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OAフロアとは?初心者でもわかる基礎知識とメリット・選び方ガイド

OAフロアを現場目線で徹底解説—意味・使い方・種類・施工のコツ

「OAフロアって何?どこで使うの?」と疑問に感じて検索された方へ。内装の現場では当たり前に飛び交う言葉ですが、初めてだと具体的なイメージが湧きにくいですよね。本記事では、内装施工の実務に携わる立場から、OAフロアの意味・使い方・種類・選び方・施工のコツまで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。読み終わるころには、図面や打合せで出てくる用語の理解が深まり、現場での会話がグッとクリアになるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名おーえーふろあ(フリーアクセスフロア)
英語表記Raised Access Floor(RAF)/ Raised Floor

定義

OAフロアとは、スラブ(コンクリート床)の上に支持脚やパネルを用いて二重の床を作り、床下に配線や配管のスペースを確保する床システムのこと。オフィスの電源・LAN・電話などの配線を床下に収め、レイアウト変更やメンテナンスを容易にする目的で使われます。「OA」はOffice Automationの略で、日本では主にオフィス用途の二重床を指す日常語として定着しています。一般に「フリーアクセスフロア」「二重床」とも呼ばれ、低床タイプ(置敷式)と、高さ調整が大きく取れる支持脚式の大別があります。

現場での使い方

現場では「OAいくつ上げる?」「この区画は置き敷きで」「端部は見切り入れる」など、納まりや床高の調整に関する具体的な指示・確認の文脈で使われます。別称や略語も多いため、現場のニュアンスを押さえると意思疎通がスムーズになります。

言い回し・別称

  • フリーアクセスフロア/フリーアクセス
  • 二重床(にじゅうゆか)
  • 置敷式(おきしき)/低床タイプ
  • 支持脚式(しじあししき)/架台式
  • OA40・OA60・OA75(床上げ寸法の略称。40mm、60mm、75mmなどの呼称)
  • パネル/パネル床/フロアパネル
  • 見切り材/框(かまち)/スロープ材(端部納まり部材)

使用例(3つ)

  • 「この島(デスクブロック)はOA60で、柱際はスロープ納まりにしておいて」
  • 「支持脚式だと床高が出せるから、設備配管も一緒に通せるね」
  • 「既存からの段差が出るから、入口に框とスロープ入れてバリアフリー対応しよう」

使う場面・工程

主にオフィス、コワーキング、コールセンター、サーバールーム、大学研究室など、配線量が多くレイアウト変更の頻度が高い空間で採用されます。工程としては、墨出し→支持脚設置またはパネル敷き→レベル調整→端部納まり→仕上げ材施工→コンセント開口・プレート取付の流れが一般的です。

  • 計画段階:レイアウト、必要な床下空間(ケーブル量・ルート)を検討
  • 実測・墨出し:基準墨、床高基準(仕上がり高さ)を設定
  • 支持脚式:アンカー固定→レベル出し→パネル敷設
  • 置敷式:パネル割付→敷き込み→がたつき調整→面での整合確認
  • 端部納まり:見切り・框・スロープ材の取付、柱際のクリアランス調整
  • 開口処理:コンセントボックス・OAタップ用開口、ふたの取り付け
  • 仕上げ:カーペットタイルやビニル床材の敷き込み

関連語

  • 床下配線/モール配線:ケーブルルートの手段。OAフロアは床下配線の代表格。
  • コンセントボックス/フロアコンセント:床面から電源・LANを取り出す器具。
  • 見切り材/框:既存床とOAフロアの境目を綺麗に納める部材。
  • スロープ材:段差を解消し、台車や車椅子の通行性を確保。
  • レベル出し:床の高さ・平滑性を調整する作業。
  • FL(仕上げ床)/SL(スラブレベル):高さ計画でよく出る基準。

種類と構造を理解しよう

置敷式(低床タイプ)

既存スラブや仕上げ床の上に、薄いパネルを「置いて」敷き詰める方式。床上げ量は概ね30〜60mm程度が主流で、低い段差で床下スペースを作れるのが利点。支柱がないため施工が早く、リフォーム現場で使い勝手が良い一方、大量の配管を通したい場合や大きな高さ調整が必要な場合は不向きです。端部は見切り材やスロープで納め、パネルのがたつきや床鳴りを抑える微調整が品質の肝になります。

支持脚式(架台タイプ)

高さ調整可能な支持脚(ペデスタル)をスラブに固定し、その上にパネルを敷く方式。床上げ量はおおむね70〜300mm程度まで対応しやすく、配線量が多い、設備配管も通したい、床下空調を併用する、といった用途に向きます。支持脚のレベル出しで高い平滑度が確保でき、後からのパネル交換や開口加工にも柔軟。施工は置敷式より工期と手間がかかるため、工程とコストのバランスを検討します。

パネル素材の違い(代表的な例)

