アルミテープを現場で使いこなすための基礎知識と実践ポイント
「アルミテープって、どこに使うの?ガムテープや養生テープと何が違う?」そんな疑問を持つ初心者の方は多いはず。内装や設備が入り混じる建設現場では、テープひとつで仕上がりや耐久性が大きく変わります。本記事では、現場で日常的に使われる“アルミテープ”に絞り、特徴・使い方・選び方・注意点まで、プロの視点でやさしく解説します。読み終える頃には、用途に合わせて迷わず選べるようになり、貼りミスや剥がれのトラブルを防げるはずです。
現場ワード(アルミテープ)
| 読み仮名 | あるみてーぷ |
|---|---|
| 英語表記 | Aluminum foil tape(HVAC foil tape) |
定義
アルミテープとは、アルミ箔(アルミニウム薄板)を基材にした片面粘着のテープの総称です。空調ダクトや配管の保温材の継ぎ目シール、断熱材の端末処理、気密・遮熱・防湿目的の目張りなど、建設内装・設備の現場で広く使われます。表面が金属箔のため耐熱性と耐候性に優れ、光・熱の反射性や水蒸気バリア性も期待できます。粘着剤はアクリル系やゴム系などがあり、用途や環境温度に応じて使い分けます。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では次のように呼ばれることがあります。呼び方が似ている別物もあるため、混同に注意しましょう。
- アルミテ、アルテ(省略形)
- フォイルテープ(箔=foil)
- ダクト用アルミテープ(用途を限定して呼ぶ言い方)
- 「ダクトテープ」:布テープを指す場合もあるため注意。アルミ箔基材のダクト用テープは「アルミテープ」で明示するのが無難。
使用例(3つ)
- 空調ダクトの継手シール:フランジ部、折曲げ部、T字・エルボ部の気密補修として、シーラントの上からアルミテープで増し張り。
- 保温材の端末処理:グラスウール・ロックウール・ウレタンフォームなどの保温材の切断面・重ね部を目張りし、断熱性能の維持と防湿を両立。
- 設備貫通部の気密処理:天井・壁・床の貫通部で配管やスパイラルダクト周りの隙間に、下地処理→テープ貼付で空調の効率低下や結露を抑制。
使う場面・工程
主に次の工程で登場します。
- 空調・換気ダクト工事の気密処理
- 配管・ダクト保温工事の仕上げ(端末目張り)
- 天井裏・壁内の遮熱・防湿処理の補助
- 機器接続部の仮補修や反射板代用(緊急時の一次対応)
一般的な作業手順は、下地の清掃→必要に応じて脱脂・プライマー→寸法取り→カット→貼付→圧着→仕上げ確認、の流れです。特に圧着と重ね代の確保が品質を左右します。
関連語
- 気密テープ:合板継ぎや防湿シートのシールに用いる樹脂系テープ。金属箔ではないものが多い。
- ブチルテープ:粘着力が非常に高く、凹凸追従性に優れるゴム系。防水・止水に強い。
- ステンレステープ:金属箔でもステンレス基材のもの。耐熱・耐食性に優れるが硬く高価。
- 養生テープ・布テープ:仮固定や養生用。気密・遮熱・防湿の主目的には適さない。
- ヘラ・ローラー:圧着用の道具。貼付品質を安定させる。
- プライマー:低温や難接着面で粘着力を補助する下塗り材。
種類と選び方(失敗しない基準)
基材厚みと柔軟性
アルミ箔の厚みは薄手(約0.03〜0.05mm)から厚手(約0.08mm以上)まで幅広く、厚いほど強度と遮蔽性は上がる一方、曲面への追従性は下がります。ダクトの継手や曲がりが多い箇所は“薄手+強粘着”、平面や直線部は“中厚でしっかり圧着”が扱いやすいです。
粘着剤の種類
- アクリル系:耐熱・耐候・耐久バランス良好。屋内外・通年使用の標準。
- ゴム系:初期接着が強く、低温でも食いつきが良い。高温・長期では劣化が早い傾向。
- シリコーン系:高温環境に強い特殊用途。一般内装では出番少なめ。
