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KYシートとは?建設現場での意味・正しい書き方・記入例まで徹底解説

KYシートを完全ガイド:意味・書き方・現場での使い回しまで(内装工事の実務目線でやさしく解説)

「KYシートって何を書けばいいの?」「TBMと何が違うの?」「正しい書き方がわからない…」。はじめて建設内装の現場に入ると、こんな不安を抱く方は多いはずです。KYシートは “危険を予知して、事故を未然に防ぐための打ち合わせメモ”。でも、ただ埋めればよい紙ではありません。この記事では、内装工事の実務経験にもとづき、KYシートの意味から実際の記入例、現場での言い回しや使うタイミングまで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。今日の朝礼からすぐ使える実践的なコツをまとめました。

現場ワード(KYシート)

読み仮名けーわいしーと
英語表記Kiken-Yochi (Hazard Prediction) Sheet/KY Activity Sheet(英語圏の近似概念:Job Hazard Analysis(JHA)/ Toolbox Talk Sheet)

定義

KYシートとは、「危険予知(Kiken Yochi: KY)活動」で用いる記録用紙のことです。作業開始前にメンバーで集まり、その日の作業内容・想定される危険・リスクの大きさ・具体的な対策・役割分担・指差呼称・署名等を簡潔にまとめるために使います。内装現場では脚立・可搬式作業台・ボード搬入・切断作業など、日々の作業に潜むリスクを共有し、全員の共通理解をつくるための中核ツールです。

KYシートの役割と効果

KYシートは「書くこと」が目的ではありません。「チームで危険を見える化し、行動を変えること」が目的です。効果は次の通りです。

  • 危険の見落としを減らす(思い込みや作業慣れによる油断を制御)
  • 対策の具体化(抽象的な“気を付ける”を禁止し、手順・設備・人の行動に落とし込む)
  • 役割分担の明確化(誰が監視、誰が合図、誰が工具点検など)
  • 伝達のスピードアップ(他職種や新規入場者にも共有しやすい)
  • トラブル時の振り返り基準(ヒヤリハットの学びを翌日に反映)

KYシートの基本項目と意味(テンプレートの読み解き)

現場や元請けによってフォーマットは異なりますが、基本は共通です。

  • 現場名・日付・天候:作業条件の前提。天候は屋内でも搬入や換気に影響。
  • 作業場所・範囲:フロア・区画・ゾーン。入退場や他職との取り合いに関係。
  • 作業内容・手順:作業を分解(搬入→仮置き→切断→取付→清掃など)。
  • 想定される危険:転落・墜落・切創・挟まれ・感電・粉じん・腰痛・熱中症など。
  • リスク評価:発生頻度×重篤度で簡易評価(高・中・低)。優先順位を決定。
  • 対策(具体):養生・立入禁止・合図者配置・二人作業・工具点検・換気・マスク種類など。
  • 役割分担:監視・指示・玉掛け相当の合図・搬入経路誘導・脚立の押さえなど。
  • 必要な保護具:ヘルメット・フルハーネス(二丁掛け)・保護メガネ・防じんマスク等。
  • 関係者との調整:他職の工程、エレベーター予約、火気・騒音の許可。
  • 指差呼称・スローガン:今日の重点(例:「脚立3点支持・天板使用禁止」)。
  • メンバー署名:参加の証跡。途中合流者の追記欄があると親切。

記入の手順(内装工事の実例付き)

ステップ1:作業を分解する

「天井ボード張り」と一括りにせず、材料搬入→仮置き→墨出し→野縁確認→ボード切断→ボード揚げ→ビス打ち→清掃に分けます。分解するほど危険が見える化され、対策が具体化します。

