CD管をゼロから理解する:用途・選び方・施工のコツまで、現場目線でやさしく解説
「CD管って何? PF管とどう違うの?」——はじめて内装や電気設備の図面・現場に触れると、こうした素朴な疑問が出てくるはずです。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる現場ワード「CD管」を、初心者にもわかりやすく、かつ実務で役立つ形で丁寧に解説します。用途や選び方、サイズの目安、施工上の注意点、現場での言い回しまで、これ一つで迷いが減る内容にまとめました。
現場ワード(キーワード)
読み仮名 | しーでぃーかん |
---|---|
英語表記 | CD Conduit(Corrugated Duct / Concrete Duct と呼ばれることが多い) |
定義
CD管とは、合成樹脂製の可とう電線管の一種で、主にコンクリート内に埋設して電線・ケーブルを保護するために用いる波付(ジャバラ)管のことです。一般にオレンジ色で、非難燃のため露出配管には用いず、コンクリート打設前のスラブ・壁内などへの埋設配管に限定して使用するのが基本ルールです。呼び径(16, 22, 28, 36, 42 など)でサイズを表し、弱電から電力まで用途に合わせて選定します。
CD管の基本知識
用途・特徴(何のために使う?)
CD管は「コンクリート埋設専用」のケーブル保護管です。鉄筋に結束してルートを確保し、打設後もケーブルの交換・追加ができるようにするのが主目的。可とう性(曲げやすさ)が高く、コンクリート内での経路取りに向いています。
- 主な用途:コンクリート壁・床スラブ内の電源・照明・弱電(インターホン、LAN、同軸)用の配管保護
- 色・外観:オレンジ色が一般的の波付管(ジャバラ)
- 特性:可とう性が高く、価格も比較的安価。非難燃のため露出や天井裏の可燃部での使用は不可が原則
- 施工環境:屋内のコンクリート埋設。屋外露出や直射日光下には使用しない
PF管・VE管・金属管との違い
現場で混同しやすい類似資材とのざっくり比較です。
- PF管:合成樹脂製可とう電線管の一種で、難燃性・耐候性を持つタイプがあり、天井裏や露出配管にも用いられます。色はグレーや黒が多い。CD管と違い、コンクリート埋設以外の用途にも対応。
- VE管(硬質塩化ビニル電線管):硬い直管。露出でも使われ、見た目がすっきり。曲げはエルボ部材や加熱ベンダを使用。
- 金属管(E管・C管など):機械的強度・耐火性が必要な場面で使用。露出配管の意匠性や耐久性も高いが、手間はかかる。
まとめると、「コンクリート内ならCD、天井裏や露出ならPF、直管すっきり見せたいならVE、高耐久・防火で攻めるなら金属管」という使い分けが基本の考え方です。
規格・法規の概要
CD管は「合成樹脂製可とう電線管」としてJIS規格(例:JIS C 3653等)に基づく製品が流通しています。また、電気設備技術基準・内線規程(日本電気協会)では、使用場所・施工方法・可燃部での扱いなどが整理されています。実務では、設計仕様書・監理者指示・各自治体の解釈や電力会社の指導基準にも従います。要点は以下のとおりです。
- CD管はコンクリート埋設専用(非難燃)。可燃部の露出経路には原則使用不可。
- 曲げ半径・支持間隔・結束方法・貫通部の処理はメーカー仕様と内線規程に従う。
- 貫通部の防火区画は、指定材料・充てん材で処理(防火区画貫通処理)。
サイズと適合ケーブルの早見の考え方
管の選定は「呼び径」「通すケーブルの外径合計」「曲がりの数」「将来増設の余裕」のバランスで決めます。以下は現場でよく使う目安です(ケーブル外径・曲率によって変わるため、最終判断は実寸で)。
- 呼び16:VVF 1.6-2C 1条、またはUTP(Cat6)1〜2条、インターホン線などの弱電1〜2条。
- 呼び22:VVF 2.0-2C 1条、またはVVF 1.6-3C 1条、UTP+同軸1条程度。
