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空調機とは?現場で失敗しない選び方・種類・設置ポイントを徹底解説

内装現場でよく聞く「空調機」入門—呼び方の違い、種類、設置の勘所まで

「空調機って、エアコンと何が違うの?」「図面にAHUって書いてあるけど同じ?」——そんな疑問を持ってこの記事にたどり着いた方へ。建設内装の現場では、同じ“冷暖房の機械”でも呼び方や扱いが少しずつ違います。ここでは現場の職人が日常的に使う言葉づかいから、種類の見分け方、選定・設置の注意点まで、初めてでも迷わない実践的な知識をやさしく解説します。読み終えるころには、図面の指示も会話もスッと腑に落ちるはずです。

現場ワード(空調機)

読み仮名くうちょうき
英語表記Air Conditioning Unit / HVAC Unit / Air Handling Unit(文脈による)

定義

建設内装の現場で「空調機」と言うと、文脈により指す対象が少し変わります。狭い意味では、空気を冷やしたり温めたり送風したりする“室内側の機械”を指し、天井カセット形やダクト形などの室内機を「空調機」と呼ぶことが多いです。一方、空調設備の分野では、ファンとコイルを備えてダクトに接続し、室内の空気を調整する大型の装置(Air Handling Unit=AHU)を「空調機」と呼ぶ場合もあります。現場会話では、周辺の言葉と合わせて意味を捉えるのがコツです(例:室外機は別に「室外機」「コンデンシングユニット」と呼び分けます)。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のように呼ばれます。どれも「空調機」を指す可能性がありますが、規模や方式でニュアンスが変わります。

  • エアコン(一般的な呼び方。ルーム・業務用を含む口語)
  • 室内機(対になる室外機があるタイプで、室内側ユニット)
  • パッケージ(業務用パッケージエアコン=PACの略称)
  • カセット(天井カセット形の室内機)
  • ダクト(ダクト形室内機の略。「ダクト形空調機」)
  • AHU(Air Handling Unit。ダクト接続の大型空調機)
  • ビルマル(ビル用マルチ、VRF方式のシステム。文脈で「空調機」を含む)

使用例(3つ)

  • 「この空調機、天井伏図だとレベル2,600で吊り込み。下地当たるから補強入れてね。」
  • 「ダクト形の空調機は負圧になるから、ドレントラップ忘れないように。」
  • 「空調機の能力が足りないかも。席数増えたならサイズ見直そう。」

使う場面・工程

空調機が登場するのは、主に以下の工程です。

  • 計画・設計段階:能力選定、配置、外気導入の検討
  • 墨出し・天井下地:開口位置、吊りボルト・インサートの確認
  • 機器搬入・吊り込み:水平調整、振れ止め、点検口の位置決め
  • 配管・配線:冷媒管、ドレン管、コントロール配線、電源
  • ダクト接続(ダクト形/AHU):保温、気密処理、トラップ
  • 試運転・検査:真空引き、漏れ確認、ドレンテスト、温度・風量チェック
  • 引渡し・説明:フィルター清掃方法、リモコン設定

関連語

  • 室外機(コンデンシングユニット)、リモコン、ドレン、冷媒、ダクト、グリル、全熱交換器(換気)、VRF、PAC、AHU、FCU(ファンコイルユニット)、静圧、風量、馬力(HP)

空調機の主な種類と特徴

現場でよく使うタイプを、内装工目線で整理します。

  • 壁掛形(ルームエアコン): 住宅・小規模オフィスで多い。軽量で施工が早い。外壁貫通や化粧ダクト処理が必要。
  • 天井カセット形(1方向/2方向/4方向): 事務所・店舗の定番。仕上げ面に露出するため開口・化粧パネルの納まりが重要。
  • 天井吊形: ダクトレスで広めの空間に使いやすい。揺れ・騒音対策に振れ止めと防振が肝。
  • 床置形: 壁際設置。天井の制約が大きい場合に有効。吸込み・吹出しの前をふさがない家具配置が必要。
  • ダクト形(ビルトイン含む): 機械室や天井裏に本体を設置し、ダクトで各室へ分配。静圧・トラップ・点検口が重要。
  • ビル用マルチ(VRF): 複数室内機を1台または複数の室外機で制御。ろう付け配管や系統管理がポイント。
  • 空調機(AHU): コイルとファンを持ち、ダクトで供給・還気する大型装置。躯体開口・防火ダンパ・機器搬入計画が鍵。