ステップ2:危険を洗い出す

各工程ごとに「人・モノ・環境・管理」の視点で洗い出します。例:人=慣れ・疲労、モノ=刃の劣化、環境=暗い・狭い・粉じん、管理=他職との重複作業。

ステップ3:リスク評価と優先順位

重篤度の高いもの(墜落・感電など)を最優先。時間の制約があっても「重い×起きやすい」から対策します。

ステップ4:対策を“行動”に落とす

「注意する」ではなく「脚立は2段目まで・天板禁止」「押さえ役を付ける」「カッターは刃を5mm以内」「切断は定規使用・グローブ必須」といった具体にします。

ステップ5:役割分担・合図・確認

「A=合図・監視、B・C=搬入、D=材料切断」など、誰が何をするか明記。搬入時の声掛けルール(角!前見えない!止まる!)も決めます。

ステップ6:指差呼称と署名

最後に全員で声に出して確認。「本日の重点、脚立3点支持・材料は足元に置かない・カッター刃は短く」。署名で意識を統一します。

記入例(そのまま使えるサンプルフレーズ集)

例1:軽天(LGS)間仕切り組立

  • 危険:スタッド倒れ・切創・墨出し時の転倒・インパクトの跳ね。
  • 対策:材料は壁沿いに束ねて仮固定、切断は手袋+保護メガネ、インパクトは低速から。倒れ止め木当て、通路は1m確保。
  • 役割:A=材料管理、B=切断、C=建込み、D=監視・声掛け。

例2:石膏ボード搬入・荷揚げ

  • 危険:挟まれ・腰痛・通路での接触・エレベーター挟まれ。
  • 対策:2名以上で運搬、軍手ではなく滑り止め手袋、通路確保・立入禁止コーン設置、エレベーターは誘導役配置。
  • 役割:先行=誘導・合図、後行=荷重側保持、第三者=扉監視。

例3:天井ボード張り(脚立・可搬式作業台)

  • 危険:墜落・脚立転倒・工具落下・粉じん吸引。
  • 対策:天板乗り禁止、3点支持、押さえ役配置、工具は落下防止ストラップ、切断は集じん機併用、保護メガネ+防じんマスク。
  • 役割:A=脚立安定確認、B=ボード受け、C=ビス打ち、D=材料上げ。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように呼ばれることがあります。「KY」「KY用紙」「KY活動表」「TBMシート(Tool Box Meetingの記録)」「危険予知シート」「JHAシート(近似呼称)」「リスクアセスメントシート」。元請けによってはTBMとKYを同じシートで運用することもあります。

使用例(3つ)

  • 朝礼前:「今日のKY回すよ。天井作業は脚立の押さえ役を付ける、搬入は通路の立入禁止テープね」
  • 作業切替時:「午後はボード割付からガラ出しに変更。KY追記して合図者を1名つけよう」
  • 新規入場者合流時:「まずKYに署名して。今日の重点は“切断5mm・手元見て合図してから”ね」

使う場面・工程

基本は毎朝礼の前後、作業開始前に実施。工程変更や加工作業、搬入・高所・火気・電動工具・夜間作業など、リスクが上がる場面では都度更新が望ましいです。短時間の小変更でも追記を徹底すると事故率が下がります。

関連語

  • TBM(Tool Box Meeting):朝礼・合図・作業段取りの打合せ。
  • JSA/JHA(Job Safety Analysis / Job Hazard Analysis):作業分析に基づく危険特定。
  • リスクアセスメント:危険性・有害性の特定と見積もり・低減。
  • 指差呼称・ヒヤリハット:ヒューマンエラー対策・事例共有。
  • 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾):足元・通路安全の基礎。

内装現場ならではの注意点(プロの視点)

屋内の内装は「狭い・暗い・重い・粉じん」が重なりやすく、第三者通行も多い環境です。特に以下はKYシートで強調しましょう。

  • 脚立・可搬式作業台:天板使用禁止、3点支持、設置面の点検、移動時は降りる。
  • 石膏ボード粉じん:切断は集じん機・防じんマスク(区分適合)・養生で拡散防止。
  • 運搬・手上げ:重量物は二人以上、休憩を計画、通路の養生と確保幅1m目安。
  • カッター・切断:刃を短く(5mm程度)、金属定規使用、切り終わりはスローダウン。
  • 他職との取り合い:上・下作業の干渉(落下物・脚立下立入)を事前に調整する。
  • 臭気・換気:ボンド・溶剤使用時の換気計画、火気厳禁の周知。

