現場ワード解説:アコーディオンカーテンを基礎から理解し、失敗しない選び方・施工のコツまで
「アコーディオンカーテンって、普通のカーテンと何が違うの?」「現場で“アコーディオンで仕切っといて”と言われたけど何を指す?」——初めて内装現場に入ると、こうした素朴な疑問が出てきますよね。この記事は、建設内装現場で職人が日常的に使う現場ワード「アコーディオンカーテン」を、やさしく、でも実務レベルで役立つ粒度で整理したものです。選び方、設置時の注意、現場での言い回しや関連語まで、この1本で「分かった」「もう迷わない」と感じられる内容にまとめました。
現場ワード(アコーディオンカーテン)
| 読み仮名 | あこーでぃおんかーてん |
|---|---|
| 英語表記 | Accordion curtain(Accordion door / Folding partition) |
定義
アコーディオンカーテンとは、楽器のアコーディオンの蛇腹のように折り畳まれるパネル(幕体)を、天井側のレールに吊り下げて横引きで開閉する間仕切り(パーティション)のこと。一般的なカーテンと違い、布ではなく樹脂やビニール系のシート・合成繊維などで成形された連結パネルを用いるため、視線を遮るだけでなく、軽い遮音・空調のゾーニング・省スペースな開口確保がしやすいのが特徴です。多くは上吊り式で床にレールがなく、出入りや清掃の邪魔になりにくい構造になっています。
基本構造と主な種類
基本構造は「上部レール+ランナー(滑車)+蛇腹状の幕体+戸先(マグネット受けなど)」で成り立ちます。種類は以下の観点で分かれます。
- 納まり:内付け(枠内)/外付け(壁付け・天付け)
- 開き方:片開き/両開き(中央合わせ)
- 意匠:不透過(完全目隠し)/半透明(採光)/一部窓付きタイプ
- 機能:標準タイプ/防炎対応/抗菌・防汚/遮音強化/防カビ・耐薬品(施設向け)
- 床レール:なし(上吊り標準)/必要に応じたガイドや戸当たりのみ
住宅の間仕切りから、オフィス・クリニック・教育施設・バックヤード・イベントスペースまで用途は広く、仮設から常設まで柔軟に対応できるのが強みです。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では以下のように呼ばれることがあります。どれも基本的にはアコーディオンカーテンを指しますが、厳密には仕様が異なる場合もあるので文脈で判断します。
- アコーディオン/アコカ(略称)
- アコーディオンドア(建具寄りの言い方。取手や戸先が強化されたタイプを指すことも)
- 蛇腹(じゃばら)(形状の俗称)
- 間仕切りカーテン/折れ戸カーテン(用途を強調)
- パーティション(広義。可動間仕切り全般を指す場合があり注意)
使用例(3つ)
- 「打合せスペースはアコーディオンで仕切っといて。明日来客あるから」
- 「通路側は避難幅確保したいから、アコーディオンは片開きで壁にたたんでおける納まりにしよう」
- 「既存の鴨居弱いから、アコーディオンのレールは補強下地入れてから吊ってね」
使う場面・工程
使われる場面は、改修で間仕切りを簡易に追加したい時、常設壁にしたくないエリアの区分(会議スペース・バックヤード・診療室の区画)、イベントやモデルルームのゾーニングなど。工程としては内装下地ができ、天井・壁の仕上げが整った終盤での建具・設備取付フェーズで施工するのが一般的です。軽量鋼製下地(LGS)天井の場合は、レール固定部に合板補強などの下地が必要になります。
関連語
- 上吊りレール/ランナー(駆動部)/戸先(とさき)/戸当たり
- 受け部材(マグネット受け・ストッパー)
- 内付け・外付け(納まり)/片開き・両開き(開き方)
- 防炎ラベル/F☆☆☆☆(ホルムアルデヒド放散区分)
- 見切り・ケーシング(仕上げカバー)
選び方のポイント(失敗しない実務基準)
採寸と納まりを最優先
アコーディオンカーテンは「サイズと納まり」が命です。開口幅(W)・高さ(H)をミリ単位で確認し、内付け(枠内に収める)か外付け(壁面または天井に被せる)かを決めます。内付けは見た目がスッキリする一方、枠の歪みがあると擦れやすいので、最小有効寸法を実測。外付けは遮蔽性が上がりやすく、多少の歪みを吸収しやすい反面、外観上の見切り処理が必要です。床の不陸や天井のレベル差も、仕上がりの直線性や戸先の当たりに影響するため、水平器やレーザーで確認しておきましょう。
機能(防炎・遮音・抗菌など)を用途で選ぶ
