- 建設内装でよく聞く「スタッコ」って何?意味・仕上げパターン・現場での指示方法までプロがわかりやすく解説
- 現場ワード(スタッコ)
- スタッコの基礎知識(種類・材料・パターン)
- スタッコの特徴(メリット・デメリット・適用箇所)
- 現場での使い方
- 現場で迷わないための「仕様の伝え方」チェックリスト
- 基本の施工手順(内装・合成樹脂系の例)
- 道具と資機材(現場の実用目線)
- メンテナンスと補修のポイント
- よくある勘違いQ&A
- 代表的メーカーと特徴(例)
- コストと工程管理のコツ
- 安全・品質管理(現場の注意点)
- スタッコを言葉で正確に伝える例(仕様書風の記載サンプル)
- ケース別アドバイス(内装での失敗回避)
- 打合せ前に準備したいもの
- まとめ:スタッコを上手に使いこなすコツ
建設内装でよく聞く「スタッコ」って何?意味・仕上げパターン・現場での指示方法までプロがわかりやすく解説
図面や現場で「ここはスタッコで」「スタッコ調にして」と耳にしたけれど、具体的に何を指すのかが曖昧……そんな不安はありませんか?スタッコは左官・塗装の世界で長く使われてきた質感豊かな仕上げですが、素材や工法が複数あり、現場では言い方もさまざま。この記事では、初めての方にもわかりやすく「スタッコ」の意味、基本の種類、施工の流れ、指示の出し方、よくある疑問まで、プロの目線で丁寧に整理します。読んだその日から現場打合せに自信が持てる内容です。
現場ワード(スタッコ)
| 読み仮名 | すたっこ |
|---|---|
| 英語表記 | stucco |
定義
スタッコとは、壁や天井に厚みのある意匠(テクスチャ)をつける仕上げの総称です。セメント・石灰など無機系の素材や、合成樹脂(アクリル系など)を主成分にした意匠塗材を、コテ・ローラー・吹付け用ガンで塗り付けて、砂粒感や凹凸のある表情を作ります。内装・外装どちらにも用いられ、ざらっとしたマットな質感、陰影のあるラフな風合いが特徴です。現場では「スタッコ仕上げ」「スタッコ調」「スタッコ吹き」などの言い回しで使われます。
スタッコの基礎知識(種類・材料・パターン)
素材別の分類
スタッコは「何で厚みとテクスチャを作るか」で大きく分かれます。
- 無機系(セメント・石灰系):歴史の長い本格派。硬く、荒々しい表情。下地や環境の影響を受けやすく、割れリスクやアルカリ性対策が必要。
- 合成樹脂系(アクリルなど):いわゆる意匠塗材。コテ塗り・ローラー・吹付け対応で扱いやすく、色数やパターンが豊富。内装でも外装でも広く使用。
「漆喰(しっくい)」「珪藻土」といった自然素材もコテで凹凸を作れますが、一般にスタッコはより砂粒感の強い厚付け意匠を指す場合が多いです。
工法別の分類
- コテ塗り(鏝仕上げ):職人の手仕事で陰影や動きを出す王道。パターンの自由度が高い。
- 吹付け(ホッパーガン/スタッコガン):材料を空気圧で吹き付けて粒状の凹凸を形成。面積が大きい現場に向く。
- ローラー:模様ローラーやマスチックローラーで比較的均一な凹凸を素早く出す。
代表的なパターン(呼び方の例)
- ラフスタッコ:コテの押さえ跡をあえて残した荒めのパターン。
- スパニッシュ調:山と谷のコブ状がランダムに現れる華やかな意匠。
- 塗りっぱなし(塗り放し):コテさばきのムラを味として残すシンプルな表現。
