内装現場でよく聞く「ポンプユニット」をゼロから理解するガイド|仕組み・用途・選び方・現場での言い回しまで
図面や工程打合せで「ここ、ポンプユニットが入ります」と言われて、具体的に何を指すのかイメージできず不安になったことはありませんか?建設の内装現場では、給水や循環、排水、試運転など水や流体を動かす場面で「ポンプユニット」という言葉が登場します。本記事では、初心者の方にもわかるように、現場で使われる「ポンプユニット」の意味、仕組み、種類、選び方、設置のコツ、よくあるトラブル、そして実際の現場での言い回しまで、やさしく丁寧に解説します。読み終える頃には、図面や打合せでの不安が解け、「何を確認し、どう対応すべきか」が具体的に見えるはずです。
現場ワード(ポンプユニット)
| 読み仮名 | ぽんぷゆにっと |
|---|---|
| 英語表記 | pump unit |
定義
ポンプユニットとは、ポンプ本体に加え、必要な配管(吸込・吐出)、バルブ類、圧力計や温度計などの計装、制御盤(インバータ・圧力スイッチなど)、ベースフレーム(架台)や振動対策部材を一体化した「完成済みのポンプ設備一式」を指す現場用語です。現場では「加圧給水ユニット」「循環ポンプユニット」「排水ポンプユニット」など、用途名を冠して呼ばれることが多く、搬入・据付後は配管と電源・信号を接続すれば使える状態になっているのが一般的です。
ポンプユニットの基本構成と仕組み
主な構成部品
ユニット化されることで、製品ごとに多少の違いはありますが、基本構成は次の通りです。
- ポンプ本体(清水用・温水用・ケミカル用など用途に応じた型式)
- 電動機(モーター)とカップリング/直結構造
- 吸込・吐出配管(ヘッダー、逆止弁、ゲート弁/ボール弁)
- 安全装置(圧力スイッチ、ドライ運転防止、漏電ブレーカ等)
- 計装(圧力計、温度計、差圧計、流量センサ等)
- 制御盤(インバータ制御、多台数交互運転、異常警報、遠隔接点)
- ベースフレーム(防錆塗装)、防振ゴム/防振ベース
- ドレンパン(受け皿)、エア抜き、ストレーナ(粗ごみ除去)
動作の概略
ポンプが回転して流体を吸い込み、圧力(ヘッド)を与えて吐き出します。制御盤は吐出圧や流量を監視し、インバータで回転数を自動調整。必要な圧力を保ちながら省エネ運転を実現します。多台数ユニットの場合は、需要に応じた台数制御や交互運転で機器の寿命を均等化します。
現場での使い方
ここでは、実際の内装・設備現場での言い回しや使い方を、具体的なシーンに落とし込みます。
言い回し・別称
- 加圧給水ユニット/給水ユニット(受水槽や直結給水の加圧用)
- 循環ポンプユニット(空調・床暖・給湯循環など)
- 排水ポンプユニット(ピット設置の水中ポンプセット)
- ブースターポンプ(圧力を持ち上げる加圧ポンプの総称)
- ユニットポンプ(メーカー呼称で使われることも)
使用例(3つ)
- 「このテナントは既存の給水幹線から分岐して、室内に小型の加圧ポンプユニットを入れます。」
- 「機械室に循環ポンプユニットを先行搬入。内装完了後に断熱と化粧パネルを付けます。」
- 「排水ピットのポンプユニットは二台交互運転。高水位で並列運転の設定にしておいてください。」
使う場面・工程
- 仮設:水張り試験・配管洗浄・試運転用の仮設ポンプユニット
- 本設:給水加圧、温水・冷水循環、床暖房、機器冷却水循環、排水揚水
- 調整:圧力設定、流量バランス、エア抜き、制御連動(BAS・警報盤)
関連語
- 受水槽/高架水槽、ヘッダー、逆止弁、圧力タンク、インバータ、NPSH(必要吸込水頭)、キャビテーション、エアロック、防振架台、フレキシブルジョイント、ストレーナ、試運転・同調運転、遠隔警報
ポンプユニットの主な種類と用途
加圧給水ユニット
建物の水道圧では上階まで十分な圧力が届かない場合に使用。貯水槽方式でも直結増圧方式でも用いられます。多台数の小型ポンプを並列にして省エネ制御するタイプが主流です。衛生配慮として吐出側に逆流防止、配管材質はステンレスを選ぶことが多いです。
循環ポンプユニット(空調・給湯・床暖)
ボイラや熱源機で温めた(冷やした)水を循環させるセット。差圧一定・温度一定制御など、設備側の要件に合わせた制御を行います。配管は断熱前提、空調機・熱交換器との連動がポイントです。
排水ポンプユニット(ピット用)