室温が低い現場や、素早く固定したい場面ではゴム系が有利。屋根裏や機械室など温度変化が大きい環境ではアクリル系が安心です。
温度範囲・耐候・難燃性
使用温度範囲(例:-20〜80℃など)は製品ごとに異なります。ダクト・保温用途では、施工時の温度(冬場の低温)と運転時の温度(温風・排気熱)を想定し、範囲内であることを確認しましょう。屋外や機械室に露出する場合は耐候性・難燃性に配慮された製品を選びます。
剥離紙の有無・幅と長さ
剥離紙(リリースライナー)付きはカット・位置決めがしやすく、長尺の直線施工に向きます。幅は一般的に50mm・75mm・100mmなど、長さは20〜50m程度が流通。継手の重ね代や作業者の手の大きさによって幅を選ぶとスムーズです。
導電性・シールド用途
電磁波シールドやノイズ対策に使う場合は、粘着面まで導電性が確保されたタイプかを確認しましょう(導電性の無いタイプは単なる金属面としては機能しても、接続部の導通がとれないことがあります)。
正しい貼り方(プロの実践手順)
- 下地清掃:ほこり・油分・水分を除去。金属面はウエス+アルコールで脱脂すると安定します。
- 必要時プライマー:低温・ザラつき・粉体塗装面などはプライマーで食いつきを補助。
- 寸法取り:カーブや角は余裕を見て+10〜20mm。事前に仮当てして歪みを確認。
- カットと端部処理:角は小さなRを取るか、ハサミで“ハの字”に面取り。剥がれ・めくれ防止に有効。
- 貼付:剥離紙を少しずつ剥がしながら、中央→外周へ空気を逃がすイメージで貼る。
- 圧着:ヘラやローラーでしっかり押さえる。継ぎは重ね代10mm以上を目安に一定方向で統一。
- 検査:浮き・しわ・ピンホール・端部の密着を目視と手触りで確認。必要に応じて重ね貼り補修。
貼ってすぐに剥がれる主な原因は、下地汚れ・低温・曲面の無理貼り・圧着不足です。冬場は材料を室内で保温し、下地温度を上げてから施工すると安定します。
剥がし方・補修のコツ
- 温めて緩める:ドライヤーで軽く加温すると粘着剤が軟らかくなり剥がしやすい。
- 端部からゆっくり:鋭角に起こすと下地を傷めやすいので、浅い角度で均一に引く。
- 残渣除去:アルコールやシール剥がし剤をウエスに少量取り、試し拭き→本拭き。
- 再施工:下地を整えてから、新しいテープで重ね補修。既存テープの浮きは切り欠き+重ね貼りで対処。
注意点・安全衛生
- 切創対策:アルミ箔のエッジは鋭利。手袋・長袖着用、廃材はその場でまとめて処分。
- 感電・短絡防止:電気機器周りでの金属テープ使用は要注意。通電部や端子には貼らない。
- 防火配慮:火気近傍では適合品を選定。バーナー熱がかかる箇所は仕様確認が必須。
- 臭気・換気:密閉空間で大量に使用する場合は、換気と休憩を確保。皮膚のかぶれが出たら使用中止。
- 仕上げ面への影響:塗装・化粧材の上は糊残り・変色の恐れ。下地側で処理するのが原則。
代用品・似たテープとの違い
- 布テープ(いわゆるダクトテープ):仮固定には強いが、熱・湿気・紫外線に弱く、気密・防湿は長期安定しにくい。
- 養生テープ:剥がしやすさ重視。恒久的なシールには不向き。
- ブチルゴムテープ:止水・凹凸追従は優秀。ただし表面保護が無いと汚れやすい。必要に応じてアルミテープで被覆。
- ステンレステープ:高温・薬品に強いが、硬くて貼りづらく高価。特殊環境向け。
- 銅箔テープ:導電・防菌(銅イオン)用途など特殊ニーズ。一般の遮熱・防湿はアルミで十分。
代表的なメーカーと特徴
アルミテープは多くの国内外メーカーから供給されています。以下は現場で見かける代表的な例です。
- 3M(スリーエム):工業用アルミ箔テープの定番ブランド。耐熱・耐候・粘着のバランスが良く、製品のバリエーションが豊富。
- 日東電工(Nitto):テープ総合メーカー。薄手から厚手、導電タイプまで選択肢が広く、設備・電子・建築の各分野で採用実績が多い。
