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丁番とは?建設現場で役立つ種類・選び方・取り付けポイントを徹底解説

現場で迷わない「丁番」ガイド:種類・選び方・取り付けの勘どころを職人目線で解説

「丁番って蝶番と同じ?」「どの種類を選べばいいの?」――建設や内装の現場に入ると、当たり前のように飛び交う言葉ですが、初めてだと戸惑いますよね。この記事では、現場で本当によく使う現場ワード「丁番」について、読み方から種類の違い、選定ポイント、取り付けのコツまでを職人目線でやさしく整理。初心者でも、今日の現場から自信を持って動ける実践的な知識だけをまとめました。

現場ワード(丁番)

読み仮名ちょうばん(一般)/ちょうつがい(同義語:漢字「蝶番」)
英語表記hinge(ヒンジ)

定義

丁番は、扉やフタなどを「開く・閉じる」ために回転軸を与える金物の総称です。2枚(またはそれ以上)の羽根(リーフ)を軸(ピン)で連結した構造で、建具・家具・設備扉の動きを支えます。現場では、平丁番・抜き差し丁番・旗丁番・スライド丁番(カップ丁番・ヨーロピアンヒンジ)・ピボットヒンジ・スプリング丁番・隠し丁番など、用途や納まりに応じた多様な種類が使われます。

基礎知識:丁番の仕組みと各部名称

丁番は見た目はシンプルでも、安定した開閉を支えるための要素が詰まっています。現場で部位名を押さえておくと、指示やコミュニケーションが格段にスムーズになります。

  • 羽根(リーフ):ビスで扉や枠に固定する板状部分。2枚1組が基本。
  • 軸(ピン):回転の中心。抜け止めやベアリング入りのタイプもあります。
  • カンヌキ/コマ(ナックル/樽):羽根の軸方向の丸い噛み合い部。ここが噛み合ってピンを包み、回転を支えます。
  • ベアリング:開閉を滑らかにし、摩耗を減らす部品。重量扉や高頻度開閉に有効。
  • 座彫り(モルタイズ):平丁番などを面一に収めるために木口を掘る加工。
  • カップ(スライド丁番):扉側に35mm程度の座ぐりをして埋め込む円形部品。

種類と特徴(使い分けの目安)

平丁番(バットヒンジ)

最も基本的な丁番。扉と枠をビス留めし、必要に応じて座彫りを行い面一に納めます。住宅の室内ドア・収納扉など幅広く使用。シンプルで耐久性が高く、材質やサイズの選択肢が豊富です。

  • 長所:構造が強い、修理しやすい、選べる仕上げが多い。
  • 短所:掘り込みが必要な場面がある、調整機能は基本的にない。

抜き差し丁番(リフトオフヒンジ)

扉を上方向に持ち上げるだけで外せる丁番。清掃やメンテナンス、仮設・展示什器、狭い現場で有用です。左右勝手があるため、手配時に注意。

旗丁番(フラグヒンジ)

片側に旗のような羽根が付く形状。枠面に掘り込みが少なく、扉厚が薄い場合や金属框の納まりに使いやすい。脱着が容易なタイプもあります。

スライド丁番(カップ丁番・ヨーロピアンヒンジ)

家具・キッチン扉で主流。扉裏にカップ穴(一般に径35mm)を開け、取り付け座金と組み合わせて装着します。左右・前後・上下の微調整機構や、ソフトクローズ機構付きなど多機能。

  • 長所:3次元調整が可能、ソフトクローズなど機能豊富、見た目がすっきり。
  • 短所:穴加工が必要、モデルごとにかぶせ量や開角が異なる。

ピボットヒンジ(床・天井軸受け)

上下のピボット(軸受け)で扉を支持する方式。大型・重量扉、框扉、店舗のガラスドア等で使用。床側の施工精度と荷重設計が重要です。

スプリング丁番(セルフクロージング)

内部にバネを持ち、扉を自動的に閉じる機能を備えた丁番。トイレブースや共用部の小扉、片開きカウンターなどに採用。

隠し丁番(コンシールドヒンジ)

扉を閉じたときに金物が見えにくいタイプ。意匠性重視の木製建具や造作家具で使用されますが、加工精度が求められます。

素材・仕上げの選び方

使用環境と意匠に合わせて素材と表面仕上げを選びます。

  • 鉄(スチール):コスト重視。室内用に多い。ユニクロめっき(亜鉛めっき)、ニッケル、クロム、黒色など仕上げ多彩。
  • ステンレス(SUS304等):耐食性が高く、浴室周りや外部近傍に適合。サテン仕上げ(ヘアライン)など。
  • 真鍮:意匠性重視。エイジングを楽しむ現場やクラシック・ホテルライクな内装に。
  • 亜鉛ダイカスト:スライド丁番など機能部品に広く使用。

設計・選定の基準(失敗しないチェックリスト)

