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ノロ処理とは?建設現場で失敗しない正しい方法と注意点を徹底解説

ノロ処理をやさしく図解:内装現場で迷わない基本と実務のコツ

「ノロ処理って何?ノロって汚れのこと?それとも何かを塗るの?」——初めて現場でこの言葉を聞くと、多くの方が同じ疑問を持ちます。実はノロ処理には、現場や工種によって「意味が2通り」あります。本記事では、内装・左官・タイル・床仕上げの現場で日常的に使われる「ノロ処理」を、初心者の方にもわかる言葉で丁寧に解説。実務でそのまま使える手順・チェックポイント・失敗例と対策、安全面まで網羅し、明日からの現場で迷わない知識をお届けします。

現場ワード(ノロ処理)

読み仮名のろしょり
英語表記cement slurry treatment / laitance removal(用途により2通り)

定義

ノロ処理とは、現場で「ノロ」と呼ばれるセメントの微粒子や薄いペースト(スラリー)に関係する下地処理の総称です。大きく分けて次の2つの意味で使われます。

1) 付着向上のために、セメントと水を練った薄いペースト(セメントノロ)を下地に刷毛塗りする処理。主に左官・タイル・モルタル系の「湿式」工法で、上塗りとの密着を高める目的で行います。
2) コンクリート打設後に表面に浮いた脆弱層(レイタンス=ノロ)を除去する処理。床仕上げ・防水・塗床など「仕上げ前」の下地調整で、はがれを防ぐ目的で行います。

ノロ処理の2つの意味と背景

なぜ同じ「ノロ処理」が真逆の内容(塗る/取る)を指すのか。それは工種と目的が異なるからです。左官・タイルの湿式では、同質のセメント分を介して界面を連続させるのが基本。一方、ビニル床や塗床などの仕上げでは、脆弱なレイタンスがあると接着不良を招くため「完全除去」が基本となります。現場で指示を受けたら、まず「塗るノロなのか、取るノロなのか」を確認することがトラブル回避の第一歩です。

現場での使い方

ノロ処理は現場の言い回しに幅があります。誤解を避けるため、文脈とセットで覚えましょう。

言い回し・別称

  • ノロを引く、ノロ引き(=セメントノロを塗布すること)
  • ノロ取り、レイタンス取り(=脆弱層を除去すること)
  • 目荒らし、ケレン(=下地を粗す・削る・清掃する総称。ノロ取りを含む)
  • 素地調整(=下地全般の調整。ノロ処理は素地調整の一部)

使用例(3つ)

  • 「モルタル上塗りの前にノロ引いといて。濡れ肌でつなぐよ。」(付着向上のノロ)
  • 「床シートのりを使うから、コンクリのノロ取りとケレン頼む。」(レイタンス除去)
  • 「この打継ぎは一回ノロ落としてからカチオンでならす。」(レイタンス除去+下地調整)

使う場面・工程

  • 左官工事:モルタル塗り重ね、土間モルタルの打継ぎ前にノロ引き。
  • タイル工事:湿式張り(モルタル張り)での下地と中塗りの界面処理にノロ引き。
  • 床仕上げ(長尺シート・塩ビタイル・塗床):接着前にレイタンス除去(ノロ取り)。
  • 防水・塗装:プライマー塗布前のレイタンス除去。

関連語

  • レイタンス:コンクリート表面に浮いた脆弱層(白い粉状〜薄皮状)。
  • ケレン:ワイヤーブラシやグラインダー等での機械的な除去・清掃。
  • プライマー/シーラー:下地と仕上げの密着を助ける材料。ノロの代替や併用も。
  • カチオン系下地調整材:レイタンス除去後に平滑化・補修で用いる樹脂モルタル。
  • 濡れ肌:下地を適度に湿らせた状態。ノロ引きの前提条件。

具体的な手順とポイント

1) 付着向上のノロ(セメントノロを塗る場合)

対象:左官の塗り重ね、モルタル下地と仕上げモルタルの界面、湿式タイルの下地など。

目的:同質のセメント分を界面に介在させ、上塗り(モルタル・タイル)がしっかり食いつくようにする。

手順(現場の一般的な流れ)

  • 下地確認:浮き・クラック・油分・粉塵・はらい残しがないか確認。脆弱部は撤去・補修。
  • 清掃:ほうき、ブロワー、集塵で粉塵除去。油分は中性洗剤や専用クリーナーで除去。
  • 湿し(濡れ肌づくり):打ち水や霧吹きで下地を均一に湿らせ、表面水はのぞく。吸水を安定させるのが狙い。
  • ノロの調合:セメントと水を練り、ヨーグルト〜ポタージュ程度の粘度に。ダマが残らないように混和。水が多すぎると強度低下の原因。
  • 塗布:刷毛・ブラシで薄く均一に延ばす。厚塗りは不可。界面をぬらすイメージで。
  • タイミング:ノロが乾ききる前(指で触るとしっとりする程度)に上塗りを連続施工。