選定の基本(内装で押さえる要点)

詳細な計算は設計者の領域ですが、現場が「危ない匂い」を察知できると手戻りを防げます。

  • 能力(冷房/暖房): 目安として馬力(HP)やkWで表記。一般的に「1馬力=約2.8kW(冷房能力の目安)」が使われます。席数増・発熱機器の追加は能力不足の原因。
  • 風量・静圧: ダクト形は特に静圧仕様を図面で確認。フィルター追加やグリル選定で必要静圧は変動します。
  • 電源: ルームは単相、業務用は三相200Vが多い。分電盤容量・ブレーカ・専用回路の有無を事前確認。
  • 騒音: 会議室・クリニックなど静音要求は高い。吊りボルトに防振、ダクトはライナーや消音器を検討。
  • 冷媒種: 新設はR32やR410Aが中心。既存流用や増設時は混用不可に注意(系統統一)。
  • 外気導入: 衛生・法規の観点から換気が必要。空調機単体では不足することが多く、全熱交換器等との組合せを確認。

設置の要点(内装現場の勘どころ)

吊り込み・レベル・点検性

  • インサート・アンカー位置: 天井伏図と実測で干渉確認(梁・配管・スプリンクラー)。
  • 水平取り: カセット形は特に水平必須。わずかな傾きでもドレン漏れの原因。
  • 点検口: フィルター清掃・ドレンポンプ・電装にアクセス可の位置・サイズで計画。

ドレン勾配・トラップ

  • 勾配: 基本は自然排水でゆるやかな下り勾配を確保(天井内の取り回しは早期計画)。
  • トラップ: ダクト形など負圧がかかる機器は封水トラップ必須。吹返しや異臭の防止になります。
  • 保温: 結露防止のためドレン配管も保温。点検部は結露水の受けを検討。

配管・接続品質

  • 冷媒配管: 小容量はフレア接続が多い。規定トルク・バリ取り・面取りを厳守。大容量やVRFはろう付けが基本。
  • 真空引き: 規定手順で十分に真空引きと保持。湿気残りは故障の原因。
  • 電源・制御線: 極性・配線種別・端末処理を図面通りに。リモコンは延長距離と配線経路に注意。

仕上げとの取り合い

  • 化粧パネル: クロス・天井材との段差や割付を事前に合意。パネル取り外し可能クリアランスを確保。
  • 吹出し・吸込み: カーテンボックスや照明器具との干渉で風が回らないケースに注意。

配管・配線の基礎(現場チェックリスト)

  • 冷媒管サイズ・ペア長・高低差が機種の許容範囲内か
  • 耐火区画貫通部の防火措置・気密処理を実施したか
  • ドレン排水の受け先(雑排水系統)と清掃口の手当ては十分か
  • 絶縁抵抗・接地・漏電ブレーカの定格は適正か
  • 室外機位置の通風・保守スペース・防振ゴムの有無

試運転と引渡し(最低限の流れ)

  • 目視点検: 配管・配線・化粧パネル・フィルターの装着確認
  • 気密・漏れ確認: 冷媒配管の接続部、ドレンの通水試験
  • 通電試験: 電圧・電流の確認、異音・異臭の有無
  • 性能確認: 送風温度・吹出し風量・リモコン設定値の反映
  • 取扱説明: フィルター清掃周期、運転モード、注意事項
  • 記録: 試運転チェックシート、型式・製造番号・据付写真

よくあるトラブルと対策

  • ドレン漏れ: レベル不良、勾配不足、トラップ未設置、断熱不良。水平調整と通水確認を徹底。
  • 風が弱い/寒い: フィルター詰まり、風向・風量設定不適、ダクトの閉塞。点検口から実測・清掃。
  • 騒音・振動: 吊り金物の緩み、接触、ファンのアンバランス。振れ止め追加や干渉解消。
  • 能力不足: 人員・機器増設、外気量過多、日射条件変更。能力再計算と機器見直し。
  • 通信エラー: リモコン配線の誤接続や極性違い。回路図と端子表示を再確認。

現場で役立つ略語・用語ミニ辞典

  • AHU: Air Handling Unit。ダクトで空気を扱う空調機本体。
  • PAC: Package Air Conditioner(業務用パッケージエアコン)。
  • VRF/ビルマル: Variable Refrigerant Flow。ビル用マルチ方式。
  • FCU: Fan Coil Unit。ファンとコイルで室内を空調する端末機。
  • 静圧: 風を送るために必要な圧力。ダクト形選定で重要。
  • トラップ: ドレン管の封水部分。負圧時の吸い込み防止。
  • APF/COP: 省エネ性能の指標。運用コストに影響。

