現場ワード解説:パーティションの基礎・種類・施工の勘所と選定チェック
「パーティションって壁のこと?仕切りと何が違うの?」——初めて内装の図面や打合せでこの言葉を聞くと、こうした疑問を持つ方が多いはずです。この記事では、建設内装現場で職人や現場監督が日常的に使う現場ワード「パーティション」を、やさしい言葉でわかりやすく解説します。種類や性能、施工手順、現場での言い回しから、選び方のコツ、代表的なメーカーまで、はじめての方でも「実際に現場で役立つ」実践的な知識をまとめました。読み終えるころには、図面や打合せで迷わずに会話に入れる自信がつくはずです。
現場ワード(パーティション)
| 読み仮名 | ぱーてぃしょん |
|---|---|
| 英語表記 | partition |
定義
パーティションとは、室内空間を区切るための「間仕切り」の総称です。構造耐力(建物を支える力)を持たない非耐力壁が中心で、必要に応じて遮音・防火・意匠・採光・可動性などの機能を組み合わせます。現場では「LGS+石膏ボードの間仕切り(造作壁)」から、「スチールやアルミのシステムパーティション」「ガラスパーティション」「トイレブース」「ローパーティション(置き型)」まで幅広く含みます。図面上の用途・性能指定(例:遮音、準耐火)や納まり条件によって、素材・構成・施工方法が変わります。
パーティションの基本を整理
何を「仕切る」のか
パーティションは、部屋と部屋、通路と執務スペース、会議室とワークスペース、洗面室とトイレブースなど、用途やプライバシー要求に応じて空間を柔軟に仕切るために使います。常設の固定壁だけでなく、フロアのレイアウト変更に対応できる可動式もあります。
主な構成要素
多くのパーティションは以下の要素で構成されます。
- 下地フレーム:LGS(軽量鉄骨、スタッド・ランナー)/スチール・アルミフレーム
- 面材・パネル:石膏ボード、スチール鋼板、メラミン化粧板、ガラス、木質ボードなど
- 仕上げ:ビニールクロス、塗装、化粧シート、メラミン、ガラスフィルムなど
- 開口・金物:ドア枠、窓枠、ランマ(上部開口)、框、見切り、スライド・スリップ金物など
- 充填材:遮音・断熱目的のグラスウールなど
種類と特徴(現場でよく出るパターン)
LGS+石膏ボード間仕切(いわゆる造作壁)
軽量鉄骨のスタッド・ランナーで骨組みを組み、石膏ボードをビス留めして仕上げる最も一般的な間仕切です。仕上げはクロスや塗装が多く、遮音が必要な場合は二重貼りやグラスウール充填で性能を上げます。耐火性能が必要な場合は、指定厚みのボードや耐火パテ、目地処理、開口部の不燃枠など、仕様通りの納まりが必須です。
スチールパーティション(システム)
工場生産されたスチール製のパネルや枠材を現場で組み立てるシステムパーティション。堅牢で遮音性・不燃性の確保がしやすく、オフィスの会議室・役員室などに多用されます。仕上げは焼付塗装や化粧鋼板が一般的で、ガラスやドアパネルと組み合わせることでデザインの自由度も高いです。
アルミパーティション(システム)
軽量で施工が速いのが特長。中規模オフィスやバックヤード、ラボなど、レイアウト変更を見込む空間に向きます。遮音・防火性能は製品仕様に依存し、スチールより軽快な意匠が得意です。フレーム+化粧パネル、フレーム+ガラス仕様が一般的です。
ガラスパーティション(フレームあり/フレームレス)
採光・開放感・デザイン性を重視する際に選ばれます。フレームレスは見付が細く美観に優れますが、施工精度と安全管理が重要。遮音を求める場合は合わせガラスやスペーサー、気密パッキンなどでチューニングします。飛散防止フィルムや安全ガラスの採用が基本です。
可動間仕切(移動/折りたたみ/引き違い)
会議室を分割したり、イベント時に空間を切り替える用途に用いるタイプ。上吊りや床ガイドで移動し、未使用時は壁側に収納します。遮音等級・操作性・段差処理・耐震ストッパーなど、使用シーンに合った仕様選定がポイントです。
トイレブース(衛生間仕切)
