現場でよく聞く「FIX窓」をやさしく解説!種類・使い方・注意点までプロの視点で丸わかり
「FIX窓って何?はめ殺し窓とどう違うの?どこで使うのが正解?」——はじめて図面や現場でこの言葉に出会うと、そんな疑問が浮かびますよね。この記事では、建設内装現場で日常的に使われる現場ワード「FIX窓」について、読み方から意味、現場での言い回し、選び方、施工のポイント、法規の基礎まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。内装のプロとしての実務視点で、迷いがちなポイントや伝わりやすい指示のコツも具体的にお伝えします。
現場ワード(FIX窓)
| 読み仮名 | フィックスまど/はめごろしまど |
|---|---|
| 英語表記 | Fixed window(FIX window) |
定義
建具やサッシのうち、開閉しない固定式の窓の総称。採光や見通し(抜け感)を確保したいが、換気や出入りは不要な場所に用いる。住宅の外窓としてのFIX窓と、室内の間仕切りやパーティションに組み込む室内用FIX窓(室内窓/はめ殺しガラス)がある。枠材はアルミ、樹脂、アルミ樹脂複合、スチール、木製など。ガラスは透明・型板・くもり(フロスト)・合わせ・強化・Low-Eなど目的に応じて選定する。
FIX窓の基本を3分で把握
どんな時に選ぶ?
FIX窓は「光を入れる・視線を通す・デザイン性を高める」ことには強く、「換気・出入り」には向きません。外部に面する外窓としては、眺望を切り取るピクチャーウィンドウや高所のハイサイドライト、階段室の採光などに。室内では、個室や廊下に光を分ける室内窓、ドア脇の袖FIX、天井上部の欄間FIX、会議室の視認性確保などに使われます。
主な構成部材
- 枠(フレーム):壁や躯体に固定する囲い部。見込み寸法や下地との取り合いが納まりのキモ。
- 方立て・桟:大きい開口を区切る縦横材。スチールやアルミの方立てで強度確保。
- ガラス:用途に合わせて厚み・種類を選ぶ。安全性の観点から衝突リスクのある位置は合わせガラス・強化ガラスが基本。
- パッキン・ビード:ガラス固定と気密・防音に寄与。
- シーリング・バックアップ材:防水・気密の要。室内用途でも粉塵・音漏れ対策に重要。
現場での使い方
現場では「FIX」「フィックス」「はめ殺し」と略して呼ばれます。開閉しないことが前提なので、換気が必要な計画なら他の窓種と組み合わせるか、FIXを避けます。室内の場合、図面では「FIX窓」「室内窓(FIX)」などと表記され、ドアとセットなら「袖FIX」「欄間FIX」という言い方が一般的です。
言い回し・別称
- 別称:固定窓/はめ殺し窓/はめ殺しガラス/室内窓(固定)
- 部位の呼び方:袖FIX(ドア脇)/欄間FIX(ドア上)/腰高FIX/地窓FIX/ハイサイドFIX
- 現場略語:FIX(フィックス)、スチールFIX、アルミFIX、造作FIX(木枠造作)
使用例(3つ)
- 「この会議室、ドアは片開きで、袖はFIXにして視認性を確保しよう。」
- 「階段室は安全のため開かないように、ハイサイドでFIXにして光だけ取り入れて。」
- 「この個室は音漏れ配慮で合わせガラスの室内FIX、下枠は見切りで納めます。」
使う場面・工程
使う場面は外部(外壁)と内部(間仕切り)で分かれます。外部は防水・断熱が主眼、内部は見切り・意匠・安全が主眼。工程は概ね以下の通りです。
- 計画・設計:位置・サイズ・ガラス種・枠材の選定、法規確認(採光、防火、安全ガラス等)。
- 採寸・製作:開口寸法の確定、下地納まりの検討、製作図承認。
- 枠取付:アンカー・ビス留め、建付け調整、水平・垂直を確認。
- ガラスはめ込み:パッキン・ビードで固定、必要に応じてシーリング。
- シーリング・防水処理:外部は躯体-枠間の止水、内部は気密・防音配慮。
- 仕上げ・見切り:ボード・クロス・ケーシングや見切り材で納め、清掃・養生撤去。
関連語
- 窓種:引き違い窓/片開き窓(開き窓)/上げ下げ窓/外倒し・内倒し窓
- 部位:袖FIX/欄間/方立て/ランマ框/ケーシング
- 性能・材料:Low-Eガラス/合わせガラス/強化ガラス/断熱サッシ/シーリング
種類と用途別の選び方
外窓としてのFIX
外部に面する場合は、気密・水密・断熱性能が重要です。アルミ樹脂複合や樹脂サッシが採用されることが多く、ガラスは地域の断熱基準や方位に応じてLow-E複層を選ぶのが一般的。眺望を優先する大型ピクチャーウィンドウは、割付や方立てで強度を確保し、清掃方法(外部からの清掃可否)も事前に検討します。
