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防振ゴムとは?現場で選ばれる理由と正しい使い方・効果を徹底解説

  1. 防振ゴムを正しく使いこなすための基礎知識と現場実践ガイド
  2. 現場ワード(キーワード)
    1. 定義
  3. 防振ゴムの基本原理と効果の出方
    1. 「防振」と「制振」の違い
    2. 共振を避けるのが最大の肝
  4. 種類と特性を理解する(材質・形状・硬さ)
    1. 材質ごとの特徴
    2. 形状のバリエーション
    3. 硬さ(JIS A硬さ)と厚み
  5. 選定の考え方と手順(現場で迷わないために)
    1. 選定フロー(基本)
    2. 1点当たりの荷重を出す
    3. 共振を避けるコツ
  6. 現場での使い方
    1. 言い回し・別称
    2. 使用例(会話のイメージ:3つ)
    3. 使う場面・工程
    4. 関連語
  7. 設置手順と現場のコツ(床置きパッド型の例)
    1. 施工ステップ
    2. 吊り(ハンガー)での注意点
  8. ありがちな失敗と対策
    1. よくある不具合
  9. 安全・品質面での注意事項
  10. ケース別の使い分け(建設内装の代表例)
    1. 空調・換気機器
    2. 給排水ポンプ・ブースターユニット
    3. 内装下地・二重床
  11. 設計・計算の考え方(やさしく)
  12. 保守・交換のタイミング
  13. 代表的なメーカー例(五十音順)
  14. よくある質問(Q&A)
    1. Q1. 厚いほど効きますか?
    2. Q2. どれくらい静かになりますか?
    3. Q3. 屋外でも使えますか?
    4. Q4. パッドは全面敷きが良いですか?
    5. Q5. 配管の防振はどうすれば?
  15. 現場チェックリスト(着工前〜完了)
  16. 内装職人のひとことアドバイス
  17. まとめ:防振ゴムを味方につける3ポイント
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防振ゴムを正しく使いこなすための基礎知識と現場実践ガイド

「防振ゴムって何?どこに使うの?種類が多すぎてどれを選べばいいの?」——建設内装の現場で初めてこの言葉に出会うと、こうした疑問が湧くのは自然なことです。防振ゴムは、機器の振動や床・壁・天井に伝わるビリつきを抑えるための基本アイテム。知っているかどうかで仕上がりの静粛性も、苦情リスクも大きく変わります。本記事では、現場で通じる言い回しから、選定・設置のコツ、ありがちな失敗と対策まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ぼうしんごむ
英語表記anti-vibration rubber (vibration isolation rubber)

定義

防振ゴムとは、ゴムの弾性(しなり)と内部損失(粘り)を利用して、機械や構造物から周囲へ伝わる振動・騒音を減らすための部材・材料の総称です。床置き機器の脚下に敷くパッド型、ボルトで固定するマウント型、天井吊りのハンガー型など形状はさまざまで、材質や硬さ(JIS A硬さ)を選ぶことで目的に合わせた防振性能を得られます。

防振ゴムの基本原理と効果の出方

「防振」と「制振」の違い

現場では混同されがちですが、厳密には次の通りです。

  • 防振(アイソレーション):振動源と建物の間に「ばね」を入れて伝わりにくくする考え方。主にゴムの弾性を活用。
  • 制振(ダンピング):部材自体にエネルギーを吸収させて振動を減衰させる考え方。ゴムの粘性による内部損失が寄与。

防振ゴムは基本的に「ばね+ダンパー」の性質を持つため、両方の効果をほどよく発揮します。

共振を避けるのが最大の肝

防振の効きは、機械の振動周波数(ファン回転、コンプレッサーの脈動など)と、防振ゴムで支えた系の「固有振動数」の関係で決まります。一般的には、加振周波数が固有振動数のおよそ2倍を超えるあたりから効果が現れ、3倍以上になると実感できるレベルで効きやすくなります。逆に近いと共振して増幅してしまうため、選定時は「柔らかすぎない・固すぎない」の見極めが重要です。

種類と特性を理解する(材質・形状・硬さ)

