。
- アース:接地端子の有無、接地線の導通。接地極は現場管理者と位置・方式を確認。
- 設置場所:動線外、乾いた平坦面、養生済み。避難経路や搬入経路を塞がないこと。
- 絶縁確認:必要に応じてメガーで測定、問題があれば原因を切り分けてから受電。
接続と立ち上げ
- 1)主幹・分岐ブレーカをすべてOFFにしてから電源に接続。
- 2)接地を先につなぐ(アース優先)。
- 3)主幹ブレーカON、電源表示灯を確認。
- 4)分岐は必要な回路だけ順にON。コンセント側にラベルを貼り、使用者と機器名を明記。
- 5)電源投入後はしばらく発熱・異音・焦げ臭がないか確認。ケーブルは養生し、踏圧・引っ掛けを防ぐ。
日常の運用・片付け
- 毎朝:外観・接地・ラベル確認、漏電遮断器の試験ボタンを定期的にテスト(現場ルールに従う)。
- 使用中:タコ足配線を避け、コードの過巻き・束ね過ぎによる発熱を防止。発熱箇所があれば即停電・点検。
- 終業時:分岐→主幹の順にOFF、接続機器を外す。水濡れ・粉じんが多い日は拭き取り・清掃。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では「分電ユニット」のほか、「分電BOX(ボックス)」「子分電」「仮設分電」「小型分電盤」などと言われることがあります。厳密には形状や用途で呼び分けることもありますが、会話ではおおむね「工具や照明用の電源を分ける箱」を指しています。
使用例(3つ)
- 「こっちの区画は分電ユニット増やして、集じん機は専用回路にしておいて。」
- 「ブレーカ落ちた?丸ノコは3回路目に振り分けよう。ラベル書き換え頼む。」
- 「今日は水回り工事だから、防雨型の分電BOXに入れ替えてケーブルも吊って養生しておいて。」
使う場面・工程
- 内装解体~下地:ハンドブレーカ、集じん機、投光器などの同時使用が多い。
- ボード・床:丸ノコ、インパクト、サンダーなど動力が分散。粉じん対策が重要。
- 仕上げ・設備:照明試験、器具の仮接続、接着機器など。低負荷でも漏電対策は必須。
関連語
- 仮設電源:工事期間中だけ設置する臨時の受電設備。分電ユニットはその下流に接続。
- 分電盤:建物の常設または大きな盤。分電ユニットは小型・可搬のことが多い。
- 漏電遮断器(ELB/RCD):漏電を検知し素早く遮断する保護装置。
- 配線用遮断器(MCB):過電流・短絡を遮断。回路ごとに設ける。
- 接地(アース):感電・火災防止の基本。ユニットの接地端子に確実に接続。
ありがちなトラブルと対処
ブレーカが頻繁に落ちる(過負荷)
- 症状:分岐ブレーカが作業開始時や負荷集中時に遮断。
- 対処:使用機器の合計容量を見直し、回路を分散。大きな突入電流がある機器(集じん機等)は単独回路へ。
- 予防:同時使用率を見込んだ回路設計。20~30%の余裕を持つユニットを選定。
主幹が落ちる(漏電・短絡の疑い)
- 症状:主幹ELBが遮断、分岐では止まらない。
- 対処:分岐をすべてOFFにして主幹ON、1回路ずつ復帰し原因回路を特定。該当機器・コードを交換・乾燥・清掃。
- 予防:水濡れ・粉じん対策、防雨型の選定、定期清掃。コード傷・圧潰の早期発見。
発熱・焼損臭がする
- 症状:コンセントやプラグが熱い、焦げ臭い。
- 対処:即時停電、接触不良・緩み・過負荷を点検。差し込みのガタつきがあれば交換。
- 予防:定格に合うプラグ・延長コードを使用。コードのドラム巻きっぱなしに注意(発熱)。
メーカーと入手方法(例)
分電ユニットは購入のほか、レンタルでの手配が一般的です。現場仕様や期間で柔軟に選べるため、内装工事ではレンタル活用が多く見られます。代表的な国内メーカー・ブランドの例としては、次のような企業があります。
- 日動工業:現場向けの仮設電源機器、分電ボックス、電工ドラムなどを幅広く展開。
- ハタヤリミテッド:プロ用のコードリール、照明、仮設電源関連製品で知られるメーカー。
- パナソニック:住宅・非住宅向けの分電盤、ブレーカ、配線器具全般を取り扱う総合電材メーカー。
- 日東工業:分電盤・キャビネット・キュービクルなど配電機器の大手。盤関連のラインアップが豊富。
- テンパール工業:各種ブレーカ、漏電遮断器の専業メーカーとして広く採用実績がある。
取り寄せは、電材卸・工具商社・レンタル会社からがスムーズ。特にレンタルでは、防雨仕様・回路構成・コンセント形状などを指定できるため、現場条件に合わせた最適化が容易です。
よくある質問(FAQ)
- Q:分電ユニットと分電盤は同じもの? A:目的は同じ(電源を分ける)が、分電ユニットは可搬・仮設向けの小型装置を指すことが多く、現場の作業エリア単位で使います。分電盤は建物の常設や大容量のものを含む広い呼び方です。
- Q:200Vの差し込みがあるけど、誤って100V機器をつないだら? A:機器が破損する恐れが高く大変危険です。色分け・形状違い・ラベルで誤接続を防ぎ、必要なら物理的に差さらない構成を選びましょう。
- Q:延長コードをいくつもつないでいい? A:多段接続や巻いたままの使用は発熱・電圧降下・事故の原因。定格に合う太さと長さを選び、なるべく短く1本で引くのが原則です。
- Q:漏電遮断器のテストは必要? A:定期的なテストは重要です。現場ルールや取扱説明に従い、試験ボタンで動作確認を行いましょう。異常があれば使用を中止して点検します。
- Q:購入とレンタル、どちらが得? A:短期・仕様が頻繁に変わる現場はレンタルが合理的。中長期で同じ仕様を繰り返し使うなら購入も有力です。保守体制も合わせて検討しましょう。
現場で即使えるチェックリスト
- 容量:同時使用機器の合計+余裕20~30%で選定したか。
- 回路:高負荷・突入の大きい機器は専用回路にしたか。
- 保護:漏電遮断器の有無・感度は現場ルールに適合しているか。
- 接地:アースは確実に接続されているか、導通問題なし。
- 環境:粉じん・湿気対策(防雨・防塵)、ケーブル養生は十分か。
- 管理:回路ラベル・使用者名の明記、ブレーカ位置の共有は済みか。
- 点検:毎日の外観・発熱・臭い・緩みチェック、月次の詳細点検の実施。
安全と効率を両立するコツ
分電ユニットは「置いてつなぐだけ」の道具に見えますが、実は現場の安全・段取り・生産性を大きく左右する重要機材です。容量に余裕を持ち、使い方に合わせて回路を分ける。水や粉じんから守り、ケーブルはつまずかないように養生する。誰がどの回路を使うか見える化する。これだけで、ブレーカ落ちやトラブルはぐっと減り、作業は止まりにくくなります。分電ユニットを“ただの箱”ではなく“現場の交通整理役”として扱えば、内装工事はもっと安全でスムーズに進みます。
はじめは戸惑うかもしれませんが、本記事のポイントを現場で一つずつ実践してみてください。分電ユニットの選び方・置き方・使い方が身につけば、電源トラブルは怖くありません。明日からの現場で、さっそく活用してみましょう。