室内窓・パーティションとしてのFIX
室内の間仕切りでは、軽やかさと安全のバランスが肝心。オフィスや店舗ではスチール方立て+透明ガラスで視認性を確保し、住宅では木製枠+型板ガラスやフロスト加工で視線を適度に遮る選択が人気です。人がぶつかる恐れのある位置(床から高さ1m前後の帯域など)は、合わせガラスや強化ガラスなど安全ガラスを選定します。
開口位置・形状でのバリエーション
- 腰窓FIX:腰高の採光用。家具配置との干渉が少ない。
- 地窓FIX:床近く。奥行き感と外の緑を切り取る演出に。
- ハイサイドFIX:高い位置。プライバシーを守りつつ採光。
- 欄間FIX:ドア上部。室内の明るさや視認性アップ。
- 袖FIX:ドア脇。エントランスの意匠性・明るさ確保。
枠材の違い
- アルミ:シャープで耐久性良。外部向けに広く普及。
- 樹脂/アルミ樹脂複合:断熱性が高く外窓に適する。
- スチール:細い見付で大開口でもシャープに納まる。室内パーティションで人気。
- 木製・造作:温かみのある意匠。室内向けに自由度が高い。
メリット・デメリット
メリット
- 開閉機構がないため気密・水密を確保しやすく、コストやメンテが安定。
- フレームを細くでき、視界がすっきり。大きなガラス面で採光・眺望に優れる。
- 室内の視線の抜けをつくり、空間を広く感じさせる。
- 安全対策(鍵・落下)や操作部が不要で意匠がシンプル。
デメリット
- 換気ができない。通風が必要な場合は他の窓種と併用が必須。
- 外窓の場合、外側清掃の計画が必要(手が届かない場合の対応)。
- 避難経路や開口要件を満たせないケースがある。法規の事前確認が必要。
- ガラスの衝突リスクへの配慮が必要(安全ガラスの選定・マーキングなど)。
施工の勘所(納まりと注意点)
採寸と製作寸法の考え方
開口寸法(W×H)は躯体・下地双方で確認し、歪みや水平・垂直を測定。製作寸はクリアランス(取り合いしろ)を見込んで設定します。室内の造作枠はクロスや塗装の厚み、見切り材(L見切り・T見切り・ケーシング)との取り合いを先に決めてから発注しましょう。大型ガラスは搬入経路の事前検証が必須です。
防水・気密・シール
外窓は止水計画が生命線。枠外周の防水テープ、躯体との取り合いシーリング、下枠の水抜き(ドレイン)を阻害しない納まりが基本です。室内FIXでも粉塵・音漏れ対策に枠外周のシーリングは有効。バックアップ材を入れた二面接着、プライマーの適正塗布、目地幅の管理を徹底します。
ガラス種と安全配慮
人が接触しやすい位置、出入口の袖FIX、階段まわりなどは安全ガラス(合わせ、または強化)を選びます。用途に応じて飛散防止フィルムも検討。外窓では方位に応じて日射遮蔽タイプのLow-E複層ガラスを選ぶなど、省エネと眩しさのバランスを取ります。表示(マーキング)でガラス存在を認識させると衝突事故を減らせます。
養生・クリーニング
ガラス面は傷が入りやすいため、貼り替え可能な養生フィルム+枠養生を併用。シリコンコーキングの汚染、サンダー粉、塗装ミストの付着に注意。引渡し前はガラスクリーナーとスクレーパーを正しい手順で使用し、擦り傷を避けるために乾拭きより湿式清掃を基本とします。
法規・性能の基礎知識(計画時の要点)
法規要件は用途・地域・自治体運用で変わるため、最終判断は設計者・監督と協議のうえで行いましょう。FIX窓に関わる代表的なテーマは以下です。
- 採光計算:外窓のFIXは居室の有効採光面積に算入可能(算定条件あり)。室内窓は多くのケースで外気に通じないため採光算定には原則含まれません。
- 防火:防火地域・準防火地域、延焼のおそれのある部分では、防火設備に適合したサッシ・ガラスの採用が必要となる場合があります。
- 安全ガラス:人の衝突・転倒の恐れがある位置や学校・幼児施設等では、安全ガラス(合わせ・強化)を選定するのが一般的です。
- 省エネ:外窓は地域区分に応じた断熱性能の検討(ガラスの熱貫流率、サッシの断熱性)。西日対策や日射取得とのバランスも考慮。
- 手すり・転落防止:床から低い位置の外窓や高所は、手すり・ガードの設置が必要となる場合があります。
コストと見積りの見方
コストは「枠材(サッシ)」「ガラス」「取付費」「シール・防水」「見切り・仕上げ」「搬入・諸経費」で構成されます。外窓のLow-E複層や大型ガラス、室内のスチール細見付フレームは単価が上がりやすい項目です。設計変更時は「ガラス種」「方立て有無」「見込み寸法」「搬入経路条件」が金額に効きやすいので、見積照合時はここを重点確認しましょう。
メーカーと代表的な取り扱い領域
