胴縁って何?内装職人が当たり前に使う“下地の横骨”をやさしく解説
図面や現場で耳にする「胴縁(どうぶち)」。なんとなく「下地の部材かな?」と思いつつ、どこにどう使うのか、木と金属の違いは?ピッチは?と疑問が尽きない方も多いはずです。本記事では、内装工事の実務で日常的に使う用語としての「胴縁」を、役割・種類・施工のコツまでやさしく整理。初心者でも今日から現場で会話が通じるよう、言い回しや使用例も具体的に紹介します。
現場ワード(胴縁)
| 読み仮名 | どうぶち |
|---|---|
| 英語表記 | furring strip(horizontal batten) |
定義
胴縁とは、壁や天井の仕上げ材(石膏ボード・合板・化粧パネル・サイディング等)を取り付けるために、既存の構造体(RC・木軸・軽量鉄骨など)に水平または垂直方向に取り付ける「下地用の細長い部材」です。主な目的は、下地の不陸(デコボコ)を調整して平滑面を作ること、仕上げ材を確実に固定すること、必要な空間(通気層・配線スペース・断熱スペース)を確保すること。材質は木(木胴縁)と金属(鋼製胴縁)が主流で、用途・性能要件・施工環境に応じて使い分けます。
胴縁の役割とメリット
下地の不陸調整で「まっすぐな面」を作る
マンションのRC壁や既存壁は、見た目以上に凹凸があります。胴縁を打てば、スペーサーやパッキンで微調整しながら通り(平面)を出せるため、仕上がりの段差やクロスのシワ、パネルの目違いを防げます。
仕上げ材を確実に固定する受けを作る
石膏ボードやパネルは、適切なピッチで確実にビス止めできる「受け」が必要です。胴縁はその固定ラインを作り、ビスの効きを安定させます。改修で既存面が脆い場合も、胴縁を介せば確実に固定できます。
空間(通気・配線・断熱)を確保する
胴縁の厚み分だけ壁の裏に空間が生まれます。これにより、表面結露のリスクを低減する通気層、電気配線や配管のルート、断熱材の納まりなどを確保しやすくなります。
納まりの自由度が上がる
巾木や見切り、開口部の見切りなどディテールの納まりにも胴縁は有効。例えば「胴縁厚でサッシとのチリを合わせる」「見切りの出面を揃える」といった細やかな調整が可能です。
種類と選び方(木胴縁・金属胴縁・樹脂系)
木胴縁(一般的・扱いやすい)
杉・米松などの木材を細長く加工したもの。室内壁の不陸調整や既存壁の改修、造作家具の下地などで幅広く使われます。切断・調整が容易で、軽量なのが利点。代表的な断面は12×30、12×45、15×45、18×45mmなど(現場・流通により差異あり)。厚みが大きいほど調整幅や配線スペースを取りやすくなりますが、部屋が狭くなるデメリットもあります。湿気が多い場所や防火制限が厳しいエリアでは採用可否を仕様書で確認しましょう。
金属胴縁(鋼製・寸法安定・不燃)
軽量形鋼を胴縁として用いる方法。内装下地で使われるハット形鋼(ハットチャンネル)、Z形・C形などの軽量形鋼が該当します。寸法安定性が高く、曲がり・痩せが少ないのが利点。不燃性が求められる箇所や高耐久が必要な外装下地にも適します。板厚は用途により異なりますが、内装ではおおむね0.5〜0.8mmが一般的(設計仕様に従う)。切断や固定には金属用の切断工具・ドリルねじが必要です。
樹脂・複合材胴縁(腐朽対策・外装向け)
樹脂や木粉+樹脂の複合材で作られた製品もあります。主に外装や水に晒されやすい場面での腐朽対策として選ばれます。内装では流通が限られるため、必要性や仕様条件を確認の上で採否を判断します。
選定の目安
- 防火・不燃が必須 → 鋼製が基本
- 改修で微妙な不陸を素早く調整 → 木胴縁が扱いやすい
- 屋外・湿気・耐久重視 → 鋼製または樹脂・複合材を検討
- 配線・断熱のスペース確保 → 胴縁厚みを15〜18mm以上で検討
- 仕上げ材の推奨ピッチ → 石膏ボードやパネルのメーカー仕様に合わせて@303または@455などを選ぶ
現場での使い方
言い回し・別称
現場では「木胴」「メタル胴」「横胴縁」「縦胴縁」などと呼ばれます。壁面ではボードの受けとして水平方向に打つことが多く、これを「横胴縁」と呼ぶのが一般的。外装下地では通気のために縦方向に打つことがあり「縦胴縁」と表現します。「受け胴縁」「割付胴縁」という言い回しもあり、目的に応じて名称が変わります。
使用例(3つ)
