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分電盤とは?種類・役割・選び方が丸わかり!内装現場で失敗しないポイントも解説

分電盤を徹底解説!役割・種類・選び方から現場での使い方まで

「分電盤って何?ブレーカーとどう違うの?どこを触っていいの?」はじめて内装現場に入ると、多くの方がここでつまずきます。分電盤は電気を各部屋や機器へ安全に分ける“心臓部”。仕上げ工事や設備機器の試運転、仮設電源の取り回しまで、毎日のようにお世話になる存在です。本記事では、現場でよく飛び交う「分電」「盤」「主幹を落とす」といった言い回しの意味から、種類・構造・選び方、安全な扱い方、トラブル対処までをプロの視点でやさしく解説。この記事だけで、分電盤の「わからない」をしっかり解消できます。

現場ワード(分電盤)

読み仮名ぶんでんばん
英語表記Distribution board(Panelboard/Consumer unit)

定義

分電盤とは、受け取った電気を各回路(照明・コンセント・空調・設備機器など)へ分け、過電流や漏電から回路と人を保護する機器群(ブレーカ等)を収めた箱(盤)のことです。建物の一室・廊下・EPS(電気シャフト)などに設置され、主幹ブレーカで建物(または区画)全体を、分岐ブレーカで各回路を個別に保護します。住宅からオフィス、テナント、工場まで用途ごとに仕様が異なり、屋内外、単相・三相、防雨・防塵、埋込・露出など多様なタイプがあります。

基本構造と各部の名称

分電盤の中には、電気を安全に配るための部品が整理して取り付けられています。代表的な構成は次のとおりです。

  • 主幹ブレーカ(メインブレーカ):建物や区画全体の入口を守るスイッチ。契約容量や計画負荷に合わせて選定。
  • 漏電遮断器(ELB):漏電を検知すると瞬時に遮断。主幹に内蔵される場合と、回路ごとに設ける場合があります。
  • 分岐ブレーカ(MCB):各回路を過電流(過負荷・短絡)から保護。回路ごとに容量が設定されます。
  • サージ保護デバイス(SPD):落雷や開閉サージから機器を守る保護器。必要に応じて盤内に実装。
  • 端子台(中性線端子、接地端子):中性線や接地線をまとめて確実に接続。識別しやすい位置に並ぶのが一般的です。
  • バスバー(母線):ブレーカや端子に電気を分配する銅バー。見えないカバー内に納められている場合が多いです。
  • 予備スペース/予備回路:将来の増設用。テナント入替や設備更新が多い現場では重要。
  • 回路表(サーキットリスト):回路番号・用途・容量・行先を一覧化。現場で迷わないための命綱です。

扉は施錠できる仕様が多く、粉塵・湿気の多い場所では防塵・防滴仕様が用いられます。確認窓付きのタイプもあります。

種類と用途の違い

一口に分電盤といっても、用途や設置環境で選ぶ種類が変わります。概要をつかんでおきましょう。

  • 住宅用分電盤:単相3線が主流。照明・コンセント・IH・エアコン・エコキュートなどを個別に保護。リビングや玄関付近に設置されることが多いです。
  • 照明分電盤(LP):オフィスや商業施設で照明回路をまとめる盤。スケジュール制御やセンサー連動の制御器を収める場合も。
  • 動力分電盤(PP):三相200Vの動力機器(エアコン室外機、ポンプ、ファン等)向け。モータ起動電流を見込み選定します。
  • サブ分電盤(SDP):フロアやゾーンごとに設ける下位の分電盤。本線から枝分かれして、配線距離の短縮や管理性を高めます。
  • 仮設分電盤:工事中に使う移動可能な盤。屋外対応(防雨)と十分な感電保護が必須。現場では「仮設分電」「仮設盤」と呼ばれます。
  • 設置方式:埋込型(壁内に納まる)/露出型(壁表面に取り付け)。意匠・点検性・防火区画の条件で使い分けます。
  • 環境等級:屋内用/屋外用(防雨)/粉塵・湿気環境向け(シール構造)。設置場所の環境に合う保護等級を選びます。

現場での使い方

分電盤は「安全に電気を止める・分ける・守る」ための装置。現場では短い言い回しで意思疎通します。初心者ほど、言葉の意味と安全手順をセットで覚えましょう。

言い回し・別称

  • 分電/盤:分電盤の略。「盤前で集合」「分電側で切る」のように使います。
  • 主幹を落とす・上げる:主幹ブレーカをOFF/ONにすること。作業前には関係者に必ず声かけ。
  • 回路切って/何番回路:該当の分岐ブレーカをOFFにする指示。「回路表」の番号で確認します。
  • 予備に仮で入れる:増設時に予備回路へ機器を一時接続すること(要計画・要管理)。
  • 盤キー:分電盤の扉を開ける鍵のこと。施錠管理は必須です。