耐水性・清掃性・プライバシーに重点を置いたユニット化仕切。メラミン化粧板や不燃パネル、ステンレス金物で構成されます。公共施設やオフィス、商業施設で定番です。
性能と設計の目安(初学者が知っておくべき観点)
防火・不燃
防火区画や準耐火が求められる区画では、設計図書に指定された材料・厚み・納まり(目地・貫通部処理・開口部枠など)を厳守します。石膏ボードの種類・枚数や耐火パテ、モルタル系充填材の使用可否は仕様で決まります。一般区画でも内装制限(不燃・準不燃・難燃)がかかる用途があるため、仕上げ材の法区分を確認します。
遮音
会議室や面談室では、片面二重貼りや両面二重貼り、目地の気密化、床・天井との取合いのシール、グラスウール充填などで遮音を高めます。片開きドアの隙間や連続ガラスとの取り合いも漏れの原因になりやすく、気密パッキンやドアボトムの採用を検討します。
耐震・変形追従
天井や躯体の地震時変形に追従させるため、上部にスライド・スリップ金物やクリアランスを設ける納まりが一般的です。特にガラスやハイパーティションは、許容変形をカタログ仕様で確認し、上部取合いの納まりを決めます。重量物(ガラス・鋼製パネル)は倒れ止めや十分なアンカー下地が必須です。
耐久・メンテナンス
人が触れる面は耐傷性や補修性が重要。ビニールクロスは補修しやすく、メラミンは傷に強いが加工精度が必要。可動間仕切は走行部の点検・調整や、下地の劣化による建付け不良に注意します。
寸法計画と割付の考え方
モジュールとパネル割り
システムパーティションはモジュール寸法(例:300、450、600ミリ等)でパネルを割り付けます。現場実測の寸法誤差や柱・梁の出入りを考慮し、端部に「調整パネル」や目地を設けて通りを揃えます。造作間仕切はスタッドピッチ(例:303mmなど)や開口補強位置から逆算し、ボードの目地位置や開口中心を整えると、仕上がりがきれいで施工もスムーズです。
開口部(ドア・ランマ・窓)
開口には補強(見込み方向の補強枠・補強ランバー・補助スタッド)が必要です。ドアは建具枠の反り・水平を丁寧に合わせないと建付け不良の原因に。ランマ付きの場合はガラリやガラスの厚み・クリアランスも事前確認します。
天井・床との取合い
床は下地のレベル差、天井は下地位置(吊りボルト・野縁)を確認し、アンカー位置・ビスの効きを確保。床仕上げ(タイルカーペット・塩ビシート・フローリング)との見切りを、納まり図で早めに確定しておくと、後工程の手戻りを防げます。
施工手順と現場の勘所
LGS+石膏ボード間仕切の基本手順
- 事前確認:図面・仕様・性能条件(遮音・防火)・開口位置・電気設備の貫通を確認。墨出し(芯・仕上がり)を明確化。
- ランナー施工:床・天井にランナーをアンカー固定。直線性とレベルをレーザーで確認。
- スタッド建込み:所定ピッチでスタッドを建込み、通り・鉛直を調整。開口部は補強スタッド・まぐさ・垂れ壁補強を組む。
- 充填材:遮音・断熱が必要な場合はグラスウール等を所定密度で充填。
- ボード張り:片面→片面の順で張付。目地は通し・千鳥を設計に従い、ビスピッチ・食い込み深さを管理。
- 目地処理:ジョイントテープ+パテ処理。耐火仕様は耐火パテ・シール等の指定を遵守。
- 仕上げ:下地調整後、クロス貼り・塗装などを施工。見切り・巾木・ケーシングで納める。
- 最終調整:ドア建付け・金物調整・シール打ち・清掃・検査。
システムパーティションの基本手順
- 事前採寸:実測で高さ・幅・下地状況を確認し、パネル割り・調整パネル位置を確定。
- 下地・レール:床・天井のベースやフレームを設置。アンカー位置・強度・直線性を丁寧に。
- パネル建込み:順番に建て込み、通り・鉛直・目地ピッチを調整。ガラスは搬入経路と安全措置を十分に。
- ドア・金物:丁番・クローザー・錠前を組み込み、建付けを追い込み。遮音仕様はパッキン・シールを忘れず。
- 仕上げ・検査:傷・凹み・汚れをチェックし、必要なタッチアップと清掃を実施。
品質チェックの勘所
- 通り・鉛直・水平が通っているか(レーザー・下げ振りで確認)
