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ダクトカバーとは?種類・設置方法・注意点をプロがわかりやすく解説

内装現場でよく聞く「ダクトカバー」をやさしく解説—意味・種類・納まり・施工のコツまで

図面や現場で「ここ、ダクトカバーで隠しておいて」「エアコンのダクトカバーは白で」などと言われて、正直なにを指しているのか分からず不安になったことはありませんか?ダクトカバーは内装の見た目や安全性、メンテナンス性に直結する大事な部材ですが、じつは現場では複数の意味で使われます。本記事では、プロの施工目線で「ダクトカバー」の基本から種類、施工方法、注意点、現場での言い回しまでを一気に整理。初めてでも迷わず判断できる実践的な内容でお届けします。

現場ワード(ダクトカバー)

読み仮名だくと かばー
英語表記duct cover / enclosure、raceway cover(配線用)、line set cover(エアコン配管用)

定義

ダクトカバーとは、空調・換気・排気などのダクトや、エアコン配管・電気配線などの「通り道(ダクト・モール・配管)」を覆い隠したり保護したりするためのカバー部材や囲い(ボックス)の総称。意匠(見た目)を整える「化粧カバー」と、傷・汚れ・火災リスクを抑える「保護・防火カバー」の両面があります。現場では文脈によって指す対象が変わるため、対象物(換気ダクト・レンジフード・エアコン配管・配線モール等)までセットで確認するのが基本です。

ダクトカバーの主な種類

ダクトカバーと呼ばれるものは、内装分野で大きく次のように分かれます。

  • 換気・排気ダクトの化粧囲い(LGS+石膏ボードでボックスを作り、クロスや化粧板で仕上げ)
  • レンジフード上部のダクトカバー(フード本体と天井間を塞ぐ金属製スリーブ)
  • エアコン配管の化粧ダクト(屋内外の配管を樹脂カバーで保護・意匠統一)
  • 配線ダクト(モール)のカバー(電気配線を通す樹脂製レースウェイの蓋)
  • 床用ケーブル保護カバー(歩行・台車からケーブルを守る床置き型)
  • 仮設・養生用のダクトカバー(工事中にダクト端部を塞ぐ汚れ防止・養生)

同じ「カバー」でも、仕上げ材や固定方法、求められる性能(不燃性・耐油・耐候・耐衝撃・気密など)が異なります。用途ごとに選定しましょう。

材質と仕上げの選び方

ダクトカバーの材質は、環境や用途に合わせて選定します。

  • 金属系(亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム、ステンレス、アルミ)—耐久性・耐熱性が必要な場所や厨房周りに。レンジフードのカバーは金属が主流。
  • 樹脂系(PVC、ABS、ポリカーボネート)—エアコン配管や配線モールに多用。屋外は耐候タイプ、屋内は色合わせ重視。
  • ボード+仕上げ(石膏ボード+クロス/塗装/化粧板)—意匠重視の化粧囲い。必要に応じて不燃材を使用。

選定のポイント:

  • 厨房・火気周り:不燃・耐熱・耐油汚れ性を優先(ステンレスや不燃下地+金属仕上げ)
  • 屋外:紫外線・雨に強い耐候性樹脂や金属+シーリング
  • 居室:色・見切り・直線性の美しさ、点検性
  • テナント入替が想定:脱着性・再施工のしやすさ

寸法・納まりの基本

美しく安全に納めるための基本寸法・考え方です。

  • 最小クリアランス:ダクト外皮とカバー内側には、熱・振動・保温材厚みを見込んだクリアランスを確保。
  • 点検性:清掃・継手・防火ダンパー・消音器・レンジフード接続部など、操作・点検が必要な箇所には点検口を設ける。
  • 下地:化粧囲いはLGS(軽量鉄骨)下地が基本。面材は石膏ボードを基準に、必要に応じて二重貼りや耐火仕様。
  • 見切り:天井・壁・床との取り合いに見切り材(見切り縁、入隅・出隅材)を用いて直線性を維持。
  • 振れ止め:長尺のカバーは中間で支持を入れ、共振・たわみを防止。

設置・施工の流れ(プロの段取り)

1)換気ダクトを囲う化粧ボックス(LGS+PB仕上げ)