ポイント

  • ノロは「接着剤」ではなく「界面連続の補助」。厚すぎると弱層化します。
  • 乾燥しすぎ・ぬれすぎはどちらも密着不良の原因。適度な濡れ肌管理が肝心。
  • 外気温や風が強い日は急乾燥に注意。必要に応じて打ち回しを小分けに。

2) レイタンス除去のノロ処理(ノロ取り)

対象:コンクリート床やモルタル下地の仕上げ前(長尺シート・塩ビタイル・塗床・防水・プライマー塗布前など)。

目的:接着不良の原因となる脆弱な表層(白い粉・薄皮)を完全に除去し、健全な骨材質に到達させる。

手順(現場の一般的な流れ)

  • 状態確認:白華・粉化・油分・レベル不陸・含水状態を点検。含水が高いと仕上げ不可のケースあり。
  • 機械ケレン:ワイヤーブラシ、スクレーパー、床ポリッシャー+剛毛ブラシ、グラインダー+ダイヤカップ等で物理的除去。集塵機を併用。
  • 清掃:産業用掃除機で微粉を徹底除去。乾拭きで白い粉が付かないレベルまで。
  • 必要に応じて:中性洗浄や酸洗い(指定時のみ)。酸洗いは中和・十分な洗い流し・乾燥が必須で、メーカー仕様がある場合のみ採用。
  • 下地調整:カチオン系下地調整材で不陸や巣穴を補修・平滑化。
  • プライマー:仕上げ材・接着剤の指定に従いプライマー塗布。乾燥後、粘着確認。

ポイント

  • 「白い粉が手につく」「表面がパリパリめくれる」はレイタンス残りのサイン。再ケレン。
  • 機械ケレンは粉じんが多い。集塵一体型工具やHEPAクラスの集塵機で暴露低減。
  • 仕上げ材のメーカー仕様が最優先(酸洗い禁止・含水率規定など)。

チェック基準(現場での目安)

ノロ引き(塗る)

  • 下地は濡れ肌で表面水なし。
  • ノロは薄く均一で、ダマ・厚溜まりがない。
  • 上塗りはノロが乾燥する前に連続で施工。

ノロ取り(除去)

  • 手でこすっても白い粉が付かない。
  • 表面が骨材のザラつきまで到達している。
  • 掃除機・拭き取り後、再汚染がない。

よくある失敗と対処

  • 厚塗りノロで界面がはがれた:薄く改める。厚みが必要ならノロではなく下地調整材を使用。
  • ノロが乾いてから上塗りして密着不良:作業区画を小さくし、連続施工を徹底。
  • レイタンスを残したまま床シート施工し反り・浮き:全面再ケレン、プライマーからやり直し。
  • 油分汚染を見落として密着不良:洗浄→再ケレン→メーカー指定プライマーで復旧。
  • 含水過多で接着不良:含水率測定(目安として各メーカーの指定以下)。乾燥期間の確保を優先。

安全・衛生の注意

  • セメント系は強アルカリ。皮膚炎や化学熱傷のリスク。耐薬品手袋、長袖、保護メガネ必須。
  • 粉じん対策:防じんマスク(区分適合)、集塵機併用、換気の確保。
  • 酸洗いは原則メーカー指示がある場合のみ。中和・排水処理に十分配慮。
  • 重量物・機械工具の取り扱いはKY(危険予知)を実施。延長コード・転倒・飛散にも注意。

ノロ処理とプライマーの使い分け

近年は仕上げ材や接着剤が高機能化し、メーカー指定のプライマーや下地調整材を使うケースが増えています。特にビニル床シート・タイル・塗床・防水などは、「セメントノロを塗る」よりも「レイタンス除去+プライマー」の方が標準になることが多いです。迷ったら次の優先順位です。

  • 最優先:採用する仕上げ材・接着剤のメーカー仕様書・施工要領書。
  • 次点:現場の標準仕様書(設計・監理の指示)。
  • 現場合理:下地の状態(含水・強度・汚染)を踏まえた施工者の判断。

「ノロ引いといて」と言われても、仕上げがビニル床系なら原則NGの可能性があります。必ず仕様を確認し、適切な処理に言い換えて提案しましょう(例:「ノロ取り後、指定プライマーに変更して良いですか?」)。

現場コミュニケーションのコツ(確認テンプレ)

