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軽天(LGS)とは?初心者も分かる特徴・構造・施工手順と現場で役立つ基礎知識

軽天(LGS)完全ガイド:意味・部材名称・施工の流れと現場で使える実践知識

「軽天って何?」「LGSってどんな部材?」――内装の打ち合わせや現場の会話で急に出てきて戸惑った方も多いはずです。本記事は、建設内装の現場で日常的に使われる現場ワード「軽天(LGS)」を、初めての方にもわかりやすく、かつ実務に役立つレベルまで丁寧に解説します。読み終える頃には、図面の見方や職人さんとの会話がグンとスムーズになり、工事の流れもイメージできるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名けいてん(エルジーエス)
英語表記Light Gauge Steel (LGS) framing

定義

軽天(LGS)は、「軽量鉄骨(Light Gauge Steel)」で組む室内の壁・天井下地の総称です。亜鉛めっきされた薄い鋼板を成形したスタッド(縦材)やランナー(レール)などを使って骨組みを作り、その上に石膏ボードや化粧材を張って仕上げます。現場では「軽鉄」「LGS下地」とも呼ばれ、オフィス、商業施設、病院、集合住宅などの内装で標準的に採用されています。

軽天(LGS)の基本と特徴

なぜ「軽い鉄骨」なのか

LGSは板厚0.5~1.2mm程度の薄板鋼をロール成形した部材で、同じ鉄骨でも重量鉄骨とは用途が異なります。軽くて加工しやすく、精度が出しやすいのが特徴です。表面は亜鉛めっきで防錆処理され、屋内の乾燥環境で長期的に使用されます。

木下地との違い(メリット・デメリット)

メリットとして、寸法の安定性(反り・伸縮が小さい)、不燃性、均質な品質、施工スピードの速さ、曲げや穴あけなどの加工自由度が挙げられます。一方で、切断面が鋭利で安全配慮が必要、ビス保持力は木に比べて低い場合がある、熱橋になりうる、電動工具やピン打ち機の管理が要る、といった留意点があります。用途・性能・コストを踏まえ、木下地と使い分けられます。

よく聞く別称・略語

  • 軽天/軽鉄:軽量鉄骨下地のこと。現場では同義で使われがち。
  • LGS:Light Gauge Steelの略称。
  • S(スタッド):縦材。R(ランナー):レール。B(胴縁):横通し下地。
  • Cチャン(チャンネル):天井下地などに使うC形鋼。
  • 吊りボルト(W3/8など):天井下地を躯体から吊るためのボルト。
  • PB(プラスターボード/石膏ボード):仕上げの下地板。
  • テクス(テクスビス):薄鋼板用の自己穿孔ねじ。

部材の種類と各部名称

軽天の基本は「壁はS(スタッド)とR(ランナー)」「天井は吊りボルト・チャンネル・野縁」です。名称を押さえると図面が読みやすくなります。

  • スタッド(S):壁の縦材。C形やU形の薄鋼で、ピッチ(間隔)を決めて建て込みます。
  • ランナー(R):床・天井に取り付けるレール。スタッドの受けになります。
  • 胴縁(B)/ハット型鋼:壁の横通し下地。ボードの継ぎや設備開口の補強に使います。
  • Lアングル:隅部や端部の押さえ、補強に使用。
  • Cチャンネル(C-38など):天井下地の主材・野縁に用いるC形鋼。
  • 吊りボルト:天井下地を支持するボルト。レベル調整をしながらナットで固定。
  • 副資材:連結金具、振れ止め、防振ハンガー、目地材、気密・遮音用のテープやシール材など。

寸法・規格の目安

具体的な寸法は設計仕様が優先ですが、現場の標準的な目安を知っておくと便利です。

  • スタッド・ランナー幅:45、65、75、100mmなどが一般的。壁厚や性能(遮音・耐火・設備スペース)で選定。
  • 板厚:壁の下地で0.5~0.8mm程度が多く、荷重や高さにより厚みを変えます。
  • スタッドピッチ:石膏ボードのサイズに合わせて303mmまたは455mmがよく使われます(幅910mmのボードに対応)。
  • 天井下地:主材・野縁のピッチは仕上げ材や仕様に従い、レベル(高さ)をレーザーで管理します。
  • 固定:薄鋼板用のテクスねじ、床・天井の躯体固定はピン打ちやアンカーを使用。方式は躯体条件で選定。

施工の基本手順(壁)

