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木口貼とは?基本工程・おすすめ材料・プロが教える仕上げのコツ完全ガイド

木口貼の意味と実務での手順・材料選び・仕上げのコツを職人目線で解説

「木口貼(こぐちはり)って何をする作業?どんな材料や道具が必要?失敗しないコツは?」——造作・家具・什器の現場に入ったばかりだと、こんな疑問が次々に浮かぶと思います。木口貼は、仕上がりの質感や耐久性、安全性までも左右する“最後のひと手間”。この記事では、現場で日常的に使われる言葉の意味から、素材の選び方、手貼り・機械貼りの手順、プロがやっている小ワザまで、初心者にもわかりやすく丁寧にまとめました。今日の現場からそのまま役立つ、実践的なガイドです。

現場ワード(木口貼)

読み仮名 こぐちはり(「小口貼り」とも表記)
英語表記 Edge banding / Edge-tape application

定義

木口貼(こぐちはり)とは、合板・MDF・パーティクルボードなどの切断面(木口・コバ)に、テープ状や無垢材の縁材を貼り付けて保護・美観・安全性を高める仕上げ処理のこと。一般的にはABS・PVC・メラミン、木目突板(天然木)、場合によっては無垢材の“縁貼り”まで含めて指すことがあります。機械によるエッジバンディング(ホットメルト接着)から、現場での手貼り(接着剤・アイロン貼り)まで、施工手段はいくつかあり、用途・予算・仕上げ要求に応じて使い分けます。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 木口貼/小口貼(どちらも「こぐちはり」と読むことが多い)
  • 木口テープ貼り/エッジテープ貼り/エッジバンド貼り
  • バンディング(機械貼りを指す略称)
  • 縁貼り(無垢や突板で縁を回す場合に使うことも)
  • コバ処理(板厚側の仕上げ全般を指す口語)

使用例(現場の言い回し)

  • 「この棚板、正面だけ木口貼っといて。ABSで0.8ミリ、面はR0.5で。」
  • 「カウンター前縁は突板でいこう。箱組む前に先に木口貼って、トリマーで落とす。」
  • 「建具の戸当たり、木口はメラで揃えて。はみ出しノリはアルコールで拭き上げてね。」

使う場面・工程

使用場面は、家具・什器・造作の棚板、カウンター前縁、建具や扉の端部、造作枠の見付など。工程としては、基本的に「裁断→木口貼→トリミング→面取り→仕上げ→組立」の順で進めます。既設品の補修や現場調整では、取り付け後に手貼りで対応することもあります。

  • 工場加工:エッジバンダーでホットメルト貼り→両端切り→上下トリミング→コーナーR加工→バフ仕上げ
  • 現場対応:接着剤またはアイロンテープで手貼り→ローラー圧着→端部切り落とし→トリマーでツライチ→サンディング

関連語

  • コバ:板の厚み側の面。現場では木口(切断面)を含めて「コバ」と言うことも多い。
  • エッジバンダー:木口貼り専用の機械。ホットメルト接着剤で連続貼り・トリミングまで自動化。
  • 突板(つきいた):薄い天然木シート。木口テープにも突板タイプがある。
  • メラミン化粧板:高圧メラミン(HPL)や低圧メラミン(LPM)と同柄のABS/PVCエッジが用意されることが多い。

木口貼の目的と効果

木口貼が求められる理由は大きく4つです。

  • 美観:基材の層が見えず、化粧面と柄・色・艶を合わせられる。
  • 耐久:チッピング・欠け・摩耗から端部を守る。2mm厚ABSなどは特に強い。
  • 安全:角のエッジを丸めることで手触りが優しく、引っかかりを減らす。
  • 防湿:基材への水分侵入を抑え、膨れや反りのリスクを低減。

材料の種類と選び方

木口テープや縁材は用途で選び分けます。現場でよく使う代表的な種類と特徴は以下の通りです。

  • ABSエッジ:家具・什器で最も一般的。0.4〜2.0mm厚。耐衝撃性が高く、同柄展開が豊富。
  • PVCエッジ:コストメリットあり。厚み・色柄が多い。屋内用途向け。
  • メラミンエッジ:薄物が中心。硬くて傷に強いが、曲げ追従性は樹脂系に劣る。
  • 突板エッジ:天然木の質感が出せる。着色・オイル・ウレタン仕上げとの相性が良い。
  • 無垢縁材:重厚感と補修性が高いが、手間とコストがかかる。高級カウンター等に。
  • アイロン用エッジ(プレコート):裏面に熱可塑性接着剤付き。現場の手貼りに便利。

