原状回復と居抜き譲渡、どちらが得?メリット・コスト・注意点を徹底解説
店舗やオフィスの退去を検討している方の多くが、「原状回復をすべきか、それとも居抜き譲渡にした方が良いのか?」と悩みます。初めての退去や契約解除では、費用や手続き、トラブルなど分からないことが多いものです。この記事では、原状回復と居抜き譲渡、それぞれのメリット・デメリット、費用の違いや注意点まで、初心者の方にも分かりやすくご説明します。不安や疑問を少しでも解消し、後悔しない選択ができるようサポートします。
原状回復と居抜き譲渡の基本を知ろう
原状回復とは?
「原状回復」とは、店舗やオフィスを契約前の状態に戻して退去することです。賃貸契約書に「退去時には原状回復を行うこと」という条項がある場合が多く、借主が設置した内装や設備、看板などを全て撤去し、元の状態に戻す必要があります。
居抜き譲渡とは?
一方、「居抜き譲渡」とは、店舗やオフィスの内装・設備などを現状のまま、次の借主(譲受人)にそのまま引き継いでもらう方法です。飲食店や美容室、クリニックなど、業態が似ていれば、新しいテナントもすぐに営業が始めやすいのが特徴です。
原状回復のメリットとデメリット
原状回復のメリット
- 賃貸契約通りに返却するので、貸主とのトラブルになりにくい
- 物件をきれいな状態に戻すため、次のテナントの募集がしやすい
- 「契約違反」などの訴訟リスクを低減できる
原状回復のデメリット
- 工事費用が高額になるケースが多い
- せっかく設置した内装・設備もすべて撤去する必要がある
- 工事期間中に時間がかかるため、家賃負担が続くことも
居抜き譲渡のメリットとデメリット
居抜き譲渡のメリット
- 原状回復費用を大幅に削減できる可能性がある
- 内装や設備を売却することで譲渡代金を得られる
- 次のテナントがすぐに営業開始できるので、貸主の空室リスクも軽減
- 手続きがスムーズに進めば、早期に明け渡せる
居抜き譲渡のデメリット
- 貸主の承諾が必要。断られることもある
- 設備の劣化や修繕義務の所在が曖昧になりやすい
- 譲渡先がすぐに見つからない場合、時間がかかることも
- トラブル発生時に責任の所在が複雑になりやすい
原状回復コストとは?具体例と費用感
原状回復工事の費用は物件の広さや業種、元の状態によって大きく異なります。
一般的な目安として、飲食店の場合は1坪あたり3万円〜10万円、オフィスで1坪あたり1万円〜5万円程度とされています。例えば30坪の飲食店なら、最低でも90万円、場合によっては300万円以上になるケースも珍しくありません。
コストを左右する主なポイントは以下の通りです。
- 内装の造作度合い(壁・床・天井・厨房設備の有無など)
- 給排水や空調などの設備の撤去範囲
- 電気・ガス・水道などの配線や配管の復旧
- スケルトン返却(躯体むき出し)指定の有無
見積もりは数社から取り、内容や範囲をよく比較することが大切です。
居抜き譲渡の費用と収支イメージ
居抜き譲渡を選ぶと、原状回復費用を大幅にカットできるだけでなく、内装や設備を次の借主に買い取ってもらう「譲渡代金」が得られることもあります。譲渡価格は店舗の状態、設備の価値や需要によって異なりますが、50万円〜300万円程度が多いと言われます。
ただし、仲介業者に依頼した場合は「譲渡成約手数料」や「仲介手数料」(通常は譲渡金額の10%前後または定額)がかかるケースも。もし買い手が見つからなかった場合は、結局原状回復を求められることもあるため、事前に流れを確認しておきましょう。
修繕負担の違いと注意点
原状回復と居抜き譲渡では、修繕義務の範囲や負担が変わります。
- 原状回復:借主が契約上の「原状」に戻すため、修繕・撤去費用の全額または大部分を負担
- 居抜き譲渡:基本的に現状のまま引き継がれるが、劣化部分の補修やクリーニングを求められることもある
特に居抜き譲渡では、どこまで修繕・清掃するか、設備の状態はどうかを、貸主・譲受人としっかり事前に確認し、書面で合意しておくことがトラブル防止に役立ちます。
