難燃材って何?内装現場での意味・見分け方・使いどころをプロがやさしく解説
「難燃材って、不燃や準不燃と何が違うの?」「どの現場で必要になるの?」——はじめて内装の図面や仕上表を見たときに、こんな疑問を持つ方は多いです。この記事では、建設内装の現場で実際に使われる“現場ワード”としての「難燃材」を、プロの視点でわかりやすく解説。意味・選び方・会話での使い方・注意点まで、初心者でも迷わないよう丁寧にまとめました。読み終えるころには、現場で「それ、難燃取れてる?」と聞かれても落ち着いて対応できるようになります。
現場ワード(難燃材)
読み仮名 | なんねんざい |
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英語表記 | Flame-retardant material |
定義
建設内装の現場で「難燃材」と言うと、一般に「火がつきにくく、燃え広がりにくい性質を持つ建築材料」を指します。法令上は、建築基準法およびその告示・試験に基づく“内装制限”で規定される区分のひとつ「難燃材料(RM)」のことを意味する場合が多く、カタログや製品ラベル、納品書などには「RM(難燃材料)」「国土交通大臣認定 RM-××××」といった表記が用いられます。ただし、現場会話では広義に「燃えにくい仕様」の総称としても使われるため、厳密な法区分(不燃・準不燃・難燃)のどれを指しているのか、都度確認するのが実務上のポイントです。
難燃・準不燃・不燃の違い(ざっくり理解)
内装材の燃えにくさは、一般に次の3区分で扱います。どれも所定の試験方法により性能が評価され、国土交通大臣認定の区分記号で示されます。
- 不燃材料(記号:NM)…最も燃えにくい性能。内装制限が厳しい部位で指定されやすい。
- 準不燃材料(記号:QM)…不燃に次ぐ性能。多くの内装制限で採用される。
- 難燃材料(記号:RM)…上記2つよりは性能が低いが、一般の材料より燃えにくい。
重要なのは「必要性能は部位や用途で異なる」ことです。例えば、避難経路や特定用途の建物では、不燃や準不燃が必須となることがあり、難燃では基準を満たさない場合があります。つまり「難燃だから安心」ではなく、「その場所に必要な区分か」を図面・仕上表・監督指示で必ず確認しましょう。
法規と認定の見方(実務で困らない基本)
内装材の燃焼性能は、カタログや製品裏面ラベル、技術資料、納品書・検査資料に表示されています。実務で見るポイントは次のとおりです。
認定表示と番号の基本
国土交通大臣認定は、区分を示す記号と番号で管理されます。例として「RM-1234(難燃材料)」のように表記され、同様に「QM-××××(準不燃)」「NM-××××(不燃)」の形もあります。図面に「RMの化粧板」などと書かれていたら、製品側の認定が一致しているか、現物ラベルやカタログで確認します。
製品ごとに“条件付き”で認定される
同じ製品名でも、厚み・下地の種類・接着剤・施工方法などが変わると認定区分が変わることがあります。たとえば「特定の下地(例:石膏ボード)に貼ること」が認定条件になっているケースや、「同一シリーズでも塗装色や表面仕上げで認定が異なる」ケースがあります。必ず該当製品の技術資料で、用途・下地・施工条件を確認してから手配・施工しましょう。
内装制限の考え方
どの区分が必要かは、建物の用途(例:病院、ホテル、飲食店、学校、オフィス等)、規模、避難経路か否か、天井裏の扱いなどによって決まります。実務では、設計図書や仕上表に「内装制限:天井・壁=準不燃以上」「天井裏=不燃」などの記載があります。現場で疑問があれば、設計・監督に確認し、「採用して良い材料の区分」と「必要書類(認定書、カタログ、成績書等)」をすり合わせましょう。
難燃材の主な種類と特徴(内装でよく見るもの)
現場で「難燃材」として登場しやすいのは、下記のような仕上げ材・基材・副資材です。ここでは性質や使いどころを実務目線でまとめます(製品ごとに認定区分が異なるため、最終確認は各メーカー資料で行ってください)。
- 難燃仕様の化粧板・化粧シート(樹脂系・木質系)…什器・腰壁・カウンター立上りなどの意匠面で採用。曲面対応のシートもあり、サイン・柱巻きに便利。
- 難燃ビニル壁紙(クロス)…一般部で指定されることがある。裏打ち・表面処理・下地条件により認定が分かれるため要確認。