選定のポイント

  • 厚み:0.5〜1.0mmは一般家具、2.0mmは学校・商業など耐久重視。
  • 幅:板厚+上下トリミング余裕(片側0.5〜1.0mm余らせる)で選ぶ。
  • 色柄:化粧板と同柄・近似色で合わせる。艶(マット/セミマット/グロス)も合わせる。
  • R仕上げ:触れる頻度が高い箇所はR0.5〜R1程度で柔らかく。
  • 環境・用途:水回りは吸水対策(樹脂系+防水端部処理)を重視。

工具・道具と代表メーカー

木口貼は道具選びで作業スピードと仕上がりが大きく変わります。現場の定番と、国内外の代表的メーカーを併記します(製品仕様は各社最新情報をご確認ください)。

  • エッジバンダー(機械貼り):HOMAG(ドイツ)、SCM(イタリア)、Biesse(イタリア)など。量産・高精度・安定品質に強い。
  • トリマー/ルーター:マキタ、HiKOKI(ハイコーキ)。面取り用のRビット・45°面取りビットを併用。
  • トリミングナイフ・スクレーパー:手貼り後のツライチ処理や微調整に。
  • ローラー(圧着ローラー):手貼りの圧着必需品。しっかり圧をかける。
  • アイロン/ヒートガン:プレコートエッジの加熱貼りに。温度管理が肝。
  • サンディングペーパー:#240〜#400。端部のバリ取り・面の整え。
  • 接着剤:コニシ(ゴム系ボンドG10/G17、木工用ボンド)、セメダイン(ゴム系・木工用)。SDSを確認し、換気・防火対策を徹底。
  • クリーナー:アルコール系やシンナー系(素材適合要確認)。はみ出しのり・汚れの拭き取りに。
  • 定規・当て木・クランプ:直線性確保・仮固定に。

エッジ材のメーカー例

  • アイカ工業(日本):メラミン化粧板と同柄のABS/PVCエッジを幅広く展開。
  • REHAU(ドイツ):ABS・PP系の高品質エッジ「RAUKANTEX」などで世界的に普及。
  • Surteco/Döllken(ドイツ):意匠・機能性エッジ材の老舗ブランド。

具体的な施工手順(手貼り)

現場での手貼りは、段取りと温度・圧着管理が命です。以下はABSや突板エッジを接着剤で貼る標準的な流れです。

  • 1. 下地確認:木口の直角・平滑・清掃。欠けはパテで補修し、乾燥後に平滑化。
  • 2. 材料カット:テープは部材長+各端2〜3mm余長。幅は両側0.5〜1.0mm余り。
  • 3. 接着剤塗布:両面塗りが基本(ゴム系)。塗りムラ・塗り過ぎに注意。オープンタイムを守る。
  • 4. 貼り付け位置決め:基準面から合わせ、端部は少し逃がして後でトリム。
  • 5. 圧着:ローラーで中央→端部へ強圧。角は当て木でしっかり押さえる。
  • 6. 端部処理:余長をナイフでカット。割れ防止に裏当てを入れると安全。
  • 7. 上下トリミング:トリマーでツライチ。ビットは新品・送りは一定。焼け・欠けに注意。
  • 8. 面取り:R0.5程度で軽く。薄物は軽めにひと撫でで十分。
  • 9. 仕上げ:#320前後で軽くサンディング。はみ出しノリは素材適合クリーナーで拭き取り。
  • 10. 検査:浮き・段差・欠け・色違いをチェック。必要に応じて再圧着・補修。

プレコート(アイロン用)エッジの場合は、接着剤塗布の代わりに、温度設定(目安120〜160℃)と当て布、圧着ローラーの組み合わせで、じわっと加熱→即圧着→冷却固定を意識すると剥がれにくくなります。

機械貼り(エッジバンダー)の流れ

数量が多い・精度を揃えたい場合は工場でのエッジバンディングが有利です。

  • ホットメルト塗布(EVA、必要に応じPUR)→エッジ投入→圧着ローラー→端切り(前後)
  • 上下トリミング→コーナーR(または45°)→スクレーパー仕上げ→バフ掛け→最終検査

メリットは、段差・糊はみ・反りの安定制御。デメリットは機械段取りの手間と運搬コスト。現場では「見付や手触りが揃っている」ことが最終品質に直結します。

仕上がりを左右するプロのコツ

  • 温度管理:接着剤は「温度×時間×圧」。寒い現場では材料・接着剤を暖め、圧着時間を長めに。
  • 送り方向:木目(突板)は欠けにくい方向へ送り、ナイフは引き切りで。
  • 下地勝負:切断面が荒いと仕上がりも荒れる。カットの段階から刃物を整備し、チップソーは番手と送りを適正化。
  • 段差ゼロ:トリミング後は手でなでて確認。わずかな段差も光で目立つ。スクレーパーで微修正。
  • 角の処理:触れる頻度が高い箇所はRを丁寧に。特に保育・医療・店舗什器は丸み優先。
  • 柄合わせ:木目方向・柾目/板目の雰囲気を化粧面とできるだけ揃える。
  • 端部のクラック防止:ナイフカットは角から数ミリ内側に当て木、最後は折り切らずに裏返しスナップ。