- LIXIL(リクシル):住宅・非住宅向けのアルミ/樹脂サッシを幅広く展開。外窓FIXの選択肢が豊富。
- YKK AP:高断熱サッシから大型FIXまで国内有数のラインアップ。性能表示がわかりやすいのが特徴。
- 三協アルミ:デザイン性と性能のバランスが良い外窓サッシが多数。
- 不二サッシ:非住宅・大型サッシの実績が豊富。ビル用FIXなどで採用されることが多い。
- サンワカンパニー:室内用のデザイン性の高い室内窓・ガラス建具を取り扱い。内装のアクセントに使いやすい。
- 造作(オーダー):木製枠、スチールフレームによる特注FIXも一般的。寸法・意匠の自由度が高い反面、設計・図面調整が重要。
具体的な製品名・仕様は各社の最新カタログで確認し、法規適合・性能値・納まり図を設計と共有しましょう。
よくある勘違い・FAQ
- Q:はめ殺し=防火仕様? A:いいえ。防火性能はサッシ・ガラスが防火設備として適合しているかがポイント。通常のガラスでは満たせません。
- Q:FIX窓は結露しにくい? A:開閉部がないため気密は取りやすいですが、断熱や室内湿度が不十分だと結露は起こり得ます。ガラス・サッシの断熱性能と換気計画が大切。
- Q:室内窓で採光の法的要件を満たせる? A:多くの場合、室内窓は外気に通じないため採光算定の対象になりません。デザイン・明るさ確保としての役割と考えましょう。
- Q:大きいFIXはそのまま搬入できる? A:ガラスサイズ・重量・搬入経路を事前検証し、分割や方立てを検討。現場エレベーター寸法や曲がり角のクリアランスに要注意。
- Q:安全ガラスはどちらが良い? A:用途次第。人が触れる位置は合わせガラス(割れても保持)を優先、衝撃に強い方が良ければ強化ガラス。設計者とリスク評価のうえで選定。
チェックリスト(発注・施工前に確認)
- 用途は外窓か室内か。求める性能(断熱・防音・防火・安全)は何か。
- ガラス種・厚み・サイズは適正か。安全ガラス指定は足りているか。
- 枠材(アルミ/樹脂/スチール/木)と見付・見込み寸法は意匠と整合しているか。
- 搬入経路・重量・施工手順の段取りはできているか(特に大判ガラス)。
- 外部は防水ディテールの確認、内部は見切り・仕上げの取り合いを確定したか。
- 清掃・メンテ手段(外部側アクセス)とガラスのマーキング計画はあるか。
- 法規(採光・防火・安全)と図面表記(袖FIX・欄間FIXなど部位名称)は揃っているか。
用語の周辺知識(用語辞典的な補足)
- ピクチャーウィンドウ:景色を額縁のように切り取る大判FIX窓の総称的な言い方。
- 型板ガラス:片面に凹凸のある不透明ガラス。視線カットと採光を両立。
- Low-E複層ガラス:金属膜で断熱・日射調整する複層ガラス。寒冷地や西日対策に。
- 方立て:縦の仕切り材。強度確保や割付の調整に使う。
- 見切り材:仕上げ材の端部を納める細材。L見切り、T見切り、ケーシングなど。
ケース別のおすすめ使い分け
住宅・リノベーション
廊下や階段に室内FIXを設けて採光を分けると、照明に頼らず明るい動線に。プライバシーが必要な個室側は型板・フロスト、リビング側は透明で抜け感を出すとバランスがとれます。外窓のFIXは視界の抜けをつくる位置に限定し、通風は他窓で担保するのが運用しやすいです。
オフィス・店舗
エントランスは袖FIXで明るさと安全性を両立。会議室は視認性確保のためのFIX併用が定番ですが、音対策として合わせガラス+気密目地を検討。大開口のスチールパーティションは搬入・強度計画を入念に。
現場で伝わる指示の書き方(プロのコツ)
- 「部位+FIX+サイズ+ガラス+枠材」で要点をひとまとめにする例:「受付脇 袖FIX W450×H2200、合わせ8ミリ透明、スチール方立て、クリアランス片側5ミリ」
- 安全・法規はメモで明記:「人通り多い動線につき安全ガラス指定」「防火区画に該当、仕様は設計指示に従う」
- 図面連携:「見込み寸法」「見切り」「シールディテール」の部分詳細を必ず添付・参照。
まとめ
FIX窓は「開かない」ことが弱点ではなく、「光・視線・デザインを最大化する」ための専用ツールです。場所と目的が合えば、開閉窓よりも美しく、性能的にも安定した選択になります。ポイントは、用途に合った枠材とガラスの選定、納まりと防水・安全の配慮、法規の事前確認。この記事のチェックリストと指示の書き方を使えば、初めての方でも現場で迷わずFIX窓を扱えるはずです。わからない点は設計者・監督・メーカー技術資料と連携し、安心・安全・快適な空間づくりに活かしてください。