- 呼び28:VVF 2.0-3C 1条、またはUTP+HDMIなど混載、同軸2条程度。
- 呼び36:多条束や太めケーブルの通線、将来増設の幹線ルート用。
- 呼び42:設備用の主幹ルートや大量配線の幹線・将来余裕確保。
コツ:通線のしやすさと詰まり防止のため、余裕率(管断面に対するケーブル占有率)は3〜5割を目安にすると安全です。曲がりが多い・取り回しが厳しい場合は、1サイズ上げるのが定石です。
現場での使い方
言い回し・別称
- 「CD」「CD管」「オレンジのCD」などと省略して呼ぶことが多い
- 「ジャバラ」「フレキ(※本来は可とう管全般の俗称)」と呼ばれることもある
- 「PF」と混同しないように「CD(コンクリート用)」「PF(露出・難燃)」とセットで伝えるのが安全
会話での使用例(3つ)
- 「この壁、スイッチ上がりはCDの22で立ち上げて。天井裏はPFに切り替えね。」
- 「ここ曲がりキツいから、28に上げよう。後でLAN追加できるように余裕見とこう。」
- 「打設前にCDの結束増やして。バイブで潰れると通線死ぬから、ボックス周りも増し締めしておいて。」
使う場面・工程
- 配管ルート計画(スリーブ位置・ボックス位置の確認)
- 鉄筋への結束・支持金具の取り付け
- CD管の敷設(切断・継手・ボックスへの接続)
- 導通確認・通線ワイヤの確保(通線器の事前準備)
- コンクリート打設時の保護(抜け・潰れ対策)
- 養生後の通線・結線作業
関連語・周辺資材
- PF管:露出・天井裏などで使う難燃タイプの可とう管
- VE管:硬質塩ビの直管。露出で見栄え良く仕上げたいとき
- カップリング・ボックスコネクタ:CD管とボックス・管同士の接続部材
- サドル・結束線・インシュロック:固定・支持部材
- スリーブ・防火区画材:貫通部処理に用いる
- 通線器(スチール・グラスファイバー):打設後の通線作業で使用
施工手順とコツ(現場ベストプラクティス)
1. 事前計画・準備
- 図面でボックス位置・スイッチ高さ・器具位置を確認し、最短すぎない「通線しやすい」ルートを選ぶ。
- 曲がりはできるだけ少なく、90度は分割して曲げる(45度×2など)。
- 将来増設(特に通信)を見越し、1サイズ上げや予備管の敷設を検討。
2. 固定・曲げ・継手のポイント
- 固定間隔はメーカー推奨に従い、曲がり手前・立ち上がり・ボックス直近は結束を増やす。
- 曲げ半径は「管外径の4〜6倍」を目安に、角潰れを避ける。急曲げは詰まりの原因。
- 継手は専用のカップリング・ボックスコネクタを使用。差し込みは奥まで確実に。打設時の抜け防止にテープで一巻きすると安心。
- 切断はカッターや専用カッターを使用し、バリ取りを忘れない(通線時の被覆傷防止)。
3. 通線のコツ
- 通線器(通称:針・スチール・グラスロッド)を用意。抵抗が高い経路は潤滑剤(通線用)を併用。
- 通線方向は「上→下」より「下→上」のほうがスムーズな場合が多い。現場で試して決める。
- ケーブルの先端はテーパー形状に養生し、段差が出ないようにビニルテープでまとめる。
4. コンクリート打設時の注意
- バイブレーターの当てすぎでCDが潰れたり、継手が抜けるトラブルが多発しやすい。要監視。
- ボックス周り・立ち上がりは特に抜け対策(結束増し・テーピング)。
- 配筋と干渉して管が押されないよう、スペーサや結束位置を工夫。
選び方のポイント(失敗しないサイズ・材質の判断)
サイズ選定の考え方
- 通線本数・ケーブル外径・曲がり数を見て、占有率3〜5割を目安に呼び径を決定。
- 機器側の口径(ボックス・盤のノックアウト径)に合わせる。異径ならアダプタを使用。
- 将来増設・交換を想定する箇所はワンサイズ上げ、または予備管を並走。
環境条件での選択
- コンクリート埋設:CD管が基本。
- 天井裏・壁内の可燃部(露出に近い扱い):PF管や難燃タイプを選択。
- 屋外・日射・機械的ストレスが高い場所:PF管や金属管など耐候・耐久の高い管を選ぶ。
