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避雷針とは?仕組み・設置基準・現場での注意点を徹底解説【建設内装業者必見】

建設内装の現場で耳にする「避雷針」を総まとめ:役割・構成・設置の基本と内装工事での注意点

「避雷針って内装工事にも関係あるの?」そんな疑問を持つ方は少なくありません。雷対策は電気の専門領域と思われがちですが、実はルートの取り回しや貫通部の処理、点検口の計画など、内装の工程とも深く関わります。本記事では、現場でよく飛び交う“避雷針”というワードを、初心者にもわかりやすく解説。仕組み・構成・基本ルールから、現場での言い回し、内装目線の注意点、チェックリストまで、実務で役立つ情報を一気に整理します。

現場ワード(避雷針)

読み仮名ひらいしん
英語表記lightning rod / air terminal

定義

避雷針は、建築物に落雷が発生した際、雷電流を安全に大地へ逃がすための外部雷保護設備(LPS:Lightning Protection System)の受雷部を指す現場用語です。狭義では屋上の突針(エアターミナル)を指し、広義には引下げ導体(ダウンコンダクタ)や接地極(アース)、それらを接続する金物・ボンディング部材を含む一連の設備全体を指すこともあります。目的は「雷を呼び込むこと」ではなく、「建物や設備を損傷させない経路で雷電流を流すこと」です。

避雷針の役割と仕組み

避雷針は、建物の最も高い位置などに設置された金属製の受雷部(エアターミナル)が雷撃を受け止め、その電流を引下げ導体を通して、最終的に接地極へと流します。これにより、屋根や外装、内部設備(電気・通信機器など)への直接的なダメージや火災・感電のリスクを低減します。

雷保護は大きく次の2層で考えるのが基本です。

  • 外部雷保護(LPS):受雷部・引下げ導体・接地極・ボンディングなどの物理的経路で雷電流を逃がす仕組み
  • 内部雷保護:サージ防護デバイス(SPD)や等電位ボンディングで、配線や機器に侵入する過電圧・誘導雷を抑制する仕組み

この「外部」と「内部」をセットで整えることで、建物全体の耐雷性能が機能します。どちらか一方だけでは保護が不十分になるため、設計図書での方針確認が重要です。

構成部材と名称(現場で押さえる基礎)

受雷部(エアターミナル)

屋上など建物の最上部に設置される金属製の突針・棒・ワイヤー・メッシュなど。保護対象を「保護角法」や「ロールングスフィア法」などの設計手法でカバーするよう配置されます。形状は建物用途や意匠に応じて選定されます。

引下げ導体(ダウンコンダクタ)

受雷部で受けた電流を接地へ導く導体。銅テープや丸線などが用いられ、屋外立上り、外壁面、屋内シャフトなどに通すケースがあります。できる限り直線的で短いルート、緩やかな曲げ、確実な固定が基本です。

接地極(アース)

雷電流を大地へ拡散させる電極。単独のアース棒、アースプレート、基礎接地(鉄筋コンクリートの鉄筋を利用)など、建物条件に応じて選定されます。接地抵抗は小さいほど望ましいとされますが、目標値や工法は設計仕様・現地条件で決まるため、監理者の指示に従います。

等電位ボンディング

金属配管や鋼材、ケーブルラックなどを意図的に電気的に接続し、雷時の電位差を小さくする手当。これにより「側撃(サイドフラッシュ)」のリスクを抑えます。ボンディングバーやクランプを用い、接続部の確実な導通を確保します。

サージ防護デバイス(SPD)

電源・通信・計装などの回路に侵入する過電圧を抑制する保護素子。分電盤・制御盤・情報配線の入口などに段階的(多段)に配置し、外部雷保護と併せて内部機器を守ります。

設置位置とルート取りの基本(一般的な考え方)

具体的な数値や詳細は設計図書・適用規格の指示を優先しつつ、現場で押さえたい一般的なポイントは次の通りです。

  • 受雷部は屋根の高所・突出部(塔屋、機械基礎など)を適切にカバーできる位置に配置する。
  • 引下げ導体は最短・直線的なルートを心がけ、急峻な曲げや無理な折り返しを避ける。
  • 金属手すり・ラック・配管などとの距離やボンディングの要否を設計者と確認し、側撃や過電圧のリスクを低減する。
  • 貫通部は防水・防火区画の性能を損なわないよう、スリーブ/シーリング/耐火措置を規定通りに行う。
  • 接地は既存の接地網(基礎接地等)と整合を取り、不要なループや浮き接地を避ける。

