建設内装でよく聞く「集成材」を徹底解説|種類・強度・選び方・現場のコツ
「集成材って無垢材と何が違うの?」「カウンターに使って大丈夫?」——初めて内装の材料選びをすると、こんな疑問が次々に出てきますよね。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる現場ワード「集成材」を、専門知識がなくてもイメージできるようにやさしく解説します。メリット・デメリット、種類や規格、現場での使い方、発注時のチェックポイントまでまとめているので、読み終わるころには材料選定に自信が持てるはずです。
現場ワード(集成材)
| 読み仮名 | しゅうせいざい |
|---|---|
| 英語表記 | glued laminated timber(略称:glulam) |
定義
集成材は、乾燥・選別した板材(ラミナ)を繊維方向をそろえて接着剤で積層し、必要な厚み・幅・長さに成形した木質材料です。木の欠点(節・割れ・反りなど)を避けて組み合わせることで「強度の安定」「寸法の安定」「大断面・長尺の確保」を実現します。内装のカウンターや階段・枠材などの造作用、梁や柱などの構造用まで幅広く使われ、JAS(日本農林規格)などの規格に基づく強度等級やホルムアルデヒド放散等級で品質が管理されます。
基本の特徴とメリット・デメリット
メリット
集成材には、現場で喜ばれる実用的な利点がいくつもあります。
- 寸法安定性が高い:乾燥・積層により、無垢材に比べて反り・ねじれ・割れが起きにくい。
- 大きなサイズが取りやすい:大判のカウンターや長尺の笠木、広幅の棚板などが安定供給されやすい。
- 強度のバラツキが小さい:ラミナの選別と等級管理により、設計値を取りやすい。
- 歩留まりが良い:必要サイズに近い素材を選びやすく、加工ロスが少ない。
- 環境面の合理性:木材資源を有効活用しやすく、内装の木質化で温かみを演出できる。
デメリット・注意点
一方で、使い所や仕上げに応じて注意したい点もあります。
- 継ぎ目が見える:フィンガージョイントやはぎ目がデザインに現れる場合がある(意匠上の好みが分かれる)。
- 防水・耐候は得意でない:水がかり・屋外は配慮が必要。木口の吸水が大きく、シール・塗装での保護が必須。
- 局所的なビス割れ:端部や木口へのビス打ちは下穴やピッチ管理が必要。
- 熱・湿度変化への配慮:安定しているとはいえ木は生き物。急激な乾湿変化で目違いや接着ラインの段差が出ることがある。
- 完全な無垢の風合いとは異なる:木目の連続性や経年変化の表情は無垢材と同一ではない。
種類と用途
造作用集成材(内装仕上げ用)
仕上げ面に使うタイプ。カウンター、階段踏板・手すり、巾木・廻り縁・額縁、棚板、造作家具の天板などに用いられます。樹種はスギ、ヒノキ、ナラ、タモ、ブナ、パイン系などが一般的で、色味・硬さ・木目の表情から選定します。節の有無や表面グレード(A面/B面など)の指定ができる製品もあります。
構造用集成材(梁・柱など)
梁・柱・大断面の構造材として用いるタイプ。JASの強度等級でヤング係数(E)や曲げ強度(F)が表示され、設計上の根拠にできます。樹種はスギやベイマツ(ダグラスファー)、欧州針葉樹などが主流。耐火性能が求められる場合、仕様に適合した耐火集成材(認定品)を計画に組み込みます。
LVLやCLTとの違い
似た言葉で混同しやすいのがLVL(単板積層材)とCLT(直交集成板)。LVLは薄い単板を同方向または交差で積層したもので、曲げや寸法安定に優れ、下地や梁桁などに使われます。CLTは板を直交に積層したパネルで、床・壁の面材構造に適しています。集成材(グルーラム)は挽き板(ラミナ)を繊維方向をそろえて積層する点が特徴です。
規格・表示の見方(JAS・ホルムアルデヒド等級)
品質の判断で特に見るべきは次のポイントです。
