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電気図とは?初心者にもわかる見方・読み方と現場で失敗しないポイント5選

現場ワード「電気図」を徹底ガイド:読み方の基本から工程別チェック、失敗しない勘どころまで

「電気図って、どこから見ればいいの?」「記号が多くて自信がない…」と感じていませんか。建設内装の現場では、電気設備の位置や高さ、配線ルート、他工種との取り合いを決めるために「電気図」を頻繁に参照します。この記事では、現場で使われる意味合いに絞って、電気図の読み方や使い方をやさしく解説。初心者でも今日から実務で役立てられる、具体的で実践的なポイントをまとめました。読み終えるころには「図面で迷子にならない」自分になれるはずです。

現場ワード(電気図)

読み仮名でんきず
英語表記Electrical drawing / Electrical plan

定義

建築プロジェクトにおける電気設備(照明、コンセント、スイッチ、分電盤、弱電・通信、非常放送・防災系など)の位置、高さ、配線・回路、機器仕様、系統関係などを示した図面の総称。平面図・天井伏図・単線結線図・盤結線図・詳細図・機器表(器具一覧)など複数種類を含みます。現場では「電気図」「電気図面」と略して呼び、仕上げ前の位置決めや他工種との干渉確認、変更対応、数量拾い(器具数・ボックス数など)に用います。

電気図の種類と役割

電気図とひとことで言っても、実際は用途別に複数の図面で構成されます。基本を押さえると迷いません。

  • 電気平面図(各階平面):壁・床面におけるコンセント、スイッチ、情報端子、機器の位置・品番・高さの指示が中心。
  • 天井伏図:照明器具、非常照明、感知器、スピーカー、点検口など天井面の配置と器具番号、取付高さ。
  • 単線結線図(系統図):回路・系統の関係を単線で表す。分電盤から各回路へのつながり、容量、回路番号。
  • 盤結線図・制御回路図:分電盤内部の結線や制御ロジックの詳細。盤製作・調整の核。
  • 詳細図(納まり図):ボックス位置、器具の開口寸法、下地補強、仕上げとの取り合い、見切りとの関係。
  • 機器表・回路表:器具の型番、数量、回路番号、負荷容量。拾い出し・発注・検査で使う。
  • 弱電・通信図:LAN、TV、電話、インターホン、防犯カメラ、入退室などの位置・配線・HUB/ラック関係。

現場では「平面(壁まわり)を見て、天井は伏図で確認、回路は単線で裏取り」が基本の流れです。

記号・略語の読み方のコツ(凡例で迷わない)

電気図は記号の意味を押さえると一気に読みやすくなります。ただしプロジェクトごとに記号ルールや略語は微妙に異なるため、まずは図面冒頭の「凡例」を必ず確認しましょう。一般的な見方のコツは以下です。

  • コンセント類:差込口の数、アース付、床用か壁付か、特殊(EV充電、機器専用)かを記号・注記で確認。
  • スイッチ回路:スイッチ記号と点灯対象器具の対応を、回路番号や引き出し線、注記で追う。
  • 照明器具:器具記号+器具番号(例:L-101)。器具表で型番・サイズ・取付方式(直付/埋込)を照合。
  • 弱電端子:LAN/TV/電話などの種別、情報配線の集約先(HUB/IDF/MDF)を矢印や注記で追跡。
  • 高さ表記:FL(仕上げ床)やGL(地盤)基準で「取付高さ」「ボックス芯」などの数値を確認。
  • 配管・ルート:天井内、床下、壁内のどこを通るか、可とう管・鋼管など種別、貫通部の防火処理注記。

初見で迷ったら、凡例と注記、機器表の三点セットで裏取りするのが現場の鉄則です。

現場での使い方

電気図は全工程で使いますが、特に内装(LGS・ボード・造作・床)との取り合いで重要度が高いです。ここでは現場での言い回し、具体例、使う場面、関連語をまとめます。

言い回し・別称

  • 電気図、電気図面、電平(電気平面図の略)、天伏(天井伏図の略)、単線、系統図、盤図
  • 器具表、回路表、詳細図、納まり図、弱電図、通信図

使用例(3つ)

  • 「この壁のコンセント高さ、電気図だとFL+1050。造作図と差があるから監督に確認しよう。」
  • 「天井伏図で感知器が照明と干渉しそう。単線も見て回路切り替え可能か電気屋さんと打合せ。」
  • 「図面差し替えが出た。電気図の版をR3に更新して、ボックス位置の赤ペン反映を全員に周知。」