使用例(3つ)

  • 「天井の改修入るから、照明のA-5回路だけ落として。主幹は生かしたままで。」
  • 「室外機据付前に動力盤の予備回路確認して。容量足りなければブレーカ増設検討ね。」
  • 「仮設分電から内装区画へ一本引く。漏電ブレーカ付きで、回路表にも“内装仮設”って明記しといて。」

使う場面・工程

  • 着工時(仮設電源):防雨型の仮設分電盤を設置し、各工種へ安全に電源を分配。
  • 配線・設備据付:回路ごとの通電確認、絶縁測定、機器試運転。
  • 仕上げ・クリーニング:特定回路を落として安全確保、最終の回路表整備。
  • 引渡し前:主幹容量・回路ラベル・漏電試験・スペア回路の残数をチェック。
  • 改修工事:既存盤の調査(図面・記録がない場合は現場確認)、停電計画と関係者調整。

関連語

  • 配電盤/受電盤:より上位の設備。トランスや計器類を含むことが多く、分電盤より大規模です。
  • ブレーカ(MCB/MCCB):過電流保護器。定格電流・遮断容量・特性で選定します。
  • 漏電遮断器(ELB/RCBO):漏電時に遮断。感度電流や動作時間で仕様が異なります。
  • 幹線:上位盤から分電盤へ電気を運ぶ主ルートの配線。
  • 回路表(サーキットリスト):回路番号、用途、行先、容量の一覧。更新管理が重要。
  • SPD:雷・サージから機器を守る保護器。情報機器の多い現場で重視されます。

選び方の基本(容量・仕様・増設性)

分電盤の選定は、安全と将来拡張の両立がポイント。次の順番で検討すると迷いにくくなります。

  • 受電方式の確認:単相2線/単相3線/三相3線のどれか。現場の電源系統に合わせた盤を選びます。
  • 回路数と余裕:必要回路+将来増設分(目安で20〜30%の余裕)。予備スペースの有無も確認。
  • 主幹容量:住宅は契約アンペアに合わせるのが基本。テナント・オフィスは負荷計算(同時使用率・余裕率)で決めます。
  • 漏電保護の方式:主幹一括か、重要回路のみ個別保護か。用途(冷蔵・サーバ・医療機器等)に応じて遮断の仕方を設計します。
  • 遮断容量:短絡電流に耐える遮断容量が必要。上位系統やトランス容量に応じて選定します。
  • 設置環境:屋外・湿気・粉塵があるなら防雨・防塵仕様。腐食環境では材質や塗装も配慮。
  • 設置方式:埋込/露出。壁厚・下地・防火区画・点検スペースを考慮します。
  • 表示と管理:回路表の書き換えやすさ、ラベルの視認性、鍵管理のしやすさ。
  • 規程・法令順守:電気設備技術基準・内線規程に適合する製品を選び、施工は有資格者で行います。

迷ったら、「今の負荷」だけでなく「将来の使い方(テナント更新・機器増設・省エネ制御)」を想定し、少し余裕を持った仕様にすると失敗が少なくなります。

施工と安全のポイント(現場での実践知)

分電盤に触れるときは、常に「感電・誤遮断・通電中の作業リスク」を意識します。以下は内装現場での実践的なチェックリストです。

  • 停電手順の共有:どの回路をいつ落とすか、関係者(入居者・他工種・ビル管理)に事前周知。
  • ロックアウト/タグアウト:作業中に誤ってブレーカが入らないよう物理的・表示で管理。
  • 工具・保護具:絶縁工具、絶縁手袋、検電器の使用を徹底。盤内は金属粉・湿気厳禁。
  • 締付トルク:端子の規定トルクで締付。緩みは発熱や焼損の原因に直結します。
  • 導体処理:被覆のかみ込み・素線のほつれ防止。曲げ半径や配線の取り回しも丁寧に。
  • 識別・表示:回路番号・行先のラベルを盤内外で統一。色分け・社内標準に従う。
  • 機能確認:漏電遮断器のテストボタン動作、電圧・相順の確認、SPD接地の連続性チェック。
  • 清掃と養生:端子周りのホコリ・切粉は残さない。仕上げ面は養生して傷防止。
  • 施錠管理:作業後は扉を施錠。鍵の所在・貸出記録を明確に。

トラブルと対処(現場で起きがちなケース)