- 吹付けスタッコ:粒の大きさや散らばり具合で印象が大きく変わる。
注意点として、パターン名は厳密な規格用語ではなく、会社や職人によってニュアンスが異なることがあります。サンプル板やメーカー標準見本(チップ)で必ず合意形成しましょう。
スタッコの特徴(メリット・デメリット・適用箇所)
メリット
- 質感が豊かでデザイン性が高い:光の当たり具合で陰影が出て、空間の表情が生まれる。
- 小さな下地ムラが目立ちにくい:フラット塗装よりも凹凸が視線を散らしてくれる。
- 手仕事の個性を出せる:同じ材料でもコテさばきや吹き圧で違いが出る。
留意点(デメリット)
- 汚れが付きやすい・掃除しにくい:凹凸にホコリがたまりやすい。内装なら水拭き可の仕上げやトップコートの選択を検討。
- クラック(ひび)のリスク:厚みや下地の動き、乾燥条件に影響。材料選定と下地処理、施工管理が重要。
- 補修跡が出やすい:テクスチャの再現性が難しく、部分補修では境界が見えやすい。
よく使う場所
- 内装:店舗の壁・天井、住宅のアクセント壁、共用部の壁など。
- 外装:モルタル外壁の意匠仕上げ、改修での再仕上げ。雨掛かり・汚れ対策にトップコートや撥水剤を併用する場合がある。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では次のような言い方が日常的に使われます。意味の幅は重なりますが、ニュアンスに違いがあるので補足します。
- スタッコ仕上げ:スタッコ材でテクスチャをつける仕上げ全般。コテ・吹付けどちらも含む。
- スタッコ調:スタッコ風の質感。実材料が別(例:壁紙、別種の意匠塗材)でも、見た目がスタッコに近い場合に使う。
- スタッコ吹き:ホッパーガンで粒状に吹き付ける工法を指すことが多い。
- ラフスタッコ/スパニッシュ:パターン名の呼称。
使用例(会話・指示のサンプル)
- 「この壁一面はラフ目のスタッコで。色は〈メーカー標準No.○○〉、厚みは1.5ミリくらいでお願いします。」
- 「天井はスタッコ吹き、粒は細かめで。養生を強めにして、照明器具は先付け前にやり切りましょう。」
- 「エントランスはスタッコ調でいきたいけど、汚れが心配なのでトップコート艶消しも見積りに入れてください。」
使う場面・工程
- 設計・内装提案段階:意匠イメージの方向性決め。サンプル選定、面積と場所の確定。
- 施工計画:下地(石膏ボード、モルタルなど)に応じて下地処理・シーラー・ベース材・トップコートを決定。乾燥養生や他工種との取り合い調整。
- 実施工:養生→下地調整→シーラー→主材塗り・テクスチャ形成→乾燥→必要に応じトップコート。
- 引渡し・メンテ:タッチアップの方法、清掃可否の共有。
関連語(一緒に押さえたい現場用語)
- ジョリパット:合成樹脂系の代表的な意匠塗材ブランド。スタッコ調の表現が可能。
- 吹付タイル/マスチック:厚塗り・凹凸を作る外装塗材工法の一種。スタッコとは親戚のような関係。
- ホッパーガン(スタッコガン):材料を空気圧で吹き付ける専用ガン。
- シーラー/フィラー:下地の吸い込みを止める、微細な巣穴を埋める下塗り材。
- ラスモルタル:金網(ラス)にモルタルを塗り付けた外壁下地。外装スタッコの下地に使われることがある。
現場で迷わないための「仕様の伝え方」チェックリスト