設備引き継ぎのポイント
居抜き譲渡の場合、内装や設備を次の借主に引き継ぐことになります。大切なのは、「どこまでが譲渡対象か」を明確にしておくことです。
- エアコン・厨房機器・照明など、動作確認を必ず実施
- 購入時の保証書・取扱説明書があれば譲渡先に渡す
- リース契約の設備があれば、リース会社との名義変更手続きが必要
- 残置物、廃棄物の処理費用負担者(借主or譲受人)を明確に
譲渡契約書に、設備一覧と状態、引き渡し条件を詳細に記載するのが安心です。
物件返還の手順とチェックリスト
物件の返還(明け渡し)は、以下の流れで進むのが一般的です。特に契約書をよく確認し、貸主とのやり取りを丁寧に行いましょう。
- 退去(解約)通知を貸主に提出(通常1〜6ヶ月前)
- 原状回復か居抜き譲渡かを貸主と相談・承諾を得る
- (居抜き譲渡の場合)譲渡先探し・譲渡契約書締結
- (原状回復の場合)工事業者選定・見積取得・施工
- 設備・内装の引き渡し、動作確認・補修
- 貸主立ち会いで最終確認、鍵の返却
- 原状回復費用・清算金、保証金の精算
チェックリストには「契約書内容の再確認」「設備リストの作成」「立ち会い日程の調整」「費用精算方法」などを盛り込みましょう。
リフォームと原状回復の違い、注意点
リフォームは、物件の価値を高めるための改修工事を指しますが、原状回復は「契約時の状態への復旧」が最終目的です。
原状回復工事でやりすぎてしまうと、余計な費用が発生することもあるため、必ず契約書通りの内容・仕様で行うよう確認しましょう。
- 仕様範囲・復旧箇所は貸主に必ず事前確認
- 勝手にリフォームや変更を加えると、後日やり直しや追加費用が発生するリスク
- 「スケルトン戻し」か「一部復旧」かを明記してもらう
また、リフォーム済みの居抜き店舗を譲渡する場合も、設備や内装に不具合がないか、譲受人に現状をしっかり説明しましょう。
契約トラブルを防ぐためのポイント
退去や譲渡時にトラブルが多いのは、以下のようなケースです。
- 原状回復の範囲を巡る認識違い
- 設備・内装の状態を巡る責任問題
- 譲渡金額や費用負担の不透明さ
- 貸主の承諾を得ないまま譲渡・転貸するケース
これらを回避するには、以下のような対策が重要です。
- 契約書の内容を隅々まで確認し、不明点は貸主や管理会社に質問する
- 工事や譲渡前後の状態を写真・動画で記録しておく
- 譲渡契約書には、設備一覧・保証範囲・譲渡金額・引き渡し条件などを必ず明記
- 第三者(専門業者や弁護士)のアドバイスを活用する
投資効率と費用対効果の検証
原状回復費用をかけて何も残らないより、居抜き譲渡で設備や内装の価値を現金化し、コストを抑えるのは魅力的です。一方で、譲渡先がすぐに見つからなかったり、譲渡相談に時間がかかる場合、家賃負担やトラブルリスクが高まることも。
投資効率を考える際のチェックポイントをまとめます。
- 原状回復費用と居抜き譲渡による収入・支出をシミュレーション
- 譲渡活動にかかる期間・家賃負担・仲介手数料
- 残存設備の耐用年数・価値(古い機器は値がつきにくい)
- 譲渡成立しなかった場合の最終的な原状回復リスク
- 貸主・譲受人との関係性や信頼性
最終的には、「費用を最小限に抑え、トラブルなくスムーズに退去できるプラン」が最も投資効率の高い選択肢といえるでしょう。
まとめ:自分に合った退去方法を選び、安心して次のステップへ
原状回復も居抜き譲渡も、それぞれにメリットと注意点があります。大切なのは、ご自身の状況・物件・契約内容・タイミングに合わせて、最も納得できる方法を選ぶことです。
「これで本当に大丈夫かな?」と不安な時は、契約書の再確認や専門家への相談も検討しましょう。費用や時間、リスクを見極めて、スムーズな退去・譲渡ができれば、次の挑戦への第一歩を気持ちよく踏み出せます。
この記事が、皆さまの不安解消と判断の手助けとなれば幸いです。