  • ブレーカが頻繁に落ちる(過負荷):同じ回路に機器を載せすぎ。負荷を分散し、回路容量の見直し・増設を検討。
  • 短絡(ショート)で遮断:配線の被覆傷・結線間違いが原因になりがち。通電前に目視・導通で確認を徹底。
  • 漏電遮断で停電:湿気・水濡れ・機器内部の劣化など。回路ごとに切り分け、有資格者が絶縁抵抗を測定し原因を特定。
  • 端子の発熱・焼け:締付不良や導体過小・腐食が疑わしい。通電を止めて点検・補修。再発防止に定期点検を。
  • 回路表が実態と違う:改修の履歴が未反映。現場調査して正しいラベルに更新。引渡し時の整備をルール化。
  • 仮設分電での感電・転倒危険:雨天時の漏電、ケーブル段差。防雨盤・防水コネクタ・養生マットで対策。

図面・記号の読み方のコツ

設計図や盤スケジュール(回路表)は、現場判断の拠り所です。表記は設計事務所や管理者によって差がありますが、よく見かける考え方を挙げます。

  • 略号例:LP(Lighting Panel=照明分電盤)、PP(Power Panel=動力分電盤)、MDB(Main Distribution Board=主配電盤)、SDP(Sub Distribution Panel=サブ分電盤)など。図面注記を必ず確認。
  • 回路番号:階・エリア・用途で体系化されることが多い(例:A-05=Aゾーンの5回路目)。現地ラベルと図面の整合を取る。
  • 盤スケ(回路表):回路容量、遮断器種別、行先(器具番号・盤番号)、備考(予備・専用回路・非常用)をチェック。
  • 系統色分け:単相/三相の別、非常・常用の別など、図面凡例に従って読み解く。

代表的なメーカーと特徴(参考)

分電盤本体や盤用機器は国内に信頼できるメーカーが複数あります。製品選定やメンテナンス時の参考にしてください。

  • 日東工業:分電盤・盤用ボックスの国内大手。屋内外・防塵・防雨などラインアップが豊富。
  • 河村電器産業:分電盤・配電関連の総合メーカー。標準品からカスタムまで幅広く対応。
  • パナソニック:住宅用分電盤で広く普及。ブレーカや住宅設備との連携モデルも展開。
  • 三菱電機/富士電機:ブレーカなど配電用機器の主要メーカー。分電盤の内部機器として採用例が多い。

どのメーカーでも、仕様(回路数・主幹容量・環境性能・オプション)を比較して現場条件に合うものを選ぶことが大切です。

よくある質問(Q&A)

初心者の方から多い疑問をまとめました。

  • 分電盤はどこにありますか?:住宅では玄関・洗面・廊下上部、テナントやオフィスではバックヤードやEPS内など点検しやすい場所にあります。
  • ブレーカーと分電盤の違いは?:ブレーカーは保護器具そのもの、分電盤はそれらを収めて電気を分ける箱(システム)です。
  • 容量はどう決まりますか?:住宅は契約アンペア、事務所・店舗は負荷計算(同時使用率や余裕)で主幹・分岐容量を決めます。
  • DIYで触っていい?:盤内作業や配線工事は原則として電気工事士の業務です。無資格の作業は感電・火災リスクが高く、法令違反になる場合があります。
  • 仮設分電盤の注意点は?:防雨仕様、感電保護(漏電遮断器)、アース接続、ケーブル養生、ラベル表示、施錠管理を徹底します。
  • SPDは必要?:雷の多い地域や情報機器が多い現場では有効です。上位設備の構成と合わせて計画します。

現場で失敗しないコツ(チェックリスト)

  • 回路表の整合:図面・現場ラベル・実配線の三点一致を引渡し前に確認。
  • 余裕回路の確保:予備回路・スペースは将来の工事コストを左右します。
  • 遮断の影響範囲:主幹を落とす前に、関係設備(冷蔵・サーバ・換気・非常)への影響を確認。
  • 停電計画の見える化:日時・範囲・復電確認者を明確にし、関係者へ周知。
  • 端子・結線の品質:トルク管理、導体処理、配線の整頓で“発熱ゼロ”を目指す。
  • 施錠・鍵管理:作業者以外が触れない仕組みを作る。仮設時は特に厳格に。

このチェックを回すだけで、現場トラブルの多くは未然に防げます。

まとめ

分電盤は、建物内の電気を「安全に止め、適切に分け、確実に守る」ための中枢装置です。現場では「主幹を落とす」「何番回路」「仮設分電」などの短い言い回しで指示が飛び交いますが、その裏側にあるのは容量・回路・保護・環境といった地道な計画と安全管理。用途に合った種類を選び、将来の増設余裕を見込み、図面・回路表・現物の整合を取り、正しい手順で停電・復電を行う——この基本を押さえておけば、内装現場で分電盤に関わるほとんどの不安は解消できます。もし迷ったら、無理に触らず電気工事士や管理者に相談を。安全第一で、効率のよい現場運営を実現しましょう。