- JAS強度等級(構造用):E(ヤング係数)とF(曲げ強度)で表記。設計の荷重条件に応じて指定します。
- 外観等級(造作用):節の量・パテ埋めの有無・色差などの基準。仕上げグレードの目安になります。
- ホルムアルデヒド放散等級:F☆☆☆☆(フォースター)相当を選ぶのが室内では一般的。低放散で内装制限に有利。
- 接着剤の種類:用途に応じて耐水性や耐熱性の高い接着剤が使われます(例:レゾルシノール系、フェノール系、イソシアネート系、メラミン系など)。
表示は製品票や梱包ラベル、出荷証明で確認できます。構造用途は必ず証明書類を保管しましょう。
寸法・加工と現場納まり
流通寸法の考え方
集成材は、用途ごとに扱いやすい定尺が用意されていることが多いです。カウンター向けの長尺や広幅フリー板、枠材用の細幅材、構造用の大断面など、各社でバリエーションがあります。最終寸法から逆算して「歩留まりのよい定尺」を選ぶとコストと工期の両面で有利です。
加工のコツ(内装仕上げ)
- 切断・面取り:カットは刃物を良くし、集成の層に逆らわない送りで欠けを防止。小口は3R程度の面取りでカケやすさを低減。
- ビス・ボルト:端部からの割れ対策として下穴を適正径で。ピッチはやや詰め、木口止めは避けるか樹脂系接着と併用。
- 木口・はぎ目の処理:吸い込みが大きいので目止めを行い、塗膜のムラや白華を防止。
- 反り対策:取付前に両面同条件で養生。片面だけ先行塗装は反りの原因。可能なら両面塗装・裏面にもシーラー。
- 見切り・エッジ:多用する天板の前縁は、無垢エッジ貼りや樹脂エッジで躯体保護と意匠を両立。
- 現場保護:搬入後すぐに養生材で全面養生。特に角は当て木+保護テープで傷防止。
仕上げ(塗装)とメンテナンス
仕上げの選択
- クリア塗装(ウレタン・UV等):耐汚染・耐水性が高く、カウンターや水回りに好適。艶消し〜高艶まで選べる。
- オイル仕上げ:木の手触りと呼吸を活かせるが、定期メンテが前提。小さな傷は補修しやすい。
- 着色ステイン+クリア:内装全体の色合わせに有効。色ブレは試し塗りで事前確認。
いずれも木口・端部の防水は必須。清掃は乾拭きや固く絞った布、水濡れはすぐ拭き取りを徹底します。熱い鍋や薬品は直接置かない運用ルールも重要です。
現場での使い方
言い回し・別称
現場では次のような呼び方をします。「集成(しゅうせい)」「集成カウンター」「フリー板(広幅の造作用集成材)」「ラミナ(構成する板材)」。なお、LVL(単板積層材)やCLT(直交集成板)も似た文脈で登場しますが別物です。
使用例(3つ)
- 使用例1: 「受付カウンターはタモの集成で、30ミリ仕上げ。小口はR3で、F☆☆☆☆指定ね。」
- 使用例2: 「階段の蹴込と踏板、無垢だと反りが怖いから、今回は集成に切り替えましょう。」
- 使用例3: 「梁型の巻きは化粧集成でいく。継ぎは目立たない位置に持ってきて、先に全面クリアでシールしといて。」
使う場面・工程
代表的な流れは以下の通りです。設計・仕様決定(樹種・等級・厚み・仕上げ)→材料手配(定尺選定・加工指示)→プレカットまたは現場加工→仮合わせ→塗装(可能なら両面)→取付(ボンド+ビス、下穴)→タッチアップ・養生→引渡し。水回り・外気に近い部位は特に木口処理とシーリングを丁寧に。
関連語
- 無垢材(むくざい)
- LVL(単板積層材)
- CLT(直交集成板)
- MDF、パーティクルボード(PB)
- フィンガージョイント、ラミナ
- JAS(日本農林規格)、F☆☆☆☆(ホルムアルデヒド放散等級)
用途別の選び方(実践ガイド)
カウンター・天板
人が触れる面積が大きく、耐汚染性が重視されます。硬めでキズに強い樹種、または表面硬度の高い塗装を選ぶと安心。水がかりの可能性がある場合は木口シールと防水性の高いクリア塗装を。掃除用アルコールの使用可否は塗装仕様で確認します。
階段・手すり
