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絶縁抵抗計とは?使い方・測定手順・選び方まで現場で役立つ徹底解説

絶縁抵抗計(メガー)を現場で迷わず使うための基礎と実践ガイド

「絶縁抵抗計って何?どうやって使うの?」——内装の現場に入ると、電気屋さんや監督から当たり前のように「メガーかけといて」と言われて戸惑うこと、ありますよね。この記事では、初めての方でも安心して理解・実践できるように、絶縁抵抗計の意味、使い方、現場での言い回し、測定手順、選び方までをやさしく丁寧に解説します。実際の内装現場で使うポイントに絞り、今日から迷わず動ける実践知をまとめました。

現場ワード(絶縁抵抗計)

読み仮名ぜつえんていこうけい(一般には「メガー」と呼ぶことが多い)
英語表記Insulation Resistance Tester / Megohmmeter

定義

絶縁抵抗計は、配線・機器の「絶縁」がどれくらい健全かを確認するために、直流の試験電圧(例:250V、500V、1000Vなど)を一時的に印加し、漏れ電流から抵抗値(MΩ:メガオーム)に換算して表示する計測器です。導体同士、または導体と大地(アース)の間で、電気が漏れにくい状態かどうかを数値で判断します。現場では「メガーをかける=絶縁抵抗を測る」という意味で使われます。

絶縁抵抗計の役割と仕組み

電気は本来、絶縁被覆や機器内部の絶縁体を通過できないはずですが、劣化・水分・汚れ・傷などがあるとわずかに漏れます。絶縁抵抗計は、所定の試験電圧をかけたときの漏れ具合(電流の小ささ)を測り、電気が「漏れにくい=抵抗が大きい」ほど良好と判断します。新設配線なら数十〜数百MΩの大きな値が出るのが一般的で、値が低いほど不具合の可能性が高まります。

測定の基本(原理と指標)

原理はシンプルで、オームの法則 R=V/I(R:抵抗、V:電圧、I:電流)です。絶縁抵抗計は内部で安定した直流電圧を作り、試験対象に印加して流れた微小な電流を計測、それをMΩ表示に変換します。表示値が「∞(オーバー)」や「>2000MΩ」のように上限を超えるほど、絶縁状態は理想に近く、数値が小さいと劣化・水濡れ・配線ミスなどが疑われます。

現場での使い方

内装工事での絶縁測定は、照明・コンセント回路の引き込み完了時、通電前の最終確認、漏水・湿気発生後の点検などで行います。安全に正しく測るためには、言い回しの意味を押さえ、手順を守ることが大切です。

言い回し・別称

  • メガー/メガ:絶縁抵抗計の俗称(英国メーカー名Meggerが一般名詞化)。
  • メガる・メガーかける:絶縁抵抗を測定すること。
  • IR測定:Insulation Resistance(絶縁抵抗)測定の略。
  • L-E、N-E、L-N:測定するペアの指定(例:L-E=電源線とアース間)。

使用例(会話・指示)

  • 「この回路、通電前にメガー500VでL-EとL-N測っといて。記録もね。」
  • 「ここ弱電機器ぶら下がってるから、メガーは外してから。250Vでお願いします。」
  • 「数値低いな。分岐切り分けて、どこで落ちてるか追っていこう。」

使う場面・工程

  • 新設配線の完了確認(壁閉じ前・器具付け前後)
  • 盤・ブレーカー新設/切替時の事前チェック
  • 漏水・湿気・コンクリート打設後の乾燥状況確認
  • 改修現場での既存回路の健全性点検
  • 引渡し前の検査・試運転前の安全確認

関連語

  • 絶縁抵抗・漏れ電流:測定対象の現象。
  • アース(接地):測定の基準側(E)となることが多い。
  • ブレーカー(遮断器):試験前に確実にOFFする必要がある。
  • 導通試験・テスター:別の試験。絶縁測定とは用途も動作も違う。
  • ガード端子:表面漏れの影響を減らすための端子(高機能機種)。

測定手順(内装現場の安全手順)

