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パイプカッターとは?種類・使い方・選び方を徹底解説【初心者にもわかるプロの技】

プロが教える「パイプカッター」入門ガイド:用途・種類・選び方から安全な使い方まで

「パイプカッターって何?本当に必要?どうやって使うの?」——給排水や空調、電気設備などの内装工事の現場で一度は耳にするこの言葉。初めてだと、どの工具を選べばいいのか、使い方は合っているのか不安になりますよね。本記事では、現場で毎日のようにパイプカッターを使うプロの視点から、基本の定義、種類、正しい使い方、失敗しないコツ、安全対策までを丁寧に解説します。読み終える頃には、「これなら現場で迷わない」と自信が持てるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ぱいぷかったー
英語表記pipe cutter(tubing cutter)

定義

パイプカッターとは、パイプ(管材)をまっすぐ・きれいに切断するための専用工具の総称です。主に円盤状のカッティングホイール(切断刃)をパイプ外周に当て、回転させながら少しずつ締め込み、材料を塑性変形と切削で切り離します。銅管・アルミ管などの薄肉管に使う「チューブカッター」、鋼管・ステンレス管に対応した重作業向け、狭所用のクイックアジャスト式、大径で使うチェーン式などがあります。なお、現場では塩ビ管(VP/VU)をハサミのようにせん断する「塩ビパイプカッター(ラチェット式)」も広い意味でパイプカッターと呼ばれることがあります。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のように呼ばれます。状況により呼称が変わるため、混乱しないようにしましょう。

  • パイプカッター(総称)
  • チューブカッター(銅管・冷媒管など薄肉管向け)
  • 塩ビカッター/塩ビパイプカッター(ラチェット式の樹脂管用)
  • チェーンカッター(鋳鉄管・大径用チェーン式)

使用例(3つ)

  • 「2分の銅管、パイプカッターでカットして、内外面のバリ取っといて」
  • 「このVP50は塩ビカッターで一発、面取りまで頼む」
  • 「狭いからクイックアジャストのチューブカッター持ってきて」

使う場面・工程

  • 給排水配管の切り回し(VP/VU、ポリ管、SUS、SGPなど)
  • 空調・冷媒配管の銅管切断(フレア加工の前工程)
  • スプリンクラー・消火設備の管切断(仕様により工具選定)
  • 電気設備の電線管(厚鋼・薄鋼・ねじなし)の切断場面

関連語

  • リーマー/バリ取り工具:切断後の内外面のエッジを取る工具
  • フレアリングツール:冷媒配管のフレア加工に使用
  • チューブベンダー:管の曲げ加工に使用
  • パイプソー/バンドソー:切断機械。肉厚や特殊材で使い分け

種類と仕組み

ホイール(円盤刃)式

最も一般的。パイプをローラーと刃で挟み、回転させながら徐々に締めていく方式です。薄肉の銅・アルミ管から、対応モデルによってはステンレス・鋼管まで切断できます。利点は切断面が真円に近く、切り粉が出にくいこと。欠点は厚肉材では時間がかかることです。

クイックアジャスト式(ワンタッチ送り)

ノブの引き出しやスライドで素早く管径に合わせられるタイプ。天井内や壁際の狭所で威力を発揮します。頻繁に寸法を切り替える現場では作業効率が上がります。

ラチェット式(狭所・高荷重)

ラチェットハンドルで段階的に力を伝えるタイプ。厚めのステンレスや鋼管、スペースが限られ大きく回せない箇所で便利です。

チェーン式(大径管)

チェーンに複数のカッティングホイール(またはスコアリングポイント)が付いたタイプで、鋳鉄管や大径管を一周巻き付けて切断します。地中配管や既設更新工事で活躍します。

塩ビパイプカッター(せん断式)

ラチェット機構のハサミ型。VP/VUなど塩ビ管や架橋ポリエチレン管(対応モデルのみ)を切断。切断面が潰れにくく、手ノコより速く静かに切れます。ホイール式とは構造が異なり、用途に応じて使い分けが必要です。

パイプカッターの選び方

失敗しないためのチェックポイントを押さえましょう。対応材質と適用径を最優先に確認します。

  • 対応材質:銅・アルミ・ステンレス・鋼・塩ビなど。ステンレスは専用ホイールが必要なことが多い
  • 適用外径範囲:現場で扱う呼び径ではなく「外径」で確認
  • 狭所対応:クイックアジャスト、ショートボディ、ラチェットハンドルの有無
  • 替刃の入手性:汎用ホイールが使えるか、メーカー純正の供給状況
  • 内蔵リーマー:チューブカッター一体型は携行に便利
  • 耐久性と重量:金属ボディで剛性が高いほど長持ち。高所作業は軽さも重要
  • グリップ性:濡れ手袋でも滑りにくい形状・表面処理
  • メンテナンス性:ねじ送りの滑らかさ、注油のしやすさ、清掃性
  • コスト:頻度・用途に応じてミドル〜プロ向けを選定

