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集成材とは?種類・特徴・メリットを徹底解説!建設現場で選ばれる理由と使い方

集成材の基礎知識:現場での意味・選び方・使い所をプロが解説

「集成材って無垢材と何が違うの?」「内装や家具でよく聞くけど、強度や耐久性は大丈夫?」——そんな疑問を持つ方に向けて、建設内装の現場で日常的に使われる現場ワード「集成材」を、やさしく丁寧に解説します。この記事を読めば、種類やメリット・デメリット、規格の見方から現場での声かけの仕方まで、実務で役立つポイントがまるっと分かります。初めての方でも安心して読み進められるよう、できるだけ平易な言葉でまとめました。

現場ワード(キーワード)

読み仮名しゅうせいざい
英語表記Glued Laminated Timber(Glulam)、Laminated Wood

定義

集成材とは、乾燥させた木材(板状のラミナ)を繊維方向をそろえて接着剤で積層・一体化した材料のことです。無垢材(一本の木から切り出した材)に比べ、反りや割れが生じにくく、強度と寸法安定性に優れるのが特徴。内装のカウンターや棚板などの造作用途に使う「造作用集成材」と、梁・柱など構造体に使う「構造用集成材(GL材)」に大別されます。似た用語に、単板を積層するLVL(単板積層材)や、板を直交に積層するCLT(直交集成板)がありますが、通常「集成材」と言うと、繊維方向を合わせて貼り合わせた材を指します。

集成材の種類と特徴

1. 造作用集成材(内装・家具・建具向け)

内装カウンター、棚板、階段、巾木やケーシングなどの造作に使う集成材です。タモ、ナラ、ブナ、ラバーウッド、パイン、スギなど多様な樹種が流通し、厚み20~40mm程度のボードや、幅広カウンター材が一般的。表面の美観が重視され、作業性が良く塗装仕上げもしやすいのが利点です。

2. 構造用集成材(梁・柱向け、通称GL材)

梁・柱・母屋など、建物の構造体に用いる集成材。強度性能がJAS(日本農林規格)で等級区分され、ヤング係数(E値)や曲げ強度(F値)の表示で品質が明確です。含水率管理と接着品質により、無垢材より寸法変化が小さく、長尺・大断面も製造できるため、意匠梁や大スパンの空間に選ばれます。

3. 関連する積層木質材料(混同しやすいもの)

LVL(単板積層材)は薄い単板を繊維方向に積層した材料、CLT(直交集成板)は板材を交互に直交させたパネルです。いずれも「木質の積層材」ですが、集成材(GLT)とは構成と用途が異なります。現場での会話では、構造用集成材を「グルーラム」「GL材」と呼ぶことがあります。

どうやって作られる?製造の基本

原理はシンプルですが品質管理が要です。流れは概ね以下のとおりです。

  • 原材料の乾燥:含水率を管理し、反りや割れのリスクを低減。
  • ラミナ加工:節などの欠点を選別し、フィンガージョイントで長さ継ぎすることも。
  • 積層・接着:繊維方向をそろえ、圧締機で接着硬化。接着剤にはメラミン尿素系(MUF)、レゾルシノール系(PRF)など、用途に応じた耐久性のものを使用。
  • 仕上げ加工:所定寸法に製材し、サンディングや面取り、出荷検査を実施。

この工程管理により、材質のバラツキが少ない「狙った性能」を安定的に出せるのが、集成材の強みです。

メリット(選ばれる理由)

  • 寸法安定性:乾燥・積層により反り・ねじれ・割れが出にくい。
  • 強度の信頼性:JAS等級で性能が見える化。設計・積算がやりやすい。
  • 大断面・長尺対応:無垢では取りにくいサイズも製造可能。意匠梁にも好適。
  • 歩留まりの良さ:丸太の有効活用で資源効率が高い。
  • 加工性:現場・工場での切断、欠き込み、金物対応がしやすい。
  • コストバランス:同等意匠の無垢材より価格・安定供給面で有利なことが多い。
  • 表面の均一感:杢目のバラつきが少なく、塗装仕上げが整いやすい。