- 目地の一直線性・均一性、ボードビス頭の食い込み・ピッチ
- シールの欠損・気泡・打ち増しの有無(遮音・防火区画は特に)
- ドアの開閉・ラッチ・隙間、ガラスのチッピング・フィルムの浮き
- 床・天井との見切り、巾木の通り、巾違いの解消
安全・養生のポイント
- 切削粉じん対策(マスク・集じん)、石膏ボード搬入の腰痛防止
- ガラス取り扱いの保護具(手袋・吸盤)、倒れ止めの仮固定
- 通路・エレベータの養生、既存仕上げの保護、持ち込み工具の点検
現場での使い方
「パーティション」は現場会話で非常によく出る言葉です。素材・工法の違いで意味が変わることもあるので、やり取りの文脈から「どのタイプの仕切り」を指しているのかを確認するのがコツです。
言い回し・別称
- 間仕切り/仕切り:最も一般的な日本語表現
- LGS間仕切:LGS+石膏ボードの造作壁を指す現場言い回し
- ハイパーティション:床〜天井までのシステムパーティション
- ローパーティション:床から腰高〜肩高程度の置き型仕切り
- ガラスパーティション:ガラス主材の間仕切り
- 可動間仕切:移動・折りたたみ式の間仕切り
- トイレブース:衛生間の個室用パーティション
使用例(3つ)
- 「この会議室、スチールのハイパーティションで遮音仕様にしておいて」
- 「ここはLGS間仕切で片面二重、グラスウールも充填で」
- 「通路側はガラスパーティションで見せたいから、割付図を先に切って」
使う場面・工程
- 計画・基本設計:必要性能(遮音・防火・意匠・可動性)の整理
- 実施設計・納まり検討:開口、天井・床取合い、設備貫通の整理
- 発注・採寸:システムの場合は実測の上、パネル発注
- 施工:墨出し→下地組→配線・充填→面材→仕上げ→金物→シール
- 検査・引渡し:性能・仕上げ・建付けの確認
関連語
- LGS(軽量鉄骨):スタッド(縦)・ランナー(上下)の下地材
- PB(石膏ボード):面材。厚み・枚数で性能が変わる
- ランマ:壁上部の開口部。ガラスやガラリを入れることも
- 見切り・ケーシング:仕上げの端部材、納まり部材
- スリップ(スライド)金物:躯体変形に追従させるための上部取合い金物
- 遮音・気密:シール、パッキン、充填材などの総合性能
選び方のチェックリスト(失敗しない要点)
- 求める機能:遮音・防火・採光・意匠・可動性の優先順位を決める
- 将来変更:レイアウト変更が多いならシステム・可動を優先
- コストと工期:造作は自由度が高いが工程が多め。システムは短工期だがパネル発注が必要
- 設備との干渉:スプリンクラー・照明・空調吹出口・スイッチ・コンセント位置を早期に確定
- 法規:内装制限、避難動線、ドア開閉方向、防火区画の貫通処理を事前確認
- メンテ性:汚れ・傷のつきやすさ、部材の交換しやすさ
- 搬入・施工性:大型ガラスや長尺パネルは搬入経路・エレベータサイズを確認
よくあるトラブルと対策
- 遮音不足:上部・床際・開口周りのシール不足、片貼り構成、ドア隙間が原因。二重貼り・充填・気密部材で改善。
- 建付け不良:下地の通り・鉛直不足やアンカー不良。レーザー基準で再調整、補強追加。
- 割付不良:端部に中途半端な寸法のパネルが残る。初期の実測・割付図で調整パネルを計画。
- 法規不適合:防火区画の仕様違反や可燃仕上げの誤使用。設計指定の確認徹底、材料証明の管理。
- 傷・汚れ:搬入時の養生不足。保護シートの活用、通路・角部の徹底養生。
代表的なメーカーと特徴(例)
以下は日本国内でパーティションや関連内装材を扱う代表的なメーカーの例です。各社ラインナップや仕様は製品ごとに異なるため、実案件では最新カタログ・技術資料でご確認ください。
- オカムラ(OKAMURA):オフィス家具・内装の大手。スチール・アルミのシステムパーティションや可動間仕切を展開。デザイン性と品質管理に強み。
- コクヨ(KOKUYO):オフィスの総合メーカー。レイアウト提案からシステムパーティションまで一貫対応。豊富な意匠バリエーション。