代表的な壁のLGS施工フローです。現場や仕様で手順は前後する場合があります。

  • 1. 図面・仕様確認:壁厚、スタッドピッチ、開口補強、遮音・耐火仕様、下地位置を確認。
  • 2. 墨出し:床・天井・壁にレイアウト墨を出し、通り・直角・通り芯を確認。
  • 3. ランナー取り付け:床・天井にランナーを固定。コンクリートにはピン打ちやアンカー、鋼製梁にはビスなどを使用。必要に応じて気密・遮音テープを併用。
  • 4. スタッド建て込み:所定ピッチでスタッドを立て、ランナーに差し込み。通り・垂直をレーザーや下げ振りで調整。
  • 5. 開口補強:ドア・窓・設備開口まわりは補強スタッドや胴縁で枠強度を確保。指示がある場合は合板等の下地補強を併設。
  • 6. 胴縁・振れ止め:必要箇所に横胴縁、スリットや制振金物等で振れを抑制。
  • 7. 設備配管・配線:スタッドの貫通穴を利用し、保護ブッシング等でエッジから配線を保護。
  • 8. 断熱・遮音材:仕様によりグラスウールやロックウールを充填。継ぎ目は隙間を作らない。
  • 9. ボード張り:石膏ボードを所定のビスピッチで留め付け。継ぎ目は割り付け、目地処理の下地精度を確保。
  • 10. シール・気密:必要部位にバックアップ材・シーリング材で気密・防煙処理。
  • 11. 検査:ピッチ・通り・開口寸法・補強の有無を確認し、写真やチェックリストで記録。

施工の基本手順(天井)

天井は落下防止・振動対策が重要です。安全確実に組みます。

  • 1. 下地レベル計画:仕上がり高さ、設備干渉、点検口位置を確認。
  • 2. 吊り元の確保:スラブ・梁へのインサート、アンカー計画を確認。規定間隔で配置。
  • 3. 吊りボルト施工:所定長さで切断・取付。ナット・座金で確実に固定し、必要に応じて防振ハンガーを使用。
  • 4. 主材・野縁組み:Cチャンなどで格子を組み、直線・レベルをレーザーで合わせる。
  • 5. 振れ止め・補強:照明・設備機器の荷重位置に補強下地を設置。点検口まわりも補強。
  • 6. ボード張り:継ぎ目の割り付け、ビスピッチ管理、ジョイントの千鳥配置を守る。
  • 7. 最終確認:レベル、ビス頭、開口寸法、防煙・防火処理の有無をチェック。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では「軽天」「軽鉄」「LGS」「下地」といった呼び方が混在します。「スタッドをS」「ランナーをR」と略し、「S75@455(スタッド75mmを455mmピッチ)」のように伝えます。天井では「Cチャン」「野縁」「吊り」を略すことが多いです。

使用例(3つ)

  • 「この間仕切りは軽天で、S-65@455、天井はRで押さえてね。」
  • 「天井はLGSでCチャン組んで、吊りW3/8でレベル出しといて。」
  • 「テレビ壁は補強入れて。スタッドダブルで、PB二重張りに変更。」

使う場面・工程

スケルトンからの新装・改装、テナント入替、躯体露出からの内装化など、ほぼすべての内装工程で登場します。墨出し→LGS下地→ボード→仕上げ(クロス・塗装・パネル)という流れが基本です。

関連語の解説

  • PB(石膏ボード):不燃性の下地材。厚み・タイプ(耐火・遮音・耐湿)を用途で選定。
  • テクスビス:薄鋼板に直接打てる自己穿孔ねじ。長さ・頭形状は用途で使い分け。
  • アンカー/ピン打ち:コンクリート・鋼材への固定に使用。方式は躯体・荷重で選ぶ。
  • GL工法:ボードを接着材で直貼りする工法。LGSを使わないケースもある。
  • 遮音材・断熱材:グラスウール、ロックウールなど。隙間なく充填が基本。
  • ランナーシール:気密・遮音のためにレール下に貼るテープやシール材。
  • 振れ止め:壁の揺れを抑える横つなぎや金物。高さいかんで重要。

品質・安全のポイント

  • 通り・垂直・レベル:レーザーを活用し、ランナーとスタッドの通りを揃える。
  • ピッチ管理:スタッド・ビスのピッチが性能(耐火・遮音)に直結。仕様を厳守。
  • 開口補強:建具・重量物位置は事前確認し、LGS二重・胴縁・合板等で補強。
  • 防錆・防湿:屋内乾燥用途が前提。水濡れや湿式工程は避け、濡れた場合は乾燥・清掃。
  • 防火・防煙:耐火仕様はボードの層構成・ビスピッチ・目地処理が規定。貫通部の塞ぎを徹底。
  • 遮音:ランナー下にシール材、貫通部の気密、二重壁や二重張りで性能を確保。
  • 安全対策:切断面での切創防止(手袋・長袖)、粉塵・騒音対策、ピン打ち機の安全管理。

よくあるミスと対策

  • ピッチ間違い:303/455mmなど、使用ボードに合わせて再確認。墨にピッチを記すと確実。
  • 補強抜け:壁掛け機器や手すり位置の情報共有不足。施工前に一覧化し、見える化。
  • 開口寸法ズレ:建具製作寸法とクリアランスの確認不足。枠メーカー図と現場墨を二重チェック。
  • ビスの効き不良:厚み・下地に合わないねじ選定。ねじ長さ・種類を仕様に合わせる。
  • レベル不良(天井):吊りボルトの調整不足。端から端までレーザーで通し確認。
  • 錆・汚れの放置:切粉・バリは清掃。濡れ・汚れは早期対応で品質劣化を防止。