- 難燃木質パネル・難燃処理合板…木目意匠を活かしつつ内装制限をクリアしたい場面で選択。加工時の切断面・小口処理が重要。
- 難燃フォーム材・緩衝材…造作の芯材・設備周りの保護などに。製品の厚さや覆い材により性能が変わる。
- 天井・壁の吸音パネル(難燃区分のもの)…ホール・会議室・スタジオ等で採用。表面布が防炎、基材が難燃/準不燃など複合仕様もある。
- 配線用ダクトカバー・ケーブル被覆の難燃グレード…内装施工と取り合う場合は品番レベルで性能を確認。
なお、「防炎」という言葉は主にカーテンやカーペットなどの繊維製品で用いられる区分(消防法に関わる性能表示)で、建築材料としての「難燃(RM)」とは制度が異なります。カーテンは防炎表示、壁・天井材は不燃/準不燃/難燃と、対象と法制度が違う点を混同しないようにしましょう。
現場での使い方
言い回し・別称
- 「難燃(なんねん)」「難燃グレード」「難燃仕様」
- 「RM材(アールエム材)」…大臣認定の区分記号をそのまま呼ぶ言い方
- 「FR(エフアール)」…Flame Retardant の略。シートや樹脂材で使われがち
- (関連)「不燃=NM」「準不燃=QM」「防炎=繊維製品の区分」
使用例(会話・指示の実例:3つ)
- 「この腰壁の化粧板、内装制限かかってるから“難燃”取れてる品番で手配しておいて。」
- 「そのシート、RMの認定は下地が石膏ボード限定だったよね?合板下地のところは準不燃品に切り替えよう。」
- 「看板の巻き込みに使う芯材、一般用はNG。難燃フォームで、認定条件に合わせてアルミライナー重ねて施工して。」
使う場面・工程
- 仕上材選定(設計・見積)…必要区分(NM/QM/RM)と意匠・コスト・納期のすり合わせ。
- 発注・受入検査…品番・色番・厚み・下地条件・認定番号の照合、ラベルや資料の保管。
- 下地調整・施工…認定条件どおりの下地・接着剤・留め付け方法を遵守。現場合わせの変更は要再確認。
- 完了検査・引き渡し…認定書・カタログ抜粋・納品書などのエビデンスをまとめて提出・保管。
関連語
- 内装制限/大臣認定(NM・QM・RM)/不燃下地/告示仕様
- 準耐火・耐火(構造の話)/防火設備(建具の話)/防炎(繊維製品の話)
選び方とチェックポイント(迷わない順番)
1. 要求性能を先に決める
図面・仕上表・監督指示で、その場所の必要区分(NM/QM/RM)を確認。迷ったら「上位区分で統一」ではなく、機能・コスト・加工性とのバランスで最適解を選ぶのがプロの仕事です。
2. 認定の“条件”まで必ず読む
認定番号だけでなく、厚み・下地種別(石膏ボード、ケイカル板、金属下地など)、接着剤・ビスピッチ、重ね貼り可否などを確認。現場の実際の納まりに合っているか照合します。
3. 施工性・意匠・メンテで比較
曲面に追従できるか、角の小口処理はどうするか、傷や汚れへの強さ、補修のしやすさを検討。店舗や医療・福祉施設では清掃性や抗菌・耐薬品性もチェックポイントです。
4. 調達リスクを見ておく
色・柄の在庫、ロット差、輸送条件、追加手配のリードタイムなど。交換・差し替えが起きやすい仕上げは、余裕を持った発注が安心です。
施工と品質管理のコツ
下地条件を守る
多くの認定は「特定の下地」が前提です。別の下地に変えると認定外になることがあるため、変更時は必ずメーカーか監督に確認し、代替案の承認を取ってから進めます。
接着剤・副資材も仕様どおり
推奨接着剤やプライマー、ビス・タッカーの種類とピッチも性能に影響します。指定以外の材料を使う場合は、事前承認が必要です。
切断・開口・小口処理
開口部や小口の露出が火災時の弱点になる場合があります。指定のエッジ材・目地材・カバー材で仕上げ、現物合わせの切欠きは最小限に。ダクト・配線貫通部は別途防火措置が求められることがあります。
トレーサビリティ(証跡)を残す
製品ラベル・納品書・認定書・施工写真をセットで保管。引き渡し後の問い合わせや改修時に役立ちます。
よくある誤解・トラブル事例
- 「難燃と書いてあるからどこでもOK」…用途や場所によっては準不燃・不燃が必須。必ず設計意図を確認。
- 「同じ品名なら全部同じ認定」…色・厚み・下地条件で認定が変わることがある。品番・仕様で照合。