デメリット・注意点

  • 木口・接着ライン:ラミナの継ぎ目や接着ラインが意匠上見える。見せ場は納まり配慮が必要。
  • 耐水・耐候:屋外や水濡れ環境では、接着種別や防水ディテールの適合が必須。造作用内装材を濡らすと膨れや割れの原因に。
  • ホルムアルデヒド:内装で使う場合はF☆☆☆☆(放散等級最上位)を選ぶのが基本。
  • ビスの効き:無垢に比べて繊維連続性が途切れる部位があり、下穴や位置配慮が必要。
  • 再研磨の限界:表面を削りすぎると接着層が露出する恐れ。

規格・品質表示の見方(JAS・F☆☆☆☆)

構造用集成材はJAS認定が一般的で、強度等級は「E(ヤング係数)」「F(曲げ強度)」の表示で示されます。設計図や仕様書で「E○○-F○○」と指定されている場合は、その等級に適合した材料を手配します。内装の造作用集成材は強度等級の表示がない場合も多いですが、外装しない内装用途ならF☆☆☆☆の表示(ホルムアルデヒド放散等級)が必須と考えてください。F☆☆☆☆であれば建築基準法のシックハウス対策における面積制限の対象外として扱えます。

寸法・樹種の目安と選び方

造作用集成材(内装)では、パイン・ラバーウッド・タモなどが定番。厚さ20~40mm、幅300~900mm、長さ2~4m程度のボードが流通しています。カウンターなら厚さ30~40mm、棚板なら24~30mmが扱いやすいサイズ感です。構造用は、柱105角・120角、梁成240~450mmなどの呼び寸が一般的。長さは住宅で4~6m程度、非住宅ではさらに長尺も可能です。

仕上げの観点では、硬めでキズに強いのはナラ・ブナ・タモなど、柔らかく加工しやすいのはパイン・スギ。塗装はウレタン塗装でメンテ性を高めるか、オイル仕上げで木質感優先か、用途とメンテ方針で選びます。

現場での使い方

集成材は造作・構造のどちらでも頻出する素材です。ここでは、現場での言い回しや使用例、出番の多い工程、関連語をまとめます。

言い回し・別称

  • 集成(しゅうせい)/集成板(しゅうせいばん)
  • 構造用集成材=GL材/グルーラム
  • ラミナ(個々の板材)、フィンガー(フィンガージョイント部)
  • タモ集成、パイン集成、ラバー集成(樹種名+集成)

使用例(現場の会話・指示文の例)

  • 「カウンターはタモの集成で、厚み40、木口見せでいきます。」
  • 「この梁は構造用集成、EとFの等級は図面通りで。金物は先行座彫りしておいて。」
  • 「棚板はパインの集成24ミリ、反り止めに裏桟一本入れてビスは下穴あけてから。」

使う場面・工程

  • 大工・造作工程:カウンター、棚板、笠木、階段板、造作枠など。
  • 躯体・建方工程:梁・柱(構造用集成材)、金物工法との併用。
  • 家具・建具:造作家具の天板・側板、框や無目の材料。

関連語

  • 無垢材(ムク)/挽き板(突板)
  • LVL(単板積層材)、CLT(直交集成板)
  • フィンガージョイント、ラミナ、含水率、F☆☆☆☆、JAS等級

施工・加工のコツ(プロの実践ポイント)

  • 下穴を忘れない:ビス・釘の割れを防ぐため、端部からの距離と下穴を確保。
  • 木口の処理:見せる場合は面取り+塗装で吸い込みを止める。見せない場合は木口テープや無垢見付け材で化粧。
  • 反り止めの工夫:棚板など長さのある部材は裏ザネ・桟・スチールフラットバーなどで補強。
  • 湿気管理:搬入後すぐの固定は避け、現場環境に馴染ませてから加工・取付。
  • 接触水に注意:洗面まわり等はシーリング・塗装の連続皮膜を切らない納まりに。
  • 金物座ぐり:構造用は座彫りで接着層に干渉しすぎないよう、メーカー推奨の加工深さを守る。

保管・養生の基本

  • 直射日光・急激な乾燥を避け、通気を確保。床から浮かせて桟木で水平支持。
  • ビニール完全密封は結露の原因。防湿しつつ開口を設け湿度を逃がす。
  • 角・木口の欠け防止にコーナーパッド。天板は水平養生で反りを防止。

