内装現場で通じる「ブラインド」完全ガイド|種類・納まり・発注チェックまで
「ブラインドってカーテンと何が違うの?」「現場で“天付”や“スラット”って言われてもピンとこない…」そんな不安や疑問にやさしく寄り添いながら、建設内装の現場で実際に使われる言い回しや、失敗しない選び方・取り付けの勘所をまとめました。この記事は、現場経験のある内装施工者の視点で、初心者の方にもわかりやすく要点を整理しています。読み終えるころには、図面や見積書の指示がすっと理解でき、職人さんとの会話もスムーズになるはずです。
現場ワード(ブラインド)
| 読み仮名 | ぶらいんど |
|---|---|
| 英語表記 | Blind / Blinds |
定義
ブラインドとは、窓まわりに取り付けて、採光・視線・風の通りを調整する内装建材(ウィンドウトリートメント)の一種です。細長い羽(スラット)を回転させて開閉する横型(ベネシャン)や、帯状のルーバーを並べた縦型(バーチカル)などが代表例。素材はアルミ・樹脂・木・布などがあり、操作はコード・チェーン・バトン(棒)・電動など。取り付け方法は天井面へ付ける「天付(てんづけ)」、壁面へ付ける「正面付(しょうめんづけ)」が基本です。目的に応じて遮光性・遮熱性・防炎性・耐湿性などの性能を選定します。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では種類や納まりに応じて次のような言い回しをします。
- 横型(ベネシャン)ブラインド:一般的に「ベネシャン」「アルミ」「ウッド(木製なら)」と短く呼ぶことも。
- 縦型(バーチカル)ブラインド:「バーチカル」「タテ型」「ルーバー(スラット)」。
- ロールブラインド:ロールスクリーンを指して「ロール(ブラインド)」と呼ぶことがありますが、厳密には別製品。現場会話では混同しやすいので要確認。
- 取り付け位置の言い回し:「天付(天井付け)」「正面付(壁正面付け)」「枠内付け(窓枠内に納める)」。
- 操作方法の略語:「チェーン」「コード」「バトン」「電動」「片操作/両操作」。
使用例(3つ)
- 「この会議室はバーチカルで天付、操作は右側で。防炎ラベル付きにしておいて。」
- 「サッシのハンドルと干渉しそうだから、ベネシャンは枠内でスラット25mmに落とそう。」
- 「木製ブラインドは重量出るから、壁の下地入ってるか確認して。なければ補強指示出すね。」
使う場面・工程
ブラインドは居室・オフィス・商業施設・医療施設など幅広く使われます。工程としては、仕上げ最終盤での取付が一般的です。
- 現調(現地採寸):開口の幅W・高さH・障害物(ハンドル・カーテンボックス・エアコン)を確認。
- 選定・見積:種類・スラット幅・色・操作方法・取付方法・防炎の要否・台数を確定。
- 発注:仕上げ工程に合わせ納期調整。オーダー製作が基本。
- 搬入・検品:サイズ・色・部材不足の有無をチェック。
- 取付:ブラケット位置出し→下地確認→固定→本体掛け込み→動作調整→清掃。
- 引渡し:操作説明・安全説明(チャイルドセーフティ)・残材回収。
関連語
- スラット:横型ブラインドの羽。一般に幅15/25/35/50mmなど。
- ルーバー:縦型ブラインドの帯。ファブリックが主流。
- ラダーコード/ラダーテープ:スラットを支持する紐またはテープ。
- チルト:スラットの回転動作。採光・視線調整に使う。
- 昇降(しょうこう):本体を上げ下げする動作。
- ヘッドボックス(ヘッドレール):機構部が収まる上部の箱・レール。
- ブラケット:本体を固定する金具。ワンタッチ式も多い。
- 天付/正面付/枠内付:取り付け位置の呼称。
- 防炎:必要用途では防炎ラベル付きの製品を選定。