- プラス(PLUS):オフィス什器・内装のメーカー。システムパーティションやローパーティションを広くラインナップ。
- イトーキ(ITOKI):オフィス計画に強み。会議室・執務室向けのパーティション提案に実績。
- コマニー(COMANY):パーティション専業で知られるメーカー。オフィスから教育・医療分野まで多様なシステムを展開。
- DAIKEN(大建工業):内装建材大手。可動間仕切や室内ドア、音環境配慮の製品群を展開。
- 吉野石膏:石膏ボードの代表的メーカー。LGS間仕切で用いる各種ボード(不燃・遮音・耐火仕様)を供給。
- JFE建材/日鉄建材:LGS(軽量鉄骨)などの建材メーカー。スタッド・ランナー等の下地材を供給。
用語ミニ辞典(押さえておくと会話がラク)
- スタッド:縦の下地部材(LGS)。S-○○でサイズを表す。
- ランナー:床・天井側の横部材(LGS)。R-○○でサイズを表す。
- PB(石膏ボード):面材の基本。厚みは一般に9.5mm、12.5mmなど。
- ランマ:壁上部の開口。ガラスやガラリを入れて採光・通気を確保。
- 見切り:仕上げの端部処理材。床や天井、異素材の境目をきれいに納める。
- ケーシング:枠周りの化粧材。開口部の見え掛かりを整える。
- スリップ(スライド)金物:天井側で地震時の変形追従を確保する金物。
- 目地:パネル・ボードの継ぎ目。通りを揃えると美観が向上。
- 巾木:壁の下端に付ける細長い部材。掃除機の当たりなどから壁を保護。
現場で役立つチェックフロー(実務的な動き方)
- 1. 要求性能の確認:遮音・防火・意匠・可動性の優先度を決定
- 2. 仕様の選定:LGS造作か、システム(スチール・アルミ・ガラス)か
- 3. 割付・納まり:柱・梁・設備位置を踏まえたパネル割り・開口寸法の確定
- 4. 実測・発注:システムは特に実測→パネル手配の順で計画的に
- 5. 施工計画:搬入経路・安全計画・他業種(電気・設備)との工程調整
- 6. 品質管理:通り・鉛直・気密・建付け・シールの管理項目を明確化
- 7. 検査・是正:チェックリストで確認、必要な是正を速やかに実施
パーティションと他工種の連携ポイント
電気・設備との取り合いはトラブルの元になりがちです。スイッチ・コンセントの高さ・位置、LAN・電源の配線ルート、空調のリターン・吹き出し、スプリンクラーの遮蔽や干渉など、パーティション計画の初期段階で各業者と図面を突き合わせましょう。特に遮音壁では、貫通部の気密処理を後回しにしないことが重要です。
ケース別アドバイス(初心者向け)
静かな会議室を作りたい
LGS間仕切なら両側二重貼り+グラスウール充填+上下シールを基本に。ドアはソフトクローザー+気密パッキン、必要に応じてドアボトムも。ガラスを使う場合は合わせガラスや気密パッキンを併用し、ランマ部の気密も忘れずに。
短工期でレイアウト変更に強くしたい
アルミやスチールのシステムパーティションを検討。標準モジュールに合わせた割付で製作・施工を高速化できます。将来の扉位置変更やパネル差し替えも見据え、調整パネルの配置計画を。
明るく開放的に見せたい
ガラスパーティション(フレームレス推奨)+最低限の框見付で軽快に。安全ガラスと飛散防止フィルムは必須。眩しさや視線対策に目線高さのフィルムやブラインド内蔵ガラスを検討します。
まとめ(ここだけ押さえれば大丈夫)
パーティションは「室内を機能的に仕切るための非耐力の壁・仕切り」の総称です。現場では、LGS+石膏ボードの造作壁、スチール・アルミのシステム、ガラス、可動、トイレブースなど、多様なタイプが用途に応じて使い分けられます。選定のカギは、遮音・防火・意匠・可動性・工期・メンテという基本軸。施工では、墨出し・下地の通り・開口補強・気密シール・建付けを丁寧に抑えることが品質を左右します。この記事を参考に、図面・仕様・納まりを現場目線で読み解き、関係者と早めに情報を共有すれば、失敗の少ないパーティション計画が実現できます。最初は難しく感じても、一度組立から仕上げまでの流れを体験すれば、一気に理解が進みますよ。