スタッコは言葉だけでは伝わりにくい仕上げです。以下をセットで伝えると認識ズレが減ります。
- 仕上げ範囲:壁のどの面・天井のどの範囲か、端部の納まり(見切り材、巾木、建具枠との取り合い)。
- 材料種別:無機系か合成樹脂系か、メーカーと品名(可能なら)。
- 工法:コテ塗り/吹付け/ローラー、パターン名、粒の大きさ、押さえの強さ。
- 色:メーカー標準色番号・日塗工番号など。現物サンプルで合意。
- 膜厚の目安:例)t=1.0~2.0mm。厚すぎると割れや乾燥時間が増える。
- 下地条件:石膏ボードの継ぎ目処理レベル、既存塗膜の状態、吸い込み具合。
- 仕上げ保護:トップコートの有無(防汚・防水・艶)、清掃方法。
基本の施工手順(内装・合成樹脂系の例)
ここでは室内壁で一般的な合成樹脂系意匠塗材を用いたコテ仕上げの流れを紹介します。メーカー仕様書が最優先ですが、全体像を掴む助けになります。
- 1. 下地確認:ビス浮き・割れ・欠損を点検。石膏ボードは継ぎ目処理(パテ・テープ)をレベルに合わせて実施。
- 2. 養生:巾木・床・建具・器具類を丁寧に養生。吹付けの場合は養生範囲を広めに。
- 3. シーラー塗布:吸い込み止め・付着力確保。既存塗膜上では密着性を要確認。
- 4. ベース塗り(必要に応じて):フィラーや下地調整材で巣穴・段差をならす。
- 5. 主材塗り・テクスチャ形成:コテで塗り付け、押さえやハネ返りで表情を作る。吹付けなら圧力・吐出量・距離を調整。
- 6. 乾燥・養生:温度・湿度・換気に注意。メーカー指定の乾燥時間を厳守。
- 7. トップコート:防汚・防水・耐久性向上目的で選定。艶は意匠に合わせて調整(多くは艶消し)。
- 8. 仕上げ確認:色・パターン・肌合いを立会いで確認。補修が必要なら同条件で再現。
道具と資機材(現場の実用目線)
- 鏝(角鏝・仕上鏝・プラスチック鏝など):表情の出し方が変わる。押さえの強弱で陰影が変化。
- ホッパーガン/コンプレッサー:吹付けスタッコ用。粒の大きさはノズルと材料で調整。
- 模様ローラー/マスチックローラー:均一な凹凸をスピーディに再現。
- 養生資材:マスカー、布テープ、ノンスリップ養生シート。
- 下塗り材:シーラー、フィラー、パテ類。
メンテナンスと補修のポイント
スタッコは凹凸があるぶん、メンテナンス性と補修性が仕上げ選定の鍵です。
- 日常清掃:柔らかいブラシで埃を払い、汚れは中性洗剤を薄めてスポット清掃。強い擦りはテクスチャ損傷の恐れ。
- 補修:欠けや割れは同材料で肉付け・肌合わせ。境界が出やすいため、目立たない位置でぼかすか、見切りで切る方法が無難。
- トップコート再塗装:外装や汚れやすい室内では定期的なトップコート更新で美観を維持。
よくある勘違いQ&A
Q1. 漆喰とスタッコは同じ?
A. どちらもコテで塗る仕上げですが、漆喰は石灰系でフラット~やわらかな表情、スタッコは砂粒感のある厚付け意匠が中心です。設計意図や清掃性、耐久性で選び分けます。
Q2. ジョリパット=スタッコ?
A. ジョリパットは合成樹脂系の意匠塗材の製品名です。そのうち「スタッコ調」のパターン表現が可能という関係。現場では「ジョリでスタッコ風に」といった言い方をすることがあります。
Q3. スタッコは防水?外壁にそのまま使って大丈夫?