踏板は剛性と耐摩耗性、手すりは触感と塗装の耐久がポイント。踏板は反りを抑えるため、裏ザグリを避け、下地との取り合いで均一に支持。手すりは連続性を優先し、継手位置を視線から外す配慮をします。
枠材・造作材
狂いが出づらい集成材は、ドア枠や窓枠にも適します。面材との見切りを考慮し、塗装前に素地調整を丁寧に。目違いが目立つ部位は目透かしの幅管理も重要です。
発注チェックリスト(ミス防止)
- 用途・部位(造作用/構造用)
- 樹種と外観グレード(節の扱い、色味の許容)
- 寸法(厚み・幅・長さ)と定尺の歩留まり
- 強度等級(構造用ならE・F等級)
- ホルムアルデヒド等級(室内はF☆☆☆☆を基本)
- 接着剤の種類と耐水性の要否
- 塗装仕様(ウレタン/オイル/着色の有無、艶、両面塗装)
- 小口・木口の処理(シール・エッジ・見切り)
- 現場加工の有無(R加工、欠き込み、下穴サイズ)
- 納期・含水率の管理(搬入後の養生条件)
よくあるトラブルと防止策
- 反り・ねじれ:片面だけ先行塗装しない。両面を同条件で養生。固定は均等に、支持点を増やす。
- 塗装ムラ・白化:素地調整と目止めを丁寧に。吸い込みの大きい木口は先にシーラー。
- 継ぎ目の段差(目違い):温湿度管理を徹底。空調の風が直接当たる場所は避けるか仕上げで保護。
- 端部割れ:下穴+適正ピッチ、端部からの距離を確保。木口打ちは避けるか接着併用。
- 水染み・黒ずみ:水回りはシリコン目地と定期的な撥水メンテ。濡れた雑巾の放置禁止。
コスト感と代替の考え方
集成材は無垢材に比べて「寸法安定・規格化・供給の安定」でコストパフォーマンスが高い傾向があります。さらにコストを抑えたい場合は、基材を集成材にして表面のみ化粧板(メラミン・突板)とする方法も有効。一方で、重厚な木目の連続性や経年変化の表情を最重視するなら無垢材が選択肢に残ります。用途・求める意匠・維持管理の方針で最適解を決めましょう。
安全・環境面のポイント
内装ではシックハウス対策としてF☆☆☆☆相当の製品選定が一般的です。現場では粉じん対策(マスク・集じん)を徹底し、切粉は区分回収。接着剤やシーラーは使用上の注意に従い、換気を確保します。木材は炭素を固定する資源でもあり、適切な選定と長寿命化は環境配慮にもつながります。
FAQ(よくある質問)
Q. 水回りでも使えますか?
A. 使えますが、木口シールと防水性の高い塗装、日常の拭き取りが前提です。直接の水かかり・蒸気が強い場所は化粧板や人工素材との使い分けを検討します。
Q. 無垢材との一番の違いは?
A. 反り・割れに強く、サイズの自由度が高い点です。意匠面では継ぎ目の表情が出ることがあり、そこをどう捉えるかが選択の分かれ目です。
Q. 構造用の強度等級はどう見ればいい?
A. JASのE(ヤング係数)とF(曲げ強度)で表されます。設計者の指定に従い、納入時のラベル・証明書で等級を確認・保管してください。
現場メモ(プロの小ワザ)
- 見せ場の天板は、表情の良い面を「A面」として手前に。梱包を開ける前に貼札で面指定を要チェック。
- 側面の“はぎ目”が気になる意匠では、無垢見付の化粧縁を先に加工しておくと仕上がりがきれい。
- 色合わせは、実際の照明下で試し塗りサンプルを確認。昼白色と電球色で見え方が変わります。
- 搬入直後の直射日光は厳禁。片面日焼けで色ムラ・反りの原因になります。
まとめ
集成材は、強度や寸法の安定性に優れ、内装の造作から構造まで幅広く活躍する頼れる材料です。無垢に比べて扱いやすく、設計自由度とコストのバランスも良好。とはいえ木は生き物。水や熱、乾湿の変化への配慮、木口の保護や丁寧な塗装・養生といった「ひと手間」が仕上がりと寿命を大きく左右します。この記事のポイント(規格の見方、発注チェック、現場でのコツ)を押さえれば、初めての方でも安心して選定・施工ができるはずです。迷ったら用途・意匠・維持管理の3軸で考え、最適な集成材を選びましょう。