人が多く集まる施設や不特定多数が利用する用途では、防炎性能を持つ製品が求められるケースがあります。病院・学校・商業施設などでは、抗菌・防汚・防カビ仕様が清掃性や衛生面で有利。音の課題がある場合は遮音強化タイプや戸先・上下のシール性が高いモデルを。完全防音は難しいため、目的は「騒がしさの軽減」「声が漏れにくい状況づくり」と整理して選定します。
使い勝手:開閉頻度と耐久性
毎日何十回も開閉する動線なら、ランナーやヒンジ部の耐久性が高いモデルや、交換用部品の供給が安定しているシリーズを選びます。取手の形状(握りやすさ)や、戸先のマグネットの保持力もチェック。両開きは中央に荷重・衝撃がかかりやすいので、運用で偏った力が加わらないよう注意が必要です。
法規と安全面の確認
避難経路や避難口にかかる箇所に設置する場合は、開放時に通行幅が十分に確保できる設計とし、非常時に障害にならないようたたみ代(畳んだ時の厚み)と収納位置を計画します。防炎表示が必要な建築用途もあるため、発注前に建築主・監理者・所轄消防と要件を確認しましょう。小さな子どもが触れる施設では、指挟み防止の配慮(戸先の隙間・把手の位置)も大切です。
施工(設置)の基本手順
ここでは一般的な上吊り式の手順を紹介します。実作業は必ず各メーカーの取付説明書に従い、現場の安全基準を守ってください。
準備する道具
- メジャー、レーザー墨出し器、水平器
- 下地探し(または図面での下地確認)
- インパクトドライバー、下穴用ドリル、アンカー(コンクリ・軽量天井用)
- ビス(適合サイズ)、戸当たり・受け金物
- 脚立・足場板、保護具(手袋・保護メガネ)
下地確認と補強
最も重要なのはレールを固定する下地です。木下地なら十分な厚みのある胴縁・桟木に留め、LGS天井ならレール位置に合わせて合板下地(12mm程度を目安)を事前に仕込むのが理想。コンクリート面は適合アンカーを使用し、ボード素地への直留めは避けます。既存改修で下地が不明な場合は点検口から確認し、必要に応じて補強を追加します。
取付の流れ(一般例)
- 1. 墨出し:レール芯と戸先の当たり位置を決め、水平・垂直を確認して墨を出す。
- 2. レール加工:必要な長さにカット(メーカー指示がある場合はそれに従う)。端部キャップ等を準備。
- 3. レール仮止め:ビス穴位置を下穴あけし、水平を見ながら仮固定。
- 4. 本体吊り込み:ランナーに本体を通し、スムーズに移動するか仮動作を確認。
- 5. 受け金物・戸当たり取付:戸先側の当たり位置でマグネット受け・戸当たりを固定。
- 6. 動作調整:たたみ代、戸先の当たり、レールの歪みを微調整。引き込みが重い場合はレールのねじれやビス出っ張りを点検。
- 7. 仕上げ:見切り・カバー部材がある場合は取付。清掃して完了。
- 8. 取扱説明:利用者に開閉方法・注意点を共有(引っ張り方、無理な力をかけない等)。
よくあるミスと対策
- 下地不足でビスが効かない→必ず補強下地を計画。後補強が難しい場合は取付位置を再検討。
- レベルが出ておらず開閉が重い→レール水平を再確認。ランナーやビス頭の干渉もチェック。
- 戸先が吸い付かない→受けの位置ズレが多い。マグネット位置を微調整。
- 畳んだ時に通路にはみ出す→たたみ代の見込み不足。外付けの場合は収納側のスペースを確保。
- 床の段差に幕体が擦る→床不陸を事前確認。製品高さを調整または下端クリアランスを確保。
メンテナンスと長持ちのコツ
日常清掃は乾いた柔らかい布での拭き取りが基本。汚れが強い場合は中性洗剤を薄めて拭き、その後水拭き・から拭きで仕上げます。溶剤系(シンナー等)は素材を傷めるので避けましょう。レール内に埃が溜まると走行が重くなるため、定期的にブラシや掃除機で清掃。ランナーの摩耗は消耗現象なので、使用頻度が高い現場は点検サイクルを決め、部品供給があるメーカーの製品を選ぶと安心です。
価格感と発注のコツ
価格は「サイズ(幅・高さ)」「意匠(生地グレード)」「機能(防炎・遮音・抗菌等)」「開き方(片/両)」で大きく変動します。特注サイズや高機能ほど価格は上がり、納期も延びる傾向。見積時は実測寸法・納まり図・機能要件(防炎の要否)・開閉頻度(耐久配慮)をセットで伝えるとスムーズです。改修では既存枠の歪みや下地状況の写真も共有しておくと、製品選定や取付方法の判断ミスを減らせます。
代表的なメーカーと特徴
国内にはアコーディオンカーテンやアコーディオンドアを取り扱う内装・窓まわりメーカーが複数あり、用途や意匠に合わせて選べます。以下は一般的によく知られる例です。
ニチベイ(NICHIBEI)