見積・発注で押さえるチェックリスト

  • 用途区分:造作用か構造用か(構造用はJAS等級・含水率の指定を確認)。
  • 樹種・色味:既存建具や床との相性、塗装色の載りを考慮。
  • サイズ:厚さ・巾・長さ、公差、反り止めの有無。
  • 等級・表示:構造用はE/F等級、内装はF☆☆☆☆表記の有無。
  • 木口・見付:意匠側のラミナ目地の見え方、木口化粧の方法。
  • 塗装仕様:工場塗装か現場塗装か。ウレタン/オイル/着色の別。
  • 納期・搬入:長尺材は搬入経路と人員、クレーン・リフトの手配。

代表的なメーカー・供給元(例)

以下は国内外で広く知られる集成材・木質素材のメーカーや供給元の例です。具体製品は用途・仕様により異なるため、最新カタログや技術資料で適合を確認してください。

  • 銘建工業株式会社(日本):構造用集成材の大手。国産材活用や大断面まで幅広く対応。
  • WOODONE(ウッドワン/日本):ニュージーパインを中心に、内装用の集成材部材・カウンターなどを展開。
  • Stora Enso(ストラ・エンソ/欧州):欧州を代表する木質素材メーカー。構造用集成材やLVL、CLTを供給。
  • Binderholz(バインダーホルツ/欧州):欧州産のグルーラムやCLTのグローバル供給で知られる。

よくある疑問Q&A

Q. 無垢材と集成材、どっちが強いの?

A. 条件次第ですが、集成材は乾燥・選別・積層で性能のバラツキを抑えられるため、「設計で狙った強度」を安定して確保しやすいのが強みです。無垢は美しい杢目や経年変化が魅力ですが、節や繊維の流れなどにより個体差が出ます。

Q. 水まわりに使っても大丈夫?

A. 造作用内装材をそのまま濡らす使い方は避け、シーリングや塗装などの防水ディテールを適切に設ければ実用上問題なく使えます。屋外や恒常的な湿潤環境では、接着種別・仕様が適合した材料(または別材)を選定してください。

Q. シックハウス対策は?

A. 内装で使用する集成材はF☆☆☆☆を基本に選定しましょう。接着剤や塗料もF☆☆☆☆相当を選び、現場塗装時は換気と乾燥時間を確保します。

Q. 接着層は見えても大丈夫?

A. 意匠的に気になる場合は、ラミナの見せ方や木口化粧でコントロールします。カウンターの小口は面取り+木口テープや無垢見付け材で仕上げると上質感が出ます。

トラブル防止のコツ(現場あるある対策)

  • 色ブレ対策:同一ロットを手配し、仮置きで色・目の確認をしてから加工。
  • 反り対策:片面だけ塗装せず、可能なら両面塗り。固定は均等に。
  • ビス頭割れ:締め込みすぎに注意。座ぐり+ワッシャーで荷重を分散。
  • 端部欠け:搬入・加工時はコーナーガード、運搬は2人以上で。

プロが教える「選定フロー」

用途(造作/構造)→ 必要性能(強度・耐水・仕上げ)→ 樹種(硬さ・色)→ 寸法(厚み・巾・長さ)→ 表面・木口の見せ方 → 塗装(工場/現場)→ 規格表示(JAS、F☆☆☆☆)→ 納期・搬入という順で絞り込むと、抜け漏れが減ります。特に構造用では、設計図に記載のE/F等級と金物仕様の整合性確認が重要です。

まとめ:集成材を味方に、現場をスムーズに

集成材は「反りにくく、狙った性能が出せる」頼れる材料です。内装では均一で美しい仕上がり、構造では大断面・長尺にも対応できる自由度が魅力。F☆☆☆☆の選定や納まりの工夫、適切な養生・加工を押さえれば、仕上がりと耐久性のバランスがぐっと高まります。初めての方も、この記事のポイントを現場のコミュニケーションと手配の指針にしていただければ、「参考になった」「疑問が解消した」と感じていただけるはずです。迷ったら、用途・性能・仕上げの三点から整理し、規格表示を確認する——これが集成材活用の基本です。