- 「このRC壁は不陸があるから、12ミリの木胴で通り取ってからPB貼ろう」
- 「ボードの受けが足りないから、スタッド間に胴縁を1本抱かせておいて」
- 「パネル割りに合わせて胴縁のピッチを@303で揃えて、ビスライン出しておいて」
使う場面・工程
- RCやALCの内壁に石膏ボードを張る前の下地作り
- 既存のクロス壁をパネルや合板で化粧直しする改修工事
- 軽量鉄骨(LGS)間仕切りの補強や受け追加
- 設備配管・電気配線のルート確保
- 外装の通気胴縁(外装は別分野ですが、言葉として同じ概念)
関連語
- 野縁・野縁受け:天井下地の格子材。壁の「胴縁」と対応する天井版のイメージ。
- スタッド・ランナー:LGS間仕切りの縦材(スタッド)と上下枠(ランナー)。胴縁はこれらの間に横材として抱かせることがある。
- GL工法:接着ボンドで直接ボードを張る工法。胴縁を使わず厚みを抑えられるが、配線スペースは取りにくい。
- @(アット)ピッチ:胴縁やビスの間隔を表す記号。@303、@455がボード施工でよく登場。
- 割付・通り:仕上げ材の寸法に合わせて下地の位置を計画すること。平面・直線性の確認を含む。
基本の施工手順(壁・木胴縁の例)
代表的な内装(RC壁に石膏ボードを張る想定)の流れを示します。現場や仕様で手順は変わるため、必ず設計図書・施工要領書を優先してください。
- 墨出し:仕上げ面位置を決め、床・壁・天井に基準通りを出す。コンセント・スイッチなどの開口も事前確認。
- 割付計画:仕上げ材(PBやパネル)のサイズ・ジョイント位置から胴縁の位置とピッチ(@303や@455など)を決める。
- 下地確認:下地の強度・湿気・付着粉じんをチェック。不陸が大きい箇所はスペーサーで調整する方針を決める。
- 胴縁取付:木胴縁をアンカー+木ねじ、またはコンクリートビスで固定。通りを見ながら、面を引きで確認。
- 配線・断熱:必要に応じて胴縁間に配線・断熱材を納める。防火区画貫通部の処理も忘れずに。
- ボード張り:石膏ボードはメーカー推奨のビス・ピッチで張る。ビスラインは胴縁中心を確実に捉える。
- 仕上げ:パテ・クロス・パネル等。目地や見切りの納まりを最初の割付計画に合わせて確認。
ビス・金物・固定のポイント
胴縁自体の固定と、仕上げ材の固定は考え方が異なります。下地側(RCやLGS)に確実に効かせること、仕上げ側(PB・パネル)に適合するビスを使うことの両立が大切です。
- 木胴縁→RC躯体:プラグ+木ねじ、またはコンクリートビス。粉じんは除去し、下穴径に注意。
- 木胴縁→木下地:木ねじ。割れ防止に下穴や端距離を確保。
- 金属胴縁→LGS:ドリルねじ(テックス)。板厚に合わせたねじ選定を。
- 仕上げ材→胴縁(木):石膏ボードビス(木下地用)をメーカー推奨ピッチで。
- 仕上げ材→胴縁(金属):石膏ボードビス(鋼製下地用)。先端形状とネジ山が異なるので混用しない。
ピッチと割付の考え方(@303と@455の意味)
石膏ボードや合板はモジュール寸法に基づいて設計されています。日本の内装では、ボード短辺が455mmピッチ、または303mmピッチでビスが効くように下地を組むのが一般的です。
- @303(約300mm間隔):9.5mm厚ボードや、高い平面性を求める場合に採用されることが多い。
- @455(約450mm間隔):12.5mm厚ボードなど、仕様により許容される場合が多い。
- 二重張り:外周・継ぎ目部の下地を増やし、ジョイントを千鳥にする計画が必要。
- パネル仕上げ:割付優先。目地位置に合わせて胴縁位置を調整する。
最終的なピッチは仕上げ材メーカーの施工要領や監理指示に従って決定しましょう。
よくある不具合と対策
- 面のうねりが出る:通り糸やレーザーでこまめに確認。スペーサーで調整し、強引にビスで引き寄せない。
- ビスが効かない・抜ける:下地強度を確認。RCは下穴径と埋め込み深さ、LGSは板厚とねじ種の適合を見直す。
- ビス位置が外れる:胴縁中央に墨を出す。ボード張り前にビスラインを可視化する。
- 鳴き(きしみ)音:木胴縁の含水率・たわみ、固定不足を点検。金属胴縁では弛みや干渉部材を確認。
- 結露・カビ:通気層の確保、断熱の欠損・気流止め、室内側の防湿計画を見直す。
安全・品質・法規の注意