よくあるNG・ありがちな失敗

  • 「気を付ける」とだけ書く:行動に落ちない対策は効果が薄い。
  • 昨日のコピペ:工程が変われば危険も変わる。毎日更新が基本。
  • 役割未記載:誰が合図・押さえ・監視かが曖昧だと、誰もやらない。
  • 保護具の種類が不明確:防じんマスクの区分、手袋の種類まで書く。
  • 第三者対策が抜ける:通路・共用部の養生と立入管理は事故防止の要。

紙・デジタルの使い分けと管理のコツ

紙のKYシートは即時性が高く、現場の壁に掲示しやすいのが利点。デジタル(写真共有・アプリ)は記録性と検索性に優れます。併用する場合は次のルールを決めます。

  • 朝礼:紙で記入→全員署名→掲示→スマホで撮影して共有。
  • 変更:紙に追記→撮影→スレッドに「変更点のみ」書き添える。
  • 保管:日付・フロアでフォルダ分け。ヒヤリハットはタグ化(例:脚立/搬入)。

フォーマット(入れておくと実務で強い項目)

  • 「今日の重点3つ」欄(例:「脚立3点」「通路1m」「刃5mm」)
  • 「他職との取り合い」欄(例:電気の天井配線、設備の吊り込み)
  • 「合図・掛け声」欄(例:「止まる!」「角!」のルール)
  • 「途中参加者署名」欄(午前・午後で合流した人の見落とし防止)
  • 「ヒヤリの共有」欄(翌日の重点に反映)

メーカー・市販の用紙や備品(参考)

KYシート自体は現場ごとに自作することが多いですが、市販の安全用品メーカーからも帳票や掲示ボードが販売されています。代表的なメーカーの例としては、ミドリ安全(安全衛生用品全般)、株式会社ユニット(安全標識・掲示板・帳票)、つくし工房(現場安全用品・掲示ツール)などが挙げられます。いずれも「KY活動表」「TBM用ボード」「安全ミーティングシート」等の形で、現場運用に適したフォーマットやボードを提供しています。現場のルールに合わせてカスタマイズできるものを選ぶと運用がスムーズです。

よくある質問(FAQ)

Q1:KYとTBMは何が違う?

重なる部分が多いです。TBMは作業計画や段取りの打合せ全般、KYは危険に焦点を当てた話し合いと記録。現場によっては同じシートで一体運用します。

Q2:英語でどう説明するの?

直訳は「Kiken-Yochi (Hazard Prediction) Sheet」。海外の近い概念はJHA(Job Hazard Analysis)やToolbox Talkです。外国人作業者には「Pre-Task Safety Plan(作業前安全計画)」として説明すると伝わりやすいです。

Q3:毎日書く必要ある?

基本は毎日、かつ作業が変わるたびに更新が理想です。安全は“今日の作業”に対して確保されるもので、前日のコピペでは十分ではありません。

Q4:小規模現場でも必要?

人数や規模に関係なく効果があります。特に少人数では“見ている人”が減るため、紙にして可視化する価値が上がります。

Q5:何を書けばいいか思いつかない…

「高所・刃物・運搬・電気・第三者」の5視点で考えると出てきます。ヒヤリハットを一つでも書き、翌日の重点に昇華させると循環します。

今日から使えるチェックリスト(短時間で質を上げる)

  • 作業を3工程以上に分解したか?
  • 「注意する」ではなく行動・手順で書いたか?
  • 押さえ役・合図者など役割を名前で決めたか?
  • 第三者対策(通路・立入禁止・掲示)を書いたか?
  • 保護具の種類(メガネ・マスク区分・手袋)まで明記したか?
  • 指差呼称の一言を決めたか?
  • 途中参加者の署名欄を残したか?

まとめ:KYシートは“安全を形にする”現場の共通言語

KYシートは、作業前のほんの数分で、重大事故の芽を摘み取るための強力なツールです。ポイントは「具体的に」「役割まで」「毎日更新」。内装工事は狭さ・粉じん・重量物・高所など、身近なリスクが混在します。だからこそ、今日の作業に合わせて危険を言語化し、対策を行動に落とし、全員で指差呼称する。この基本を積み重ねれば、現場は確実に安全で効率的になります。明日の朝礼から、ぜひチームで実践してみてください。