丁番は「扉の重量・サイズ・使用頻度・環境・納まり」で選びます。迷ったら、以下を順に確認しましょう。

  • 扉重量・寸法:重く大きいほど強度の高い丁番+枚数追加(3枚吊り以上)を検討。
  • 開閉頻度:高頻度ならベアリング入りや耐久型を選定。
  • 納まり:面付け・インセット・かぶせ(オーバーレイ)の違いに合わせた形状を。
  • 開角度:95°/110°/165°など。家具の内部アクセスに直結。
  • 使用環境:湿気・塩害はステンレス推奨。厨房・水回りは特に注意。
  • 意匠:見せる金物か隠す金物か。仕上げ色と他金物のトーン合わせ。

参考目安(一般論):

  • 室内木製ドア(20〜30kg):平丁番3枚吊りを基本。高さ2,000mm前後で上端から180〜200mm、下端から180〜250mm、中間は上寄りに配置。
  • 小型家具扉(〜5kg):スライド丁番2本で可。高さがある場合は3本。
  • 大型家具扉(5〜12kg):スライド丁番3〜4本。ソフトクローズ内蔵を選ぶと安心。

耐荷重はメーカー・品番で異なるため、最終判断はカタログの「1枚当たり耐荷重 × 本数 ≥ 扉重量」に加え、余裕係数(1.2〜1.5倍程度)を見込むのが現場の安全側です。

取り付け手順と実践ポイント

ここでは「平丁番」と「スライド丁番」の要点をまとめます。

平丁番の取り付け(木製ドアの例)

  • 位置決め:上端から180〜200mm、下端から180〜250mm、中間1カ所。丁番の芯が扉の回転中心になります。
  • 座彫り:ノミ・トリマーで羽根厚分をきれいに掘る。浅すぎると開閉渋り、深すぎるとチリ崩れの原因。
  • 下穴:木割れ防止に必須。ビス径の7〜8割の下穴が目安。
  • 仮止め→建付け確認:隙間(チリ)2〜3mmを基準に、建具の倒れ・反りを見ながら調整。
  • 本締め:最後に全数増し締め。長期使用を見越し、上部丁番は1〜2本長めのビスに置き換えると落ち対策に有効。

スライド丁番の取り付け(家具扉の例)

  • カップ穴加工:35mm径が一般的。深さはメーカー推奨(おおむね11.5〜13mm)を厳守。ジグ使用で精度UP。
  • かぶせ量・インセット:座金(プレート)厚みやアーム形状で決まる。設計図のかぶせ量を確認。
  • 取り付け→微調整:左右・前後・上下の3方向調整ネジでチリを揃える。複数扉は端→中央の順に調整。
  • ソフトクローズ:重い扉で効きが弱いときは丁番本数追加やダンパー別体の併用を検討。

共通のコツ:

  • ビスは最初に中央1〜2本のみ仮止め。建付けが出てから残りを固定。
  • 木口の割れ・座屈に注意。堅木は下穴深め、柔らかい材は座金やスリーブで押さえる。
  • 屋内でも結露・水気がある場所はステンレスや耐食仕上げを選ぶ。

よくある不具合と現場対処

  • 扉が下がる(召し合わせが擦る):上部丁番のビス穴が痩せている可能性。長めのビスへ変更、木栓+再下穴で補修。重量不足なら丁番を増設。
  • きしみ音:ピン・ナックル部の摩耗や歪み。軽く潤滑(樹脂ベアリングは乾式推奨)。異音が続く場合は交換。
  • 勝手に閉まる/開く:建付け(傾き)や反り。スライド丁番なら調整ネジ、平丁番なら座彫りの見直しや戸当たりで制御。
  • ビス頭が浮く:下穴不足や素材の痩せ。ビス交換・下穴増し・座面の当たり確認。
  • ソフトクローズ効き過ぎ:ダンパー解除位置や調整を確認。重量に対し機構が強すぎる場合は別仕様へ。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 丁番=蝶番=ヒンジ(同義)。現場では「ちょうばん」「ヒンジ」と呼ぶことが多い。
  • スラ丁=スライド丁番の略称。ヨーロピアンヒンジとも。
  • 抜き差し丁番=リフトオフ、旗丁番=フラグヒンジ。
  • 座彫り=丁番を面一にする掘り込み加工。座ぐりとも言う。

使用例(3つ)

  • 「このドアは重いから、平丁番は3枚吊りで。上だけ長ビス入れておいてね」
  • 「キッチンの扉はスラ丁で。かぶせ15mm、110°タイプ、ソフトクローズ付きで頼む」
  • 「メンテで外すから、ここは抜き差し丁番に変更。勝手は右だから右勝手手配で」

使う場面・工程

  • 木製建具の吊り込み(額縁・枠と扉の取り合い)
  • 家具・什器の現場組み立て(キッチン、洗面、収納)
  • 設備点検口や可動パネルの設置
  • 建具調整・引き渡し前の最終建付け

関連語(知っておくと便利)