地下ピットに溜まった排水や湧水を自動で排出するセット。水中ポンプ2台(交互・同時)+フロートスイッチ+逆止弁+点検用チェーンなどが一般的です。逆流・臭気対策や詰まり防止のストレーナ管理が重要です。
その他の例
- 薬液注入ポンプユニット(防食・水処理用)
- 冷却水ブースターユニット(機器冷却・プロセス補助)
- 消火ポンプ設備は「消防設備」に分類され、設計・施工・検査に法令や資格要件が伴うため、一般の給排水用とは扱いが別です。
選び方のポイント(初心者が外さない基準)
能力(流量・全揚程)
必要な流量(L/min, m³/h)と全揚程(m、kPa換算)を決めるのが第一歩。配管圧力損失、機器の要求差圧、同時使用の想定を設計条件から確認しましょう。余裕を見すぎるとオーバースペックで騒音・消費電力が増えます。
制御方式
定速・多段・インバータの順にきめ細かく省エネ。近年はインバータによる圧力一定制御が主流です。多台数制御では交互運転・待機切替・ピーク時並列運転のロジックを確認します。
静音・防振
テナントやホテルなど内装品質が求められる空間では、振動アイソレーション、防音パネル、運転点の最適化が重要。防振ゴム/ばね、フレキシブルジョイント、配管の固定方法まで一体で検討します。
設置条件(寸法・搬入経路・電源)
ユニットは一体物のため、搬入経路(エレベーター・曲がり・開口)に注意。必要電源(単相/三相、電圧、容量)、盤の取付位置、保守スペース、排水受け、床耐荷重を事前確認します。
水質・材質
飲料水系は腐食や衛生性に配慮し、ステンレス(SUS)や青銅材を選ぶのが一般的。温水や薬液は耐熱・耐薬品性を確認します。
保守性・ライフサイクル
消耗品(メカニカルシール、ベアリング、Oリング)の入手性、メーカー保守網、盤の更新容易性、標準品か特注かを比較。長期的な運転コスト(エネルギー+保守)で評価するのがおすすめです。
設置・施工の実務ポイント
- 水平・据付:ベースの水平を出し、アンカー固定。レベル不良は軸受寿命低下や振動の原因。
- 配管接続:吸込側はできるだけ短く太く、流入をスムーズに。吐出側は逆止弁+遮断弁、点検スペースを確保。
- フレキシブルジョイント:振動伝播を抑制し、据付誤差を吸収。
- ストレーナ:初期は目詰まりしやすいので、洗浄・試運転後に点検。
- エア抜き:循環系はエア抜きが命。エア抜き弁や高点のベントで確実に排気。
- ドレン・漏水対策:ドレンパン、床防水、漏水センサの設置を検討。
- 電気・制御:電源容量、保護(ELB/MCCB)、アース、遠隔警報端子、他設備(BAS、熱源)とのインターロックを試験。
- 表示・銘板:系統名、運転切替(自動・手動・停止)、弁の開閉表示を明示。引継ぎ資料と整合をとる。
試運転・調整の進め方
- 事前点検:配管洗浄完了、ストレーナ清掃、弁開閉、モーター回転方向、油脂類不要確認。
- 注水・エア抜き:吸込側充水、エア抜き実施。循環ルートを開放し、空運転を避ける。
- 単独運転:無負荷〜部分負荷で異音・振動・漏れの有無を確認。
- 定格試験:圧力・流量・電流値・温度上昇を記録。インバータ設定(圧力一定値、PID、上限下限)を調整。
- 多台数同調:交互・並列切替、警報、待機自動復帰のシーケンスを確認。
- 引渡し:試運転成績書、配線図、設定値、保守マニュアルを整備。
メンテナンスとトラブル対応
日常点検
- 圧力・流量・電流値のトレンドチェック
- 異音・振動・温度上昇の有無
- 漏れ(メカシール部、配管継手)、錆、凝縮水
- ストレーナ、フィルタの差圧
よくある不具合と対処
- キャビテーション音:吸込抵抗過大・水位不足・気泡混入。吸込径の見直し、配管経路改善、NPSH余裕の確保。
- エアロック:高点に空気滞留。ベント追加、流量を一時的に上げてパージ。
- 圧力が安定しない:PID設定過敏、圧力センサ位置不適。調整または配管取り回し改善。
- 過負荷トリップ:詰まり、逆止弁固着、ベアリング劣化。清掃・部品交換。
- 振動・騒音:据付不良、アンカー緩み、共振。防振再設計、回転数調整。
内装現場ならではの注意(“あるある”と対策)
- 騒音クレーム対策:夜間運転禁止の時間帯、試運転は日中に計画。仮設遮音パネルを準備。
- 意匠との取り合い:機械室の化粧壁・天井とメンテナンス空間の両立。点検口位置を早期確定。
- 漏水リスク:仕上げ完了後の漏水は致命傷。ドレン受け・止水材・リークセンサーで層間影響を最小化。
