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ハンガーボルトとは?現場で失敗しない使い方と選び方を徹底解説

ハンガーボルトを完全解説:意味・現場での使い方・選び方・注意点をまとめて理解

「ハンガーボルトって何に使うの?」「吊りボルトとどう違うの?」――はじめて現場ワードに触れると、似た言葉が多くて迷いますよね。この記事では、建設内装の現場で実際に使われる「ハンガーボルト」を、やさしく・ていねいに解説します。意味だけでなく、具体的な使い方、選び方、失敗しがちなポイントまで網羅。初めての方でも読めば判断と段取りができる、実践目線のガイドです。

現場ワード(ハンガーボルト)

読み仮名はんがーぼると
英語表記Hanger bolt

定義

ハンガーボルトとは、片側が木材などに食い込む「木ねじ状(ラグ/コーチスクリュー形状)」、反対側がナットで締結できる「機械ねじ(メートルねじやウィットねじ)」になった“両端異なるねじ”のボルトです。木下地や各種プラグに一方をねじ込み、露出する機械ねじ側で金物・器具をワッシャとナットで確実に固定できるのが特長。内装・設備・金物取付などで、下地と仕上げ金物を“ねじ接合で橋渡し”するために使われます。

ハンガーボルトの基礎知識

形状と各部名称

ハンガーボルトは大きく「木ねじ側」と「機械ねじ側」に分かれます。木ねじ側は粗い山で下地に食い付き、機械ねじ側はワッシャ・ナットで締め付けます。中央に六角部が付いたタイプや、ドライバービットで回せるタイプもあり、ダブルナットや専用アダプタでの施工が一般的です。

主なサイズと呼び方

機械ねじ側はM6・M8・M10などのメートルねじ、または配管・設備でよく使うW3/8(ウィットねじ)が流通します。長さは「木ねじ側の長さ×機械ねじ側の長さ」で選ぶ考え方が実務的。例:「M8×65(木ねじ側)−35(機械ねじ側)」など。呼び径は取り付ける金物(ブラケットの穴径、ナットの規格)、想定荷重、下地条件で決めます。

材質と表面処理

屋内の一般内装なら亜鉛めっき(ユニクロ・三価)鋼がよく使われます。湿気・水まわり・外気に触れる場所や長期耐久が必要な場面ではSUS304等のステンレスを選ぶのが安心。腐食が懸念されるなら溶融亜鉛めっき(ドブ)仕様やステンレス+絶縁ワッシャなど、条件に応じた防錆配慮が重要です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように呼ばれることがあります。

  • 「ハンガー」「ハンボル」:ハンガーボルトの略称
  • 「両ねじ」:片側木ねじ・片側機械ねじの意味で使う人もいます(ただし、両端が機械ねじの「スタッドボルト」も“両ねじ”と呼ばれることがあり、混同注意)
  • 「吊りボルト」との混同に注意:全ねじ(寸切り)で天井や配管を吊る部材は通常「吊りボルト」。ハンガーボルトは用途や形状が異なります

使用例(3つ)

  • 木下地にブラケットを強固に固定:壁の木胴縁へハンガーボルトをねじ込み、露出したM8側にサイン金物をワッシャ+ナットで締結
  • ボードアンカーと組み合わせた軽量金物の取り付け:空洞壁に適合アンカー(中空壁用)を入れ、機械ねじ側に金物を固定(重量物や動荷重には不適)
  • 衛生・設備金物の取付:洗面器ブラケットや手すり受け金具など、微調整や確実な増し締めが必要な箇所で、ナット管理により確実に固定

使う場面・工程

内装・金物・設備の固定で、下地に確実なねじ込みが必要な場面で使用します。一般的な段取りは以下の通りです。

  • 1. 設置位置確認:下地探し(木下地・合板補強・コンクリート・ALCなど)と仕上げ厚を確認
  • 2. 下穴加工:木ねじ側の有効径に合う下穴を開ける(下地によって径を調整)。ボードのみは不可、補強や適合アンカーを用意
  • 3. ねじ込み:ダブルナットまたは専用アダプタでハンガーボルトを下地へ垂直にねじ込む
  • 4. 金物合わせ:金物の穴径・座金・スペーサを調整し、機械ねじ側で締結
  • 5. 増し締め・仕上げ:座りの確認、緩み止め(スプリングワッシャやナイロンナット)、養生・防錆