目安として、冷媒用銅管中心なら外径4〜28mm程度対応の小型チューブカッター、給排水の塩ビ主体なら呼び径13〜50(場合により75)対応のラチェット式塩ビカッター、金属配管が多い現場はステンレス対応ホイール式を用意すると安心です。

実践:正しい切断手順

ホイール式(銅・ステンレスなど)の基本手順

  • 墨出し:切断位置をマーカーで360度回すように均一にマーキング
  • 固定:可能なら万力やパイプバイスで軽く固定。既設配管は支持金具を活用
  • セット:ローラーと刃でパイプを挟み、ガタなく当たる程度に軽く締める
  • 初期スコア:1〜2周は軽い締め付けで均一な筋を付ける(曲がり防止)
  • 本切断:1〜2周ごとにノブを1/8〜1/4回転程度締め足す。無理に締めすぎない
  • 潤滑:鋼・ステンレスは切断油を少量使用で刃持ち・仕上がり向上
  • 切り離し:最後は力を抜き、バリの立ちを抑えながら離す
  • バリ取り:内面はリーマー、外面は面取りツールやヤスリで軽く45度程度
  • 清掃:切粉や油分をウエスで除去。接続前に再度内外面を確認

塩ビパイプカッター(ラチェット式)の基本手順

  • 墨出し:スコヤやスケールで垂直に印を付ける
  • 刃の当て方:印に対して刃を垂直に当て、パイプを奥までしっかり受け面に当てる
  • 切断:ラチェットで段階的に押し切る。最後は急がず、潰れないよう均等に力をかける
  • 面取り:外周を軽く面取りし、差し込み抵抗とOリング傷つきを防ぐ

狭所でのコツ

  • クイックアジャスト式を選ぶとセットが早い
  • 周囲に干渉物がある場合はハンドルの振り角が小さいもの(ショートハンドル、ラチェット)を使う
  • 壁や器具を養生して傷を防止。ウエスを一巻きすると安心

仕上げ・バリ取りの重要性

切断面のバリは漏れ・詰まり・ガスケット損傷の原因です。特にフレア接続やロウ付け前は、内面の僅かなバリでも流路を乱しトラブルになります。以下を徹底しましょう。

  • 内面:リーマーや面取りビットで軽くさらう。削りすぎは強度低下に注意
  • 外面:差し込みやフレアの当たり面だけ軽く面取り
  • 清掃:切粉の除去、溶剤拭き(材質に適したもの)で接着やロウ付けの密着性を確保

安全対策と現場マナー

  • 保護具:手袋・保護メガネを着用。切断端面は想像以上に鋭利
  • 落下防止:高所ではランヤードや工具落下防止コードを使用
  • 漏水・漏ガス:既設配管は系統停止・ドレン抜き・圧抜きを確認し、養生と受け缶を準備
  • スパーク・火気:可燃物近傍では火気厳禁。代替方法の検討と養生
  • 周囲配慮:切断時の姿勢とモノの置き場を整理。通行帯を塞がない

よくある失敗と対処法

  • 切断面が斜めになる:初期スコアが偏っている。最初の数周は軽い締めでガイドを作る
  • パイプが潰れる・口すぼまり:締め過ぎ。1周ごとに少しずつ増し締め、支持をしっかり
  • バリが大きい:一気に切った、刃が摩耗。締め込みを小刻みにし、替刃を交換
  • 刃が欠ける:材質不適合や潤滑不足。ステンレスは専用ホイール、切断油を併用
  • 切り粉・カスが配管内へ:切断方向を配慮し、切断後に内面清掃を徹底

メンテナンスと保管

  • 清掃:使用後は切粉・油分を拭き取り、可動部に薄くオイル
  • 替刃管理:欠け・摩耗は早めに交換。予備を常備
  • 送りネジ:ガタ・渋さが出たら清掃と注油。砂・粉じんの噛み込みを防ぐ
  • 保管:ケースや工具箱で刃を保護。高温多湿は錆の原因

代表的なメーカーと特徴

安心して選べる定番メーカーを挙げます(五十音順)。いずれも国内外の現場で実績があるブランドです。

  • RIDGID(リジッド/米国):配管工具の世界的ブランド。剛性・耐久性に優れ、ステンレス対応のプロモデルが充実
  • MCC(松阪鉄工所):日本の老舗ツールメーカー。使いやすいサイズ感と替刃供給の安定性が強み
  • TOP工業:国産の堅実な作りで、軽量・狭所向けモデルが人気
  • ロブテックス(エビ印):チューブカッターや塩ビカッターなど精密加工品に定評
  • SK11(藤原産業):コストパフォーマンスに優れ、入門用・予備として最適
  • モノタロウ(PB):現場の消耗品・替刃の調達がしやすく、コスト管理に向く

