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希釈率とは?建設内装現場で失敗しない正しい計算方法とプロのコツ

内装現場でよく聞く「希釈率」をゼロから理解する:正しい計算手順・判断基準・現場で失敗しないコツ

「希釈率って何%にすればいいの?」「どのくらい水(シンナー)を入れるのが正解?」——初めて材料を扱うとき、こんな不安を抱くのは当たり前です。この記事では、建設内装現場で職人が日常的に使う現場ワード「希釈率」を、初心者にもわかる言葉で徹底解説。正しい計算方法、現場での判断ポイント、よくある失敗と対策まで、プロの実務に基づいて丁寧にまとめました。読み終えるころには、自信を持って材料を作れるようになります。

現場ワード(希釈率)

読み仮名きしゃくりつ
英語表記Thinning ratio(Dilution ratio)

定義

希釈率とは、塗料・プライマー・シーラー・接着剤などに対して、粘度調整や作業性向上を目的に加える「希釈剤(清水や指定シンナー)」の割合を指します。多くの場合「原液に対して何%加えるか」で表し、たとえば希釈率10%なら「塗料100に対し希釈剤10を加える」という意味です。表記は%(パーセント)、倍数(◯倍希釈)、比率(100:10 など)で示されます。材料の種類と施工方法(刷毛・ローラー・吹付け)により適正範囲が指定され、メーカーの技術資料(TDS)の指示が最優先です。なお、2液型塗料のA液:B液の配合比は「混合比」であり、希釈率とは区別します(混合後に別途、希釈率が指定される場合があります)。

なぜ希釈率が大切か

希釈率は仕上がり品質と施工スピードの両方を左右します。適正範囲から外れると、塗りムラ・たれ・艶の不均一・乾燥遅延・密着不良などのトラブルにつながり、やり直しコストも発生します。逆に適正であれば、塗りやすく、かぶり(隠ぺい)も良く、規定の膜厚が確保され、耐久性も期待通りに。内装では臭気や安全配慮も重要で、指定外の希釈剤を使うと法令や社内基準に抵触する恐れもあります。

希釈率の基本の計算方法

百分率(%)表示の場合

計算式:希釈剤量 = 原液量 × 希釈率

例:水性上塗りを3.0kg作る。指定が「希釈率7%」なら、加える水は 3.0kg × 0.07 = 0.21kg(約210mL)。

ポイント:

  • 体積(mL/L)で指示されている場合は容量で量る。重量(kg)で指示ならはかりで量る。
  • 迷ったら同じ単位で揃える(重量なら重量、容量なら容量)。
  • 一度に入れず、半量ずつ様子を見て粘度で合わせる。

倍数(◯倍希釈)表示の場合

「2倍希釈」は、原液1に希釈剤1を加えて総量2にする意味で使われることが多いですが、メーカーにより表現が異なることもあります。必ず資料の「例示」や「作り方手順」を確認してください。

一般的な解釈の一例:

  • 2倍希釈(総量2)= 原液1:希釈剤1(希釈率100%)
  • 3倍希釈(総量3)= 原液1:希釈剤2(希釈率200%)

倍数表記は誤読が起きやすいので、現場では%に置き換えてメモしておくと安全です。

比率(100:10など)表示の場合

「原液100に対し希釈剤10」は希釈率10%と同義。たとえば原液5kgなら希釈剤は 5kg × 10/100 = 0.5kg です。

重量と容量、どちらで量るべき?

基本は「指示に従う」。水性は容量で量りやすく、溶剤系は比重の影響があるため重量で量ると誤差が少ないです。内装接着剤は「原液使用・希釈不可」の製品も多いので、希釈の可否を必ず確認してください。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 希釈(きしゃく)/薄め(うすめ)/割り水(わりみず)/シンナー割合
  • 「何%でいく?」「5%カットで」「今日は少し薄めに」などの略語・慣用句

使用例(3つ)

  • 「吹付だから上限までは薄めたいけど、まずは10%から様子見よう。」
  • 「石膏ボードが吸うから、シーラーは規定の下限で。濃いめで一発にしよう。」
  • 「クロスの糊はこの銘柄、希釈不可だよ。水を足さないで機械の粘度で合わせて。」