材質ごとの特徴

現場でよく見る材質と特徴はおおむね次の通りです。どれも一般的な傾向で、詳細はメーカー仕様を優先してください。

  • 天然ゴム(NR):弾性が高く防振効果が出やすい。耐候性・耐油性はやや弱め。屋内向け・一般機器向けに使いやすい。
  • クロロプレン(CR):耐候性・耐油性がバランスよく、屋内外問わず幅広く使われる。
  • EPDM:耐候性・耐水性・耐熱性に優れ、屋外・湿潤環境に強い。耐油性は限定的。
  • NBR:耐油性に優れ、油まわりの設備に適する。屋外耐候は材質により留意。
  • シリコーン:広い温度域で安定しやすい。機械強度やコストの観点で用途は限定的。

形状のバリエーション

  • パッド型:切って敷くだけ。屋内の小型機器、軽量間仕切りのランナー下、二重床の支持脚下などに使いやすい。
  • マウント型(ボルト止め):機器脚部のボルトで固定するタイプ。荷重が明確で、据付安定性に優れる。
  • ハンガー型:天井内の配管・ダクト・ファン吊りに。ばね+ゴムの複合型もある。
  • ストリップ・ライナー型:長尺でカットして敷設。連続支持や振動の橋渡し防止に使う。

硬さ(JIS A硬さ)と厚み

JIS A硬さは40〜70程度がよく流通します。柔らかいほど低周波に効きますが、沈み込みやすく、厚すぎるとフワついて共振のリスクが上がります。厚みは「必要最小限」が基本で、機器の重量や許容沈下量、周囲のクリアランスと合わせて決めます。

選定の考え方と手順(現場で迷わないために)

選定フロー(基本)

  • 1. 振動源の情報を集める:重量、支持点数、回転数(主な振動周波数)、設置場所(屋内外)
  • 2. 使う形状を決める:床置き(パッド/マウント)、吊り(ハンガー)など
  • 3. 材質を選ぶ:屋外・油・水・温度など環境条件に応じて
  • 4. 荷重に合う製品を候補化:1点当たりの荷重に対し、メーカーの許容荷重・変位の表から選ぶ
  • 5. 共振回避を確認:加振周波数と仕様に記載された固有振動数の目安を比較(余裕を見て選ぶ)
  • 6. 施工性と保守を考慮:据付スペース、ボルト長、点検・交換のしやすさを確認

1点当たりの荷重を出す

機器重量を支持点数で割り、1点当たりの荷重を算出します。偏荷重(重心の偏り)が疑われるときは、重い側の荷重が大きくなる前提で安全側に選ぶか、現物合わせで厚みや硬さを微調整します。

共振を避けるコツ

  • 柔らかすぎると固有振動数が下がりすぎ、低回転時に共振しやすい
  • 固すぎるとそもそも防振効果が出にくい
  • 一般に、加振周波数が固有振動数の約3倍以上になる選定だと安心感がある

迷ったら、メーカーの「選定表」「固有振動数–荷重特性」などを確認し、許容荷重内で振動伝達率が小さくなる領域を選びます。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 防振パッド/防振マット/防振材
  • アイソレーター(防振装置の総称)
  • 制振ゴム(文脈によってはほぼ同義で使われる)
  • 防振ハンガー(吊り金具と一体のタイプ)

使用例(会話のイメージ:3つ)

  • 「この送風機、床直置きだと響くから、防振ゴムを脚下にかましておいて。」
  • 「天井の配管ハンガー、最終段に防振入れてね。バネでもいいけど、今回はゴムで。」
  • 「LGSのランナー下、階下に音が行くから薄手の防振ゴムを挟んで。連続にせずピースで。」

使う場面・工程

  • 機器据付:ファン、ポンプ、コンプレッサー、パッケージ空調機の脚下
  • 吊り配管・ダクト:振動源に近いハンガー部、機器直近
  • 内装下地:軽量間仕切りのランナー下、二重床の支持脚
  • 防音室・スタジオ:浮き床・浮き壁の縁切り材として