  • 現調・墨出し:ダクト径・保温厚・吊り金具位置を確認。最小有効寸法と点検口位置を確定し、墨出し。
  • 下地組み:LGSで胴縁・縦貫を組む。吊り支持や振れ止めを適所に追加。
  • 配線・点検:点検口開口下地、清掃口やダンパー操作の可動域も確認。
  • 面材施工:石膏ボード貼り。内装制限がある場合は不燃仕様・重ね貼り等、設計指示に従う。
  • 仕上げ:パテ処理→クロス/塗装/化粧板。入隅・出隅に見切り材で収まりを安定化。

2)エアコン配管の化粧ダクト(屋外・屋内)

  • 製品選定:屋外は耐候(UV)タイプ、屋内は意匠色(白・アイボリー・壁紙調など)を選択。
  • ベース固定:壁面の不陸を確認し、ベースをビス止め。下地が弱い箇所はアンカーや補強板を追加。
  • 曲がり部:エルボ・コーナー部材でラインを整え、すき間は最小に。
  • カバー装着:最後にパチンと嵌合。屋外は端部・貫通部を防水シーリング。
  • ドレン勾配:ドレン管は逆勾配にならないように。結露水排出を確保。

3)レンジフードのダクトカバー

  • 高さ調整:天井高とフード仕様に合うカバー長さ(1重/2重伸縮)を選ぶ。
  • 固定:メーカー指定のビス位置・ガイドに従って上部ブラケットに固定。
  • 気密・清掃:接続部は気密・脱臭のためのテープ/シール。油汚れを想定して清掃しやすいクリアランスを確保。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 化粧カバー/配管化粧ダクト(主にエアコン)
  • モールカバー/レースウェイカバー(配線)
  • フードカバー/ダクトスリーブ(レンジフード)
  • ダクト囲い/ダクトボックス(LGS+PBの囲い)

使用例(会話の実例・3つ)

  • 「この露出ダクトは廊下側で見えるから、LGSでダクトカバー組んでクロス仕上げにして。」
  • 「室外機までの配管、スリムダクトで立ち上げて軒天で曲がり。色は外壁に合わせてアイボリーね。」
  • 「レンジフードのダクトカバー、天井まで延長タイプに変更。点検のため手前側に5ミリ逃がしで。」

使う場面・工程

  • 躯体・設備配管後の内装下地工程(ダクトの化粧囲い)
  • 機器据付工程(エアコン・レンジフードの仕上げ)
  • 電気配線の露出納め(モール・レースウェイの蓋)
  • 引渡し前の美装・点検(端部のシール、ビス頭の色合わせ)

関連語

  • LGS(軽量鉄骨)/PB(石膏ボード)/見切り材
  • 不燃材料/内装制限/防火区画貫通処理
  • モール(配線ダクト)/レースウェイ/スリムダクト(配管カバー商品名系)

施工上の注意点(安全・法規・品質)

ダクトカバーは見た目の問題だけでなく、安全や法規に直結します。以下を必ず確認しましょう。

  • 防火の考え方:厨房周りや防火区画近傍では、不燃材の使用や区画貫通部の防火処理が必要になることがあります。設計図書・メーカー施工要領・監理者の指示に従い、適合材料で施工してください。
  • 点検性:清掃口・防火ダンパー・継手・フィルターは操作可能な点検口を設ける。固定しっぱなしの密閉はNG。
  • 結露・漏水:ダクトや配管に結露が出る場合、保温や気密処理、排水(ドレン)経路の確保が必須。
  • 耐久性:屋外は紫外線・熱で樹脂が劣化しやすいため、耐候品と適切なシーリングを採用。
  • メンテ通路:天井内やPS(パイプスペース)での囲いは、後の交換・点検動線を考え支持間隔・開口位置を計画。

仕上がりを左右するプロのコツ

  • 直線命:モールや配管カバーはレーザーやチョークラインで基準を出し、一発で通す。端部は見切り材で「逃げ」を作る。
  • 色合わせ:既存壁・サッシ・機器色に合わせ、白でも艶・トーンを揃える。ビス頭は同系色でタッチアップ。
  • 段差の吸収:壁の不陸はスペーサーで均し、後からの歪みやパカつきを防ぐ。
  • 取り合い優先:他職(電気・空調・キッチン)の納まりと干渉チェック。先行順序を現場で握ってから着工。