使う場面・工程

  • 着工前の施工計画:器具位置の総点検、干渉リスク洗い出し、材料・下地補強の計画。
  • 墨出し・下地組:ボックス芯、スイッチ列の通り、天井器具芯、点検口位置の確定。
  • ボード開口・造作:開口寸法・位置・高さ、器具の取付下地、見切り・面材との取り合い確認。
  • 仕上げ・通電前検査:品番・高さ・向きの最終確認、通電試験に向けた準備。
  • 変更・是正:差し替え図の反映、赤ペンの管理、竣工図用の実測情報の記録。

関連語

  • 施工図、竣工図、意匠図(平面図・展開図・天井伏図)、設備図(空調・衛生)、RFI(照会)、承認図、VE(価値工学)

施工者目線の「迷わない読み方」手順

効率よく確実に読み解くための順番を決めておくとミスが激減します。

  • 1. 版管理の確認:図面右下の図番・改定記号・日付を見て最新かチェック。表紙の図面リストも照合。
  • 2. 凡例・注記の把握:プロジェクト固有の記号・略語・高さ基準・禁則事項を先に理解。
  • 3. 縮尺・方位:印刷倍率や縮尺を確認。方位で現場の向きと合わせ、位置の取り違いを防止。
  • 4. 器具表・回路表の確認:記号だけで判断せず、表で型番・台数・回路番号を裏取り。
  • 5. 高さの統一:スイッチ、コンセント、サイン、インターホンなど「標準高さ」を一覧化して共有。
  • 6. 他工種の干渉確認:空調吹出・点検口・梁型・造作との重なりを天井伏図・詳細図でクロスチェック。
  • 7. 変更履歴の反映:赤ペン・変更雲形・改定履歴を丹念に追う。古い図面を現場から撤去。
  • 8. 疑問はRFI:曖昧な点は口頭で済ませず、写真・スケッチ添付のRFIでエビデンス化。

工程別チェックリスト(内装・電気・監督で共有)

内装(LGS・ボード・造作・床)

  • ボックス位置と下地補強の有無(造作壁・化粧パネル背面は特に)
  • ボード開口寸法(器具枠と仕上がり見切りのクリアランス)
  • スイッチ列の水平・通り(器具間ピッチ、見え方)
  • 天井器具と下地位置(受け材・アンカー位置の整合)
  • 床用コンセント・OAフロアの切り欠き、ケーブル余長

電気工事

  • 回路番号・系統の整合(単線と平面の一致)
  • 配管経路と防火区画の貫通処理(防火措置の仕様遵守)
  • 器具品番の確定(代替品は承認後に反映)
  • 結線図・制御の事前検証(試運転計画)
  • 弱電の収容先(ラック・HUB・盤)とラベリング

現場監督(全体調整)

  • 最新版図面の配布・掲示・回収ルール(版管理)
  • 取り合い調整会議(電気×空調×内装×防災)
  • 図面差し替え時の変更点リスト化と周知
  • 工程に合わせた検査ポイント設定(隠蔽前検査)
  • 竣工図作成用の情報収集(赤ペン・実測値)

よくあるトラブルと回避策

  • 高さの取り違い(FL/GL):図面基準をそろえ、現地基準墨を必ず設定。要所は実測値を図面に追記。
  • 器具の干渉(照明と感知器、点検口、吹出):天井伏図で300mm程度の離隔目安を確保。配置替えはRFIで承認。
  • スイッチ回路の追従漏れ:器具位置変更時は必ず回路表も更新。単線で流れを再確認。
  • 品番差し替えの見落とし:器具表の改定履歴をチェックし、現場在庫のラベルも更新。
  • 防火区画の貫通未処理:図面注記の仕様どおりに処置。写真記録を残し検査に備える。
  • 古い図面で作業:図面置き場を一元化し、旧版は即時回収・廃棄。表紙に「最新版日付」を大きく掲示。