現場での使い方

言い回し・別称

「避雷針」「エアターミナル」「避雷設備」「外部雷保護」「LPS」「引下げ(導体)」「雷アース」「ボンディング」など。狭義の“避雷針”は屋上の突針を指し、広義で設備全体を含むことがあるため、会話では「避雷設備」と言い換えると誤解が減ります。

使用例(3つ)

  • 「この塔屋の避雷針、引下げは北面ルートでOK? 防火区画の貫通処理も合わせて確認します。」
  • 「屋上手すりは金属だから、避雷系とボンディング要るか設計に確認しておいて。」
  • 「天井内に引下げ通すなら、点検口位置と固定金物のピッチ、仕上げとの取り合いを先に決めましょう。」

使う場面・工程

  • 施工計画/施工図作成時:ルート・固定方法・貫通部の納まりを関係職種で事前協議。
  • 先行工事:スリーブ設置、下地補強、ラックや支持金物の配置調整。
  • 電気設備工事:エアターミナル・引下げ導体・接地・ボンディングの施工と試験。
  • 内装工事:天井・壁内の取り回し、点検口の計画、仕上げとの干渉解消、耐火区画の復旧。
  • 竣工前:導通確認・接続部の目視点検、竣工図と実施状況のすり合わせ。

関連語

  • 外部雷保護(LPS)/内部雷保護(SPD)
  • 受雷部(エアターミナル)/引下げ導体/接地極
  • 等電位ボンディング/側撃(サイドフラッシュ)
  • 保護角法/ロールングスフィア法(保護範囲の考え方)

内装工事との関わり(実務ポイント)

避雷設備は電気工事の範疇ですが、内装の工程と密接に絡みます。先行段階での情報共有が仕上がり品質と安全性に直結します。

  • シャフト・天井内の経路計画:引下げ導体の通り道を確保。意匠天井・下がり壁・梁型との干渉をなくす。
  • 固定・支持:内装下地(LGS、木下地)に固定する場合は、電気と協議のうえ受けを設け、落下・緩みを防ぐ。
  • 貫通部の処理:耐火区画・遮音区画・防水層の復旧は仕様通りに。シーリング材が端子接触面に入り込み導通を妨げないよう配慮。
  • 点検性の確保:クランプ・接続部は点検口からアクセスできるよう配置。仕上げで完全に隠蔽しない。
  • ボンディングの連絡:金属下地・手すり・ラック類のボンディング要否を設計者に確認し、必要なら専用端子やバーを準備。
  • 美観・意匠配慮:露出配管・テープの見え方、色調整、カバーの採用可否は意匠と事前合意。

チェックリスト(内装・電気・防水との取り合い)

  • 施工図で「受雷部・引下げ・接地・SPD・ボンディング」の範囲と責任分界が明確か。
  • 天井・壁内のルートに必要なスリーブ、下地補強、点検口が記載されているか。
  • 防火区画・躯体貫通部の耐火措置方法(材料・工法・施工者)が決まっているか。
  • 屋上の防水貫通は誰が施工・復旧するか。保証条件に抵触しないか。
  • 金属建材(手すり、笠木、化粧パネル)とボンディング方針が一致しているか。
  • 完成後の測定・点検(導通確認、目視チェック)の引継ぎ手順と記録書式が用意されているか。

よくあるミスと防止策

  • 鋭角な折り返し配線:可能な限り緩やかに曲げ、不要なループを作らない。事前に通線経路をモックアップで確認。
  • 接続部の汚染・被膜混入:塗料やシーリング材がクランプ接触面に付着しないよう養生。締付トルク管理と再確認を実施。
  • ボンディングの失念:金属手すりやラックが設計上ボンディング対象かを確認し、専用端子で確実に接続。
  • 防火・防水性能の低下:貫通部の復旧が仕様外にならないよう、材料・職責・検査を明確化。
  • 点検性の不足:点検口が小さすぎる、位置が合わないなどの問題を事前協議で解消。
  • 図面と現場の不一致:仕上がり寸法や機器位置の変更が避雷系統に及ぶ影響を、設計者へ速やかにエスカレーション。

適用基準と確認の進め方

雷保護には法令・規格・設計方針が関係します。国内での具体的な適用は案件ごとに異なるため、最新の設計図書・監理指示を必ず参照してください。国際的にはIEC 62305シリーズ(雷保護)などが広く用いられます。現場では次の優先順位で確認すると安全です。

