内装職人が教える「積層材」完全ガイド｜意味・種類・選び方・現場での言い回しまで
「積層材って、合板と何が違うの？」「現場で『メラミンの積層でいこう』って言われたけど、どういうこと？」——そんな疑問を持って検索された方へ。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる現場ワード「積層材」を、専門外の方にもわかる言葉でやさしく解説します。種類の違い、使いどころ、選び方、会話での言い回しまで、現場の肌感に基づいた実践的な内容に絞ってまとめました。読後には、「何を頼めばいいか」「どこに使えるのか」が具体的にイメージできるはずです。
現場ワード（積層材）
| 読み仮名 | せきそうざい |
|---|---|
| 英語表記 | laminated material |
定義
積層材とは、薄い素材（木の単板・紙・樹脂シート・竹の薄板・ガラスなど）を何層も重ねて接着し、板や角材にした材料の総称です。層を重ねることで、反り・割れを抑えたり、必要な方向に強度を高めたり、表面に意匠や機能（耐汚染・耐擦傷・耐水・不燃など）を持たせられるのが特長です。内装の現場では、木質系（合板・単板積層材LVL・集成材・積層フローリング）や、化粧板系（メラミン化粧板HPL・低圧メラミンLPM・ポリ合板）、合わせガラスなどを、用途に応じて「積層材」とひとまとめに呼ぶことがあります。
現場での使い方
言い回し・別称
「積層材」は汎称なので、現場では用途に合わせてより具体的に呼び分けます。
- 「合板」「ベニヤ」＝木の単板を交互に貼った積層材（一般的に合板のこと）。
- 「LVL（単板積層材）」＝同方向に単板を積層した芯材・補強材。
- 「集成材」＝挽き板（ラミナ）を積層した梁・カウンター材。
- 「メラミン（HPL）」＝樹脂含浸紙の積層でできた化粧板。
- 「ポリ合板」＝ポリエステル化粧板を合板に貼ったもの。
- 「積層フローリング」「複合フローリング」＝多層構造の床材。
- 「竹の積層」＝竹の薄板を積層した板材・カウンター材。
使用例（会話でそのまま使えるフレーズ）
- 「手すり下地、ビスが効くようにLVLの積層材で補強入れておいて。」
- 「カウンターはメラミンの積層で天板仕上げ、エッジは同柄の曲げテープで巻こう。」
- 「この壁一面、化粧合板の積層で割付して、見付は3ミリの目地で揃えて。」
使う場面・工程
- 下地・補強工程：手すり・テレビ・棚のビスが効くように、石膏ボード裏に合板やLVLを先行で入れる。
- 造作・家具工程：カウンター・収納の扉・側板・天板に、メラミン化粧板や化粧合板を用いる。
- 建具・枠：フラッシュドアの芯材（ハニカム/LVL）や、枠材の割れ・反り対策として積層材を使う。
- 床工事：複合フローリング（積層構造）や、捨て張り合板により床鳴りを抑制。
- 内装仕上げ：不燃認定の化粧板（不燃化粧板系）で法規対応しつつ、デザインを表現。
関連語
- 化粧板／化粧合板／ポリ合板／メラミン（HPL）／CPL／LPM
- 合板（構造用・普通合板・耐水合板）／LVL（単板積層材）／集成材（GL）
- 突板（天然木薄板）／エッジテープ（曲げテープ）／ポストフォーム
- F☆☆☆☆（ホルムアルデヒド発散等級）／JAS（日本農林規格）／不燃・準不燃認定
積層材の主な種類と特徴（内装でよく使うもの中心）
木質系の積層材
内装造作のベースになる、最も利用頻度の高いカテゴリーです。
- 合板（Plywood）：木の単板を繊維方向が直交するように重ねた板。反りに強く、捨て張り・下地・造作家具の芯材に多用。サイズは3×6（910×1820）や4×8（1220×2440）が一般的。
- LVL（単板積層材）：単板を同方向（主に繊維方向を揃える）に貼り合わせ、一定の強度と寸法安定性を持たせた芯材・補強材。局所的にビスが効くので手すり・金物の下地に好適。
- 集成材（Glulam）：挽き板を繊維方向を揃えて積層した材。意匠性・厚みの出しやすさからカウンターや棚板にも採用される。木口の化粧・含水調整がポイント。