- 寺岡製作所(Teraoka):国内粘着テープ専業。施工性に配慮した剥離紙付きや幅広タイプなど、現場向けの実用ラインナップが充実。
同じ「アルミテープ」でも、厚み・粘着剤・温度範囲・難燃性・導電性などの仕様が異なります。メーカーの技術資料や製品カタログを確認し、用途(ダクト・保温・遮熱・シールド)と施工環境(温度・湿度・屋内外)に合わせて選定しましょう。
価格感と発注のコツ
- 価格帯:汎用品と工業グレードで差があります。薄手・汎用品は手頃、耐熱・難燃・導電などの高機能品は高価になりがち。
- 歩掛・ロス:曲面や角が多い現場はロスが出やすいので、1〜2割程度の予備を見込むと安心。
- サイズ取り混ぜ:直線部用に50mm幅、継手カバー用に75〜100mm幅を併用すると効率が上がる。
- 季節対応:冬場は低温対応品やプライマーを同時手配。現場保管時は結露を避ける。
現場で役立つ豆知識
- 反射活用:照明が届きにくい天井裏点検口周辺に小さく貼ると、光が回って視認性が上がる。
- 識別マーキング:上から油性ペンで書けるが、擦れに弱い。必要なら透明保護テープを重ねる。
- 端末のほつれ防止:L字やT字は“切り欠き+重ね”でシワを逃すと、めくれ・浮きが出にくい。
よくある質問(FAQ)
Q. 壁紙や塗装面に直接貼っても大丈夫?
A. 推奨しません。糊残りや表面の剥離、変色の原因になります。下地側で処理するか、剥がす前提の養生材を併用してください。
Q. 屋外でも使えますか?
A. 耐候性に配慮した製品なら可能です。直射日光・雨・温度変化が大きい環境では、アクリル系粘着+耐候仕様を選び、下地を十分に清掃・乾燥させましょう。
Q. 冬場、貼ってもすぐ剥がれてしまいます。
A. 下地温度が低いと粘着が立ち上がりにくくなります。材料と下地を温め、可能ならプライマーを使い、圧着を丁寧に行ってください。
Q. 電磁波シールド目的に使えますか?
A. 条件次第です。粘着面まで導電性があるタイプを選び、重ね部・接地部の導通を確保する必要があります。一般の遮熱・防湿用とは異なる仕様を確認してください。
Q. 浴室や高湿度環境で使えますか?
A. 可能な製品もありますが、下地の腐食やカビ対策が前提です。防湿はできますが完全防水ではありません。用途に合った仕様かメーカー資料で確認してください。
現場チェックリスト(簡易版)
- 目的は何か(気密/遮熱/防湿/補修/シールド)
- 環境条件(温度・湿度・屋内外・紫外線)
- 下地材質(亜鉛メッキ鋼板・アルミ・樹脂・断熱材)と清掃状態
- テープ仕様(厚み・粘着剤・温度範囲・難燃性・導電性)
- 施工手順(プライマーの要否・重ね代・圧着・検査)
失敗事例と対策
- シワ・浮きが出た:角を一発で覆おうとせず、切り欠き+分割貼り。ローラーで中央から外へ空気を逃がす。
- 剥がれてきた:下地の油分・粉じんを再確認。季節要因(低温)を考慮し、材料選定と養生を見直す。
- 白化・変色:薬品・湿気・温度影響の可能性。仕様適合品へ変更、上張り保護または設置環境の改善。
まとめ:アルミテープは「下地」「温度」「圧着」が命
アルミテープは、ダクト・保温・気密・遮熱といった内装設備の要所で力を発揮する“現場の基本材”です。用途にあわせて厚み・粘着剤・温度範囲を見極め、下地清掃と適正な圧着を徹底すれば、仕上がりと耐久性が一段と安定します。別称の混同(布の“ダクトテープ”との取り違え)にも注意し、必要ならプライマーやローラーを組み合わせた“正しい手順”で施工しましょう。迷ったら、目的・環境・下地の三点を整理してから、信頼できるメーカーの仕様書を確認。これだけで“貼ってすぐ剥がれる”といった初歩的なトラブルはぐっと減らせます。現場での一手間が、後の手戻りとコストを確実に減らします。