- チャイルドセーフティ:子どもの巻き込み防止機構・安全パーツ。
ブラインドの種類と特徴
横型(ベネシャン)ブラインド
最も一般的。細いスラットを回して光や視線を調整できます。アルミは軽量で価格も手頃、カラーも豊富。木製は質感が高く住宅や店舗で人気ですが重量が増えるため下地条件に注意。スラット幅は細いほど繊細な見た目、太いほど存在感が出て遮蔽性も高まりやすい傾向です。
- メリット:細かな採光調整、掃除しやすい、納まりが薄い。
- デメリット:完全遮光には向きにくい、風で揺れると音が出ることがある。
縦型(バーチカル)ブラインド
天井から床までの大開口に相性がよいタイプ。ルーバーを回転・左右に寄せることで視線と光をコントロール。直線的でスタイリッシュな印象に仕上がります。ルーバーの材質は布が多く、空間の吸音や柔らかさにも寄与します。
- メリット:大開口に最適、出入りのしやすさ、カーテンに近い操作感。
- デメリット:床の段差や家具に干渉しやすい、下部が汚れやすい。
木製ブラインド(ウッドブラインド)
天然木や木調樹脂のスラットを使用。重厚感と高級感が魅力。湿度の高い場所では反り・劣化が起こりやすいため、用途に合わせて木調樹脂や耐湿仕様を選びます。重量があるため下地補強はほぼ必須です。
素材別の特徴
- アルミ:軽量・耐久性・カラー豊富・コストバランス良好。
- 樹脂:耐水・浴室やキッチンに向く。熱変形には注意。
- 木・木調:質感重視の住宅・店舗向け。重量・湿度管理に留意。
- ファブリック(バーチカル):柔らかい印象。防炎仕様が選べる。
ロールスクリーン(ロールブラインド)との違い
ロールスクリーンは生地を巻き上げる構造で、視線調整は上下のみ。ブラインドのような「スラット回転による微調整」はできません。現場では「ロールブラインド」と呼ぶ人もいますが、仕様・価格・納まりが異なるため、発注時は正式名称で確認しましょう。
採寸と納まりの基本
正面付けと天付けの使い分け
正面付けは壁に対して正面から被せる納まり。遮蔽面積を確保しやすく、枠外に出すことで光漏れを減らす効果も。天付けは窓枠やカーテンボックスの天面に取り付ける方法で、見た目がすっきり。開口内に納める「枠内付け」はシャープに収まる一方、左右上下にクリアランスが必要です。
クリアランスの目安
枠内付けでは、製品の種類・メーカー推奨値に合わせて、左右上下に数ミリ〜1センチ程度の逃げ寸法を確保します。スラットやルーバーがサッシハンドル・クレセント・窓台に干渉しないかを必ず現調で確認。薄型を選ぶ、スラット幅を小さくする、取付高さを上げるなどで回避します。
干渉・納まりチェック
- サッシのハンドル・クレセント・換気レバーとの干渉。
- 窓上のエアコン・火災報知器・点検口・カーテンレールとの競合。
- 開き戸・引戸の戸当り、家具・造作棚との近接。
- コンセント・スイッチ類(電動の場合は配線ルート)。
図面・指示の読み方
見積書や図面では「W×H(ミリ)」「天付/正面付」「操作位置(右/左)」「スラット幅」「色番」「防炎の有無」などが記載されます。バーチカルでは「片開き/両開き」「ルーバー幅」「たたみ代(ルーバーを寄せた時の幅)」も要チェックです。
取り付け手順(現場実務の流れ)
- 位置出し:水平器やレーザーで芯・高さを出す。左右の逃げ寸法を確認。
- 下地確認:下地探しで木下地・軽鉄下地の位置を特定。なければボードアンカー等を検討。
- ブラケット固定:推奨ビスで確実に固定。等間隔・左右のバランスを取る。
- 本体掛け込み:ヘッドボックスをブラケットにロック。外れ止めを確認。
- 動作調整:昇降・チルトのスムーズさ、水平、たわみを点検。セーフティパーツも取り付け。
- 仕上げ:養生撤去・清掃・取扱説明を実施。