関連語

  • 吊りボルト(全ねじ・寸切り):天井・配管等を吊るための全ねじ棒。ハンガーボルトとは別物
  • あと施工アンカー:コンクリート等に固定点をつくる金属拡張・接着系アンカー。ハンガーボルト単体ではコンクリートに効かせられない
  • コーチボルト(ラグスクリュー):六角頭の木部用太径ねじ。ナット側はなく、ハンガーボルトとは用途が異なる
  • スタッドボルト:両端が機械ねじの棒。機械設備・フランジ等で使用
  • ダブルナット:2個のナットで相互に緩み止め・増し掛けする締結方法。ハンガーボルトのねじ込みにも使用

適切な選び方

下地と荷重から決める

まずは「どこに、どれだけの重さのものを、どのくらいの期間固定するか」を決めます。

  • 木下地・合板補強がある:ハンガーボルトの木ねじ側を直接ねじ込める。径はM6〜M8が基準、重量・金物穴径に応じてM10へ
  • 空洞壁(軽鉄+石膏ボード等):ボードのみは不可。合板補強を追加するか、適合する中空壁アンカー+機械ねじで対応。重量物は避ける
  • コンクリート・ALC:ハンガーボルト単体で直接は不可。あと施工アンカーや対応プラグで受けを作り、機械ねじ側で固定(部材適合確認必須)

長さの目安

木ねじ側は「下地厚の2/3以上の食い込み」を目安にしつつ、貫通や干渉を避けるバランスをとります。機械ねじ側は「金物厚+座金+ナット厚+余長2〜3山」程度を確保。仕上げ材やスペーサ分も加味して選定します。

表面処理・材質の選択

  • 屋内乾燥環境:ユニクロや三価クロメートの亜鉛めっき鋼
  • 水まわり・高湿・外装寄り:SUS304などステンレス、または高耐食めっき
  • 他金属との接触:電食対策としてワッシャやスペーサで絶縁を検討

施工管理の観点

  • 下地確認の記録(探針・写真・下地種類)
  • 使用部材(サイズ・材質・メーカー・ロット)の記録
  • トルク管理や増し締めタイミングの共有

施工手順(失敗しない基本)

  • 1. 位置出しと下地確認:墨出し後、下地センサーやピンで実在を確認。合板補強がない場合は先に補強
  • 2. 下穴加工:木下地なら下穴径は木ねじ側の谷径を目安に。硬い木はやや大きめ、柔らかい木は小さめに調整。下穴は必ず垂直を保つ
  • 3. ねじ込み:ハンガーボルトの機械ねじ側にナットを2個掛けてダブルナットを作り、スパナで回してねじ込む。必要に応じて専用アダプタやインパクト+低速で施工
  • 4. 金物装着:座金(平座+ばね座)を入れてナットで締結。座面が歪まないように均等に締める
  • 5. 仕上げ:ナットの出代を整え、必要ならキャップナットや化粧座金で意匠を整える。錆が懸念される部位は防錆剤を薄く塗布

必要な工具

  • スパナ/メガネ/モンキーレンチ(ナット二個でのダブルナット施工用)
  • 電動ドリル・インパクトドライバ(下穴・専用アダプタ施工)
  • ドリルビット(木工・下地に応じて)
  • 下地探し(探針・センサー)と水平器

下穴の考え方

木ねじ側は「食い付き」と「割れ防止」のバランスが命です。堅木や寸法の小さい下地は割れやすいので、谷径〜やや大きめの下穴で割れを防止。柔らかい材は小さめにして保持力を確保。端部からは最低でもねじ径の5〜7倍ほど離すと割れにくくなります。

締付の勘所

木ねじ側は効かせすぎると空転や割れの原因。抵抗が増えて“ギュッ”と止まったところで無理に追い込まない。機械ねじ側は座金の座りを確認し、一定の力で均一に締める。緩み止め(ばね座・ナイロンナット)やダブルナットで信頼性を高めます。

よくある失敗と対策

  • 下地を外してボードに効かせてしまう:必ず下地を探して施工。やむを得ず空洞壁で使うなら適合アンカー+機械ねじで対応し、重量物は避ける
  • 下穴が小さすぎて木が割れる:谷径基準で下穴を設定。端部からの距離も確保
  • 長さ・出代ミス:仕上がり厚やスペーサ分を事前に採寸。ナット2〜3山の余長を確保
  • 腐食で早期劣化:環境に応じた材質選定(ステンレスなど)。切削部は必要に応じてタッチアップ
  • 「吊りボルト」との取り違え:天井の主吊りや重量配管は全ねじ+適合アンカーが基本。ハンガーボルトは用途を見極める

使ってはいけない・注意が必要なケース

  • 石膏ボードのみへの直接ねじ込み:保持力不足。補強または適合アンカーが必要
  • コンクリートへの直接ねじ込み:不可。あと施工アンカー等で機械ねじの受けを作る
  • 耐震・荷重基準が定められた主構造の吊りや支持:設計仕様に従い、規格に適合した部材・アンカーを使用