- 「下地を合板に替えても問題ない」…認定が下地石膏ボード前提ならNGの可能性。事前に代替仕様を検討。
- 「防炎=難燃」…制度が異なります。布製品の防炎と、建築材料の難燃(RM)は別物。
- 「加工で大きく欠き込んでも平気」…切欠き・開口で性能低下の恐れ。小口処理や補強を検討。
代表的なメーカー例(難燃・準不燃・不燃の内装材を扱う国内メーカーの一例)
以下は、内装用の化粧板・壁天井材・シート・パネル等で難燃/準不燃/不燃グレードを幅広く展開しているメーカーの一例です。具体的な認定区分は製品ごとに異なるため、採用前に各社の最新カタログ・技術資料をご確認ください。
- アイカ工業…メラミン化粧板や化粧不燃板、化粧シートなど意匠性に富む内装材を展開。
- 大建工業(DAIKEN)…壁・天井材、音響パネル、床材など内装建材全般を取り扱い。
- 吉野石膏…石膏ボードを中心に、内装の下地・仕上げに関わるボード製品を多数展開。
- 住友ベークライト…フェノール樹脂系の積層板・工業材料など、難燃グレードの素材を提供。
- ニチアス…不燃・耐火・断熱関連のボードやパネル、シーリング材などを展開。
- サンゲツ…壁紙、床材、ファブリック等の内装材を総合的に取り扱い、難燃・防炎区分の製品も多数。
- リリカラ…壁紙や内装仕上材の総合メーカー。公共・商業向けのグレードも豊富。
- 東リ…床材・壁装材などを展開。商業施設向けの機能性内装材も幅広い。
上記はあくまで一例です。製品の採否は、認定区分、意匠、コスト、施工性を総合して決めてください。
現場で役立つチェックリスト(そのまま使える)
- 1)部位と用途の確認:その場所に必要な区分はNM/QM/RMのどれか。
- 2)製品の認定確認:区分記号(NM/QM/RM)と認定番号、条件(下地・厚み・副資材)。
- 3)納まり確認:開口・小口・曲面・入隅・出隅の処理方法は認定条件に適合するか。
- 4)施工資料の準備:メーカーの施工要領書・技術資料・安全データシート等。
- 5)受入・保管:ロット・色差・破損の有無、保管環境(反り・歪み防止)。
- 6)現場変更の管理:代替案は認定条件を満たすか、監督・設計と承認ルートを確認。
- 7)証跡の整理:ラベル写真、納品書、認定書の控え、完成写真をファイリング。
補足:難燃材と安全対策(火気作業・仮設での考え方)
難燃材は火災リスクを下げるための重要な選択ですが、現場の安全は材料選定だけで完結しません。溶接・溶断など火気作業の際は、火花養生、可燃物撤去、消火器の近接配置、火気管理者の選任など基本を徹底します。また、仮設の養生シートや防炎シートは、現場ルールで難燃・防炎グレードが指定されることがあります。内装材の難燃(RM)とは制度が異なるため、仮設資材は「防炎ラベル」や現場指定の適合証で確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 難燃材なら、どこでも使えますか?
A. 使えません。場所によっては準不燃や不燃が求められます。図面・仕上表・監督指示を必ず確認しましょう。
Q. 認定番号がついていれば、下地は自由ですか?
A. いいえ。認定は下地・厚み・施工方法などの条件つきです。条件が合わないと認定外になることがあります。
Q. 防炎カーテンは難燃ですか?
A. 違います。防炎は繊維製品の区分で、建築材料の難燃(RM)とは制度が別です。用途に応じた基準で確認してください。
Q. 加工で大きく欠き込んだり、通気孔を開けても大丈夫?
A. 性能が変わる可能性があります。認定条件やメーカーの許容範囲を確認し、必要に応じて処理方法を見直しましょう。
まとめ(今日から現場で迷わない)
難燃材は「燃えにくい材料」の総称であり、法区分としてはRM(難燃材料)を指します。ただし、内装制限で必要とされるのは場所によってNM/QM/RMが異なります。実務では、区分だけでなく「認定条件(下地・厚み・副資材・施工方法)」まで確認することが肝心。手配時は品番・認定番号の照合、施工時は要領書の遵守、引き渡し時は証跡の整理までをセットで行いましょう。この記事のポイントを押さえておけば、「それ、難燃取れてる?」と聞かれても自信をもって答えられるはず。安全で美しい内装づくりのために、材料の選定と情報確認を丁寧に進めていきましょう。