框戸(かまちど)を基礎から解説|構造・種類・現場での言い回しまで丸わかり
「框戸って何?フラッシュ戸とはどう違うの?」と、図面や現場で急に出てくる言葉に戸惑うことはありませんか。建設内装の世界では、同じ「ドア」でも構造や呼び方の違いで納まりや選ぶ金物が変わります。本記事では、現役施工者の視点で、框戸の意味・構造・使いどころ・現場での言い回しまでをやさしく解説。読み終えるころには、図面の読み違いや発注ミスを防ぎ、現場で自信を持って会話できるようになります。
現場ワード(框戸)
| 読み仮名 | かまちど |
|---|---|
| 英語表記 | stile-and-rail door(frame-and-panel door) |
定義
框戸(かまちど)とは、縦框(たてがまち)と横框(よこがまち)で四方の枠を組み、その内側に「鏡板(かがみいた)」やガラスなどの面材をはめ込んだ戸の総称です。和洋を問わず用いられ、木製建具の框組戸や、店舗で使われるアルミ框ドア(ガラス框ドア)も広義には框戸に含まれます。対義的な構造に、内部がハニカムや合板でフラットな「フラッシュ戸」があります。
框戸の基本構造と各部名称
構造のイメージ
框戸は「枠(框)」+「面材」でできています。四周を縦框・横框が囲み、中央に鏡板やガラスを入れ、部材の接合は「ほぞ組」「相欠き」「留め」「ダボ」「ビスケット」などで行います。可動部には丁番や引手・戸車など、用途に合わせた金物を取り付けます。
主要部材の用語
縦框(左右の縦材)/横框(上下の横材)/中桟(なかざん・中間の横材)/鏡板(木の面材)/ガラス(透明・型板・網入り等)/ほぞ・ほぞ穴/留め(45度継ぎ)/溝(面材を受ける溝)/戸先・戸尻(開閉側・丁番側)/面取り・小口/パッキン・モヘア(気密材)。
フラッシュ戸との違いをサクッと理解
比較の要点
フラッシュ戸は合板を芯材で挟みフラットに仕上げた戸で、軽量・コストを抑えやすいのが特徴。一方、框戸は枠組みに面材を落とし込むため、立体感と高級感が出やすく、ガラスや格子など意匠バリエーションが豊富です。強度面では、部位ごとの補強設計がしやすく、打ち替え・面材交換などの修理も比較的容易です(構造・仕様により異なります)。
どちらを選ぶ?現場での使い分け
意匠性重視やガラス開口が欲しい場合は框戸、汎用の居室ドアでコストを抑えるならフラッシュ戸。湿気・外部に近いエリアや店舗出入口では、耐久・耐候性からアルミ框ドアが選ばれることが多いです。
框戸の種類(用途別・素材別)
用途別
室内開き戸の框戸(洋室・水回り・収納)/框引き戸(片引き・引き違い・引き込み)/親子扉・両開きの框戸/FIXやランマと組み合わせた意匠的建具/店舗のアルミガラス框ドア(自動ドアと同意匠で揃える場合も)。
面材の違い
木製鏡板(ムク・突板・框と同材で統一感)/ガラス(透明、型板、くもり、網入り、合わせ、Low-Eなど)/樹脂パネル(軽量・割れにくい)/ルーバー・ガラリ(通気を確保)。
素材別の枠(框)
木製(スギ・ヒノキ・タモ・ナラ・アッシュ等、突板仕上げも多い)/アルミ(店舗・外部寄り)/スチール(防火・耐久・意匠)。素材選定で重さ・メンテ・価格帯が変わります。
メリットと注意点(プロの実感)
メリット
- 意匠性が高い:段差や陰影がつき、空間に表情が出る
- 開口・採光の自由度:ガラスや格子で光・風を通せる
- 補修しやすい:面材やガラスのみの交換が可能な設計も多い
- 反りに強い設計が可能:框と中桟で狂いを抑えやすい
注意点
- コスト・手間:フラッシュ戸より製作工程が多く、価格が上がりやすい
- 重量:面材やガラスによっては重くなり、金物選定に注意