代表的なメーカーと特徴(日本)

製品仕様は公式資料での確認が基本ですが、現場で名の挙がる主なメーカーは以下の通りです。

  • ダイキン工業: 空調専業のリーディングメーカー。業務用からビル用マルチまでラインアップが幅広い。
  • 三菱電機: 信頼性と拠点網が強み。業務用・ビル用の納入実績が多い。
  • 日立グローバルライフソリューションズ: 大規模施設向けの実績多数。堅牢な製品設計で知られる。
  • 東芝キャリア: 省エネ性とシステム提案力に定評。多様な機種バリエーション。
  • パナソニック: 店舗・オフィス向けも広く展開。住宅・小規模案件との親和性が高い。

メーカーごとに制御方式や配線ルール、ドレンポンプの仕様など細部が異なります。型式図と施工説明書は現場に必携です。

図面・記号の読み方(内装担当の視点)

  • 機器記号: AC-1、PAC-2、AHU-3などの番号で管理。凡例で形式・能力を確認。
  • レベル表示: FL+2,600など天井裏の機器レベル。仕上げ天井高さとクリアランスを計算。
  • ダクト系統: 吸込み(還気/外気)と吹出しの向き、ダンパ位置、防火ダンパの有無。
  • 点検口記号: 300角/450角など。フィルターや電装にアクセス可能かを確認。

安全・法令・マナー

  • 重量物・高所作業: 玉掛け・足場の安全確保、複数人での搬入、落下防止。
  • 冷媒の取り扱い: 漏えい防止、火気管理、適切な工具使用。法令・メーカー手順に従う。
  • フロン類に関する管理: 法令に基づき、機器の点検・記録・適正な処理が求められます。役割分担(管理者・施工者)を事前に確認。
  • 騒音・粉じん配慮: 営業中店舗やオフィスでは養生・時間帯配慮・清掃を徹底。

ケース別の選び方・納まりのコツ

  • 小規模オフィス: 天井カセット形4方向が無難。会議室は個別制御できる系統に。
  • クリニック・学習塾: 吸込み周りの清掃性と静音性を重視。フィルター清掃の動線も確保。
  • 飲食店: 厨房は別系統で高静圧、客席はドラフト感を抑える吹出し配置に。グリスミスト対策も検討。
  • 物販店舗: 吹出し方向をレジや入口のドラフトに配慮。什器変更に備えた可変性を持たせる。

メンテナンスと清掃(引渡し後に効くひと言)

  • フィルター清掃: 使用頻度により1〜3か月が目安。詰まりは能力低下と結露の原因。
  • ドレン系: 年1回以上の通水・洗浄で詰まり防止。臭い対策にも有効。
  • 熱交換器・ファン: 汚れは騒音と消費電力増に直結。保守契約の提案が喜ばれます。
  • リモコン設定: タイマー・温度上限/下限制御で省エネとクレーム減に。

失敗しないための現場チェックリスト(まとめ)

  • 型式・電源・冷媒・能力が図面と一致しているか
  • 吊りボルト・補強金物は指示通りか、水平は出ているか
  • 点検口とサービススペースは十分か
  • ドレン勾配・トラップ・保温は適正か、通水試験は済んだか
  • 冷媒配管の加工品質(バリ取り・トルク・ろう付け)と真空引き記録
  • 電源容量・ブレーカ・制御配線の極性と端末処理
  • 換気(外気)との整合、吹出し・吸込みの干渉なし
  • 試運転の値(温度・電流・騒音)と写真記録、施主への説明

最後に—「空調機」を味方にする視点

空調機は「据え付けて終わり」の機械ではありません。人が集まる場の快適さと生産性、店舗なら売上にも直結します。現場では、呼び方の違いに惑わされず、種類・能力・設置条件・メンテ性をひとつずつ確認することが大切です。この記事が、図面の読み解きや職人さんとの会話をスムーズにし、気持ちよく稼働する空間づくりの助けになれば嬉しいです。困ったら、メーカーの施工説明書と現場のベテランのひと言が最強の教科書。焦らず一歩ずつ、確実に進めていきましょう。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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