A. 材料によって性能は異なります。防水層そのものではないため、下地設計・雨仕舞・トップコート選定が重要です。外壁ではメーカー仕様書の下地・塗り重ね・乾燥条件を厳守してください。
Q4. ひび割れが心配です。
A. 下地の動き、厚み過多、乾燥不良が主因です。伸びのある合成樹脂系を選ぶ、下地のクラック処理を先行する、厚みを守る、温湿度管理を行うことでリスクを軽減できます。
代表的メーカーと特徴(例)
スタッコ調の意匠仕上げは複数メーカーが展開しています。選定は仕上げ面積、屋内外、清掃性、コスト、施工性を総合判断します。
- アイカ工業株式会社:内外装用の意匠塗材を幅広く展開。コテ塗りで多彩なテクスチャ再現が可能で、スタッコ調仕上げのバリエーションが豊富。
- エスケー化研株式会社:建築仕上塗材の大手。多彩意匠塗材ラインアップがあり、コテ・ローラー・吹付けでスタッコ風の表現に対応。
- 菊水化学工業株式会社:外装・内装の仕上塗材メーカー。吹付け・厚塗り・意匠系など、現場に合わせた各種システムを提供。
- 四国化成工業株式会社:左官材・塗装仕上材に強み。内外装の意匠材を多数ラインアップし、砂粒感のある仕上げに対応。
具体の品番や工法は、対象部位(内装/外装)、下地、所要性能(防汚・透湿・防藻など)で変わります。必ず最新のカタログ・仕様書を確認してください。
コストと工程管理のコツ
- コスト感:一般的なフラット塗装より手間がかかります。面積・パターンの粗さ・色数・トップコートの有無で差が出ます。
- 工程取り:乾燥に時間がかかるため、工程表は余裕を持って。吹付けは他 trades の仕上げ直前を避け、先行で段取り。
- サンプル承認:現場調色・現場パターン出しで最終合意。照明条件(色温度・照度)も本番に近づけると失敗が減ります。
安全・品質管理(現場の注意点)
- 粉じん・臭気対策:マスク・換気・養生徹底。溶剤系が絡む場合は火気厳禁。
- 温湿度管理:低温・高湿度は乾燥不良の原因。メーカー指定範囲を守る。
- 付着不良の防止:油分・埃・脆弱層を除去。旧塗膜上は付着試験や試験塗りが有効。
- エッジ処理:出隅・入隅は割れやすい。メッシュ併用や押さえ加減で対処。
スタッコを言葉で正確に伝える例(仕様書風の記載サンプル)
以下はあくまで書き方の例です。実際はメーカー仕様に合わせてください。
- 内装壁:合成樹脂系意匠塗材 スタッコ調コテ仕上げ t=1.0~1.5mm、下塗り=アクリル系シーラー、色=標準色No.○○、トップコート=艶消し防汚タイプ。
- 外装壁(モルタル下地):下地調整(微弾性フィラー)→合成樹脂系意匠塗材 吹付けスタッコ(細粒)→トップコート(低汚染型)。
ケース別アドバイス(内装での失敗回避)
- 明るい照明の店舗:陰影が強調されるため、パターンはやや細かめ+トップコート艶消しで光の反射を抑える。
- 住宅の子ども部屋:凹凸が引っかかりやすいので、角はアール気味に押さえるか、アクセント壁に限定。
- 水回り近接:直接の水掛かりは避け、必要なら撥水・防カビ仕様を検討。
打合せ前に準備したいもの
- 参考写真と実サンプル(できればA4以上のサンプル板)。
- 色見本(日塗工などの番号と現物色)。
- 希望のパターン画像に「ここまで荒く」「押さえは弱く」など具体メモ。
- 予算と納期の目安(トップコート有無で見積り2案)。
まとめ:スタッコを上手に使いこなすコツ
スタッコは「厚みのある凹凸で質感をつくる意匠仕上げ」の総称です。素材(無機系/合成樹脂系)、工法(コテ/吹付け/ローラー)、パターン(ラフ・スパニッシュなど)を組み合わせて、空間に独特の存在感を与えられます。一方で、汚れやすさ・補修跡・クラックといった課題があるため、下地と材料の選定、サンプルでの合意、乾燥・養生の管理が成功の鍵です。現場では「スタッコ仕上げ」と一言で済ませず、材料・工法・パターン・色・厚み・トップコートをセットで伝えること。これだけで仕上がりの満足度が大きく変わります。疑問があれば、メーカー仕様書と職人の経験値を頼りに、小さく試してから大きく施工する。これが、スタッコを味方につける最短ルートです。