  • スチール+無機充填(セメント系等):重量があり安定感と耐荷重に優れ、事務機器の走行感も良好。オフィスの定番。
  • 樹脂系(再生樹脂など):軽量で搬入・施工が容易。低床置敷式に多く、コストと取り回しの良さが特徴。
  • アルミ・スチール中空系:比較的軽量で、耐久性と施工性のバランスが良い。特殊環境や高荷重対応品もあり。
  • 木質系合板+支持脚:スタジオや住宅系用途で用いられることもあるが、オフィスのOAフロアとしては不燃・耐久の要件に注意が必要。

仕上げ材との組み合わせ

OAフロア上にはカーペットタイル(帯電防止タイプが主流)、ビニル床タイル、長尺シートなどを直貼り・置き敷きします。フロアコンセントや開口部周りは仕上げ材のカット精度と段差処理が仕上がりを左右します。椅子のキャスター走行が多いエリアでは、耐摩耗性・寸法安定性の高い仕上げ材を選ぶと快適です。

メリット・デメリットを正直に

メリット

  • 配線の隠蔽と柔軟性:床下に電源・LANを収め、レイアウト変更や増設が容易。
  • 美観と安全:露出配線が減り、つまずきや引っかかりリスクを低減。
  • メンテナンス性:パネルを外して点検・更新が可能。テナント入れ替えにも対応。
  • 遮音・足触りの向上:パネル構造と仕上げ材で踏み心地が改善しやすい。
  • 計画自由度:支持脚式なら床下空間を空調や配管ルートとして活用できる。

デメリット(留意点)

  • 段差が生じる:既存床との取り合いで段差・スロープが必要になる。
  • 重量と荷重計画:パネル重量が加わるため、既存スラブの積載荷重に留意。
  • コスト・工期:直貼り仕上げに比べ、材料・手間ともに増えやすい。
  • 床鳴り・がたつきリスク:施工精度が不足すると異音や沈み込みが発生。
  • 防火・内装制限:用途地域や法規に応じ、不燃材や内装制限の適合確認が必要になる場合がある。

適切に計画・施工すればデメリットは管理可能です。特に段差計画(入口や避難経路)とレベル精度、端部納まりの配慮がポイントです。

選び方のポイント(現場チェックリスト)

  • 必要な床下高さ:通すケーブル量・太さ、ルート、将来の増設余地から逆算。入り口段差の許容も同時検討。
  • 耐荷重性能:想定機器(コピー機、サーバーラック、書庫)の集中荷重・走行荷重に見合うか。メーカーの試験値や規格準拠表記を確認。
  • 歩行感・床鳴り:試し敷きで踏み心地と音を確認。カーペットタイルとの相性もチェック。
  • 防火・不燃性:建物用途・区画によって不燃材が望ましいケースが多い。仕様書・法規の適合確認。
  • メンテ性・開口加工性:後からのコンセント位置変更、パネルの着脱容易性、スペアパネルの入手性。
  • 耐震・転倒配慮:支持脚式は固定方法、置敷式は端部の押さえと重量バランスを検討。ラック直下は補強も検討。
  • 仕上げ材の選定:帯電防止性能、キャスター走行性、メンテナンス性、デザインの一貫性。
  • コスト・工程:搬入経路、夜間作業の可否、養生計画、既存什器の移設段取りも含めて精査。

施工の基本手順と現場のコツ

ここでは、品質トラブルを防ぎやすい手順と現場ならではのコツをまとめます。置敷式と支持脚式で共通する考え方も多く、要所の詰めが品質を決めます。

  • 事前確認:仕上がり床高さ(FL)基準を明確に。扉下端・巾木・ガラス框・設備機器のクリアランスを各所で実測。
  • 搬入・仮置き:フロア保護養生を先行。パネルはロットを混ぜて色・反りのバラツキを均す。
  • 墨出し:通り芯・基準線・高さを撒き、端部納まりとパネル割りの最終確認。
  • 支持脚式の要点:支持脚アンカーの下地強度確認、レベル出しはスパンごとにレーザーで管理。がたつきはシムで調整。
  • 置敷式の要点:下地の不陸を事前補修。がたつきはスペーサーやメーカー指定パッドで微調整。端部は見切り材で面圧を確保。
  • 開口・コンセント:位置の再確認(図面とレイアウト)→パネル開口→エッジ処理→器具固定。仕上げ材の切り回しはテンプレートを使用。
  • 端部・段差納まり:框・スロープは通行方向と台車動線を優先。見切り材の見付け寸法を事前合意し、美観と安全の両立を図る。
  • 仕上げ材施工:カーペットタイルは目地方向を統一し、パネル目地と干渉しない張り方を検討。収まりの逃げ寸を柱際に調整。
  • 最終確認:通路の水平、段差の連続性、床鳴りの有無、開口ふたのガタつき、ケーブルの噛み込みがないかを総点検。

納まり・ディテールで迷いやすいポイント

  • 既存床との見切り:見切り材の高さ・色・素材を早めに確定。段差はスロープか框か、通行頻度と荷重に応じて決める。
  • 扉まわり:扉の開閉クリアランス、ドアクローザーの当たり、沓摺との取り合いを詳細に詰める。
  • 柱際・壁際:5〜10mm程度の逃げを確保し、仕上げ材や巾木で納める。突き上げや床鳴り防止に有効。
  • 設備機器下:集中荷重が高い箇所は補強パネルや支持脚追加で対応。メーカー推奨の割付に従う。
  • 点検口:定期点検の動線上に開口を計画。家具・什器で塞がない配置を優先。
  • 見え方:パネル目地と仕上げ材の目地が不自然に重ならないよう、割付図で事前調整。