関連語

  • 共振、固有振動数、伝達率、制振、遮音、浮き構造、入隅縁切り
  • マウント、ハンガー、アンカー、ベースプレート、パッド

設置手順と現場のコツ(床置きパッド型の例)

施工ステップ

  • 1. 下地清掃:埃・油分・バリを除去。段差が大きければモルタル等で調整。
  • 2. 位置出し:機器の支持点位置に合わせ、パッドの仮置き位置をマーキング。
  • 3. パッド切断:カッターや帯鋸で必要寸法に切る。角は面取りすると欠けにくい。
  • 4. 仮置き・水平確認:機器をそっと載せ、水平器で確認。必要に応じて厚みや枚数を微調整。
  • 5. 固定・安全確保:移動・転倒の恐れがある場合はストッパーやアンカーで二次固定。
  • 6. 最終確認:運転試験で振動・音・揺れをチェック。共振が出る回転域がないか確認。

吊り(ハンガー)での注意点

  • 支持高さ・ハンガー長さを統一し、左右で沈み込みが揃うようにする
  • 天井ふところのクリアランスを確保(沈下分も見込む)
  • 送風機など回転体は、機器直近のハンガーに防振を集中させると効きやすい

ありがちな失敗と対策

よくある不具合

  • 柔らかすぎてフワつく・共振する:硬さや厚みの見直し。支持点を増やし荷重を分散。
  • 硬すぎて効かない:より低硬度の材質に変更、厚みを抑えつつ固有振動数を調整。
  • 連続敷きで「音橋」になる:間隔を空けたピース支持に切替。縁切りを徹底。
  • 油・日射で劣化:材質の再選定(耐油はNBR、屋外はEPDM/CRなど)または保護覆いで対策。
  • 偏荷重で片減り:重心位置の見直し、支持寸法の調整、片側のパッド面積を増やす。
  • 沈み込みすぎて配管に無理:配管接続部にフレキやスリーブを入れ、沈下を吸収。

安全・品質面での注意事項

防火・法規:ゴムは基本的に可燃材。防火区画や露出部では仕様書・指示に従い、必要に応じてカバー・囲いを設けます。

耐久・点検:ひび、硬化、永久ひずみが見られたら交換。使用環境により寿命は大きく変わるため、定期点検(例:年1回の目視)を推奨します。

薬品・油:油・薬品・高温蒸気などに触れる場合は、材質適合の確認が必須。適合しないと短期で劣化します。

騒音経路の複合性:床だけでなく、配管・ダクト・電線管・壁・天井やビスが振動のバイパスになり得ます。全経路を俯瞰し、必要箇所に防振を入れて音橋を断つのがポイントです。

ケース別の使い分け(建設内装の代表例)

空調・換気機器

ファン、全熱交換器、室内機用の小さめパッドやマウントが定番。回転数が低い機器は柔らかすぎると共振しやすいので、使用回転域での振動確認を行います。吊りの場合は防振ハンガーを最終段に入れるのが効果的です。

給排水ポンプ・ブースターユニット

脈動が強く、配管から音が回り込みやすい系統。機器脚には防振ゴム、配管にはフレキシブル継手、防振ハンガーの併用が有効です。床面の剛性も確認し、薄スラブなら架台を介して負荷を分散します。

内装下地・二重床

軽量間仕切りのランナー下に短冊パッドを敷いて衝撃・生活音の伝達を低減。連続敷きにせず、ピース支持+縁切り(壁・床の音橋をつくらない)を意識します。二重床では支持脚の座に防振ライナーを入れることがあります。

設計・計算の考え方(やさしく)

防振は本来、荷重とばね定数から固有振動数を計算して最適化します。ただし現場では、メーカーの「選定表(荷重 vs. 変位・固有振動数)」を使うのが実用的です。目安として、常用荷重でゴムが少し沈む(見てわかる程度)の範囲に入ると効果が出やすく、沈みすぎは不安定のサインです。回転数可変(インバータ)の機器は、低速時にも共振しない領域を選ぶか、運転条件で回避します。