- 搬入経路:完成前の狭い開口・EV制限に注意。分割搬入・現場組立の可否をメーカーに確認。
代表的なメーカーと特徴
- 荏原製作所(Ebara):ポンプ専業の大手。ビル設備向け給水・排水ユニットのラインアップが豊富で、保守体制も広い。
- テラル(TERAL):給水ユニットやブースターポンプに強み。小〜中規模テナントや店舗での採用例が多い。
- 川本製作所(Kawamoto):建築設備向け製品が幅広く、加圧給水・排水・循環ポンプの実績が多い。
- 日立産機システム(Hitachi):インバータ技術と組み合わせた省エネ型の給水ユニットなど、制御を含めた提案が得意。
いずれもカタログで能力表と外形図、据付寸法、電源容量、騒音データ、保守要件が公開されています。現場条件に合わせ、標準仕様の範囲か、オプション(防音、耐食、盤仕様)で対応可能かを確認しましょう。
簡易チェックリスト(発注前〜据付後)
- 用途と能力:流量・全揚程・制御方式が図面と一致しているか
- 設置条件:搬入可否、基礎寸法、保守空間、ドレン計画
- 接続条件:配管口径・位置、弁配置、フレキ、ストレーナ
- 電気・制御:電源容量、保護、BAS連動、警報接点仕様
- 環境配慮:騒音・振動、夜間運転制限、防錆・防露
- 書類整備:外形図、配線図、取説、試運転成績書、保証書
初心者がつまずきやすいポイントとコツ
- 「ポンプはあるのに水が出ない」→吸込側が閉まっている、エアが噛んでいる、逆回転。まずバルブ位置と回転方向を確認。
- 「圧力が効きすぎる/弱い」→設定値とセンサ位置の不整合。系統末端に近い適切な圧力センサ位置を確保。
- 「異音が止まらない」→キャビテーション疑い。吸込改善(径・曲がり・ストレート長)、運転点の変更を検討。
- 「盤のアラームが不明」→取説のアラーム一覧を常備。写真と発生条件、対応履歴を残すと次回に活きる。
法令・衛生面の一般的な留意点
飲料水系では衛生面に配慮し、逆流防止、水質に適合した材質選定、デッドスペースを作らない配管計画が基本です。消火関連は別系統として扱い、所管法令や検査・資格が必要になります。詳細は計画段階で設計者・メーカー・監督者に確認し、現場判断での仕様変更は避けましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. ポンプユニットと単体ポンプの違いは?
A. ポンプユニットは、ポンプに必要なバルブ・計装・制御盤・架台をまとめた完成品で、現場では接続工事が最小限で済みます。単体ポンプはこれらを別途選定・組立する必要があります。
Q2. インバータは必須?
A. 省エネ性や圧力安定性を重視するビル・テナントではほぼ標準です。用途や予算により、定速運転で十分なケースもあります。
Q3. 騒音が心配。対策は?
A. 防振(ゴム・ばね)、防音パネル、回転数の最適化、配管支持の見直し、設置室の遮音強化が有効です。計画段階から織り込むと効果的です。
Q4. メンテ周期は?
A. 使用条件で差がありますが、日常点検は月次〜週次、消耗品点検は年次ベースが目安。メーカー推奨周期に従い、稼働時間で管理すると良いです。
Q5. 内装工事でも関係ある?
A. テナントの給水・給湯・床暖や機器循環、排水揚水など、内装でも関わる場面は多いです。騒音・漏水・意匠取り合いの調整が特に重要です。
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- 受水槽・高架水槽:水を貯める設備。給水ユニットとセットで語られる。
- 圧力タンク:圧力変動を抑え、ポンプのON/OFF回数を低減。
- 逆止弁(チャッキ弁):逆流防止。ユニット吐出側の常連。
- フレキシブルジョイント:振動・芯ズレ吸収の継手。
- ストレーナ:異物除去用フィルタ。初期不良の原因No.1対策。
まとめ:今日から現場で「ポンプユニット」に強くなる
ポンプユニットは、単なる「ポンプ」ではなく、現場で即運用できるように組まれた設備一式です。用途に応じた種類(給水、循環、排水)、適切な選定(流量・全揚程・制御)、丁寧な据付(防振・エア抜き・配管計画)、そして確実な試運転・保守が、トラブルを防ぐ最短ルート。現場の会話で出てくる別称や言い回しも押さえれば、打合せの理解度が一気に上がります。この記事を手元メモとして活用し、「確認すべきポイント」を先回りしてつぶしていけば、内装現場でも安心してポンプユニットを扱えるようになります。