使う場面・工程

  • 下地調整:水性シーラー/プライマーの希釈(吸い込み・素地に応じて)。
  • 塗装:水性・溶剤系上塗りの刷毛・ローラー・吹付けごとの粘度調整。
  • 壁紙施工:でん粉系・合成樹脂系接着剤は「原液使用」が多い。希釈不可表示に注意。
  • 床施工:弾性床材用・木床用接着剤は希釈しないものが一般的。仕様書厳守。

関連語

  • 粘度:材料の流れやすさ。フォードカップなどで測る場合あり。
  • 固形分:乾燥後に残る成分。希釈しすぎると膜厚不足になりやすい。
  • 標準使用量:1㎡あたりの塗布量。希釈率とセットで管理。
  • 混合比:2液型材料のA/Bの配合。希釈率とは別概念。
  • ポットライフ:混合後の可使時間。季節で変動。
  • 塗り重ね可能時間:次工程に入れるまでの最短時間。

プロが教える判断と作り方のコツ

  • 最優先はメーカーの技術資料(TDS)とSDS。現場判断はその範囲内で。
  • 気温・湿度を記録。高温時は揮発が早く、低温・高湿度時は乾燥が遅い。
  • まず少量を試作。壁の隅や試し板で「たれ」「泡」「かぶり」を確認。
  • 一度に入れない。半量→撹拌→試し塗り→微調整の順。
  • 撹拌は攪拌機を使用。顔料ダマを完全にほぐし、希釈剤は最後に。
  • ストレーナーで濾過。ノズル詰まり・肌荒れ防止。
  • 吹付けはノズル径・圧力と希釈率をセットで最適化。
  • 吸い込みの強い下地は、シーラーを濃いめ(規定内の下限希釈)で均一化。
  • 深色は希釈上限に寄せすぎると隠ぺいが落ちやすい。控えめに。
  • ロット記録(日時・温湿度・希釈率・道具設定)を残すと再現性が高まる。

よくある失敗と対策

  • 希釈しすぎ:たれ、透け、艶ムラ、乾燥遅延、密着不良。対策=規定内に戻し、塗布量を確保。必要なら一旦除去・再塗装。
  • 希釈不足:ローラー目、オレンジピール、吐出不良。対策=少しずつ加えて粘度を下げ、道具設定も調整。
  • 分離・泡:撹拌不足。対策=攪拌時間の確保、低速から均一に、静置で気泡抜き。
  • 乾燥不良:低温・高湿度・過希釈・厚塗りが原因に。対策=環境調整、塗布量管理、時間を置く。
  • 下地トラブル:吸い込みムラや汚染。対策=適切なシーラー選定と希釈、試し塗りで判断。

内装でよく使う希釈剤の種類と注意点

  • 清水(上水道水):水性塗料・シーラーの希釈に使用。汚れ・不純物の多い水は避ける。
  • 指定シンナー:溶剤系塗料は「メーカー指定」のものを必ず使用。汎用シンナーの流用は不可。
  • アルコール系・専用希釈剤:特定材料向けに指定される場合あり。必ず適合表を確認。
  • 接着剤:希釈不可のものが多い。可否はラベル・TDSで事前確認。

代表的メーカーと資料の探し方

希釈率は製品ごとに異なるため、必ずメーカーが公開する技術資料(TDS)とSDSを確認してください。検索は「製品名 + TDS(技術資料)」が早道です。国内の代表的な塗料・接着剤・機器メーカーには以下のような企業があります(概要は一般的な説明)。