  • 設計図書・仕様書(避雷設備の要否・保護レベル・採用手法・ボンディング方針)
  • 監理者・設計者の指示(貫通部処理、固定方法、接地の取り扱い)
  • 関連法規・ガイドライン(建物用途や高さに応じた要件、電気設備の保護方針)

最終判断は設計者・監理者・電気担当の責任範囲で行われます。内装側は、取合い・仕上げ・点検性の観点から確実に情報共有しましょう。

代表的なメーカー・製品例(参考)

製品選定は設計仕様と適合規格の確認が前提です。以下は避雷設備・サージ対策で実績のある代表的なメーカー例です。

  • nVent ERICO(米):避雷設備、接地・ボンディング部材、SPDなど雷保護ソリューションで世界的に広く採用。
  • DEHN(独):外部雷保護部材とSPDの総合メーカー。設計資料や技術ドキュメントが豊富。
  • OBO Bettermann(独):各種電設資材とともに雷保護・接地関連製品を展開。
  • 音羽電機工業(日本):SPDや雷対策機器で知られる国内メーカー。建物内の過電圧対策を中心にラインアップ。
  • 昭電(日本):サージ・ノイズ対策機器を扱う国内メーカー。電源・通信ラインの保護機器を提供。

具体の型式・組合せは、建物の保護レベルや電源・通信系統の構成によって大きく変わるため、設計者と協議のうえ決定します。

施工から保守までの流れ(概略)

  • 計画・設計:保護レベルの設定、配置計画、ルート検討、材料選定。
  • 施工準備:施工図作成、関係職種(電気・内装・防水・躯体)の取合い調整、資材手配。
  • 先行作業:スリーブ・下地補強・貫通位置の確定、支持金物の設置。
  • 据付:エアターミナル設置、引下げ導体敷設、接地極の施工、ボンディング接続。
  • 内部保護:SPDの設置(電源・通信・弱電盤など)と結線。
  • 検査:導通・接続部の締付確認、目視点検、必要に応じて記録化。
  • 引渡し・保守:竣工図・試験記録の引渡し、定期点検(緩み・腐食・損傷・改修影響の確認)。

Q&A(初心者の疑問に答えます)

Q. 避雷針があると雷を呼び込みませんか?

A. 呼び込むのではなく、「安全な経路に導く」設備です。適切な設計・施工により、建物や機器への被害を減らせます。

Q. 戸建てや低層でも必要ですか?

A. 必要性は建物の高さ・周囲環境・リスク評価で決まります。局地的な落雷頻度や周辺の建物状況によって判断が変わるため、設計者の評価に従ってください。

Q. 内装業者が避雷設備を触っても大丈夫?

A. 接続や変更は原則として電気工事の担当範囲です。内装側は点検口・下地・貫通部の復旧など、取合いに集中し、導体そのものの切断・延長・再結線は行わないのが安全です。

Q. 避雷針があればSPDは不要ですか?

A. 不要ではありません。外部保護と内部保護は補完関係にあり、併用することで被害低減効果が高まります。

Q. 仕上げの塗装やシーリングで導体を覆ってもいい?

A. 接続・接触面の導通を妨げる塗膜やシール材の噛み込みは避ける必要があります。露出部の化粧カバーや塗装の可否は、製品仕様・設計方針に従ってください。

用語ミニ辞典

  • 避雷設備(LPS):建物の雷保護のための外部設備全体の総称。
  • エアターミナル:受雷部。屋上などに設置される金属の突針やワイヤー。
  • 引下げ導体:受雷部から接地へ雷電流を通す導体。
  • 接地極(アース):電流を地中へ拡散させる電極(棒・プレート・基礎接地など)。
  • 等電位ボンディング:金属体同士を電気的に接続し、危険な電位差を抑える施策。
  • SPD:サージ防護デバイス。過電圧から機器・回路を守る保護素子。
  • 側撃(サイドフラッシュ):雷時の電位差により、近接金属体間で放電が生じる現象。

まとめ:現場で迷わないための要点

避雷針(避雷設備)は、雷から建物と設備を守るための重要な仕組みです。内装工事の担当でも、ルート計画・貫通処理・点検性・ボンディングの要否など、関わる場面は多々あります。まずは設計図書と監理者の指示を確認し、電気・防水・躯体の各担当と早期に情報共有。仕上げに影響する点検口や固定方法は事前に合意し、接続部の導通を損なわない施工で、品質と安全を両立させましょう。国際的な考え方(例:IEC 62305)も参考に、案件に適した実装を進めることが、トラブルのない引渡しへの近道です。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

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  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
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  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
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