どのメーカーも材質や適用径に応じて多数のモデルをラインナップしています。替刃の共通性や入手性も実用上の重要ポイントです。

価格相場の目安

  • 小型チューブカッター(銅管・外径28mm前後まで):約1,500〜6,000円、プロ向けは4,000〜15,000円
  • ステンレス対応中型:約8,000〜25,000円
  • チェーン式大径用:約30,000〜100,000円以上
  • 塩ビパイプカッター(ラチェット式):約1,000〜5,000円、業務用は〜10,000円程度

使用頻度が高いほど刃と送りネジの品質差が効いてきます。長期的コストを考えると、メイン工具はミドル〜ハイグレード、予備はコスパ重視が無難です。

基礎知識:呼び径と外径の違いに注意

工具選定は「外径」で行います。日本の管規格は「呼び径」と実際の「外径」が一致しないことが多く、銅管(冷媒用)はインチ系外径表記、塩ビ管(VP/VU)はJIS規格で外径が決まっています。購入時・現場持ち込み時は、対象管の外径を実測またはカタログで確認しましょう。

現場の時短テクニック

  • 同一寸法を量産する際は、ストッパー(簡易当て木や止め輪)で長さを再現
  • 狭所では初期スコアを丁寧に作ってから最小回転で仕上げる
  • フレア加工前の銅管は、切断→内バリ取り→外面軽面取り→清掃の順を徹底
  • 塩ビ接着は切断→外面取り→乾拭き→プライマー→接着の段取りを崩さない

ケーススタディ:どの工具を使う?

エアコンの冷媒配管(銅管1/4・3/8)

小型チューブカッター(外径4〜28mm)+内外面リーマー。フレア前提なのでバリ取り必須。切断油は基本不要、清掃を重視。

洗面所リフォームでのVP20・VP25切断

ラチェット式塩ビカッター。切断面の外面取りで差し込み抵抗を低減。接着工程まで一連で行い、乾燥時間を確保。

狭い天井内のステンレス薄肉管(SUS)

ステンレス対応のホイール式チューブカッター+切断油。クイックアジャストがあると取り回しが楽。替刃はSUS専用を使用。

チェックリスト:作業前後に確認

  • 材質・外径に合ったカッターか(SUSに銅管用の刃を使っていないか)
  • 刃の状態は良好か(カエリ・欠け・摩耗)
  • 狭所での回転スペースは確保できるか、代替手段は?
  • 切断後の内外面のバリは除去済みか
  • 接続方式(差し込み・ねじ・フレア・ロウ付け)に応じた仕上げになっているか

よくある質問(FAQ)

Q. 金ノコとパイプカッター、どちらが良い?

A. まっすぐでバリの少ない切断が必要ならパイプカッターが有利。金ノコは万能ですが、切断面の修正に時間がかかります。スペースや材質、数量で使い分けましょう。

Q. ステンレス管に銅管用のカッターは使える?

A. 本体は共用できても刃は別。SUS専用ホイールを使用し、切断油を併用してください。銅管用で無理に切ると刃の欠け・偏摩耗・切断面不良の原因になります。

Q. 切断後に差し込みが固いのはなぜ?

A. 外面の面取り不足や楕円化が原因。外面に軽く面取りを行い、潤滑剤(接着前提なら不可)や清掃で改善します。

Q. 既設の水が残っている配管は切って大丈夫?

A. 基本は系統停止・ドレン抜きが前提。残水があると切粉が流入し、機器トラブルや接続不良につながります。受け缶・養生も準備しましょう。

ミスを防ぐ要点まとめ

  • 「外径」と「材質」から工具と刃を決める
  • 初期スコアは軽く、締め込みは小刻みに
  • ステンレスは専用刃と切断油で刃持ちと精度を確保
  • 切断後の内外バリ取りと清掃を習慣化
  • 狭所はクイックアジャストやラチェット式を活用

用語ミニ辞典

  • スコアリング:刃で外周に浅い筋を付け、ガイドにする工程
  • リーマー:内バリを取るテーパー状の工具。チューブカッター内蔵型もある
  • 面取り:切断端の角を落とす仕上げ。組付け性とシール性を高める
  • 呼び径:配管の規格呼称。工具選定は外径で行う

現場に持っておくと安心なセット

  • 小型チューブカッター(外径〜28mm)+予備ホイール
  • 塩ビパイプカッター(〜φ60程度)
  • 内外面リーマー、面取りツール、ヤスリ、切断油
  • マーカー、スケール、養生用ウエス

最後に:初心者へのアドバイス

パイプカッターは「ゆっくり・均一に・丁寧に」が鉄則です。焦って一気に締め込むと、斜め切りやバリ増大、接続不良の原因になります。材質・外径に合う工具を選び、初期スコアを丁寧に作ってから、1〜2周ごとに少しずつ締める——この基本さえ守れば、誰でもプロ並みの切断面が出せます。安全と品質、そして段取りを意識して、確実な施工につなげていきましょう。