LGSと法規・性能の考え方

LGS自体は不燃性の金属下地ですが、壁や天井の耐火・遮音・断熱性能は「ボードの種類・厚み」「層構成」「ビス・ピッチ」「目地処理」などの総合条件で決まります。建築基準法・関連告示・大臣認定仕様や設計仕様に従うことが最優先です。現場判断で構成を変えない、材料を振り替える場合は設計者の承認を得る――これが基本ルールです。

費用・工期の考え方

LGSは部材が規格化され、加工・搬入がしやすく、乾式工法で養生期間が少ないため、短工期に寄与します。費用は地域、規模、仕様(耐火・遮音・二重張り・補強量)、躯体条件(アンカー方式)で大きく変動します。見積もりでは、開口や補強、天井の吊り本数など数量差を正確に拾うことが重要です。

工具・消耗品と代表的な電動工具メーカー

  • 切断:金切りばさみ、メタルソー、カッター(ボード)。
  • 固定:インパクトドライバー、ドリルドライバー、テクスビス各種。
  • 躯体固定:ガス式・火薬式ピン打ち機、各種アンカー。
  • 墨・測定:レーザー墨出し器、レーザーレベル、スケール、下げ振り。
  • 安全:耐切創手袋、保護メガネ、耳栓、粉塵マスク。

代表的な電動工具メーカーとして、マキタ(国内大手・ラインアップ豊富)、ハイコーキ[HiKOKI](国内大手・打撃系に強み)、ボッシュ(海外大手・測定機器や電動工具に強い)などが広く使われています。いずれもLGS施工に適した機種を多数提供しています。

メンテナンス・改修時の注意

既存のLGS壁で下地位置を知るには、ボードのビス列を目視する、強磁石でビスを探す、下地探しセンサーを使う、といった方法があります。重量物を取り付ける場合は、既存スタッドの位置に合わせる、または補強下地を新設する必要があります。解体時はボード粉塵・鋭利な切断面・配線配管の損傷に注意し、区画貫通部の防火・防煙処理を復旧します。

LGSと木下地の使い分けの実務ポイント

短期間で精度高く仕上げたい大面積の内装、耐火・遮音性能が求められる区画はLGSが適し、局所的なビス保持力や現場の微調整が多い造作には木下地が向くことがあります。併用する場合も多く、たとえば軽天壁の内部に合板補強を入れて金物取り付け強度を確保する手法は一般的です。

現場で役立つチェックリスト

  • 図面の仕様(ピッチ・部材幅・層構成・補強)を全員で共有したか。
  • 搬入経路・保管場所・水平面の確保は十分か。
  • 墨出しは通り・直角・通芯が取れているか。
  • ランナー下のシールや防音措置は必要箇所に施工したか。
  • スタッドの向き・ピッチ・建て込み精度は規定内か。
  • 開口部の補強・寸法・下地位置は建具図と一致しているか。
  • 設備貫通部の処理(スリーブ・防火)は計画通りか。
  • 天井のレベル・吊りピッチ・補強位置は確認済みか。
  • ボードの種類・ビスピッチ・目地割付は仕様通りか。

FAQ(よくある質問)

Q. なぜ木ではなく軽天(LGS)を使うのですか?

A. 寸法安定性、不燃性、施工スピード、精度の出しやすさが理由です。特に商業・オフィス・医療などでの性能要求に応えやすく、乾式で後工程も組みやすい点が評価されています。

Q. 軽天壁の耐震性は大丈夫?

A. 一般に間仕切り壁は非構造部材で、建物の主体構造が地震力を負担します。軽天壁は落下・転倒防止のため適切な固定、振れ止め、開口補強などを行います。仕様・施工を守ることが安全確保の前提です。

Q. 「軽天」と「軽鉄」の違いは?

A. 実務上は同じ意味で使われることが多いです。語源として「軽天」は「軽量天井下地」から広まった呼称とも言われますが、今では壁・天井下地全般を指す通称になっています。

Q. 錆びませんか?

A. 屋内の乾燥環境で使う前提で、亜鉛めっきにより防錆されています。水濡れや高湿度環境では仕様の見直しや防錆対策が必要です。濡らさない保管・施工と、切粉・汚れの清掃が基本です。

Q. 重量物は直接LGSに固定できますか?

A. 荷重・取り付け方法によります。スタッドのダブル入れや胴縁追加、合板下地の併用等で計画的に補強するのが安全です。事前に位置と重量を確定し、適切な下地を設けましょう。

まとめ:軽天(LGS)を理解すれば現場が見える

軽天(LGS)は、現代の内装に欠かせない「精度・スピード・性能」を支える下地工法です。用語(S・R・Cチャン、テクス、PB)と基本手順(墨出し→ランナー→スタッド→補強→ボード)を押さえるだけで、図面の読み解きも現場の会話も一気に楽になります。大切なのは、設計仕様を守ること、ピッチや補強を疎かにしないこと、安全と品質の基本を徹底すること。この記事が、あなたの「わからない」を解消し、現場で自信を持って行動する一歩になりますように。