- クリアランス管理:反り・乾燥収縮を見越した建付けが必要
- ガラス安全:人が当たる恐れのある部位は、安全ガラス(強化・合わせ)を選定
寸法・納まりの基本イメージ
一般的な範囲(目安)
室内の木製框開き戸で厚み35〜40mm、框巾は40〜120mm程度が目安(意匠・強度・金物条件で変動)。引き戸は30〜36mmあたりが多く、ガラス框ドア(アルミ)は製品規格に従います。クリアランスは床・枠・召し合わせ(引き違い)それぞれで基準が異なるため、採用する金物(戸車・レール・丁番・パッキン)に合わせて設計・調整します。
納まりで見るチェックポイント
- ガラス周り:押縁・ビート・パッキンの仕様と厚み
- 金物:丁番数、ドアクローザーの有無、引手・錠前の掘り込み可能寸法
- 塗装・仕上げ:面材と框の木口見え方、面取りの統一
- 建付け:反り対策の中桟配置、吊り込み後の調整余裕
図面に「框巾」「中桟位置」「面割り」「ガラス厚」「ビート色」「金物品番」を明記しておくと現場トラブルが減ります。
現場での使い方
言い回し・別称
- 框戸/框組戸/框ドア(ガラス框ドア・アルミ框ドア)
- 縦框・横框・中桟・鏡板・押縁(おしいれ)・ビート(ガラス押さえ)
- 框回り(框まわり)=框部分の加工・納まり全般を指す現場表現
使用例(会話のイメージ)
- 「ここは框戸だから、縦框に丁番3枚で。芯出し頼むね。」
- 「親子の子扉はガラス框でいくから、割り付けこの図面どおりで。」
- 「洗面は湿気があるので、框は集成材+ウレタン塗装にしよう。」
使う場面・工程
- 計画段階:採光・意匠性・通気の要望がある場所で採用検討
- 実施設計:框巾・面材・ガラス仕様・金物・建具枠の取り合いを確定
- 現調・製作:開口寸法を実測、製作図承認後に建具店で加工
- 現場取付:枠取付→吊り込み(または吊り込み→建付け調整)→金物取り付け→シーリング
- 検査・引き渡し:建付け、開閉力、隙間、ガラス安全表示を確認
関連語
- フラッシュ戸/框組/ほぞ・相欠き・留め/中桟/鏡板/押縁/ビート
- 戸先・戸尻/召し合わせ/ドアクローザー/丁番/戸車・レール
- パッキン・モヘア/ランマ/FIX/ガラリ/ガラス(強化・合わせ・網入り)
図面と現場で迷わない「割り付け」と「金物」
割り付け(面の見え方)
框戸は「見附(框巾)」「中桟位置」「面割り」が意匠の肝です。特にガラスの割り付けは、ガラスサイズに対する強度・重さ・割れやすさに直結します。ガラスは芯々寸法からビートやパッキンを差し引いた寸法で製作しますので、製作図の指示を正確に行いましょう。
金物選定
重量としては、ガラス入りの框戸はフラッシュより重くなる傾向です。開き戸なら丁番はサイズ・枚数ともに余裕を持たせ、必要に応じてドアクローザーやフロアヒンジを採用。引き戸は戸車容量とレール仕様(上吊り/下レール)を確認し、ソフトクローズの可否や戸先の召し合わせ金物も合わせて決めます。
材料と仕上げの考え方
木材の選び方
室内でよく使うのは、タモ・ナラ・アッシュなど比較的硬くて傷に強い材。和の空間ではスギやヒノキも。反り・収縮のリスクを考え、ムクではなく集成材+突板仕上げを選ぶケースも多いです。塗装はウレタン、オイル、UVなど。水回りや店舗では耐汚染・耐水性の高い仕上げが安心です。
ガラスの安全と意匠
腰下がガラスの場合や、人がぶつかりやすい導線では「強化ガラス」や「合わせガラス」を標準に。視線対策には型板や乳半、デザイン重視ならクリア+格子、または縦長スリットの採光など、用途に応じて選べます。
アルミ框ドア(ガラス框ドア)との使い分け
どんなときにアルミ?