保守・交換のタイミング

  • 目視での劣化(ひび割れ、白化、ベタつき、欠け)
  • 沈み込みの増大(レベルが狂う、ボルトが干渉)
  • 振動・騒音の再発(経年硬化や弾性低下)

使用環境(屋外・油・温度・紫外線)によって寿命は数年〜十数年と差が出ます。点検記録を残し、同等品または上位材質での計画交換を検討します。

代表的なメーカー例(五十音順)

以下は、防振ゴム・防振マウント・関連防振製品を取り扱うことで知られる国内企業の例です。詳細な型式や適合条件は各社の公式資料をご確認ください。

  • 倉敷化工株式会社:産業機械向けの防振マウントや関連製品で知られるメーカー。
  • 共和ゴム株式会社:各種ゴム製品・工業用防振材を手がけるメーカー。
  • 住友理工株式会社:ゴム技術を基盤に、自動車・産業用の防振関連製品を展開。
  • ブリヂストン:ゴム・樹脂技術を活かした産業用防振・防音関連の製品を取り扱う。
  • 東京防音:住宅・家電の防振・防音小物を中心に、手軽なパッド類を展開。

他にも、配管・空調向けの金具メーカーが「防振ハンガー」「ばね+ゴム複合アイソレーター」を扱っています。現場の仕様書・メーカー推奨に合わせて選定してください。

よくある質問(Q&A)

Q1. 厚いほど効きますか?

必ずしも「厚い=良い」ではありません。厚くて柔らかいと固有振動数が下がり、低回転域で共振することがあります。荷重・周波数に合った硬さと厚みの組合せが大切です。

Q2. どれくらい静かになりますか?

振動源・周波数・設置条件で大きく変わります。目安はメーカーの伝達率(周波数比別)で判断します。正しく選定・施工できれば、床や壁への回り込み音を実感レベルで低減できるケースは多いです。

Q3. 屋外でも使えますか?

使えますが、材質選定が重要です。屋外では耐候性の高いCRやEPDMなどが好適。直射日光・水・凍結・油の有無に応じて仕様を確認してください。

Q4. パッドは全面敷きが良いですか?

基本はピース支持です。全面敷きは「音橋」になって振動が回り込みやすく、効果が落ちることがあります。機器の脚位置や荷重バランスに合わせ、複数点で支持するのがセオリーです。

Q5. 配管の防振はどうすれば?

機器側に防振ゴム、配管支持は防振ハンガー、継手はフレキなどを併用し、振動のバイパス経路を断ちます。天井内では最終段支持に防振を入れると効きやすいです。

現場チェックリスト(着工前〜完了)

  • 荷重と支持点数は把握したか(1点あたり荷重の算出)
  • 使用環境(屋内/屋外、油、水、温度、紫外線)の確認
  • 機器の回転数レンジ(可変速か)と共振リスクの検討
  • 材質・硬さ・厚み・形状(パッド/マウント/ハンガー)の確定
  • 音橋になる連結(配管・ダクト・ビス・連続敷き)の洗い出し
  • 据付後の沈下・保守スペース・レベル調整の余裕を確保
  • 試運転で振動・騒音の実測/体感確認、記録の残置

内装職人のひとことアドバイス

防振は「入れたら終わり」ではありません。伝わり道を切る発想で、脚元・吊り元・配管・仕上げを一体で考えるのがコツ。迷ったら、柔らかさに頼りすぎず、荷重と周波数の整合を優先。施工後の試運転で違和感があれば、ピース位置や枚数の調整、厚みの変更など「その場で追い込む」柔軟さが仕上がりを左右します。

まとめ:防振ゴムを味方につける3ポイント

  • 1. 原理を知る:共振を避け、周波数比に余裕を持たせる
  • 2. 適材適所:環境・荷重・形状に応じた材質と硬さを選ぶ
  • 3. 施工と検証:音橋を断ち、試運転で体感・計測して微調整

防振ゴムは、現場の静粛性と品質を支える心強い相棒です。今日の一手間が、明日のクレームゼロと快適空間につながります。ぜひ本記事のポイントを現場で活かしてください。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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