よくある不具合と対処

  • カバーの外れ・バタつき:固定ビス不足や不陸が原因。下地補強と中間支持を追加。
  • 結露水の垂れ:保温不足や気密不良。保温の巻き増し、継手部の気密テープ、ドレン勾配の見直し。
  • 油汚れ固着(レンジ周り):清掃性を考えた素材(ステンレス・フッ素塗装)やシーリングの打ち替えで改善。
  • 点検不能:点検口不足。必要位置に後付け点検口を新設し、サイズは手入れ可能寸法を確保。

代表的メーカー・製品例

  • 因幡電工(Inaba Denko):エアコン配管用「スリムダクト」シリーズで定評。屋外用の耐候タイプや豊富な色・部材展開。
  • 未来工業(Mirai Industry):配線モール・レースウェイ・MDダクトなど電設資材全般。サイズ・付属品が豊富で現場対応しやすい。
  • パナソニック(電材):配線モールやケーブルカバー製品を展開。住宅・店舗の意匠になじむカラーラインアップ。
  • 富士工業(FUJIOH)ほかレンジフード各社:フード本体に合わせた専用ダクトカバー(伸縮タイプ・天井高対応)を用意。

メーカー品は施工要領や適合条件がきめ細かく、仕上がりや耐久性の面でもメリットがあります。現場条件に合うシリーズを選びましょう。

用途別チェックリスト(失敗防止)

  • 化粧囲い(LGS+PB):点検口の要否/不燃指定の有無/最小クリアランス/見切り材
  • エアコン配管カバー:耐候グレード/ドレン勾配/屋外端部のシール/色合わせ
  • レンジフードカバー:天井高と伸縮範囲/固定ブラケット位置/気密・清掃性/コンセント・梁との干渉
  • 配線モール:通線量とサイズ(余裕率)/曲がり部材/粘着固定の下地処理/将来の増設経路

よくある質問(Q&A)

Q. ダクトカバーは自分で取り付けできますか?

A. エアコン配管カバーや配線モールはDIYも可能です。ただし、レンジフードのカバーや防火が絡む囲いは、メーカー要領や法的要求に沿う必要があり、専門業者に依頼するのが安全です。

Q. 不燃材料が必要かどうかの判断は?

A. 火気設備周り、内装制限のかかる用途地域・室用途、区画貫通部の処理などで指定されることがあります。設計図書・監理者の指示に従い、迷ったら必ず確認しましょう。

Q. カバーの色は後から塗っても大丈夫?

A. 樹脂カバーは下塗り(プライマー)を選べば塗装可能な場合がありますが、屋外は剥離や退色のリスクがあります。はじめから色バリエーションのある製品を選ぶのがおすすめです。

Q. 点検口はどれくらいの大きさが必要?

A. 目的(清掃・バルブ操作・継手点検)により異なりますが、手や工具が入る寸法を確保し、操作スペースも見込むのが原則です。設備担当と位置・サイズを事前調整しましょう。

ケース別の具体例(イメージしやすく)

ケース1:共同住宅の廊下に露出した換気ダクト。LGSで200×300の角ボックスを組み、石膏ボード二重貼り+クロス仕上げ。エルボ手前に200角の点検口。

ケース2:戸建ての外壁。エアコンの配管をアイボリーのスリムダクトで立ち上げ、雨樋と平行に通す。軒天貫通部は防水シール+エルボで雨仕舞い。

ケース3:飲食店厨房。レンジフードのダクトカバーはステンレス。油汚れ清掃を考えて表面はヘアライン、上端は天井に当て込み、両端はシーリングで納める。

道具・副資材の基本セット

  • 墨出し:スケール、レーザー、チョークライン
  • 加工:金切りバサミ、のこ刃、ジグソー(金属・樹脂用)、サンダー
  • 固定:インパクトドライバー、アンカー、タッピングビス、リベッター(板金)
  • 副資材:保温材、アルミテープ/ブチルテープ、シーリング材、見切り材、タッチアップ材

まとめ:迷ったら「対象・目的・点検性」をまず確認

ダクトカバーは「何を」「何のために」覆うかで、材料も納まりも変わります。対象(換気ダクト・エアコン配管・配線)をはっきりさせ、目的(化粧・保護・防火・清掃性)を整理し、点検性を確保することが成功の鍵。現場では「どのダクトのカバーか」「材質・色は何か」「点検口は必要か」を最初に確認しましょう。この記事を手元のチェックリスト代わりに使っていただければ、初めての方でも安心して段取りと発注・施工判断ができるはずです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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