外部に近い出入口、店舗ファサード、共用部の扉など、耐候性・メンテ性が求められる場所ではアルミ框ドアが定番です。躯体の歪みや開閉頻度が高い環境でも安定した性能が期待でき、各種錠前や自動ドアとの親和性も高いです。
木製框戸との違い
木製は温かみ・意匠自由度に優れ、室内建具に適しています。アルミは耐久・防火・防犯オプションが豊富で、ガラスの大開口にも対応しやすいのが強み。どちらも「框+面材」の思想は共通ですが、製品規格・金物取り合い・施工手順は異なるため、仕様書に沿って進めるのが鉄則です。
メーカー例(参考)
室内建具(木製を中心に)
- パナソニック(Panasonic Housing Solutions):室内ドアの意匠バリエーションが豊富
- DAIKEN(ダイケン):機能建材に強く、建具・枠のトータル提案がしやすい
- EIDAI(永大産業):突板・化粧シートの仕上げ品質に定評
これら既製品はフラッシュ戸中心ですが、框組調デザインやガラススリット入りモデルもあります。本格的な框組は建具店での特注製作が一般的です。
アルミ框ドア(店舗・共用部)
- YKK AP:店舗用フロントシステムと一体で選べる
- LIXIL(リクシル):フロント・サッシとコーディネートしやすい
- 三協アルミ:出入口からFIX連装までシステム提案が可能
各社ともガラス厚や錠前のバリエーションがあり、耐風圧・防火・防犯仕様など用途に合わせて選定できます。詳細は各メーカーの最新カタログをご確認ください。
採寸・発注時のチェックリスト
失敗しないための要点
- 枠形状と開口寸法:有効寸法と方立・ランマの有無
- 框巾・厚み:金物(丁番・錠前)の掘り込み可能寸法に合っているか
- 面材仕様:鏡板かガラスか、ガラス種・厚み・フィルム要否
- 重量計算:丁番枚数、戸車容量、クローザー選定に反映
- クリアランス:床見切り・レール・パッキン分を見込む
- 仕上げ:塗装色、木口の見え方、面取り寸法
- 安全表示:ガラスに安全シール・マーキングが必要か
施工・調整のコツ(現場メモ)
狂い・反りへの備え
吊り込み前に框戸の直角・反りを確認し、必要なら中桟位置で一時固定。湿度が高い現場では、塗装乾燥後すぐに梱包を外さず、取り付け直前に開封して反りを防止します。調整丁番や座金で微調整できる設計にしておくと安心です。
ガラス廻り
面材溝の清掃、パッキンのかみ込み、ビートの納まり方向を統一。ガラスは端部欠けに弱いので、取り回しは必ず二人以上で。合わせ・強化はマーキング位置(隅)を指示します。
音・気密
戸当たりにモヘア・パッキンを入れると、音・埃・光漏れが改善。特に引き違いは召し合わせ部の気密材選定で性能が変わります。
よくある質問(初心者の疑問に回答)
Q1. 框戸とフラッシュ戸、耐久性はどちらが上?
使い方次第です。框戸は枠組で強度設計ができ、部位別の補修もしやすいのが利点。フラッシュ戸は軽くて反りにくいのが強み。重量物(ガラス)や頻繁な開閉なら、框戸に軍配が上がる場面もあります。
Q2. ガラス入りの框戸は危なくない?
人が触れる可能性のある位置には、強化ガラス・合わせガラスを選べば安全性は大きく向上します。施設用途では法規・指針に従い、安全表示(シール)を行います。
Q3. 室内でもアルミ框ドアを使っていい?
問題ありません。耐久やデザイン上の理由で採用するケースもあります。ただし、断熱・遮音・重量感などが木製と異なるため、空間の雰囲気に合わせて選択します。
現場で役立つ用語小辞典(ミニ)
覚えておくと会話が早いワード
- ほぞ組:框同士を噛み合わせる伝統的な接合。強度と精度が高い
- 留め(とめ):45度で角を合わせる仕口。意匠性が高いが精度が必要
- 押縁・ビート:ガラスや面材を押さえる縁材・ゴム
- 召し合わせ:引き違いの戸が合う部分。気密・防音の要所
- 戸車・レール:引き戸の走行部材。荷重・ソフトクローズ対応を確認
- 面取り:角を落とす加工。安全性と見た目が向上
まとめ|框戸を理解すれば、図面も現場もスムーズに
框戸は「框で枠を組み、面材を収める」シンプルな発想の建具です。フラッシュ戸との違いは構造・意匠・重量にあり、採光・通風・高級感を求める場所で真価を発揮します。現場では、框巾・中桟位置・面割り・金物・ガラス仕様の5点をしっかり決め、採寸と製作図で齟齬をなくすことが成功のコツ。この記事を足がかりに、図面の読み解きと職人さんとの会話がぐっと楽になります。迷ったときは「どの素材で、どの面材をどう収めるか」を起点に考えれば、最適解が見えてきます。