  • ノロは「塗る」ほうですか?それとも「取る」ほうですか?
  • 対象範囲はどこからどこまでですか?(区画・面積・端部)
  • 仕上げ材・接着剤のメーカー・品番は?仕様書はありますか?
  • 必要な下地レベルは?(含水率・平滑度・目荒らしの粗さ)
  • 使用工具・養生・安全対策の条件は?(集塵・防音・時間帯)

代表的な工具・材料(例)

特定製品の推奨ではなく、現場でよく見かけるカテゴリーとメーカーの例です。採用は必ず仕様書・安全資料(SDS)で確認してください。

  • 電動工具(ケレン・研削):マキタ、HiKOKI、ボッシュ(グラインダー・ポリッシャー・集塵機)
  • 手工具:スクレーパー、ワイヤーブラシ、剛毛ブラシ、ケレン棒、コテ、刷毛
  • セメント:太平洋セメント、住友大阪セメント(セメントノロの母材)
  • 接着剤・プライマー:コニシ(ボンド)、タイルメント(タイル用接着材・プライマー各種)
  • 下地調整材(カチオン系など):タイルメント、他各仕上げ材メーカーの標準品
  • PPE:防じんマスク、保護メガネ、耐アルカリ手袋、集塵対応の養生資材

ケース別の考え方(実務の目安)

タイルの湿式張り

中塗り〜仕上げ間でノロ引きが一般的。濡れ肌と薄塗り、連続施工が鍵。乾燥してしまったら再度ノロを引くか、作業を分割する。

ビニル床シート・塩ビタイル

ノロ取り(レイタンス除去)+下地調整+指定プライマーが基本。セメントノロを塗るのは避ける。カール・浮き・目地開きの原因になる。

塗床・防水

ノロ取りの徹底が品質を左右。平滑度・粗さ(目荒らし)・含水率・露出骨材の状態まで管理。プライマーの適正塗布量・乾燥時間を守る。

「ここで迷う」を解消:Q&A

Q1:ノロの粘度はどれくらい?
A:刷毛で塗れて、薄く広がる程度(ヨーグルト〜ポタージュの間)。ダレず、界面が濡れる薄さが目安です。

Q2:酸洗いはした方がいい?
A:仕様書に明記がある場合のみ。酸洗いは扱いが難しく、残留や中和不良が逆効果。基本は機械・手工具での物理除去が安全です。

Q3:雨上がりの外部土間でノロ引きしていい?
A:表面水が残る状態は不可。十分に表面水を切って濡れ肌を作る。気象条件によっては延期を検討。

Q4:ノロ取り後に白華がまた出た。やり直し?
A:白華(エフロレッセンス)は再発することがあります。仕上げ前に再清掃・再ケレンで対応し、必要なら含水管理を見直す。

用語ミニ辞典

  • ノロ(スラリー):セメントの微粒子が混じった薄い泥状のもの。文脈で「塗るべきもの」「除去すべきもの」の両方を指す。
  • レイタンス:コンクリート表面に浮いた脆弱層。粉状〜薄い皮膜で、接着不良の原因。
  • ケレン:削り・擦り・清掃などの下地処理全般の俗称。
  • 濡れ肌:下地が適度に湿り、表面水がない状態。セメント系の付着に適する。
  • カチオン系下地調整材:密着に優れたポリマー改質モルタル。段差・巣穴の平滑化に使用。
  • プライマー/シーラー:下地の吸い込みを抑え、接着を安定させる下塗り材。
  • 目荒らし:表面を粗くして機械的な食いつきを高める処理。
  • 打継ぎ:コンクリートやモルタルの継ぎ目。処理方法が品質を左右する。

現場の段取りと品質管理のコツ

  • サンプル面で事前確認:小面積でノロ引き・ノロ取り後の仕上げを試し、監理と合意。
  • 写真記録:ケレン前後、清掃、プライマー塗布、粘着確認などの工程写真を残す。
  • 環境管理:温度・湿度・風。急乾燥や結露を避け、工程に無理をしない。
  • 端部・入隅:脆弱層が残りやすい要注意エリア。手工具で追い込み。

まとめ:ノロ処理で迷わないために

  • ノロ処理には「塗る」と「取る」の2通りがある。まずはどちらかを確認。
  • 湿式(左官・タイル)は薄く均一なノロ引き+連続施工が要点。
  • 床仕上げ・防水・塗床はノロ取りが基本。脆弱層ゼロを目指す。
  • 仕様書・メーカー要領が最優先。疑問は早めに確認し、提案で食い違いを解消。
  • 安全・衛生・粉じん対策を徹底。品質は下地で決まる。

「ノロをどうするか」を正しく判断できれば、はがれ・浮き・クラックなどのトラブルはぐっと減ります。明日の現場で「ノロ処理お願い」と言われたら、本記事のポイントを思い出し、確実な段取りと安全第一で進めてください。きっと仕上がりが変わります。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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