メーカー・入手先の目安

国内では次のようなメーカー/ブランドが広く流通しています(店舗・ECでの取り扱いも豊富)。

  • 若井産業(WAKAI):木工・内装向けのねじ・ビス全般に強いメーカー。木部用の使い勝手に配慮したラインアップが特徴
  • 八幡ねじ(YAHATA):ねじ・ボルト類の総合ブランド。サイズ・材質の選択肢が幅広い
  • ダイドーハント:建築金物・ねじの総合メーカー。内装・DIY〜プロ向けまで幅広く供給
  • サンコーインダストリー:工業用ファスナーの大手。業務用ロットでの調達に強み

用途に応じて、同径のナット・座金(平座・ばね座)や、ダブルナット用のナット追加、施工性を高める専用アダプタも合わせて準備すると、現場がスムーズです。

現場で役立つチェックリスト

  • 取り付け位置の下地は確認済みか(写真・記録)
  • 荷重・用途に対して径・材質は適切か
  • 下穴径・深さは下地に適合しているか
  • ねじ込みは垂直か、効きは十分か(空転なし)
  • 座金・ナットの組み合わせは適正か(緩み止めも含む)
  • 出代・化粧は想定通りか(干渉なし、意匠OK)
  • 腐食・電食対策は環境に合っているか

よくある質問(Q&A)

Q. ハンガーボルトと吊りボルト(全ねじ)は何が違いますか?

A. ハンガーボルトは片側が木ねじ、片側が機械ねじの“異種ねじ”で、下地にねじ込んで金物をナットで固定します。吊りボルト(全ねじ・寸切り)は棒全体が機械ねじで、インサートやアンカーにナットで固定して天井や配管を吊る用途が中心。形状も用途も異なるため、使い分けが必要です。

Q. 石膏ボードの壁に直接使えますか?

A. ボードのみへの直接ねじ込みは不可です。中空壁用の適合アンカー+機械ねじで固定するか、合板補強を入れてから使用します。重量物はボードアンカーでは不十分な場合が多く、事前の補強が基本です。

Q. ステンレスと亜鉛めっき、どちらを選べばいい?

A. 室内の乾燥環境なら亜鉛めっきで十分。水まわり・高湿・外気や結露が想定される場所はステンレスが安心です。周辺金属との組み合わせや見え掛かり(意匠)も考慮して選定します。

Q. W3/8とM10はどちらを選ぶべき?

A. 取付相手(ブラケットや既存ナット)の規格に合わせます。設備まわりではW3/8(ウィット)が残っているケースもありますが、内装金物や新規計画ではメートルねじ(M規格)が主流です。混在は避け、現場でのネジ規格を統一するのが安全です。

実務のコツ(プロ目線)

  • 仮固定で一度座りを確認し、仕上げ前に最終増し締めを入れると緩み防止に効果的
  • 石こうボード越しに木下地へ入れる場合は、ボード厚分の「浮き」を計算して木ねじ側のねじ込み量を管理する
  • 意匠面ではキャップナットや化粧座金を用意しておくと仕上がりがきれい
  • 複数本で金物を取り付ける場合は、先に全て“遊び”で掛け、最後に均等に締めると歪みが出にくい

ミニ用語辞典(関連ワードの理解を深める)

  • 機械ねじ:ナットで締結する規格ねじ。メートルねじ(M6/M8など)やウィットねじ(W3/8など)がある
  • 木ねじ:粗い山で木材に食い込むねじ。ハンガーボルトの一端に使われる
  • ダブルナット:2個のナットを突き合わせて回す方法。ハンガーボルトのねじ込みに便利
  • 座金(ワッシャ):面圧分散・緩み止めのための金具。平座+ばね座の併用が基本
  • あと施工アンカー:既存コンクリートに固定点を作る金具。金属拡張式・接着系がある

まとめ

ハンガーボルトは「片側木ねじ×片側機械ねじ」という特徴で、下地に効かせながら金物をナット管理で確実に固定できる便利な部材です。ポイントは、下地確認・適切な径と長さの選択・下穴の精度・正しい締結。用途を見極め、吊りボルトやアンカー類と正しく使い分ければ、現場での“ガタつき・緩み・やり直し”を大幅に減らせます。初めての方も、本記事の手順とチェックリストに沿って準備すれば、安心して施工できます。疑問が残れば、具体的な下地・荷重・金物の情報とともに相談してください。最短ルートで正解にたどり着けます。