ブラインド・間仕切り分野の老舗メーカー。アコーディオンドアの代表的シリーズを展開し、カラー・意匠の幅が広いのが特徴。防炎対応や施設向け仕様のラインアップもあり、オフィスや医療・教育施設での採用実績が多い分、部材供給やメンテナンスの面でも安心感があります。
タチカワブラインド
窓装飾・間仕切りの大手メーカー。住宅から商業・施設までをカバーする製品構成で、アコーディオンタイプの間仕切りも展開。操作性や納まりバリエーションが豊富で、現場条件に合わせた選択肢が取りやすい点が強みです。
トーソー(TOSO)
カーテンレールやブラインドを中心とする内装金物メーカー。間仕切りやパーティション関連の製品も扱っており、部材品質と安定供給力に定評があります。レール類に強いメーカーならではの納まり提案がしやすいのが実務上のメリットです。
いずれのメーカーも、最新のカタログや技術資料で仕様(防炎・寸法制限・下地条件)を確認し、現場の要件と照らし合わせて選定しましょう。
現場で役立つ豆知識
・代替手段:短期イベントや仮設なら、透明ビニールカーテンや簡易パーティションで代用できることも。ただし見た目・遮音・防炎要件はアコーディオンカーテンに劣る場合が多いです。
・たたみ代の計画:収納側にスイッチ・手すり・什器があると干渉します。図面上だけでなく現地で干渉物を確認。
・上端の納まり:天井面の仕上げが柔らかい素材(吸音板等)の場合、レール固定は必ず下地に。見切り材で意匠を整えると仕上がりが良くなります。
・別注カラー&生地方向:柄物は縦横の見え方に注意。サンプル帳の光源条件も考慮して実物サンプルで最終確認を。
・原状回復:賃貸物件の原状回復条件は、レールビス穴や見切りの痕が対象になる場合あり。事前に管理者と合意を取っておきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 防炎は必ず必要ですか?
A. 住宅では任意のことが多いですが、不特定多数が出入りする施設や一定規模の用途では防炎性能が求められる場合があります。設置場所の用途区分や所轄の指導に従い、必要な場合は防炎ラベル付き製品を選びましょう。
Q. 音はどのくらい遮れますか?
A. アコーディオンカーテンは「簡易的な遮音」が基本で、完全な防音は期待できません。人の話し声や気配を和らげる程度と考えてください。遮音性を高めたい場合は、遮音仕様・戸先シール性の高いモデルや、床側の隙間を抑える納まりを検討します。
Q. 床レールは必要ですか?
A. 多くは上吊り式で床レール不要ですが、長尺・高頻度使用・ドラフトの強い場所では、振れ止めの戸当たりやガイドを併用すると安定します。バリアフリー性を損なわないよう、床に段差を作らない方法を優先すると良いでしょう。
Q. DIYでも取り付けできますか?
A. しっかりした下地があること、水平出しができること、適切なビス・アンカーが用意できることが条件です。内装経験者なら対応可能な場合もありますが、歪みがある開口や高所作業はプロに依頼した方が安全で確実です。
Q. 原状回復が必要な現場での注意は?
A. レール固定のビス穴、見切り材の取り外し痕、壁紙の日焼け跡が対象になることがあります。外付け納まりで被せ量を増やし、既存壁のダメージを抑える設計にすると後々のトラブルを減らせます。
Q. 掃除や劣化対策は?
A. 表面は中性洗剤での拭き掃除が基本。直射日光や強い冷暖房で劣化が早まることがあるため、設置位置や空調の吹き出し方向にも配慮すると長持ちします。レール内の埃は定期除去を。
Q. 天井が軽天(LGS)ですが取り付けできますか?
A. 可能です。ただしレール直上に合板などの補強下地が必要です。既存天井の場合は、下地位置の把握と追加補強の可否を事前に確認してください。
まとめ:アコーディオンカーテンを“使いこなす”コツ
アコーディオンカーテンは、「上吊りで省スペース」「目隠しやゾーニングが手軽」「改修にも強い」という現場メリットの塊です。一方で、採寸と納まり、下地の確保、たたみ代の計画を誤ると、重い・当たらない・邪魔といったストレスにつながりがち。用途に合わせた機能(防炎・遮音・抗菌)と、開閉頻度を見据えた耐久性の見極めもポイントです。この記事のチェックリストを使えば、初めての方でも「適切な製品を選び、まっすぐ・軽く・きれいに動く」設置に近づけます。現場で迷ったら、サイズと下地、収納位置の3点をまず確認——ここさえ押さえれば、大きな失敗は避けられます。あなたの現場で、アコーディオンカーテンを賢く活用してみてください。