コストと在庫運用(現場目線)
- CDは単価が抑えられる一方、用途が「埋設」に限定される。PFとの取り違えに注意。
- 現場共通在庫は16・22・28を厚め、36・42は必要数量で手配、という運用が多い。
- 通線ワイヤ入りの製品を選ぶと後工程が楽になるが、価格とのバランスで判断。
よくある失敗と対策
- 露出で使ってしまう:CDは非難燃。露出・天井裏はPFに切り替える。
- 曲げがキツくて通線できない:曲げ半径を確保し、90度は分割。無理なら1サイズ上げ。
- 打設で潰れた/抜けた:結束ピッチを詰め、継手は奥まで差し込み+テープ一巻き。
- ケーブルが傷ついた:切断面のバリ取り、引き込み先端のテーピングを丁寧に。
- ボックス位置ズレ:打設前に墨・通り・高さを複数箇所で相互確認。
- 貫通部の防火処理忘れ:図面・仕様確認し、指定材料で確実に施工・写真記録。
メーカーと代表的なラインナップ(例)
以下は電設資材として一般に流通している代表的メーカーの一例です。いずれもCD管や関連部材(カップリング、ボックスコネクタ、サドル等)を幅広く扱っています。最新の仕様・適合・法規対応は各社カタログでご確認ください。
- 未来工業(MIRAI):可とう管「ミラフレキ」シリーズで知られる電設資材総合メーカー。施工性に配慮した各種コネクタ・サドルが充実。
- ネグロス電工:支持金具・配管アクセサリに強み。現場で使いやすい金具・ハンガー類が豊富。
- パナソニック(配線・電設資材):ボックス・モール・器具類を含めたトータルな電材の選択肢が豊富。
メーカーにより、通線ワイヤ入りタイプ、耐圧・耐久性の差、継手のワンタッチ性など細かな仕様が異なります。採用前に、相手ボックス・盤・他管種との適合(寸法・ネジ・ノックアウト径)もセットで確認しましょう。
Q&A:よくある疑問に答えます
Q1. CD管は天井裏で使えますか?
A. 原則NGです。CDは非難燃で「コンクリート埋設専用」。天井裏など可燃部や露出で使う場合はPF管や適合する耐火・難燃の管を選んでください。
Q2. 屋外の露出配管に使っても大丈夫?
A. 適しません。日射・風雨・衝撃を想定した性能ではありません。屋外はPF管の耐候タイプや金属管を検討しましょう。
Q3. どのサイズを選べばよいか迷います。
A. 通すケーブルの外径と本数、曲がり数で判断します。迷ったら1サイズ上げ、将来の増設も考慮。曲がりが多い経路や混載はワンサイズ上が無難です。
Q4. コンクリートにケーブルを直に埋めてもいい?
A. 一般には管路での保護が基本です(安全性・保守性の観点)。仕様書・内線規程・監理者の指示に従い、原則としてCD等の管を用いましょう。
Q5. 曲げ半径の基準は?
A. メーカー推奨に従うのが鉄則です。目安としては管外径の4〜6倍程度を確保すると、通線性が安定します。
CD管のチェックリスト(現場で迷わない要点)
- 使用場所はコンクリート埋設か?(露出・可燃部ならPFへ)
- 呼び径は余裕を見たサイズか?(占有率3〜5割+曲がり考慮)
- 曲がりは少なく、90度は分割できているか?
- 継手は奥まで差し込み、抜け対策をしたか?
- 打設時の潰れ・ズレ対策(結束ピッチ・ボックス周りの固定)は十分か?
- 貫通部は仕様通りに防火処理したか?
まとめ:CD管を味方にすると、後工程が楽になる
CD管は「コンクリート埋設専用」の可とう電線管。PF管やVE管・金属管との違いを押さえ、用途に合ったサイズとルートを選べば、通線がスムーズで手戻りも減らせます。ポイントは、非難燃のため露出に使わないこと、曲げ半径の確保、打設時の抜け・潰れ対策、そして将来の増設余裕です。この記事の内容を現場のチェックリストとして活用し、迷ったときは規格・仕様書・メーカー資料を確認しつつ、一歩ずつ確実に進めていきましょう。これで「CD管って何?」という不安は解消。実践で活かせる知識として、今日から自信を持って使い分けられるはずです。