使用工具の例:メジャー、墨出し器(レーザー)、下地探し、インパクトドライバー、プラスビット、石膏ボードアンカー、脚立。仕上げ面を傷つけないよう養生を徹底します。
下地と固定方法の考え方
アルミの横型など軽量でも、繰り返しの操作で負荷がかかります。特に木製や大型のバーチカルは自重が大きいので、確実な下地が必要です。
- 木下地:木ネジで確実に固定。先穴を適切に。
- 軽量鉄骨(LGS):鉄板の厚みに応じたタップビスやハード用ビスを選定。
- 石膏ボードのみ:基本は避け、補強板やアンカーを使用。重量物は不可。
- カーテンボックス内:下地材の有無を確認。無ければ補強を追加。
下地がない場合は、見切り材や補強ベースを追加してから取り付けるのが安全・確実です。ビスピッチやブラケット数はメーカー施工基準に合わせます。
性能と選び方のポイント
- 遮光・遮蔽:寝室やAVルームは遮光性に配慮。横型は微調整に強み、完全遮光ならロールやカーテン併用も検討。
- 遮熱・省エネ:夏場の直射日光対策に効果的。窓外ブラインドや高反射カラーも選択肢。
- 防炎:公共施設や特定用途では防炎ラベル付きの製品が求められる場合があります。用途条件を必ず確認。
- 耐湿:浴室・洗面・キッチンは樹脂・アルミなど耐湿仕様、金属部の防錆にも配慮。
- 安全性:幼児・子どもがいる環境ではコードのループによる事故防止のため、セーフティパーツやチェーンテンショナー、操作形状の選択を徹底。
- メンテナンス:オフィスは清掃性重視(アルミ有利)。住宅や店舗は意匠と清掃のバランスを考慮。
代表的なメーカーと特徴
国内には信頼性の高い専業メーカーが複数あります。以下はいずれも住宅・オフィス向けに幅広いラインアップを持ち、オーダー製作・施工基準・保証体制が整っています。
- タチカワブラインド(立川ブラインド工業株式会社):横型・縦型・木製・ロールスクリーンなど窓装飾全般を網羅。カラー・サイズバリエーションが豊富。
- TOSO(トーソー株式会社):メカの信頼性や操作性に定評。住宅から商業施設まで対応できる部材とアクセサリーを展開。
- ニチベイ(株式会社ニチベイ):オフィス・公共案件での採用実績が多く、機能生地や防炎対応も充実。大開口対応も強み。
メーカーごとにスラット幅の設定、操作方法、ブラケット形状、取付許容荷重、標準寸法範囲、オプション(セーフティやバランス)の仕様が異なります。指名がない場合でも、用途条件に合う型式をカタログで照合し、施工基準に沿って選定しましょう。
見積・発注のチェックリスト
- 数量・部屋名:どの窓に何台か。
- 種類:横型/縦型/木製など。
- サイズ:W×H(mm)。枠内か枠外かを明記。
- 取付方法:天付/正面付/枠内付。
- 操作方法・位置:コード/チェーン/バトン/電動、右/左。
- スラット(ルーバー)幅・色番:意匠と性能の両面で選定。
- 性能要件:防炎の有無、耐湿、遮光グレード等。
- オプション:バランス、セーフティパーツ、サイドガイド(振れ止め)など。
- 納期・搬入:工期に間に合うか、長尺物の搬入経路。
- 下地条件:補強の要否、アンカー使用可否。
- 図面・納まり図:干渉・たたみ代・開閉方向を事前確認。
よくあるトラブルと対策
- 干渉で上げ下げできない:現調時の障害物チェック不足。スラット幅変更、正面付けに切替、ボックス追加などで回避。
- 本体が傾く・たわむ:ブラケットの水平不良、ビス緩み、製品サイズに対してブラケット数不足。再固定・増設で是正。
- 操作コードが絡む:セーフティパーツ未設置や長さ過多。テンショナー取付・余長処理を徹底。
- 光漏れが気になる:枠内付けでの隙間が原因。枠外に切替、サイドバランス追加、併用スクリーンで改善。