失敗例とリカバリー

  • 剥がれ・浮き:圧着不足またはオープンタイム不遵守。再加熱→再圧着し、必要なら追加ボンドを極薄で差し込む。
  • 糊はみ:硬化前は拭き取り、硬化後はスクレーパーで軽く除去。溶剤は素材適合を確認(ABSに強溶剤は禁物)。
  • チッピング:トリマー刃の切れ不足。新品に交換し、送り速度を安定化。小欠けは同材粉+接着剤で補修。
  • 焼け:回転数過多/送り遅い。回転数を落とし、ビットを清掃。焦げは極軽くサンド。
  • 色ブレ:ロット差・艶差。前もって見本合わせ、同一ロットで統一。どうしても差が出るときは面取り強めで目立ちにくく。

用途別の選び方と考え方

  • 住宅の可動棚・箱物:0.5〜1.0mm ABS/PVC。手触り優先でR0.5。
  • 店舗什器・学校家具:1.0〜2.0mm ABS。耐衝撃性重視、角R1〜R2を推奨。
  • 意匠重視の造作:突板エッジ+着色/クリア。木目の連続性と天然感を活かす。
  • カウンター:無垢縁材または厚物ABS。水回りは端部シールを確実に。

「木口」と「小口」「コバ」の違い(現場的な使い分け)

厳密には、木口=木材の繊維を断ち切った面(端面)、小口=板材の厚み側の細い面、コバ=板厚の側面を指す言い方ですが、現場ではこれらが混用されることが多く、木口貼=端部の縁処理全般という意味で通じます。図面表記や発注では、誤解を避けるため「見付側だけ木口貼」「四周木口貼(四方貼)」など具体的に指示すると確実です。

コストと段取りの勘どころ

  • 量産は工場貼り、単発・補修は手貼り。工程で使い分けるとムダがない。
  • 先貼り・後貼りの判断:組立前に貼るとトリミングが楽。後貼りは現場納まり優先。
  • 材料取り:板取りで木目方向を揃え、エッジ幅は標準化。端材での試し貼りを習慣に。

品質検査のチェックリスト(現場用)

  • 段差・浮き・剥がれがないか(手触りで確認)
  • 角のRが均一か、引っかかりがないか
  • はみ出しノリ・汚れ・艶ムラの有無
  • 色柄・目方向が化粧面と合っているか
  • 端部の欠け・割れ・焼けの有無

安全と環境配慮

  • 接着剤は換気・防火を徹底。SDSを確認し、手袋・保護メガネを着用。
  • トリマー使用時は防塵マスク・集塵を。刃物交換前は必ず電源遮断。
  • 溶剤クリーナーは素材適合を確認し、ウエスの自然発火対策(密閉保管)を行う。

よくある質問(FAQ)

Q. ABSとPVC、どちらを選べばいい?

A. 耐衝撃・意匠の幅はABSに分があります。コスト優先や既存什器との整合でPVCを選ぶケースもあります。現場の要求性能と予算で使い分けましょう。

Q. アイロン貼りは剥がれやすい?

A. 適正温度・十分な圧着・冷却固定を守れば実用上問題ありません。荷重・衝撃の大きい箇所や曲面は、接着剤貼りや機械貼りを推奨します。

Q. 突板エッジは後の塗装で色が合う?

A. 同種・近似樹種の突板を選び、試し塗りで色合わせを。板目/柾目や吸い込み差で発色が変わるため、現物確認が確実です。

Q. 既存家具の剥がれだけ直せる?

A. 可能です。端部を温めて再圧着、隙間には極薄で接着剤を差し込みます。テープ破損が大きい場合は部分貼り替えを。

現場で使える発注・指示テンプレート

  • 「棚板t25の見付1辺のみ、ABSエッジ0.8mm、同柄マット、R0.5」
  • 「カウンター前縁、突板オーク0.6mm、着色クリア、四周木口貼、角R1」
  • 「扉小口、2.0mmABS(耐衝撃)、四周、機械貼り、スクレーパー仕上げ」

まとめ:木口貼は“最後の5%で仕上がりの95%が決まる”仕事

木口貼は、ただテープを貼るだけの単純作業ではありません。材料選定、段取り、温度と圧着、刃物のコンディション、そして触れたときの心地よさまで意識できて、はじめて「プロの仕上がり」になります。この記事の手順とコツを現場で一つずつ実践すれば、剥がれにくく、手触りが良く、見た目も美しい木口が安定して作れるはず。迷ったら、用途・耐久・意匠の3点で材料を選び、試し貼り→本番の順で確実に。今日からの現場で、ぜひ役立ててください。

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執筆者:株式会社MIRIX(ミリックス)

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