変更・差し替えに強くなる図面管理

現場は必ず変わります。だからこそ版管理が命です。

  • 改定記号・改定日を大きくマーキング。変更雲形の範囲を全員で再確認。
  • 配布台帳を作り、誰がどの版を持っているか可視化。旧版回収はチェックリスト化。
  • 赤ペン(現場修正)は一本化して保管。写真・位置情報(通り芯)もセットで残す。
  • クラウド運用時はアクセス権・通知設定を明確にし、現場掲示と口頭周知を併用。
  • 竣工図は「承認済みの赤ペン反映+実測」を原則とし、引き渡し前に三者チェック。

数量拾い・発注で役立つ見方

電気図から必要数量を拾う際の基本です。

  • 器具表に対して、平面・伏図で「実配置」を照合(部屋別・系統別にカウント)
  • ボックス・カバー・プレートは器具種類ごとに拾い、仕上げカラーや規格を注記で確認
  • 配管・ケーブルはルート長の目安を算出し、余長・ジョイント位置を含めて見積る
  • 専用回路・大容量負荷はブレーカー容量・盤スペースも同時にチェック

デジタルツールとデータ形式の基礎知識

最近は紙図面だけでなくデジタルも併用が一般的です。

  • 主な形式:PDF(配布・閲覧)、DWG/DXF(CAD編集)、BIMモデル(IFC等・3D干渉確認)
  • 印刷時は縮尺と倍率に注意。100%出力で寸法チェック用スケールを試し刷り。
  • ビューアでレイヤーのON/OFFを切り替え、見たい情報だけ抽出(照明だけ、弱電だけ等)。
  • 写真・スケッチをPDFに追記して現場共有。変更履歴はファイル名+版で管理。

安全・法規の視点(内装が触ってよい範囲)

電気工事は有資格者が行う範囲が多くあります。内装職がやってよいのは「下地加工・開口」など物理的な支援まで。結線・通電・盤内作業は電気工事士の範囲です。以下は共通の注意点です。

  • 通電中の回路には絶対に触れない。仮設電源も遮断・施錠・掲示を徹底。
  • 防火区画の貫通は仕様通りに処理し、写真記録を残す。
  • 湿気・水気のある場所(厨房・水回り)の器具は防水等級・防滴仕様を図面で確認。
  • 非常用・防災設備(非常照明、感知器、放送)は位置変更の影響が大きい。必ず設計承認を得る。

内装と電気の取り合い「ここを押さえる」5ポイント

  • 高さを先に決めて通す:スイッチ・コンセント・機器のFL基準を一覧化し、全員で共有。
  • 天井の干渉は早期発見:照明・感知器・吹出・点検口の位置を伏図で同時に確認。
  • 詳細図で納まり確定:見切り、開口寸法、器具枠の出代や下地補強を事前に詰める。
  • 回路は単線で裏取り:位置が合っても、回路が合わなければ試運転で止まる。単線を必ず見る。
  • 変更は版管理で勝つ:差し替えたら旧版回収、変更点を音読確認。赤ペンは一元管理。

ミニ用語辞典(関連ワード)

  • 天井伏図:天井面を下から見上げる形で描いた図。照明・感知器・点検口の確認に必須。
  • 単線結線図:電路の接続関係を単線で示した系統図。回路・ブレーカー・容量の把握に使う。
  • 器具表:図面中の記号に対応する実際の器具型番・数量の一覧。
  • RFI(照会):不明点を文書で設計・監理に確認する手続き。写真やスケッチを添えると通りがよい。
  • 竣工図:完成時の実際の納まり・仕様を反映した最終図面。引き渡し書類の中核。

現場で即使えるチェックフレーズ

  • 「凡例と器具表、どっちも確認しましたか?」
  • 「その高さ、FL基準で何ミリ?図面の注記と一致してる?」
  • 「単線で回路追って、盤側の容量も大丈夫?」
  • 「天井伏図で干渉チェック、点検口の位置は確保できてる?」
  • 「版はR何?旧版は回収済み?」

まとめ:電気図は「位置・高さ・回路」を三点セットで読む

電気図は、位置(どこに)、高さ(どのレベルで)、回路(どことつながる)を三点セットで確認するのが最短ルートです。凡例・器具表・単線を行ったり来たりしながら、天井伏図と詳細図で納まりを固める。変更が出たら版管理とRFIで確実にエビデンスを残す。これだけで、現場の手戻りは驚くほど減ります。最初はむずかしく見える電気図も、見方の手順を決めれば怖くありません。今日の打合せから、ここで紹介したチェックをぜひ試してみてください。きっと「図面が読める」と実感できるはずです。