以下は一般的な低圧回路での基本フローです。現場の安全ルール、メーカー取扱説明書、監督・電気工事士の指示を最優先してください。

  • 1. 図面・系統の確認:測定対象回路と分岐、接続機器(弱電・電子機器)の有無を把握。
  • 2. 停電・表示・施錠:対象ブレーカーをOFF。ロックアウト・タグアウトを実施。
  • 3. 切り離し:LED照明の電源装置、火災報知器、空調制御、LAN機器などデリケートな機器は必ず外す。コンセントには何も挿さない。
  • 4. 残留電圧の確認:テスター(マルチメータ)で無電圧を確認。静電気・残留電荷を放電。
  • 5. 試験電圧の選定:対象回路の定格・仕様に合わせて125V/250V/500V/1000Vなどを選ぶ。低圧の一般配線では250Vまたは500Vが多い。
  • 6. 接続:絶縁抵抗計の端子を「測定したい導体」と「アース(または相手導体)」に確実に接続。ワニ口クリップで手離し測定を基本に。
  • 7. 測定:測定ボタンを押して数秒保持。安定した値を読み取る(MΩ)。
  • 8. 記録:回路名、試験電圧、測定点(L-E/L-N/N-E)、値、環境(温湿度・天候)を記載。
  • 9. 復旧:配線・機器を元通りに接続。ブレーカーは関係者と復電手順を確認してON。
  • 10. 報告:基準に満たない場合は作業中断し、原因究明・是正へ。

測定値の目安と判断(実務的な見方)

法令や規程の適合判断は、現場で採用している基準(例:電気設備技術基準の解釈、内線規程、設計仕様)に従います。ここでは内装現場での実務的な「傾向」を示します。最終判断は必ず所定の規程・指示を優先してください。

  • 新設配線(乾燥環境):数十〜数百MΩ以上が出ることが多い。
  • 1MΩ未満:要注意。湿気・配線傷・結線ミス・機器つけっぱなしの可能性。
  • 0.1MΩ付近:多くの低圧回路の目安として「不合格の可能性が高い」。ただし規程・契約によって基準値は異なる。
  • 環境要因:雨天・湿潤・モルタルや石膏ボードの乾き不足で一時的に値が落ちる。乾燥後に回復するケースも。
  • 相間ごとの差:L-Eは高いがL-Nだけ低い場合、終端器具や中間結線に問題があるかも。

数字はあくまで「傾向」の例です。現場・電圧・用途・規程の違いで基準は変わるため、必ず設計・監督・電気工事士の指示に従ってください。

よくあるトラブルと対処

  • 値が低い(MΩが小さい):分岐ごとに切り分けて測り、区間を特定。器具・ジョイント・ボックス内の傷や被覆噛み、ビス貫通、水分付着を確認。
  • 日によって値が変わる:湿度・壁内の含水率の影響。乾燥・換気、時間を置いて再測。
  • 測定中のショック・誤測定:試験電圧がかかるため、手持ち接続は避け、絶縁手袋・ワニ口クリップを使用。周囲に声掛け。
  • 機器破損の懸念:LED電源、制御基板、火報・放送・LAN機器などには絶対にメガーをかけない。必ず切り離すか、機器の取説指示に従う。
  • ブレーカーが飛ぶ・後で不具合:通電前に必ず無電圧確認。誤って通電状態でメガーをかけない。

絶対に壊さないための注意点

  • 弱電・情報系(LAN、電話、インターホン、火災報知、セキュリティ、BEMS)は専用の試験器を使用。絶縁抵抗計は不可。
  • 電子機器(LEDドライバ、インバータ、制御盤、IH・OA機器等)は原則切り離し。
  • 測定電圧の選定ミスに注意。必要以上に高い電圧は使わない。
  • 濡れた手・濡れた床での作業禁止。絶縁用具・マットを使用。
  • 試験後は静電気・残留電荷の放電待ち(機種に放電機能あり)。

選び方(現場目線のポイント)

  • 測定レンジ:125V/250V/500V/1000Vのうち、現場の回路に合うもの。内装の低圧主体なら250V・500V搭載が実用的。
  • 表示タイプ:アナログは針の動きで「傾向」が見やすい。デジタルは読みやすく記録向き。
  • 安全規格・CAT:CAT規格や過電圧カテゴリの明示、誤接続保護の有無。
  • ガード端子:表面漏れ(汚れ・湿気)を除外したい場面で役立つ。
  • データ保存:ログ・Bluetooth・USB出力は現場記録や報告書作成に便利。
  • 堅牢性・防塵防滴:IP規格、ラバープロテクタ、現場落下対策。
  • 校正・サポート:国内サポート・校正体制の有無、納期。
  • ワンハンド操作・リード収納:高所・脚立作業での取り回しが楽。

主要メーカーと特徴(代表例)

以下は日本の建設現場で広く見かける計測器メーカーの例です。機種や仕様は必ず各社の最新カタログをご確認ください。

  • 日置電機(HIOKI):長野発の計測器メーカー。デジタル表示の視認性、データロガ機能、堅牢な筐体に定評。現場〜研究用途まで幅広いラインアップ。
  • 共立電気計器(KYORITSU/KEW):クランプメータで有名。コンパクトで扱いやすい絶縁抵抗計が多く、現場携行性が高い。
  • 三和電気計器(SANWA):教育・現場の双方で浸透。コストと性能のバランスに優れたモデルが揃う。
  • Megger(メガー):英国発祥のブランド。megohmmeter(メガオームメータ)の先駆的存在。堅牢性と高信頼性で世界的に知られる。
  • Fluke(フルーク):米国の計測器大手。産業用の高耐久モデル、データ管理機能に強み。