- 積層フローリング（複合フローリング）：基材（合板やHDF）＋表面突板/シートの多層構造。無垢より寸法安定性が高く、床暖房にも適合する製品が多い。
- 竹の積層材：竹の薄板を圧密・積層した板材。硬く傷が付きにくい。含水・接着管理を丁寧に。
化粧板系の積層材
表面意匠（木目・単色・石目など）や機能（耐擦傷・耐汚染・耐熱）を狙って使います。
- メラミン化粧板（HPL：High Pressure Laminate）：樹脂含浸紙を高圧で積層した硬質化粧板。天板・カウンターの表面に多用。耐久性が高い反面、エッジ処理が必要。
- 低圧メラミン（LPM）：基材（MDFやPB）上で成形するタイプ。収納内部や側板などコストと量産性に優れる。
- ポリ合板：ポリエステル化粧板を合板に貼ったもの。建具や巾木・見切りなどの面材に。
- 化粧合板（突板貼り）：合板の表に天然木の薄板（突板）を貼ったもの。質感が高く、ウレタン塗装等で仕上げる。
その他（用途限定の例）
- 合わせガラス（Laminated Glass）：ガラスと中間膜を積層。安全性・防音を確保しつつ意匠性を高めたい内装で使用。
積層材が現場で選ばれる理由（メリット）と注意点（デメリット）
メリット
- 寸法安定性：反り・伸縮が抑えられ、内装の仕上がりが安定する。
- 強度の方向性を設計可能：合板は面内剛性、LVLはビス効き・曲げ強度など用途に合わせやすい。
- 大判・厚みの自由度：3×6や4×8の大判で割付設計がしやすい。厚みも豊富。
- 意匠と機能の両立：メラミン等で耐久性とデザインを同時に確保。
- 歩留まり・コスト：同品質が安定して調達しやすく、加工も量産に向く。
デメリット・注意点
- 小口の弱点：層が見えるので意匠処理（エッジテープ・無垢貼り）が必要。吸水で膨れやすい。
- 粉塵・刃物摩耗：HPLは硬く、刃物の摩耗が早い。切断はチップソー選定と送り速度管理が必須。
- 接着・VOC：屋内はF☆☆☆☆等級の材料・接着剤を選ぶ。換気と養生を確保。
- 耐火性能：通常の木質積層材は不燃ではない。必要に応じて不燃認定品を選定。
選び方のポイント（現場で困らない発注チェックリスト）
- 用途と必要性能を言語化：例）「天板で耐擦傷が必要」「ビスが効く下地」「水周りで耐水」
- 基材の種類：合板／MDF／PB／LVL／集成材など、期待する強度・加工性に合わせる。
- 表面材：HPL（メラミン）／LPM／突板／塩ビシート。艶・手触り・色番を品番指定。
- サイズ・厚み：板取りを意識し、3×6 or 4×8、t15／t18／t21などを明記。
- エッジ仕上げ：同柄エッジテープ／無垢縁貼り／小口塗装のいずれかを指定。
- 環境・法規：F☆☆☆☆表示の有無、不燃・準不燃認定が必要か、現場の防火区画も確認。
- 施工方法：直貼り／カウンター天板化粧貼り／ダボ・ビス併用など、固定方法を共有。
- 予備材：現場カットや割れに備え、同柄予備を手配（特にエッジテープは多め）。
不明点は「どこに・何を・どのくらいの荷重が・どれくらいの期間」かを伝えると、職人・建材店が最適解を提案しやすくなります。
加工・施工のコツ（プロの現場目線）
- 切断：表面材が硬い場合は超硬チップソー（仕上げ用・刃数多め）で、表面側を上に切る。チッピングが心配なときは両面テープで養生し、送りを一定に。
- 穴あけ・ビス：小径の下穴＋座堀でバリ抑制。LVLや合板の端部は割れやすいので端距離を確保。
- 接着：両面塗り（オープンタイム遵守）＋圧締で接着ムラを防ぐ。HPLは接着剤の指定に従う。
- 小口処理：同柄エッジで巻くか、無垢見付材で化粧。水周りは特に端部のシーリングを丁寧に。
- 養生・馴染ませ：現場環境に24〜48時間馴染ませてから加工すると反りが出にくい。
- 保管：水平な台木の上で平積み、湿気・直射日光・局所荷重を避ける。
よくある勘違いの解消
- 「合板」と「集成材」は別物：どちらも積層材だが、合板は単板を交差積層、集成材は挽き板を同方向で積層。強度の方向性が違う。