- 浴室でサビ・変形:非耐湿仕様の誤選定。樹脂・アルミ・防錆部材の製品に更新。
クリーニングとメンテナンス
日常はハンディモップややわらかい布でホコリを落とします。汚れが目立つ場合は中性洗剤を薄めた水で軽く拭き取り、その後乾拭き。木製は水拭きしすぎると反りの原因になるため乾拭きが基本。バーチカルの布ルーバーは外して個別にケアできるタイプもあります。操作部の異音や引っかかりは、無理に力をかけず原因を特定し、必要に応じてメーカーサービスや専門業者へ相談しましょう。
現場でスムーズに伝わる会話フレーズ
- 「この窓は枠内で25mmスラット、チェーン右、天付でお願いします。」
- 「たたみ代が扉に当たるので、バーチカルは片開きで窓の反対側に寄せます。」
- 「木製で重量出るので、下地補強を先行で入れておいてください。」
用途別のおすすめ例
- オフィス:アルミの横型で微調整。会議室の外周はバーチカルで大開口をすっきり。
- 住宅リビング:木製ブラインドで質感アップ。大開口の掃き出しはバーチカルも相性良し。
- 寝室:遮光性重視。横型+ロールやカーテンの併用で光漏れ対策。
- 水まわり:樹脂・アルミの耐湿仕様。金属部は防錆構造を選定。
- 店舗:意匠×機能のバランス。防炎の要否を用途に合わせて確認。
ミニ用語辞典:ブラインド周辺ワード
- バランス:ヘッドボックスを覆う化粧カバー。意匠性向上。
- サイドガイド:風やエアコンの気流で揺れるのを抑えるガイドコード。
- セパレート/シングル:二連窓などで一体化するか、個別に分けるか。
- 電動:リモコン・壁スイッチ・連動制御。電源計画と配線ルートが必要。
- たたみ代:開口を開けた際に寄せた部分の幅。動線・干渉計画に重要。
初心者がまず押さえる3つのコツ
- 採寸は「実測」と「干渉チェック」をワンセットで。数値だけでなく周辺障害物を写真で記録。
- 取付方法は「天付・正面付・枠内付」の違いを理解し、仕上がりイメージを共有。
- 発注前に「操作位置・防炎の要否・色番・スラット幅」を第三者チェック。伝達ミスを防ぐ。
よくある質問(Q&A)
Q1. カーテンとブラインド、どちらが良い?
A. 微妙な採光・視線調整や省スペース性はブラインドが得意。遮光性・断熱性や防音はカーテンに分があります。用途・意匠・清掃性のバランスで選び、併用も有効です。
Q2. 子ども部屋でも安全に使える?
A. 可能です。セーフティパーツ(コードのループ解消、テンショナー)や、コードレス・バトン操作・電動化などを選び、安全性に配慮しましょう。
Q3. 浴室に木製ブラインドは使える?
A. 天然木は推奨しません。耐湿仕様の樹脂・アルミ、または木調樹脂を選ぶのが無難です。
Q4. 防炎は必ず必要?
A. 用途によります。オフィス・商業・公共などでは防炎性能が求められる場面があります。計画段階で用途条件を確認し、防炎ラベル付き製品を選定してください。
Q5. 採寸はどこを基準にする?
A. 完成した開口の実測値が基本。枠内付けなら内々寸法から必要なクリアランスを差し引き、枠外(正面付)なら被せ寸法を足して、光漏れ・干渉を調整します。
まとめ|現場で迷わないために
ブラインドは「種類(横・縦・素材)」「納まり(天付・正面付・枠内付)」「操作(コード・チェーン・バトン・電動)」の三本柱を押さえるだけで、現場の会話が一気にスムーズになります。採寸と干渉チェックを丁寧に行い、防炎や耐湿などの要件を確認。見積・発注ではサイズ・操作位置・スラット幅・色番・取付方法を明確にして、メーカーの施工基準に沿って取り付けましょう。この記事を手元のチートシートとして活用すれば、「参考になった」「疑問が解消した」と感じていただけるはずです。明日の現場で、ぜひ使ってみてください。