安全・品質管理の勘所

  • 水平精度:通路は長手方向での変化量に注意。レーザー水準器でスポットではなく面で管理。
  • がたつき・床鳴り:一歩ごとに音の出る箇所をマーキングし、原因(不陸・緩み・干渉)を特定して是正。
  • 配線の取り回し:曲げ半径、発熱、ノイズ干渉に配慮。LANと電源の分離ルートを基本とする。
  • 表示・管理:開口位置や系統を床下でラベル管理。将来のメンテ性が大きく変わる。
  • 清掃・養生:施工中に出る粉塵はコネクタ不良の原因。毎日の清掃と最終バキュームは必須。

よくあるトラブルと対処法

  • 床鳴りがする:パネルと下地の局部干渉や緩み。支持脚の締め直し、スペーサー追加、端部見切りの当たり調整で改善。
  • がたつき・沈み込み:不陸または支持脚間隔の過大。追加支持脚や補強パネルで面剛性を確保。
  • 段差が解消しきれない:入口框の高さ設定ミス。スロープ長さを延ばす、框の断面変更、隣室側での床厚調整を検討。
  • コンセント位置が合わない:レイアウト変更の反映漏れ。開口の移設が容易なパネル構成にしておくとリカバーしやすい。
  • 静電気・ノイズ:帯電防止性能不足やアース未接続。仕上げ材の見直しとアースの確実な施工で対策。

用途別の考え方

一般オフィス

置敷式の低床タイプが扱いやすく、カーペットタイルとの組み合わせが主流。レイアウト変更を見込むなら、主要通路に点検口を多めに計画すると後々ラクです。

サーバールーム・ネットワーク系

支持脚式で床下空間を確保し、ケーブルマネジメントと冷却効率を両立。高荷重対応パネル、アース処理、ケーブル階層分けが重要です。

教育・研究施設

実験機器の荷重と安全性を優先。薬品や水を使う環境では、耐水性・耐薬品性の高い仕上げ材と、こぼれ止めの段差処理も検討します。

発注・見積時に確認したいこと

  • 施工範囲と床面実測(柱・梁型の食い込み、障害物)
  • 床上げ寸法(既存との段差、扉クリアランス)
  • 耐荷重(集中荷重、衝撃荷重、走行荷重)の必要値
  • 防火・内装制限(不燃・準不燃等の要求)
  • 仕上げ材の品番・敷き方向と開口器具との干渉
  • 夜間・休日工事の要否、養生範囲、搬入経路
  • 引渡し時の予備パネル・交換用部材の確保

数値基準は各メーカーのカタログや規格準拠の試験結果に基づき比較し、必要性能を満たすものを選びます。特定の規格番号や値は仕様により異なるため、案件ごとに一次情報で確認しましょう。

現場で役立つ小さなテクニック

  • 仮スロープ先行:搬入時の安全確保のため、早めに仮設スロープを設置。
  • 音確認は朝一:周囲が静かな時間に床鳴りチェックをすると不具合を拾いやすい。
  • ラベル色分け:電源、LAN、電話、AV系は色別ラベリングで将来のメンテ時短。
  • 端部微調整:柱際の逃げ寸は均一にし、仕上げ材での見え方が綺麗になるよう調整。

初心者がつまずきやすいポイントQ&A

  • Q. OAフロアはどれくらいの高さが一般的? A. 置敷式で30〜60mm、支持脚式で70mm以上が目安。必要な配線量と段差許容から逆算します。
  • Q. 既存床との段差が心配。 A. 入口はスロープ材、框で解決します。台車動線がある場合はスロープ長さに余裕を持たせましょう。
  • Q. 床鳴りを避けるには? A. 下地不陸の補修、支持脚の確実な固定、端部の押さえ、歩行検査の徹底が有効です。
  • Q. メンテは大変? A. パネルを外してアクセスできるので、露出配線より安全・容易です。開口位置の記録とラベリングが効きます。
  • Q. 工期は伸びる? A. 直貼りに比べると手間は増えます。置敷式は比較的早く、支持脚式は十分なレベル出し時間を確保すると品質安定につながります。

まとめ—OAフロアを味方にすれば、現場はもっとスマートになる

OAフロアは「配線を床下にしまうための二重床」。このシンプルな発想が、オフィスの見た目・安全・柔軟性を大きく底上げします。置敷式か支持脚式か、床上げ寸法、耐荷重、仕上げ材の相性といった基本を押さえ、段差・端部の納まりとレベル精度を丁寧に詰めることが成功の鍵です。この記事を道しるべに、図面・メーカー資料・現場実測を照らし合わせながら計画すれば、初心者でも確信を持って判断できます。現場のコミュニケーションも「OA60で」「柱際は見切りで」など、具体的に話せるようになるはず。快適でメンテしやすい床を、一緒につくっていきましょう。