- 「メラミンは不燃」の誤解：一般的なHPL仕上げ自体は不燃ではない。防火仕上げが必要な場合は不燃認定の化粧板や下地構成で対応。
- 「厚いほど強い」とは限らない：強度は厚みだけでなく、基材の種類・積層方向・支持条件で決まる。
現場で役立つQ&A
Q. カウンター天板、傷と汚れに強くしたい。何を選べばいい？
A. メラミン化粧板（HPL）仕上げが定番。熱源直置きや強い衝撃には注意が必要なので、用途により耐熱タイプやエッジ保護を追加。小口は同柄エッジテープか無垢木縁で保護します。
Q. 手すりの下地は何が良い？
A. 石膏ボード裏にt12〜t15の合板を広めに入れるか、ビスの効きを優先するならLVLを局所で入れるのが定石。ビス位置の端距離と下穴加工を忘れずに。
Q. 水回りに合板は使える？
A. 使えますが「耐水合板（WBP相当）」や防水下地との併用が安心。端部からの吸水を防ぐ処理が肝要です。
代表的なメーカー・流通（例）
積層材はカテゴリーごとに多くのメーカーがあります。ここでは内装でよく目にする代表例を挙げます（地域・案件により流通は異なります）。
- メラミン化粧板（HPL）：アイカ工業（国内で広く流通、色柄・機能バリエーションが豊富）。
- LVL（単板積層材）：Metsä Wood「Kerto LVL」（輸入材の代表例として知られる）。
- 合板：セイホク（構造用合板の大手として知られる）。
実際の手配は建材店・流通商社経由が一般的です。品番・色番号・サイズ・厚み・数量・エッジ仕様を明記すると手配がスムーズになります。
規格・表示の基礎知識
- JAS（日本農林規格）：合板・LVL・集成材などで強度等級や接着性能が規定。スタンプ表示を確認。
- F☆☆☆☆：ホルムアルデヒド発散等級。内装制限を受けない最高等級。材料・接着剤ともに確認。
- 防火認定：不燃・準不燃・難燃の国土交通大臣認定番号で確認。用途地域・面積により必要性が変わる。
ケーススタディ：場面別のおすすめ構成
受付カウンター天板（耐久重視）
- 基材：合板t21＋補強桟（必要に応じてLVL）
- 表面：HPL（メラミン）
- 小口：同柄エッジテープ or 無垢縁貼り＋面取り
- ポイント：反り止め・裏桟のピッチ、荷重のかかる出隅の当て木
壁面腰高さのパネル（意匠＋清掃性）
- 基材：合板t12
- 表面：HPL or 不燃化粧板（法規に応じて）
- 納まり：3mm見切りで割付、目地通りを建具・家具と通す
手すり・棚の下地（ビス効き）
- 下地：LVLを胴縁に併用、または面で合板を先行
- 施工：端距離を確保、下穴＋皿取り、ビス長さは有効ねじ山を意識
材料手配の実務メモ（発注書に書くべき最低限）
- 名称：例「HPL化粧板 貼り天板」「化粧合板 ナラ突板」
- 基材・厚み：例「合板t18」「LVL 38×90 下地用」
- サイズ：例「4×8取り」「W2400×D600」
- 色柄・品番：例「アイカ メラミン TJ-XXXX」
- 小口：例「同柄エッジ 0.8mm 4辺巻」「前後のみ巻」
- 数量・余尺：割れ・カットロス含め＋1枚の余裕
まとめ：積層材を味方にすれば、内装の仕上がりは安定する
積層材は、薄い層を重ねるというシンプルな発想から、反りにくさ・強度設計のしやすさ・意匠と機能の両立という、内装に欠かせないメリットを生み出します。合板・LVL・集成材・メラミン化粧板など、用途別に最適な選択肢が用意されているのも心強い点です。
選定では「用途」「基材」「表面」「サイズ」「エッジ」「法規」の6点を押さえ、加工では「刃物選定」「端部処理」「接着管理」「養生・馴染ませ」を丁寧に。現場の言い回し（例：「LVLで補強」「メラミンで天板」）も覚えておくと、打合せや発注が格段にスムーズになります。
もし迷ったら、どこに・どんな荷重が・どれくらいかかるのか、そして求める見た目や手触りを伝えてください。適切な「積層材」を選べば、仕上がりと耐久性の両方が一段と良くなります。あなたの現場が、今日より少し楽で美しくなりますように。
提供サービス