メガーとテスター(マルチメータ)の違い

テスターの抵抗レンジは低電圧・微小電流で導通を測るのに適し、絶縁劣化の検出には不十分です。絶縁抵抗計は高めの直流電圧をかけ、実運用に近いストレス下で漏れを確認できます。導通確認=テスター、絶縁健全性=メガー、と使い分けるのが基本です。

回路別の実践ポイント

  • 照明回路:器具付け前後で測定。付けた後はLED電源の有無に注意し、必要なら器具を外して測定。
  • コンセント回路:OAタップや充電器が挿さっていないか確認。L-E、N-E、L-Nを順に測定。
  • エアコン・設備電源:室外機・制御線を含むので、制御基板にメガーをかけないよう切り離しを徹底。
  • 弱電・通信:LAN、インターホン、火報は専用テスター(LANテスタ、絶縁監視対応器具等)を使用。メガーは不可。

数値が悪いときの切り分け手順(実務フロー)

  • 1)幹線→分岐の順で区間を短くして測る。
  • 2)器具・機器を外し「裸配線」で測る。
  • 3)ボックス開口部の水濡れ・粉塵・石膏粉の付着を清掃・乾燥。
  • 4)固定ビス・ステープルの貫通や被覆かみ込みを目視確認。
  • 5)乾燥時間を置いて再測(湿気要因の切り分け)。
  • 6)それでも改善しなければ配線やり替え・被覆補修を検討。

測定記録の付け方(報告に強くなる)

  • 現場名/回路名(ブレーカ番号)
  • 測定日時・担当者
  • 試験電圧(例:DC 500V)
  • 測定箇所(L-E/L-N/N-E)と値(MΩ)
  • 環境(温度・湿度・天候・湿潤箇所の有無)
  • 器具接続状態(器具外し/直結)
  • 特記事項(清掃・乾燥・再測の有無)

上記をテンプレ化しておくと、引渡し時や是正工事の説明がスムーズです。写真(メーター表示+盤やボックスの全景)も併せて残すと説得力が増します。

安全とコンプライアンス

絶縁抵抗の基準は、法令・規程・発注仕様によって異なります。日本では「電気設備技術基準」やその解釈、内線規程、設計仕様書などで求められる値・試験条件が定められている場合があります。現場ではこれらの指示に必ず従い、迷ったら電気工事士・監督に確認してください。無理な独自判断は禁物です。

FAQ(初心者の疑問に答えます)

Q. 何Vで測ればいいの?

A. 回路の定格や機器の耐圧に合わせます。内装の低圧電力回路では250Vまたは500Vが一般的ですが、設計・規程・機器取説の指示を最優先してください。迷ったら上位者に確認しましょう。

Q. 雨の日や湿度が高い日は数値が下がりますか?

A. はい、湿潤環境や乾き不足は数値を押し下げます。乾燥・換気後に再測すると改善することがあります。雨天直後は特に要注意です。

Q. メガーをかけてはいけない配線は?

A. LAN・電話・火災報知・セキュリティ・放送などの弱電、または電子基板が入った機器に直結した配線です。必ず切り離すか、専用の試験器を使います。

Q. 新設で数十〜数百MΩが出ないのはおかしい?

A. 直ちに不合格とは限りませんが、一般的な新設配線としては再確認を勧めます。器具のつけっぱなし、湿気、配線傷、結線ミスなどがないか切り分けてください。

Q. レンタルと購入、どっちがおすすめ?

A. スポット利用ならレンタル、頻繁に使うなら購入が経済的。購入時はメンテ・校正体制も合わせて検討しましょう。

失敗しないコツ(現場の小ワザ)

  • 測定リードに番号タグを付け、誤接続を防ぐ。
  • ワニ口クリップに絶縁カバーを付け、接触事故を低減。
  • 盤・ボックスの清掃後に再測し、粉塵や湿気の影響を除去。
  • 測定値が悪ければ「写真+メモ」で状況を残し、次工程での再発防止につなげる。
  • 「器具外し忘れチェックリスト」を作り、チームで使い回す。

まとめ

絶縁抵抗計(メガー)は、配線・機器の安全を守る「最後の砦」です。言い回しの意味、機器を壊さないための注意点、正しい測定手順、そして結果の見方さえ押さえれば、初心者でも十分に戦力になれます。数値がすべてではなく、環境や結線状態を読み解く現場感も大切です。今日からは、自信を持って「メガーかけといて」に応えられるはず。困ったら遠慮なく上位者に確認し、規程・取説に忠実に。安全第一で、確かな品質の内装づくりを進めていきましょう。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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