  • 日本ペイント:総合塗料メーカー。内装・外装・工業用まで幅広いラインアップ。
  • 関西ペイント:大手塗料メーカー。建築から自動車まで対応。技術資料が充実。
  • エスケー化研:建築仕上げ分野に強い。シーラー・上塗りなど内装製品も多数。
  • 大日本塗料(DNT):総合塗料メーカー。建築・重防食など広範囲。
  • ロックペイント:自動車補修をはじめ建築分野も展開。
  • コニシ(ボンド):内装・床用接着剤の大手。希釈可否の明示がわかりやすい。
  • セメダイン:建築・内装用接着剤メーカー。用途別に細かな仕様がある。
  • アネスト岩田:スプレーガン・コンプレッサの代表メーカー。吹付け条件設定に参考。
  • マキタ/HiKOKI:撹拌機・電動工具の主要メーカー。均一な撹拌に有用。

季節・環境による調整の目安

  • 夏(高温・低湿):乾きが早い。希釈率は控えめからスタートし、作業性で微調整。
  • 冬(低温・高湿):乾きにくい。希釈しすぎは禁物。下地温度を確認し、保温・換気を計画。
  • 雨天・高湿度:白化・乾燥遅延に注意。強制換気や養生見直しも検討。
  • 強い吸い込み下地:シーラーを規定内の濃いめで。2回塗りで均一化する方法も。
  • 吹付け時:周囲温度・圧力・ノズル径とセットで希釈率を決める。試し吹き必須。

安全・法令・マナー

  • SDS(安全データシート)で危険有害性・保護具・換気条件を確認。
  • 溶剤系は引火性・臭気に注意。火気厳禁、静電気対策、密閉容器で保管。
  • 防じんマスク/有機ガス用マスク、保護手袋・ゴーグルを着用。
  • 排水・廃液は処理ルールに従う。シンナーを排水に流さない。
  • 近隣・居住者への配慮(換気計画、作業時間、臭気対策)を徹底。

現場で使える「簡易早見」の作り方

毎回電卓を出すのは面倒。よく使う容量に対して、主要な%だけ手元メモを作っておくと段取りが速くなります。例(容量ベース):

  • 1Lの原液に対して:5%=50mL、10%=100mL、15%=150mL、20%=200mL
  • 4L:5%=200mL、10%=400mL、15%=600mL
  • 10L:5%=500mL、8%=800mL、10%=1L、12%=1.2L
  • 18L:5%=0.9L、7%=1.26L、10%=1.8L

バケツにマジックで目盛りを書いた「自分用メジャー」を作るのも実用的です。重量基準の材料は、デジタルはかりで同様の早見を作っておきましょう。

ケース別・実践計算例

例1:水性上塗りをローラーで(7%)

必要原液量2.5L。7%希釈なら水は 2.5L × 0.07 = 0.175L(175mL)。半量(90mL程度)入れて撹拌→試し塗り→残りを微調整。

例2:シーラー「2倍希釈」表記

原液3.0Lを「2倍希釈(総量2)」で作る場合、清水3.0Lを加えて総量6.0L。倍数表記はメーカーの定義を確認し、現場では「原液:希釈剤=1:1」とメモして齟齬を防ぐ。

例3:比率100:8の指示

原液6.0kgに対し、希釈剤は 6.0kg × 8/100 = 0.48kg。重量で量るよう指示があれば、はかりで厳守。

迷ったときのチェックリスト

  • 1. 製品のTDS・ラベルで「希釈可否」「希釈剤の種類」「希釈範囲」「単位」を確認したか。
  • 2. 施工方法(刷毛/ローラー/吹付け)に合う設定か。
  • 3. 気温・湿度・下地吸い込みを把握したか。
  • 4. 少量で試し塗りを行い、たれ・かぶり・肌を確認したか。
  • 5. 記録を残したか(希釈率・道具設定・環境)。

まとめ:希釈率は「指示に従う+現場で微調整」

希釈率は、単なる「薄め方」ではなく、仕上がり品質・工程管理・安全性を支える重要なパラメータです。基本は製品ごとに決められた範囲を守ること。そのうえで、気温・湿度・下地・道具に合わせて「少しずつ足して、粘度で合わせる」のがプロのやり方です。この記事の計算式とチェックリスト、早見の作り方を手元に置き、まずは小さな試し塗りから。確かな根拠と落ち着いた手順で、失敗のない内装仕上げを実現してください。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
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