- 防火・不燃要求:内装制限がかかる用途や区画では、仕上げ・下地ともに指定の仕様に従う(鋼製下地の指定が入ることあり)。
- 耐震・耐風(外装):外装胴縁は風荷重・取付強度の検討が不可欠。内装でも高天井や重量パネルは注意。
- 耐湿・防腐:水まわりや湿気の多い部位は、材料選定(樹脂・鋼製・防腐処理材)と納まりで対策。
- 電気・設備協議:配線・配管のルートと胴縁位置が干渉しないよう、着工前の取りまとめが重要。
代表的なメーカー・カタログの見方
胴縁は汎用品のため流通・銘柄が多様です。選定時は、仕上げ材のメーカー仕様と整合させるのが近道です。
- 石膏ボードメーカー(例:吉野石膏など):ボード厚と下地ピッチ、ビス種、二重張り仕様、耐火・遮音の組合せが詳しい。まずはここで必要要件を把握。
- 鋼製下地メーカー(例:JFE建材、日鉄建材など):ハット形鋼や各種軽量形鋼の寸法・板厚・許容スパンが記載。金属胴縁を使う場合は該当カタログで適合確認。
- 建材流通(木胴縁):寸法(厚み×幅×長さ)、樹種、含水率・含浸処理の有無を確認。揃わないサイズは代替寸法の可否を現場で検討。
カタログは最新版を参照し、現場の条件(防火・耐湿・遮音等)と合致させて採用を決めましょう。
ケース別の使い分け(内装の実例)
RC直壁+クロス仕上げ
12〜15mm木胴縁で不陸調整→PB12.5mm→パテ・クロス。配線が多い場合は18mm厚を検討。高層・戸境壁で遮音要求があれば、二重張りや間に吸音材を挟むなど仕様で対応。
LGS間仕切り+硬質パネル仕上げ
スタッド@303〜455→必要箇所に金属胴縁(ハット形鋼)で受けを追加→下穴不要のドリルねじで固定→パネル張り。重量パネルはメーカー推奨の受け間隔に合わせて増設。
改修で既存壁の上に合板増し張り
既存面の強度が不安→木胴縁で面を作り、確実な固定ラインを確保→合板t=9〜12mmを胴縁に留める。後から棚を付ける予定がある場合、合板の位置・範囲を事前に決めておく。
チェックリスト(現場着手前〜完了まで)
- 仕様書に「木/金属」「ピッチ」「厚み」「仕上げ」などの指示があるか
- 不陸・通りの基準線は出ているか(レーザー・通り糸)
- 貫通スリーブや配線ルートと干渉しないか
- ビス・アンカーの種類・長さ・本数は適正か
- 防火・防湿・遮音などの要求性能に矛盾がないか
- ビスライン(胴縁位置の墨)は仕上げ前に記録(写真・マーキング)したか
よくある質問(FAQ)
Q. 横胴縁と縦胴縁、何が違う?
方向の違いです。内装壁では水平(横)に打つことが多く、ボードの受けとして機能します。外装通気やサイディング下地では、通気方向・仕上げの割付に合わせて縦に打つこともあります。
Q. @303と@455はどちらが正解?
仕上げ材の仕様により正解が変わります。石膏ボードは厚みや枚数によって推奨ピッチが異なるため、メーカー要領に従ってください。迷ったら厳しい方(狭いピッチ)で計画し、監理に確認するのが安全です。
Q. 木胴縁と金属胴縁、どちらを選べばいい?
扱いやすさ・コストは木、寸法安定・不燃性は金属が有利です。防火・耐湿などの要件が厳しい場合は金属を優先。改修で調整量が読みにくい場合や作業スピード重視なら木が使いやすいです。
Q. 厚みは何ミリを選べばいい?
配線スペースや不陸の程度で決めます。軽微な調整なら12mm、配線や断熱を考えるなら15〜18mmが目安。仕上げの見切りやサッシのチリに影響するため、詳細は割付図で確認してください。
Q. GL工法と胴縁、どちらが良い?
厚みを抑えて施工スピードを重視するならGL工法、配線スペースや通気・後施工の柔軟性を重視するなら胴縁下地が有利です。建物条件・仕上げ要求と合わせて選びます。
まとめ:胴縁は“仕上げを美しく、強く、長持ちさせる”ための要
胴縁は、内装仕上げの美しさと耐久性を支える「横骨」のような存在です。不陸を整え、ビスの効く受けを作り、必要な空間まで確保してくれる。木・金属・樹脂と選択肢はありますが、重要なのは仕上げ材メーカーの要領と現場条件に合わせて、ピッチ・厚み・固定方法を正しく選ぶこと。この記事で基本がつかめたなら、次は図面の割付と施工要領書を手元に、現場で「どこに、どれを、どれくらいの間隔で」使うかを一緒に確認してみてください。きっと「胴縁」の会話がスムーズになり、仕上がりの質が一段上がります。