  • チリ:扉と枠の見付けの均等な隙間。一般に2〜3mm。
  • 召し合わせ:両開き扉などの合わせ部分。
  • 戸当たり:扉の止まりを作る部材。クッションや磁石(ラッチ)と併用。
  • かぶせ(オーバーレイ):扉が側板にどれだけ重なるか。スライド丁番の基本パラメータ。
  • インセット:扉が枠内に納まる納まり。

規格・サイズの目安

平丁番はJISや慣習サイズが多く流通しています。

  • 代表的サイズ(高さ):約64mm/76mm/89mm/102mm(いわゆる2.5″/3″/3.5″/4″クラス)。
  • 板厚:用途により約2.0〜3.5mm。重い扉は厚みとベアリングの有無を確認。
  • ビス:扉材に応じて木ネジやタッピン。長さは貫通しない範囲で可能な限り長めが安心。

スライド丁番の一般的仕様:

  • カップ径:35mm(小扉などで26mmもあり)。
  • カップ深さ:おおむね11.5〜13mm(メーカー推奨値に従う)。
  • 開き角度:95°/110°/120°/155〜165°など。
  • 機能:ソフトクローズ、ワンタッチ脱着、インセット・ハーフかぶせ・全かぶせ対応。

代表的メーカーと特徴

  • スガツネ工業(LAMP):建築・家具金物の総合メーカー。平丁番からスライド丁番、特殊ヒンジまでラインアップが広く、カタログ設計資料が充実。
  • Häfele(ハーフェレ):ドイツの総合金物ブランド。家具金物・建築金物ともにバリエーション豊富で、システム提案に強み。
  • Blum(ブルム):オーストリアの家具金物メーカー。スライド丁番や引き出しシステムに定評。調整機構とソフトクローズの信頼性が高い。
  • Hettich(ヘティヒ):ドイツの家具金物大手。丁番・レールともに高品質で、商業什器にも多用。
  • 丸喜金属本社(MKK):建築金物メーカー。建具用丁番・旗丁番・取手など公共・民間向けに広く展開。

品番ごとに耐荷重や対応扉厚・開角が異なるため、メーカーの技術資料での最終確認が必須です。

似た金物との違い(混同しやすいポイント)

  • ドアクローザー:扉の閉まる速度・力を制御する機器。丁番とは別系統で併用される。
  • オートヒンジ:クローザー機能が丁番側に内蔵されたもの。単なる平丁番とは別物。
  • ピボット金物:上下の軸で支持するシステム。丁番と呼ばれない場合も。
  • スライドレール:引き出し用金物。開閉方向が「回転」ではなく「直動」。

現場で役立つ小ワザ・安全配慮

  • 仮吊り治具:扉を保持する馬やスペーサーを用意。手元の安全とチリの安定が段違い。
  • ピス穴がバカになったら:木栓(ダボ)+木工用ボンドで穴を再生 → 乾燥後に再下穴。
  • 金物混在に注意:異種金属接触は腐食の原因。屋外・湿気は特にステンレスで統一。
  • ドリルの貫通防止:深さゲージやマスキングテープで刃長を制御。

ミニQ&A(初心者のよくある疑問)

Q. 「丁番」と「蝶番」、どっちが正しい?
A. 用途は同じで、現場ではどちらも使われます。図面では「丁番」、一般会話では「蝶番(ちょうつがい)」もよく使われます。

Q. 何枚吊りにするか迷うときは?
A. 扉重量・高さ・使用頻度で判断。迷ったら1枚追加が安全側。メーカーの耐荷重表を必ず参照。

Q. 扉が勝手に閉まる/開くのはなぜ?
A. 建付けの傾きや丁番位置のズレ、扉の反りが原因。水平・垂直を再確認し、調整機能で追い込む。

Q. スライド丁番のカップ穴は35mmで統一していい?
A. 35mmが最も一般的ですが、製品により異なる場合も。必ず仕様書で径・深さを確認。

Q. 屋外で使える?
A. 可能ですが、基本はステンレスや耐食仕上げを選び、ビスも同材質を使用。メンテナンス前提で設計を。

用語辞典的に押さえる要点(要約)

  • 定義:扉などに回転軸を与える金物の総称。
  • 主要種類:平丁番/抜き差し/旗/スライド(カップ)/ピボット/スプリング/隠し。
  • 選定基準:重量・サイズ・頻度・環境・納まり・開角・意匠。
  • 取り付け:位置決め→下穴→仮止め→建付け→本締め。スライド丁番は3方向調整。
  • トラブル対策:ビス穴再生、増し丁番、潤滑、調整ネジ活用。

まとめ:今日の現場で役立つ「丁番」の見方

丁番は、扉の「動き」と「寿命」を決める要の金物です。種類の違いを理解し、扉重量や納まりに合った選定、そして確実な取り付けと微調整を押さえれば、建付けは驚くほど安定します。現場では「安全側に1枚追加」「カタログ仕様の確認」「仮止めで建付け優先」の3点を合言葉に。今日から「丁番って難しそう」が「丁番は任せて」に変わるはずです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
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